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相続株を贈与して売却!贈与税と所得税の課税関係を徹底解説

2024-11-20
目次

ご家族から相続した大切な株式。「子どもや孫に早めに渡しておきたい」と考えて贈与し、その後、贈与を受けた方がその株式を売却するケースは少なくありません。この一連の流れの中で、「税金はどうなるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。特に、贈与の際に贈与税を支払っていると、売却時の税金関係がさらに複雑に感じられるかもしれません。この記事では、相続した株式を贈与し、贈与を受けた方(受贈者)が売却した際の課税関係について、贈与税と所得税のポイントを分かりやすく解説していきます。

相続・贈与・売却の流れと税金の全体像

まず、一連の流れの中で「誰が」「いつ」「どんな税金を」支払う必要があるのか、全体像を把握しましょう。登場人物は、株式を相続し贈与する「贈与者(あなた)」と、贈与を受ける「受贈者(お子さんなど)」です。

このケースでの税金のポイントは、税金を支払うのは基本的に「受贈者」であるという点です。贈与者には、贈与したこと自体で直接かかる税金はありません。受贈者が2つのタイミングで税金を支払うことになります。

タイミング 税金を支払う人
株式を贈与されたとき 受贈者(もらった人)贈与税がかかります。
株式を売却したとき 受贈者(もらった人)所得税・住民税がかかります。

このように、受贈者には「贈与税」と「所得税・住民税」という2種類の税金が関わってきます。それぞれの税金について、詳しく見ていきましょう。

まずは贈与のステップ:贈与税の基本

株式を贈与した場合、財産をもらった受贈者に贈与税が課せられます。贈与税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに申告と納税を行う必要があります。

贈与税の計算方法

贈与税は、1年間(1月1日~12月31日)にもらった財産の合計額から、基礎控除額である110万円を差し引いた金額に対してかかります。これを暦年贈与といいます。

(1年間にもらった財産の合計額 - 基礎控除110万円) × 贈与税の税率 = 贈与税額

例えば、評価額500万円の株式の贈与を受け、その年に他に贈与を受けていない場合、贈与税は以下のように計算されます。(※税率は20歳以上の子や孫への贈与(特例贈与)の場合)

  • 課税価格:500万円 – 110万円 = 390万円
  • 税額計算:390万円 × 15% – 10万円 = 48.5万円

このように、まずは贈与の段階で受贈者が贈与税を支払うことになります。

次は売却のステップ:譲渡所得にかかる税金

次に、贈与された株式を受贈者が売却したときの税金です。株式を売却して得た利益は「譲渡所得」として、所得税と住民税の課税対象となります。

譲渡所得と税率

譲渡所得は、以下の計算式で求められます。

売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得

この計算で算出された譲渡所得(利益)に対して、合計20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税率で税金がかかります。この計算の中で、最も重要で間違えやすいのが「取得費」です。次の章で詳しく解説します。

要注意!売却益を計算するときの「取得費」は誰のもの?

譲渡所得を計算する上で、「取得費」をいくらにするかは納税額に直結する非常に重要なポイントです。そして、贈与された株式を売却する場合、この取得費の考え方に特別なルールがあります。

取得費は「最初に買った人」の価格を引き継ぎます

結論から言うと、贈与された株式の取得費は、贈与時の評価額ではなく、贈与者、さらにその前の所有者である「被相続人(亡くなった方)」が最初にその株式を購入したときの価格を引き継ぎます。

これは非常に重要なポイントです。贈与された時の価格を取得費だと勘違いして計算すると、税額が大きく変わってしまい、後から税務署に指摘される可能性もあります。

具体例で見てみましょう。

  • ①被相続人(お父様)が株式を100万円で購入
  • ②あなたがお父様からその株式を相続(この時点では課税関係は相続税)
  • ③あなたがお子さんにその株式を贈与(この時の時価は300万円
  • ④お子さんがその株式を500万円で売却

この場合、お子さんが売却したときの譲渡所得計算で使う取得費は、①のお父様が購入した100万円です。贈与時の300万円ではありません。

したがって、譲渡所得は(簡単のため譲渡費用は無視します)、

500万円(売却価格) - 100万円(取得費) = 400万円

となり、この400万円に対して20.315%の税金がかかります。もし、贈与時の300万円を取得費としてしまうと、譲渡所得が200万円となり、納税額を誤ってしまうことになります。

支払った贈与税額は取得費になるの?

「贈与税を払ったのだから、その分くらい経費にならないの?」と思われるかもしれませんが、原則として、受贈者が支払った贈与税額を取得費に加えることはできません。取得費はあくまでも被相続人が最初に購入した金額となります。

もし取得費がわからなかったら?

昔に購入した株式などで、被相続人がいくらで買ったのか分からないケースもあります。どうしても取得費が不明な場合は、売却代金の5%を取得費とみなす「概算取得費」というルールを使うことができます。ただし、実際の取得費よりもかなり低くなることが多いため、納税額が大きくなる可能性があります。できる限り、証券会社の取引報告書などで元の取得費を確認することが大切です。

「相続税の取得費加算の特例」は使えないので注意!

相続した財産を売却する際には、「相続税の取得費加算の特例」という節税に繋がる制度があります。しかし、今回のケースではこの特例は使えません。

どんな特例なの?

この特例は、相続によって財産を取得し、その際に相続税を納税した人が、相続開始から3年10ヶ月以内にその財産を売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできる、という制度です。取得費が増えるため、譲渡所得が減り、結果的に所得税・住民税を節税できます。

なぜ受贈者は使えないの?

理由はシンプルで、受贈者は「相続税を納税していない」からです。この特例の適用要件は、あくまで「相続税を納税したこと」です。
今回のケースでは、株式を相続したのは贈与者(あなた)であり、もし相続税を納税していた場合、あなたが売却すればこの特例を使えた可能性があります。しかし、お子さんへ贈与してしまったため、株式を売却するお子さんはこの特例の適用対象外となってしまうのです。

まとめ

相続した株式を贈与し、受贈者が売却する場合の課税関係は少し複雑です。最後に重要なポイントをまとめます。

  • 株式をもらった受贈者には、まず「贈与税」がかかります(年間110万円の基礎控除あり)。
  • その株式を売却した受贈者には、利益に対して「所得税・住民税(合わせて20.315%)」がかかります。
  • 売却時の利益計算で使う取得費は、贈与時の価格ではなく、大元の所有者(被相続人)が最初に購入した価格を引き継ぎます。
  • 受贈者は相続税を払っていないため、節税効果の高い「相続税の取得費加算の特例」は利用できません。

特に「取得費の引き継ぎ」は間違いやすい点なので、しっかりと覚えておきましょう。税金の計算や手続きに不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費

国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期

国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

相続した株式を贈与・売却したときの税金に関するよくある質問まとめ

Q.相続した株式を子供に贈与し、子供が売却しました。贈与税は支払済みですが、他に税金はかかりますか?

A.はい、かかります。贈与税とは別に、株式を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売却したお子様が譲渡所得税(所得税・住民税)を納める必要があります。

Q.贈与された株式を売却した際の「取得費」はいくらになりますか?

A.贈与した人(親)の取得費、さらにはその前の被相続人が株式を取得したときの価額と取得時期を引き継ぎます。贈与されたときの時価ではないため、売却益を計算する際には注意が必要です。

Q.贈与税を払ったのに、売却益にも税金がかかるのは二重課税ではないですか?

A.二重課税にはあたりません。贈与税は「財産をもらったこと」に、譲渡所得税は「財産を売って利益を得たこと」に対してかかる税金であり、課税対象が異なるためです。

Q.売却した株式の保有期間はいつから数えますか?贈与された日からですか?

A.いいえ、取得費と同様に、最初の取得者(この場合は被相続人)が株式を取得した日から計算します。保有期間が5年を超えるかどうかで譲渡所得税の税率が変わるため、非常に重要です。

Q.相続の際に支払った相続税は、株式の売却時に経費にできますか?(相続税額の取得費加算の特例)

A.いいえ、できません。相続税額の取得費加算の特例は、相続で財産を取得した人が直接売却した場合に適用されます。一度贈与を挟むと、贈与を受けた人はこの特例を使えません。

Q.贈与された株式を売却した場合、誰が確定申告をする必要がありますか?

A.株式を売却して利益を得た受贈者(贈与された方)ご本人が、売却した年の翌年に確定申告を行う必要があります。贈与した方は申告の必要はありません。

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対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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