相続が発生すると、悲しむ間もなくさまざまな手続きに追われますよね。その中でも特に頭を悩ませるのが「相続税の納付」ではないでしょうか。実は、2017年から相続税もクレジットカードで支払えるようになっているんです。金融機関の窓口に足を運ぶ時間がない方や、手元の現金をすぐに用意するのが難しい方にとって、とても便利な方法ですよね。この記事では、相続税をクレジットカードで支払うための具体的な手続きや、メリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきます。
相続税をクレジットカードで納付するための条件
相続税をクレジットカードで支払うことは可能ですが、誰でもどんな金額でもOKというわけではありません。まずは、クレジットカードで納付するための3つの基本的な条件を確認しておきましょう。
納付できる税額は1,000万円未満
クレジットカードで納付できる相続税額の上限は、1回の手続きにつき1,000万円未満と定められています。ここで注意したいのが、この金額には後述する「決済手数料」も含まれるという点です。そのため、実際に納付できる相続税額の上限は、約990万円ほどになります。もし納付額が1,000万円を超える場合は、複数回に分けて手続きを行うことでクレジットカード納付自体は可能ですが、その都度手間と手数料がかかることは覚えておきましょう。
お手持ちのカードの利用限度額内であること
当然ですが、納付する相続税額(決済手数料を含む)は、お使いになるクレジットカードの利用限度額の範囲内でなければなりません。一般的なクレジットカードの利用限度額は100万円前後、ゴールドカードなどでも300万円程度が多いため、高額な相続税を支払うには限度額が足りないケースも考えられます。事前にカード会社に連絡をして、一時的に利用限度額を引き上げてもらうなどの対応が必要になる場合があることを知っておきましょう。
利用できるクレジットカードの種類
国税の支払いに利用できるクレジットカードのブランドは決まっています。以下の主要なブランドに対応していれば、問題なく利用できますよ。
| 利用可能なブランド | Visa, Mastercard, JCB, American Express, Diners Club, TS CUBIC CARD |
ただし、一度の納付手続きで複数のクレジットカードを同時に使うことはできません。もし複数のカードで支払いたい場合は、納付手続きを分割し、その都度カード情報を変更して手続きを行う必要があります。
相続税をクレジットカードで納付する手続きの方法
では、実際にクレジットカードで相続税を納付する手続きはどのように進めるのでしょうか。手続きは、パソコンやスマートフォンを使って専用のWebサイトから行います。税務署や金融機関、コンビニの窓口ではクレジットカードによる納付はできないので注意してくださいね。
「国税クレジットカードお支払サイト」から手続き
相続税のクレジットカード納付は、国税庁長官が指定した納付受託者(トヨタファイナンス株式会社)が運営する「国税クレジットカードお支払サイト」という専用サイトで行います。手続きの大まかな流れは以下の通りです。
1. 公式サイトへアクセスし、注意事項を確認
まずはサイトにアクセスし、注意事項をよく読み、同意します。
2. 納付情報の入力
納税者の氏名や住所、納付先の税務署、税目(相続税)、納付税額など、納付書に記載するのと同じ情報を入力します。
3. クレジットカード情報の入力
利用するクレジットカードの番号、有効期限、セキュリティコードなどを入力します。支払い方法(一括、分割、リボ)もここで選択します。
4. 手続き内容の確認
入力した情報に間違いがないか、最終確認画面でしっかりとチェックします。
5. 納付手続きの完了
「納付」ボタンをクリックすれば、手続きは完了です。完了画面が表示され、入力したメールアドレスに手続き完了のメールが届きます。
このサイトを使えば、相続税の納付が自宅にいながら簡単に完了します。わざわざ金融機関へ行く手間が省けるのは大きなメリットですね。
相続税をクレジットカードで納付するメリット
クレジットカードでの納付には、時間や場所を選ばない手軽さ以外にも、いくつかの見逃せないメリットがあります。上手に活用すれば、現金で納付するよりもお得になるかもしれません。
24時間いつでも自宅から納付できる手軽さ
最大のメリットは、やはりその利便性でしょう。「国税クレジットカードお支払サイト」は、システムのメンテナンス時間を除き、24時間いつでも利用可能です。日中は仕事で忙しい方でも、深夜や早朝、休日など、ご自身の都合の良いタイミングで納付手続きができます。
カード会社のポイントが貯まる
ほとんどのクレジットカードは、利用額に応じてポイントが還元されます。これは相続税の納付でも同じです。納税額が大きくなりがちな相続税では、付与されるポイントも高額になる可能性があります。ただし、後述する決済手数料がかかるため、ポイント還元率と手数料を比較して、本当にお得になるかを見極めることが大切です。
支払いを先延ばしにできる
クレジットカードで納付した場合、納税が完了した日(納付日)は「サイトで手続きを完了した日」となります。しかし、実際に口座からお金が引き落とされるのは、カード会社の定める引き落とし日(通常は翌月や翌々月)です。これにより、実質的に支払いを1〜2ヶ月先延ばしにすることができ、手元資金の準備に余裕を持たせることができます。
分割払いやリボ払いも選択可能
一度にまとまった現金を準備するのが難しい場合でも、クレジットカードなら分割払いやリボ払いを選択できます。これにより、月々の支払い負担を軽減しながら納税することが可能です。ただし、分割払いやリボ払いには、決済手数料とは別に、カード会社所定の金利・手数料がかかる点には注意が必要です。
相続税をクレジットカードで納付する際の注意点・デメリット
便利なクレジットカード納付ですが、利用する前に知っておくべき注意点やデメリットも存在します。思わぬ損をしないためにも、しっかりと確認しておきましょう。
納税額に応じた決済手数料がかかる
クレジットカード納付の最大のデメリットは、納税額に応じた決済手数料が発生することです。手数料は国の収入ではなく、納付を代行する民間業者(トヨタファイナンス株式会社)に支払うものです。具体的な手数料は以下の通りです。
| 納付税額 | 決済手数料(税込) |
| 1円~10,000円 | 83円 |
| 10,001円~20,000円 | 167円 |
| 20,001円~30,000円 | 250円 |
※以降、納付税額が10,000円増えるごとに決済手数料が約83円ずつ加算されます。
この手数料は、一度手続きを完了すると、たとえ入力ミスなどで還付手続きが必要になった場合でも返金されないため、手続きは慎重に行う必要があります。
領収書が発行されない
金融機関や税務署の窓口で現金納付すると領収証書が発行されますが、クレジットカードで納付した場合は領収証書が発行されません。納税の証明が必要な場合は、別途「納税証明書」を税務署で請求する必要があります。ただし、この納税証明書の発行には、納付手続き完了から3週間程度の時間がかかる場合があるため、すぐに証明が必要な方には不向きです。
手続き完了後の修正ができない
「国税クレジットカードお支払サイト」では、一度納付手続きを完了させてしまうと、サイト上で金額の訂正や手続きの取り消しが一切できません。もし金額を間違えてしまった場合は、管轄の税務署に連絡して還付などの手続きを行う必要があり、非常に手間がかかります。入力情報の確認は、くれぐれも慎重に行ってください。
決済手数料とポイント還元、どっちがお得?
「手数料がかかるなら、現金で払った方が良いのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。クレジットカード払いがお得になるかどうかは、ズバリ「決済手数料よりもらえるポイントの方が多いか」で決まります。ご自身のカードのポイント還元率を確認して、シミュレーションしてみましょう。
決済手数料は、おおよそ納付税額の0.83%程度です。つまり、ポイント還元率が1.0%以上のクレジットカードを使えば、手数料を差し引いてもお得になる可能性が高いと言えます。
例として、相続税100万円を納付する場合を考えてみましょう。
| ポイント還元率 | 実質の損得 |
| 0.5%の場合 | 決済手数料(8,360円) > 還元ポイント(5,000円相当) → 3,360円の損 |
| 1.0%の場合 | 決済手数料(8,360円) < 還元ポイント(10,000円相当) → 1,640円のお得 |
このように、還元率によって損得がはっきりと分かれます。また、カードによっては国税の支払いではポイント還元率が低くなるケースもあるため、事前にカード会社の公式サイトなどで確認しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は、相続税のクレジットカード払いについて、手続きの方法からメリット、注意点まで詳しく解説しました。最後にポイントをまとめておきましょう。
- 相続税のクレジットカード払いは「国税クレジットカードお支払サイト」から手続きする。
- 納付額の上限は1,000万円未満で、決済手数料がかかる。
- 24時間いつでも納付可能で、支払いを先延ばしにできるメリットがある。
- 領収書は発行されない点や、手続き後の修正ができない点に注意が必要。
- ポイント還元率が1.0%以上のカードを使えば、手数料を上回りお得になる可能性がある。
相続税のクレジットカード払いは、とても便利で、場合によっては節約にもつながる賢い選択肢です。しかし、手数料などのデメリットもしっかりと理解した上で利用することが大切です。この記事を参考に、ご自身の状況に最も合った納付方法を選んで、スムーズに手続きを進めてくださいね。
参考文献
相続税のクレジットカード払いに関するよくある質問
Q.相続税はクレジットカードで支払えますか?手続きはどうすればいいですか?
A.はい、「国税クレジットカードお支払サイト」から手続きが可能です。サイトにアクセスし、納税者情報や税額、クレジットカード情報を入力することで、24時間いつでも納付できます。税務署や金融機関の窓口へ行く必要はありません。
Q.相続税をクレジットカードで支払う際に手数料はかかりますか?
A.はい、納税額に応じた決済手数料がかかります。この手数料は納税者の負担となり、ポイント還元率が手数料を上回らないと実質的なメリットは少なくなります。事前にサイトで手数料をシミュレーションすることをおすすめします。
Q.クレジットカード払いでポイントは貯まりますか?
A.はい、多くのクレジットカードでポイントが付与されます。ただし、税金の支払いではポイント還元率が低くなるカードもあるため注意が必要です。お持ちのカードの規約を確認し、決済手数料と比較してメリットがあるか検討しましょう。
Q.クレジットカードでの納付に上限金額はありますか?
A.はい、1回の手続きで納付できる上限額は1,000万円未満です。また、お持ちのクレジットカード自体の利用可能枠を超える支払いもできません。高額な納税の場合は、現金との併用や複数回に分けるなどの工夫が必要です。
Q.クレジットカードで支払えない場合はありますか?
A.はい、延納や物納を申請している場合はクレジットカードでの納付はできません。また、カードの利用限度額を超えている場合や、一部利用できない国際ブランドのカードもありますので、事前に確認が必要です。
Q.クレジットカードで支払った場合、領収書は発行されますか?
A.いいえ、クレジットカード納付の場合、領収書は発行されません。納付内容はサイトの「納付手続の完了」画面で確認できますので、必要に応じて印刷・保存してください。納税証明書が必要な場合は、別途税務署へ請求手続きが必要です。