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相続廃除で相続させたくない相続人の権利はく奪できる?手続きと条件を解説

2026-04-29
目次

ご自身の財産を誰に遺すかは、とても大切な問題ですよね。「どうしてもこの人には財産を渡したくない…」と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。実は、法律には特定の相続人から相続する権利をはく奪できる相続廃除という制度があります。今回は、この相続廃除という制度について、どのような場合に利用できるのか、手続きはどうすればいいのかを、分かりやすく丁寧にご説明していきますね。

相続廃除とは?相続人の権利をはく奪する制度

相続廃除とは、遺産をのこす人(被相続人)の意思によって、特定の相続人から相続する権利を法的に奪う制度のことです。通常、法律で定められた相続人(法定相続人)は、遺産を受け取る権利を持っています。しかし、その相続人が被相続人に対してひどい仕打ちをしていた場合などに、被相続人の「この人には財産を渡したくない」という気持ちを尊重するために、この制度が設けられています。ただし、とても強力な制度なので、認められるためには厳しい条件をクリアする必要があります。

相続廃除の対象となる人

相続廃除は、どの相続人に対してもできるわけではありません。対象となるのは、遺留分という権利を持つ相続人に限られています。遺留分とは、兄弟姉-妹以外の法定相続人に保障されている、最低限の遺産の取り分のことです。たとえ遺言で「財産はすべて長男に」と書かれていても、他の子どもは遺留分を請求できます。

この遺留分を持つ相続人から、その権利も含めて相続権をすべて奪うのが相続廃除の目的です。そのため、対象者は以下の通りとなります。

配偶者 常に遺留分があります。
子(または孫などの代襲相続人) 第一順位の相続人で、遺留分があります。
父母(または祖父母などの直系尊属) 第二順位の相続人で、遺留分があります。

ちなみに、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、兄弟姉妹に財産を渡したくない場合は、相続廃除の手続きをしなくても、「兄弟姉妹には財産を相続させない」という内容の遺言書を作成すれば、目的を達成できます。

相続廃除が認められるための3つの条件

相続廃除は、被相続人の感情的な理由だけでは認められません。民法第892条で定められている、以下の3つのいずれかに当てはまる必要があります。

被相続人に対する虐待 身体的な暴力や、耐えがたい精神的な苦痛を与える行為です。例えば、日常的な暴行や、介護が必要なのに食事を与えないといった行為が考えられます。
被相続人に対する重大な侮辱 被相続人の名誉や尊厳を著しく傷つける行為です。例えば、公然と被相続人を誹謗中傷したり、繰り返し暴言を吐いたりする行為が該当します。
その他の著しい非行 上記以外で、家族としての信頼関係を破壊するような重大な非行です。例えば、被相続人の財産を勝手に使い込んだり、多額の借金の返済を押し付けたり、重大な犯罪を犯して家族に迷惑をかけたりする行為が考えられます。

これらの行為があったことを、客観的な証拠をもって家庭裁判所に示す必要があります。

相続廃除と相続欠格の違い

相続人の権利がなくなる制度には、相続廃除のほかに相続欠格というものもあります。この二つはよく似ていますが、大きな違いがあります。

相続欠格は、相続に関して重大な犯罪行為(被相続人を殺害するなど)を犯した場合に、法律上当然に、相続権が失われる制度です。被相続人の意思は関係ありません。一方、相続廃除は被相続人の意思に基づいて、家庭裁判所に申し立てることで初めて効力が生じます。

項目 相続廃除
被相続人の意思 必要(被相続人の申立てが必須)
手続き 家庭裁判所への申立てが必要
原因 虐待、重大な侮辱、著しい非行
取り消し 可能
戸籍への記載 記載される
項目 相続欠格
被相続人の意思 不要(法律上当然に権利を失う)
手続き 不要
原因 被相続人の殺害、遺言書の偽造など
取り消し 不可能
戸籍への記載 記載されない

相続廃除の手続きの流れ

相続廃除を行うには、必ず家庭裁判所での手続きが必要です。手続きには、被相続人が生きているうちに行う「生前廃除」と、遺言によって行う「遺言廃除」の2つの方法があります。

生前に行う「生前廃除」

生前廃除は、被相続人ご自身が、ご自身の住所地を管轄する家庭裁判所に「推定相続人廃除」の申立てを行います。

【手続きの流れ】

  1. 家庭裁判所への申立て:必要書類を揃えて「推定相続人廃除審判申立書」を提出します。
  2. 審理:家庭裁判所が、申立人と相手方(廃除したい相続人)の両方から事情を聞き、事実関係を調査します。
  3. 審判:相続廃除を認めるかどうかの判断が下されます。
  4. 市区町村役場への届出:審判が確定したら、10日以内に被相続人の本籍地の市区町村役場に「推定相続人廃除届」を提出します。

申し立てには、申立書のほか、被相続人と廃除したい相続人の戸籍謄本、廃除の原因を証明する資料などが必要です。費用としては、収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手代(数千円程度)がかかります。

遺言で行う「遺言廃除」

遺言廃除は、生前のトラブルを避けたい場合などに用いられる方法です。遺言書に「相続人〇〇を廃除する」という意思と、その具体的な理由を明記しておきます。

【手続きの流れ】

  1. 遺言書の作成:遺言執行者を指定し、廃除の意思と具体的な理由を記載した遺言書を作成します。
  2. 被相続人の死亡後:遺言執行者が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「推定相続人廃除」の申立てを行います。
  3. 審理・審判:生前廃除と同様に、家庭裁判所が審理を行い、審判を下します。
  4. 市区町村役場への届出:審判が確定したら、10日以内に遺言執行者が市区町村役場に届出をします。

この方法の場合、被相続人の死後に手続きが進むため、遺言執行者が申立てをスムーズに行えるよう、廃除の理由を具体的かつ客観的に遺言書や付言事項、別途書面などで遺しておくことがとても重要になります。

相続廃除の効果と注意点

相続廃除が認められると、対象となった相続人にはどのような影響があるのでしょうか。いくつか重要な点を見ていきましょう。

遺留分も請求できなくなる

相続廃除の最も大きな効果は、相続権そのものを失うことです。これは、遺産の取り分がゼロになるだけでなく、最低限の相続分を保障する「遺留分」を請求する権利も完全になくなることを意味します。つまり、廃除された相続人は、被相続人の財産を1円も受け取ることができなくなります。

代襲相続は発生する

注意したいのが「代襲相続」です。相続廃除の効果は、廃除された本人にしか及びません。もし、廃除された相続人に子ども(被相続人から見れば孫)がいる場合、その子どもが代わりに相続権を引き継ぎます。これを代襲相続といいます。例えば、長男を廃除しても、長男に子どもがいれば、その子どもが長男の代わりに相続人となります。もし孫にも相続させたくない場合は、別途、遺言書でその旨を記すなどの対策が必要になることがあります。

相続廃除は取り消すことも可能

一度相続廃除をしても、その後に関係が改善し、被相続人が「やはり廃除を取り消したい」と考えるようになるかもしれません。そのような場合は、相続廃除の申立てと同様に、被相続人が家庭裁判所に「推定相続人廃除の取消し」を申し立てることで、廃除を取り消すことができます。遺言によって取り消しの意思表示をすることも可能です。

相続廃除が認められるのは難しい?

ここまでご説明してきたように、相続廃除は相続人の権利を根こそぎ奪う非常に強力な制度です。そのため、家庭裁判所はとても慎重に判断します。実際、司法統計(平成29年度)によると、相続廃除の申立てが認められた割合は約20.7%と、決して高くはありません。

「性格が合わない」「疎遠になっている」といった感情的な理由だけでは、まず認められないと考えてよいでしょう。廃除を認めてもらうためには、誰が見ても「それは相続させるべきではない」と納得できるような、客観的で具体的な証拠(日記、手紙、録音、写真、診断書など)を揃えることが不可欠です。申立てを検討する際は、専門家である弁護士などに相談することをおすすめします。

兄弟姉-妹に相続させたくない場合は?

先ほども少し触れましたが、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、もし「兄には財産を渡したくない」と考えている場合、わざわざ家庭裁判所相続廃除の手続きをする必要はありません。

この場合は、有効な遺言書を作成し、「兄には財産を相続させない」または「全財産を妻に相続させる」といった内容を明確に記載しておけば十分です。兄弟姉妹は遺留分を請求する権利がないため、遺言書の内容に不満があっても、法的に財産を求めることはできません。

まとめ

今回は、相続廃除という制度について詳しくご説明しました。相続廃除は、虐待や重大な侮辱など、ひどい仕打ちを受けた被相続人の最終手段として用意された、相続人の権利を完全に奪うことができる強力な制度です。その分、家庭裁判所に認めてもらうためのハードルは非常に高く、厳格な手続きと客観的な証拠が求められます。もし相続廃除を真剣に検討されている場合は、ご自身だけで悩まず、相続に詳しい弁護士などの専門家に相談し、慎重に準備を進めるようにしてくださいね。

参考文献

国税庁 暮らしの税情報(令和5年度版)相続税・贈与税

相続廃除のよくある質問まとめ

Q.相続廃除とは何ですか?

A.相続廃除とは、被相続人(亡くなった方)に対して虐待や重大な侮辱、著しい非行があった相続人から、家庭裁判所の審判または調停によって相続権を剥奪する制度です。

Q.どのような場合に相続廃除が認められますか?

A.被相続人への暴力や暴言などの「虐待」、名誉を著しく傷つける「重大な侮辱」、犯罪行為や浪費などの「著しい非行」があった場合に認められる可能性があります。

Q.相続廃除の手続きはどうすればいいですか?

A.被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言書にその意思を記し、遺言執行者が死後に家庭裁判所に申し立てる方法の2つがあります。

Q.相続廃除と相続欠格の違いは何ですか?

A.相続廃除は被相続人の意思に基づいて家庭裁判所が判断するのに対し、相続欠格は被相続人を殺害するなど法律で定められた重大な事由があった場合に、自動的に相続権を失う制度です。

Q.相続廃除された相続人の子供は相続できますか?

A.はい、できます。相続廃除の効果は廃除された本人にしか及ばないため、その子供は代襲相続人として相続する権利があります。

Q.一度行った相続廃除を取り消すことはできますか?

A.はい、できます。被相続人が生前に家庭裁判所に取消しの申立てを行うか、遺言で取消しの意思表示をすることで取り消すことが可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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