税理士法人プライムパートナーズ

相続税の税額控除を徹底解説!知らないと損する6つの控除とは?

2025-05-29
目次

「親から財産を相続するけど、相続税がいくらかかるか心配…」そんな風に思っていませんか?相続税は高額になることもありますが、実は納める税金を直接減らせる「税額控除」という制度があります。この制度を知っているかどうかで、手元に残る財産が大きく変わる可能性も。この記事では、相続税の負担を軽くするために 꼭知っておきたい6つの税額控除について、一つひとつ分かりやすく解説していきます。ご自身の状況に当てはまるものがないか、ぜひチェックしてみてくださいね。

そもそも相続税の税額控除って何?

相続税の計算では、まず財産の総額から「基礎控除」を引いて課税対象額を求め、そこに税率をかけて相続税の総額を計算します。税額控除とは、この計算された相続税の総額から、さらに直接金額を差し引くことができる制度のことです。
例えば、計算上の相続税額が500万円だった場合、100万円の税額控除が使えれば、実際に納める税金は400万円になります。税金の元となる金額を減らす「基礎控除」とは違い、税額そのものを直接減らせるため、節税効果が非常に大きいのが特徴です。

【一覧】相続税で使える6つの税額控除

相続税には、さまざまな状況に応じた税額控除が用意されています。ここでは代表的な6つの控除をご紹介します。どの控除も利用するためには、相続税の申告が必要になるので注意しましょう。

控除の種類 内   容
贈与税額控除 相続開始前3年(※)以内の贈与にかかった贈与税を控除
配偶者の税額軽減 配偶者が取得した財産にかかる相続税を大幅に軽減
未成年者控除 相続人が18歳未満の場合に適用
障害者控除 相続人が障害者の場合に適用
相次相続控除 10年以内に2回以上の相続があった場合に適用
外国税額控除 外国の財産に日本の相続税と外国の相続税が二重にかかるのを防ぐ

※法改正により、2024年1月1日以降の贈与から、相続開始前の贈与が相続財産に加算される期間が3年から7年に延長されました。

贈与税額控除

亡くなる直前に財産を贈与して相続税を不当に安くするのを防ぐため、相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与からは7年以内に段階的に延長)に受けた贈与は、相続財産に含めて相続税を計算するルールがあります。もし、この贈与を受けたときに贈与税を支払っていた場合、同じ財産に贈与税と相続税が二重でかかってしまいますよね。それを防ぐため、支払った贈与税額を相続税額から差し引けるのが、この贈与税額控除です。暦年贈与だけでなく、相続時精算課税制度を利用した場合に支払った贈与税も控除の対象となります。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者の税額軽減は、非常に節税効果の高い制度です。亡くなった方(被相続人)の配偶者が財産を相続した場合、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」の、どちらか多い方の金額までは相続税がかかりません。ほとんどの場合、この制度を使えば配偶者の相続税はゼロになります。
ただし、この軽減を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 戸籍上の配偶者であること(内縁関係は対象外)
  • 相続税の申告書を提出すること
  • 遺産分割協議がまとまっていること

税額がゼロになる場合でも、必ず相続税の申告が必要な点には特に注意してくださいね。

未成年者控除

相続人が18歳未満の未成年者である場合に受けられる控除です。未成年者は、成人するまでの生活費や教育費などを考慮して、税金の負担が軽くなるようになっています。控除額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。

【計算式】(18歳 - 相続開始日の年齢)× 10万円

例えば、相続開始時に10歳のお子さんが相続人になった場合、控除額は(18歳 – 10歳)× 10万円 = 80万円となります。もし、未成年者本人の相続税額から控除額を全額引ききれない場合は、残りの額をその未成年者の扶養義務者(両親など)の相続税額から差し引くことができます。

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者である場合に適用される控除です。障害を持つ方の生活を支えるための制度で、障害の程度によって控除額が変わります。

障害者の区分 控除額の計算式
一般障害者 (85歳 - 相続開始日の年齢)× 10万円
特別障害者 (85歳 - 相続開始日の年齢)× 20万円

こちらも未成年者控除と同じように、障害者本人の相続税額から控除額を引ききれない場合、残額を扶養義務者の相続税額から差し引くことが可能です。

相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)

「相次相続」とは、短い期間に相次いで相続が起こることを指します。例えば、お父様が亡くなって相続税を納めた数年後に、今度はお母様が亡くなって再び相続が発生するようなケースです。このような場合、短期間に何度も相続税を納めることになり、遺族の負担が非常に大きくなってしまいます。
相次相続控除は、前の相続(一次相続)から今回の相続(二次相続)までの期間が10年以内の場合に、一次相続で課された相続税の一部を二次相続の相続税額から控除できる制度です。控除できる金額は、一次相続でかかった相続税額や、経過した年数によって変わります。

外国税額控除

海外にある財産(例えば、海外の不動産や預金など)を相続した場合、その国で日本の相続税にあたる税金が課されることがあります。そのままだと、同じ財産に対して日本と海外の国で二重に税金を支払うことになってしまいます。この国際的な二重課税を調整するのが外国税額控除です。外国で支払った相続税額を、日本の相続税額から一定の限度額の範囲内で差し引くことができます。

税額控除を適用するときの注意点

税額控除はとても有利な制度ですが、利用する際にはいくつか注意点があります。まず、先ほども触れましたが、配偶者の税額軽減など多くの控除は、相続税の申告書を税務署に提出しないと適用されません。「税金がゼロになるから申告しなくていい」と勘違いしないようにしましょう。
また、複数の控除を適用できる場合、控除する順番が決まっています。基本的には、①贈与税額控除、②配偶者の税額軽減、③未成年者控除…という順番で計算します。どの控除が使えるか、どう計算すればいいか分からない場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は、相続税の負担を直接軽くしてくれる6つの税額控除について解説しました。

  • 贈与税額控除
  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除

これらの制度を正しく理解し、活用することで、大切な財産をより多く次世代に残すことができます。相続税の申告は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。ご自身の状況に当てはまる控除がないかを確認し、計画的に準備を進めていきましょう。

参考文献

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除

国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減

国税庁 No.4164 未成年者の税額控除

国税庁 No.4167 障害者の税額控除

国税庁 No.4168 相次相続控除

相続税の税額控除に関するよくある質問まとめ

Q.相続税の税額控除とは何ですか?

A.算出された相続税額から直接差し引くことができる制度です。税金の負担を直接的に軽減する効果があります。

Q.相続税の税額控除にはどのような種類がありますか?

A.代表的なものに「配偶者の税額軽減」「未成年者控除」「障害者控除」「相次相続控除」「贈与税額控除」「外国税額控除」の6つがあります。

Q.最も利用されることが多い配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは何ですか?

A.配偶者が相続した財産が「1億6,000万円」または「法定相続分」のいずれか多い金額までであれば、相続税がかからない制度です。利用には申告が必要です。

Q.相続人に未成年者がいる場合に使える控除はありますか?

A.はい、「未成年者控除」が利用できます。その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円が控除されます。

Q.10年以内に2回相続が発生した場合、税金は安くなりますか?

A.はい、「相次相続控除」が適用される可能性があります。10年以内に相次いで相続が発生した場合、前回の相続で課された相続税の一部を今回の相続税から控除できます。

Q.相続税の税額控除は複数併用できますか?

A.はい、要件を満たせば複数の税額控除を併用することが可能です。例えば、「配偶者の税額軽減」と「相次相続控除」を同時に適用することもできます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。