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相続人に暴力を…財産を渡したくない!相続廃除で相続権をなくす方法

2024-11-11
目次

大切に築いてきた財産。でも、その財産を相続するはずの人から、暴力やひどい嫌がらせを受けていたら、「この人にだけは財産を渡したくない」と思うのは当然のお気持ちですよね。そんな辛い思いをされている方のために、法律には「相続廃除」という制度が用意されています。これは、問題のある相続人から、法的に相続する権利を奪うことができる、とても強力な手続きです。この記事では、あなたがご自身の財産と尊厳を守るために知っておくべき「相続廃除」について、その仕組みや条件、手続きの方法を優しく、そして詳しく解説していきます。

財産を渡したくない!「相続廃除」とはどんな制度?

相続廃除(そうぞくはいじょ)とは、財産を残す人(被相続人)の意思によって、特定の人から相続権を法的に失わせる制度のことです。通常、配偶者や子どもには「遺留分」という最低限の財産を受け取る権利がありますが、相続廃除が認められると、その遺留分も含めて一切の相続権を失わせることができます。「どうしてもこの人には相続させたくない」という強い思いを実現するための最終手段ともいえる制度です。

相続廃除ができるのは財産を残す本人だけ

とても大切なポイントですが、相続廃除の申し立てができるのは、財産を残すご本人(被相続人)だけです。例えば、お父様が長男から暴力を受けている場合に、次男が「兄を相続廃除してください」と家庭裁判所に申し立てることはできません。あくまで、お父様ご自身の意思で手続きを進める必要があります。

相続廃除の対象になる人、ならない人

相続廃除の対象となるのは、「遺留分」を持つ推定相続人に限られます。遺留分を持つ人とは、法律で最低限の遺産の取り分が保障されている人のことです。

 

遺留分がある人(相続廃除の対象)配偶者、子ども(孫)、親(祖父母)
遺留分がない人(相続廃除は不要)兄弟姉妹(甥・姪)

つまり、配偶者や子ども、親に財産を渡したくない場合に、この相続廃除の手続きが必要になります。一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません。もし兄弟姉妹に相続させたくない場合は、「兄弟姉妹には財産を相続させない」という内容の遺言書を作成しておけば、相続廃除の手続きをしなくても財産が渡ることはありません。

相続廃除されるとどうなるの?

家庭裁判所で相続廃除が認められると、その人は相続に関するすべての権利を失います。具体的には、以下のようになります。

  • 遺産を一切相続できなくなる
  • 最低限の取り分である「遺留分」も請求できなくなる
  • 遺産分割協議に参加する権利も失う
  • その人の戸籍に「推定相続人廃除」と記載される

このように、相続廃除は相続人にとって非常に重い効果を持つ手続きです。

相続廃除が認められる3つの厳しい条件

相続廃除は、人の権利を大きく制限するため、単に「性格が合わない」「長年会っていない」といった感情的な理由では認められません。法律(民法892条)で定められた、以下の3つのいずれかに当てはまる、客観的な事実が必要です。

被相続人への「虐待」

これは、被相続人の心身に苦痛を与える行為のことです。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • 殴る、蹴るなどの身体的な暴力を振るうこと。
  • 「役立たず」「死ね」などの暴言を日常的に浴びせる精神的な暴力。
  • 必要な介護をしない、食事を与えないなどのネグレクト(育児放棄・介護放棄)。

暴力や暴言の事実を証明するために、診断書や怪我の写真、録音、日記などが重要な証拠になります。

被相続人への「重大な侮辱」

これは、被相続人の名誉や尊厳を著しく傷つける行為を指します。例えば、以下のような行為です。

  • 公の場で被相続人を罵倒したり、虚偽の悪評を流したりする。
  • 被相続人の人格を否定するような言動を繰り返す。
  • 被相続人が隠しておきたい秘密を言いふらす。

こちらも、侮辱行為があったことを示すメールや手紙、第三者の証言などが証拠となり得ます。

その他の「著しい非行」

虐待や侮辱には当てはまらなくても、それらに匹敵するほどひどい行いのことです。社会的な常識から見て、親子や夫婦の関係を根本から破壊するような行為が該当します。

  • 被相続人の財産を勝手に使い込んだり、無断で売却したりする。
  • ギャンブルなどで作った多額の借金を被相続人に肩代わりさせる
  • 重大な犯罪を犯して服役し、被相続人に多大な精神的苦痛や社会的迷惑をかける。
  • 配偶者が長年にわたり不貞行為(浮気・不倫)を続ける。

相続廃除の手続き方法

相続廃除を実現するには、家庭裁判所での手続きが必須です。手続きには、ご自身が生きている間に行う「生前廃除」と、遺言によって死後に行ってもらう「遺言廃除」の2つの方法があります。

生前に行う「生前廃除」

ご自身が元気なうちに、ご自身の意思で家庭裁判所に申し立てる方法です。これが最も確実な方法と言えるでしょう。

【手続きの流れ】

  1. ご自身の住所地を管轄する家庭裁判所に「推定相続人廃除の審判申立」をします。
  2. 家庭裁判所で、申立人(あなた)と相手方(廃除したい相続人)双方の言い分を聞く「審判」という手続きが行われます。
  3. 廃除が認められる審判が確定したら、10日以内に市区町村役場に届け出をします。

【申し立てに必要な主な書類】

書類名入手場所など
推定相続人廃除の審判申立書家庭裁判所の窓口やウェブサイトで入手できます。
申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)本籍地のある市区町村役場
廃除したい相続人の戸籍謄本相手の本籍地のある市区町村役場
申立費用収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手代が必要です。

遺言で行う「遺言廃除」

生前に手続きをするのが難しい場合、遺言書に「(相続人名)を相続廃除する」という意思と、その具体的な理由(虐待や非行の事実)を詳しく書き記しておく方法です。あなたの死後、遺言の内容を実現する「遺言執行者」が家庭裁判所に申し立てを行います。

この方法を選ぶ場合、遺言書の中で信頼できる人を遺言執行者に指定しておくことが非常に重要です。遺言執行者がいないと、手続きがスムーズに進まない可能性があります。弁護士などの専門家を遺言執行者に指定することもできます。

相続廃除の注意点

相続廃除を検討する際には、知っておくべき大切な注意点がいくつかあります。

認められる確率は約2割と低い

残念ながら、相続廃除の申し立てが家庭裁判所に認められる確率は高くありません。司法統計によると、申し立てが認められるのは全体の約2割程度というデータもあります。これは、相続権という個人の重要な権利を奪うことへの慎重な判断があるためです。だからこそ、暴力の証拠となる診断書や写真、暴言の録音、財産の使い込みがわかる資料など、客観的な証拠をしっかりと集めておくことが何よりも重要になります。

子どもへの「代襲相続」が発生する

これは非常に重要な注意点です。例えば、暴力を振るう長男を相続廃除したとします。もしその長男に子ども(あなたから見れば孫)がいる場合、長男が失った相続権は、その孫が代わりに引き継ぐことになります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。もし孫にも財産を渡したくない場合は、孫を廃除するための別の理由が必要になったり、遺言書で別途対策を講じたりする必要があります。

一度廃除しても取り消しは可能

相続廃除が認められた後でも、もし相手が心から反省し、関係が改善された場合には、被相続人の意思で廃除を取り消すことができます。取り消す際も、家庭裁判所に「廃除取消しの審判」を申し立てる必要があります。

相続廃除と相続欠格の違い

相続権を失う制度には、相続廃除のほかに「相続欠格(そうぞくけっかく)」というものもあります。この二つは似ているようで、全く違う制度です。

相続欠格相続廃除
概要被相続人の意思は関係なく、法律で定められた特定の不正行為(例:被相続人を殺害する、遺言書を偽造するなど)をした場合に、自動的に相続権を失う被相続人が相続させたくない相続人を、裁判所に申し立てて相続権を失わせる制度
被相続人の意思不要(自動的に喪失)必要(被相続人が「相続させたくない」と意思表示する)
手続き手続きは不要家庭裁判所への申し立てが必要
取り消し不可能可能
戸籍への記載記載なし記載される

相続欠格に該当するケースは非常に限定的です。暴力を振るわれた、という理由で相続権を失わせるには、相続廃除の手続きが必要になります。

まとめ

相続人から暴力やひどい仕打ちを受け、ご自身の財産を渡したくないと深く悩んでいる方にとって、相続廃除はあなたの意思を実現するための法的な手段です。しかし、この記事で見てきたように、そのハードルは決して低くなく、認められるためには「虐待」や「重大な侮辱」、「著しい非行」といった明確な理由と、それを裏付ける客観的な証拠が不可欠です。

また、代襲相続の問題など、考慮すべき点も少なくありません。手続きも家庭裁判所を介するため、専門的な知識が求められます。もし本気で相続廃除をお考えなら、一人で抱え込まず、相続問題に詳しい弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。あなたの長年の苦しみが少しでも和らぎ、大切な財産を納得のいく形で残せるよう、心から願っています。

参考文献

e-Gov法令検索 民法

相続人への暴力と相続廃除に関するよくある質問

Q. 暴力的な相続人に財産を渡さない方法はありますか?

A. はい、「相続廃除」という手続きがあります。被相続人(財産を遺す人)に対して虐待や重大な侮辱があった場合に、家庭裁判所に申し立てることで、その相続人の相続権を失わせることができます。生前に申し立てるか、遺言で行うことも可能です。

Q. 「相続廃除」はどんな場合でも認められますか?

A. いいえ、簡単には認められません。暴力や虐待が一時的ではなく継続的であること、その程度が重大であることなど、客観的な証拠(診断書、写真、録音、日記など)が必要です。家庭裁判所が慎重に判断します。

Q. 「相続欠格」という制度もあると聞きましたが、暴力は該当しますか?

A. はい、該当する可能性があります。「相続欠格」とは、特定の重大な不正行為を行った相続人の相続権が法律上当然に失われる制度です。例えば、被相続人を殺害しようとした場合などが該当し、暴力の結果としてこれらに至れば対象となります。

Q. 遺言書で「暴力を振るった長男には相続させない」と書けば有効ですか?

A. 遺言書で特定の相続人に財産を渡さないと指定することは可能です。しかし、配偶者や子などには「遺留分」という最低限の相続権が保障されています。そのため、遺言書だけでは完全に相続させないことは難しく、遺留分を請求される可能性があります。

Q. 相続廃除をしないと、暴力的な相続人にも遺留分を渡さなければいけませんか?

A. はい、その通りです。相続廃除が認められると、その相続人は遺留分も失います。しかし、相続廃除の手続きをせず、単に遺言で財産を渡さないと指定しただけでは、相手から遺留分を請求された場合、支払う義務が生じます。

Q. 生前に財産を他の相続人に贈与してしまえば、暴力的な相続人に渡らないですか?

A. 生前贈与は有効な対策の一つです。ただし、相続開始前の一定期間内に行われた贈与は、遺留分を計算する際の基礎財産に含まれる可能性があります。そのため、生前贈与をしても、後から遺留分を請求されるリスクは残ります。

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社名
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対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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