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相続の寄与分とは?認められる5つの要件と計算方法を解説

2026-05-16
目次

「親の介護を一身に背負ってきたのに、他の兄弟と相続分が同じなのは納得できない…」そう感じていませんか? もしかしたら、あなたのその貢献は「寄与分」として認められ、法定相続分よりも多くの遺産を受け取れるかもしれません。寄与分とは、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献度に応じて多く財産をもらえる制度です。しかし、認められるには厳しい要件があり、計算方法も少し複雑です。この記事では、相続における寄与分の基本から、認められるための具体的な要件、計算方法、そして相続人以外の方が請求できる「特別寄与料」まで、わかりやすく解説していきますね。

相続における「寄与分」ってどんな制度?

寄与分とは、簡単に言うと、亡くなった方の財産を増やすために、あるいは減らないように「特別に貢献した」相続人が、その頑張りを評価されて、他の相続人よりも多くの遺産を受け取れる制度のことです。例えば、長男が家業を無給で手伝い、次男は家を出て全く関与していなかった場合、同じ相続分では不公平ですよね。このような不公平をなくし、相続人間の実質的な公平を図るために寄与分という制度が設けられています。

寄与分を主張できるのは「相続人」だけ?

原則として、寄与分を主張できるのは「相続人」に限られます。そのため、例えば亡くなったお父様の介護を長年献身的に行ってきた「長男のお嫁さん」は相続人ではないため、以前はこの制度の対象外でした。
しかし、2019年7月の民法改正によって「特別寄与料」という新しい制度ができました。これにより、相続人ではない親族(長男のお嫁さんなど)も、無償で介護などの貢献をした場合、相続人に対して貢献に見合った金銭を請求できるようになったんです。これで、より現実に即した形で貢献が報われるようになりました。

寄与分が認められると、どれくらい多くもらえるの?

寄与分が認められると、その人の最終的な相続分は「(遺産総額 − 寄与分)× 法定相続分 + 寄与分」という計算式で決まります。少しわかりにくいので、具体例で見てみましょう。

【例】遺産総額4,000万円、相続人は長男Aと次男Bの2人。長男Aの寄与分として1,000万円が認められた場合

まず、遺産総額から寄与分を引きます。これを「みなし相続財産」といいます。
4,000万円(遺産総額) − 1,000万円(長男Aの寄与分) = 3,000万円(みなし相続財産)

次に、このみなし相続財産を法定相続分(この場合は各1/2)で分けます。
長男A:3,000万円 × 1/2 = 1,500万円
次男B:3,000万円 × 1/2 = 1,500万円

最後に、長男Aの取り分に、最初に引いた寄与分1,000万円を足し戻します。
長男Aの最終的な相続分:1,500万円 + 1,000万円 = 2,500万円
次男Bの最終的な相続分:1,500万円

このように、長男Aは次男Bよりも1,000万円多く遺産を受け取れることになります。寄与分が認められることで、相続分に大きな差が出ることがわかりますね。

寄与分が認められるための5つの厳しい要件

「それなら私も!」と思われるかもしれませんが、寄与分が認められるためのハードルは意外と高いのが実情です。単に「親の面倒を見ていた」というだけでは不十分で、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

要件1 相続人による寄与であること
要件2 「特別な寄与」であること
要件3 無償またはそれに近い行為であること
要件4 継続的な行為であること
要件5 財産の維持または増加との因果関係があること

特に重要なのが「特別な寄与」という点です。親子や夫婦には法律上、互いに助け合う義務(扶養義務)があります。そのため、日常的な家事の手伝いや、時々病院に付き添うといった行為は、扶養義務の範囲内と判断されやすく、寄与分としては認められません。仕事を辞めて介護に専念したり、本来ヘルパーを雇うはずだった費用(例えば月20万円)が浮いた、といった客観的な事実と証拠が必要になります。

寄与分には5つのタイプがある!具体例で見てみよう

寄与分の貢献内容は、主に5つのタイプに分けられます。ご自身の状況がどれに当てはまるか確認してみましょう。

家業従事型

被相続人が経営していたお店や農家などを、無給または相場より著しく低い給料で長年手伝っていたケースです。例えば、父親のラーメン店を10年間、月給5万円で手伝い、店の売上を維持・向上させた場合などが該当します。

金銭等出資型

被相続人の事業のために資金を提供したり、不動産購入の際に頭金を出したりしたケースです。例えば、被相続人が家を建てる際に、子が自己資金から500万円を援助した場合などが考えられます。

療養看護型(介護)

最も主張されることが多いタイプですが、認められるハードルも高いです。被相続人が要介護状態にあり、相続人が仕事を辞めるなどして、ほぼ付きっきりで介護を行った場合です。これにより、本来支払うべきだった介護施設やヘルパーの費用が年間300万円浮いた、といった具体的な財産の維持への貢献が求められます。

扶養型

被相続人が病気や高齢で収入がなく、生活に困窮している状況で、相続人が仕送りをするなどして生活を支え続けたケースです。被相続人に十分な年金や預貯金があった場合には、認められにくい傾向があります。

財産管理型

被相続人が所有する賃貸アパートの管理や家賃の徴収、修繕の手配などを無償で行い、財産の価値を維持したようなケースです。管理会社に委託すれば年間50万円かかるところを、無償で代行していた場合などが該当します。

寄与分の計算方法はどうなるの?

寄与分の金額は、まず相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めるのが原則です。しかし、話がまとまらない場合は、家庭裁判所が判断することになります。その際、各タイプに応じて以下のような計算式が目安として用いられます。

タイプ 計算方法の目安
家業従事型 (本来もらえるはずだった給与額) × (1 – 生活費控除割合) × 寄与年数
療養看護型 (介護報酬の日当額) × 介護日数 × 裁量的割合 (0.5~0.8程度)
金銭等出資型 出資額を相続開始時点の貨幣価値に換算して計算
扶養型 負担した扶養料 × 期間 × (1 – 法定相続分割合)
財産管理型 専門業者に依頼した場合の報酬額を参考に計算

【療養看護型の計算例】
例えば、介護保険で定められた介護報酬額を参考に日当を8,000円とし、3年間(1,095日)介護したとします。個別の事情を考慮する裁量的割合を0.7とすると、
8,000円 × 1,095日 × 0.7 = 613万2,000円
となり、約613万円が寄与分の目安となります。ただし、これはあくまで目安であり、必ずこの金額が認められるわけではありません。

相続人以外でも貢献が報われる「特別寄与料」

先述したとおり、相続人ではない親族の貢献を評価する「特別寄与料」の制度があります。この制度について、もう少し詳しく見ていきましょう。

誰が請求できるの?

被相続人の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)が請求できます。最も典型的なのは、子の配偶者(お嫁さん、お婿さん)です。他にも、被相続人の兄弟姉妹の子(甥・姪)なども対象に含まれる可能性があります。

注意すべき点は?

特別寄与料には、通常の寄与分と異なる注意点がいくつかあります。
一つ目は、請求できる期間が非常に短いことです。「相続の開始と相続人を知った時から6ヶ月以内」かつ「相続開始の時から1年以内」に請求しなければなりません。遺産分割協議が終わるのを待っていると、期限が過ぎてしまう可能性があるので注意が必要です。
二つ目は、対象となる貢献が「無償の労務の提供」、つまり療養看護や家業の手伝いなどに限られる点です。金銭の提供は対象外です。
三つ目は、特別寄与料を受け取ると相続税の課税対象となり、税額が2割加算されるルールがあることも知っておきましょう。

まとめ

相続における寄与分は、被相続人の財産に貢献した方の努力に報いるための大切な制度です。しかし、その主張が認められるには「特別な寄与」であったことを客観的な証拠(介護日誌、領収書、第三者の証言など)で示す必要があり、そのハードルは決して低くありません。もしご自身の貢献が寄与分に当たるかもしれないと感じたら、まずは遺産分割協議の場で他の相続人に主張してみましょう。その際は、感情的にならず、貢献の事実を具体的な証拠とともに冷静に伝えることが大切です。もし話し合いがまとまらない場合や、手続きに不安がある場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

相続の寄与分に関するよくある質問

Q.相続の「寄与分」とは何ですか?

A.被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加に特別な貢献をした相続人が、法定相続分に加えて多くもらえる財産のことです。相続人間の公平を図るための制度です。

Q.どのような行為が寄与分として認められますか?

A.主に「家業従事型(無給で家業を手伝った)」「金銭出資型(事業資金や不動産購入資金を援助した)」「療養看護型(無償で長期間の介護をした)」「財産管理型(不動産の管理や修繕費を負担した)」などが典型例です。

Q.妻(配偶者)や子の扶養・介護は寄与分になりますか?

A.夫婦間の協力扶助義務や親子間の扶養義務の範囲内とみなされる通常の介護や家事では、原則として寄与分は認められません。しかし、義務の範囲を明らかに超えるような特別な貢献があった場合は認められる可能性があります。

Q.寄与分はどのように請求するのですか?

A.まずは相続人全員での遺産分割協議で主張します。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停または審判を申し立てて、寄与分を主張することになります。

Q.寄与分の計算方法は決まっていますか?

A.法律で明確な計算式は定められていません。貢献の種類に応じて、もし専門家に依頼した場合の費用(例:介護報酬額×日数)などを参考に、貢献度合いや期間、相続財産の額など様々な事情を考慮して、ケースバイケースで判断されます。

Q.寄与分を主張するために必要なものはありますか?

A.はい、貢献した事実を客観的に証明するための証拠が非常に重要です。例えば、介護日誌、送金記録、通帳の写し、領収書、他の相続人とのやり取りの記録(メール等)などを集めておきましょう。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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