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相続放棄ってどんな時に使う?メリットと注意点をわかりやすく解説

2025-08-29
目次

ご家族が亡くなられた後、遺産相続の手続きを進める中で「相続放棄」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。「借金を相続しなくていいらしい」というイメージはあっても、具体的にどのような手続きで、どんなメリットや注意点があるのか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産もすべて受け取らないという、とても重要な法的手続きです。この記事では、相続放棄を検討すべき具体的なケースから、メリットと注意点、手続きの方法まで、わかりやすく解説していきます。

相続放棄とは?どんなときに使うの?

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の遺産を一切受け取らないという意思表示を家庭裁判所に対して行う手続きのことです。これを行うと、その人は「初めから相続人ではなかった」とみなされます。そのため、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金やローンといったマイナスの財産も一切引き継ぐ必要がなくなります。では、具体的にどのような場面で利用されるのでしょうか。

亡くなった人に多額の借金があるとき

相続放棄が利用される最も一般的なケースは、亡くなった方に多額の借金があった場合です。相続は、プラスの財産だけでなく、借金、住宅ローン、消費者金融からの借り入れ、誰かの連帯保証人になっている地位など、マイナスの財産もすべて引き継ぐのが原則です。もしプラスの財産よりも明らかにマイナスの財産が多い場合、相続してしまうとご自身の生活が苦しくなってしまいます。このようなときに相続放棄をすることで、借金の返済義務から逃れることができます。

相続トラブルに関わりたくないとき

遺産相続は、時として親族間のトラブル(争族)に発展することがあります。「他の相続人と関わりたくない」「遺産分割の話し合いに参加するのが精神的に辛い」といった理由で、相続手続きそのものから距離を置きたい場合にも相続放棄は有効な手段です。財産を受け取る権利を放棄する代わりに、複雑で感情的になりがちな遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

特定の人に事業や家を継がせたいとき

家業や農地、あるいは代々受け継いできた家などを、特定の相続人一人に集中して継がせたいというケースもあります。このような場合、他の相続人が全員相続放棄をすることで、財産をスムーズに一人に集約させることができます。遺産分割協議で財産を一人に相続させることも可能ですが、相続放棄をすることで、後から「遺留分(いりゅうぶん)」を請求される心配もなくなるというメリットがあります。

相続放棄のメリット

相続放棄には、主に金銭的な負担や精神的なストレスを回避できるという大きなメリットがあります。ここでは、その利点を具体的に見ていきましょう。

借金などのマイナスの財産を引き継がなくて済む

最大のメリットは、何と言っても借金や連帯保証債務などのマイナスの財産を引き継がなくて済む点です。亡くなった方の借金の額がわからない場合や、後から高額な請求が来るかもしれないといった不安からも解放されます。これにより、ご自身の財産を守り、安心して生活を再建することができます。

複雑な相続手続きやトラブルから解放される

相続放棄をすると、法的に「相続人ではない」という立場になります。そのため、相続財産の調査や評価、相続人同士での遺産分割協議、各種名義変更手続きなど、時間と手間のかかる一連の相続手続きに関わる必要が一切なくなります。相続に関する親族間の揉め事に巻き込まれる心配もなく、精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。

相続放棄の注意点(デメリット)

メリットの大きい相続放棄ですが、知っておかなければならない重要な注意点も存在します。手続きを進める前に、デメリットもしっかりと理解しておきましょう。

プラスの財産もすべて手放すことになる

相続放棄は「良いものだけ選んで、悪いものは捨てる」という選択はできません。預貯金、不動産、株式、自動車など、価値のあるプラスの財産もすべて手放すことになります。例えば、「借金は放棄したいけれど、思い出の詰まった実家だけは相続したい」ということは不可能です。後から価値のある財産が見つかっても、一度相続放棄が受理されると、その決定を覆すことはできません。

次の順位の相続人に影響が及ぶ

あなたが相続放棄をすると、相続権は次の順位の相続人に移ります。例えば、亡くなった方の子供が全員相続放棄をすると、次は亡くなった方の親(祖父母)、親も亡くなっていれば兄弟姉妹へと、借金を含めた相続の権利と義務が移っていきます。

順位 相続人
第1順位 子(子が亡くなっている場合は孫)
第2順位 直系尊属(父母、祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

もし借金がある場合、次の順位の相続人に突然債権者から連絡がいく可能性があります。トラブルを避けるためにも、相続放棄をする際は、次の順位の相続人になる可能性のある方へ事前に連絡を入れておくことが望ましいでしょう。

一度手続きすると原則として撤回できない

家庭裁判所に相続放棄の申述が受理されると、原則として撤回することはできません。「やっぱりプラスの財産があったから相続したい」と思っても、後から考えを変えることは認められません。ただし、他の相続人から脅されたり、騙されたりして相続放棄をした場合は、例外的に取り消せる可能性もありますが、基本的には一度きりの重大な決断だと考えておきましょう。

生命保険金などの非課税枠が使えなくなる

亡くなった方がかけていた生命保険金や死亡退職金は、受取人が指定されていれば「受取人固有の財産」とみなされるため、相続放棄をしても受け取ることができます。しかし、注意点があります。相続人が受け取る場合、「500万円 × 法定相続人の数」という相続税の非課税枠が適用されますが、相続放棄をした人は「相続人」ではなくなるため、この非課税枠を使うことができなくなります。結果として、受け取る保険金にかかる税金の負担が大きくなる可能性があります。

相続財産の管理義務が残る場合がある

相続放棄をしたとしても、財産の管理義務がすぐになくなるわけではありません。民法では「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるようになるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」と定められています。具体的には、亡くなった方と同居していた家などを、次の相続人や相続財産清算人が管理を始めるまで、適切に管理する義務が残る場合があります。空き家になったからといって放置すると、損害賠償責任を問われる可能性もあるため注意が必要です。

相続放棄の手続き方法

相続放棄は、自分で「放棄します」と宣言するだけでは成立しません。法律で定められた手続きを、決められた期間内に行う必要があります。

期限は「知ったときから3ヶ月以内」

相続放棄の手続きには厳格な期限があります。それは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」です。一般的には、ご家族が亡くなったことを知った日が起算点となります。この3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれ、この間に財産調査を行い、相続するか放棄するかを決断しなければなりません。もし、財産の調査に時間がかかり、3ヶ月以内に判断が難しい場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期間を延長してもらえる可能性があります。

手続きの流れと必要書類

相続放棄は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる(申述する)ことで行います。手続きの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 必要書類を収集する
  2. 相続放棄申述書を作成し、家庭裁判所に提出する
  3. 家庭裁判所からの照会書に回答する
  4. 相続放棄申述受理通知書を受け取る

手続きには、主に以下の書類が必要です。亡くなった方と申述人(放棄する人)の関係性によって追加の書類が必要になる場合もあります。

書類名 簡単な説明
相続放棄申述書 裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。
亡くなった方の住民票除票または戸籍附票 最後の住所地を確認するために必要です。
申述人(放棄する人)の戸籍謄本 申述人本人のものです。
亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等 相続関係を証明するために必要です。
収入印紙 申述人1人につき800円分です。
連絡用の郵便切手 裁判所によって金額が異なりますので、事前に確認が必要です。

相続放棄以外の選択肢「限定承認」

「借金があるかもしれないけれど、プラスの財産もどのくらいあるか分からない」という場合に、もう一つの選択肢として「限定承認」という方法があります。これは、相続したプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ、という手続きです。つまり、もし借金がプラスの財産を上回っていたとしても、相続した財産以上は返済する必要がありません。自宅など、どうしても手放したくない財産がある場合に有効な手段です。
ただし、限定承認は相続人全員が共同で手続きをしなければならず、手続き自体も非常に複雑で時間もかかります。そのため、実際にはあまり利用されていないのが現状です。

まとめ

相続放棄は、亡くなった方の借金など、マイナスの財産を引き継がないための非常に有効な手段です。しかし、プラスの財産もすべて手放すことになり、一度手続きをすると撤回できないなど、慎重な判断が求められます。特に重要なのは「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という期限です。この期間内に、できる限りの財産調査を行い、相続放棄をするべきか、それとも相続するべきかを決断する必要があります。もし判断に迷ったり、手続きに不安を感じたりした場合は、弁護士や司法書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

参考文献

相続放棄のよくある質問まとめ

Q.相続放棄は、どんなときに使うのが一般的ですか?

A.亡くなった方に借金などのマイナスの財産が多く、プラスの財産を上回る場合に利用するのが一般的です。また、特定の親族との関わりを断ちたいという理由で利用されることもあります。

Q.借金だけを相続放棄することはできますか?

A.いいえ、できません。相続放棄をすると、借金だけでなく預貯金や不動産といったプラスの財産もすべて受け取れなくなります。財産を選んで相続することは認められていません。

Q.相続放棄の期限はいつまでですか?

A.原則として、「自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所で手続きをする必要があります。この期間を過ぎると原則として放棄できなくなるため、注意が必要です。

Q.相続放棄をすると、他の相続人に影響はありますか?

A.はい、あります。相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったことになるため、次の順位の相続人に権利が移ります。例えば、子が全員放棄すると、親や兄弟姉妹が相続人になります。事前に他の親族に伝えておくことがトラブル防止につながります。

Q.相続放棄をしたら、生命保険金も受け取れなくなりますか?

A.いいえ、原則として受け取れます。生命保険金は受取人固有の財産とみなされるため、相続財産には含まれません。ただし、保険契約の内容によっては例外もあるため確認が必要です。

Q.相続放棄の手続き前に、亡くなった人の財産を使ってしまったらどうなりますか?

A.亡くなった方の財産を一部でも消費・処分すると、相続する意思があるとみなされ(法定単純承認)、相続放棄ができなくなる可能性があります。財産には手を付けず、速やかに専門家に相談することをおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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