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相続税を納税しないと督促状はいつ来る?滞納のリスクと対処法

2025-08-11
目次

大切な方が亡くなり、相続が発生したけれど、さまざまな事情で相続税の納税が難しい…。「もし納税しなかったら、督促状はいつ頃届くんだろう?」と不安に思っていませんか?相続税の滞納は、単に税金を払うのが遅れるだけでなく、さまざまなペナルティが課される可能性があります。この記事では、相続税を納税しない場合に何が起こるのか、督促状がいつ届くのか、そしてどう対処すればよいのかを、わかりやすく解説します。

相続税を納税しないとどうなる?まずは基本を知ろう

相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産を受け継いだときに課される税金です。納税は国民の義務であり、定められた期限までに支払う必要があります。もし、この期限を守れなかった場合、残念ながら様々なペナルティが待っています。まずは、相続税の基本的なルールから確認していきましょう。

相続税の申告・納付期限は「10か月以内」

相続税の申告と納付には、明確な期限が設けられています。それは、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。例えば、1月10日に亡くなったことを知った場合、その年の11月10日が期限となります。この10か月という期間は、意外とあっという間に過ぎてしまうものです。相続財産の調査や評価、遺産分割協議など、やるべきことがたくさんあるため、早めに準備を始めることが大切ですよ。

納税しない場合に起こる4つのこと

もし期限までに相続税を納税しなかった場合、主に次の4つのことが起こる可能性があります。

  • 督促状が届く: 税務署から「税金を納めてください」という通知が届きます。
  • 延滞税が発生する: 納付期限の翌日から、納付する日までの日数に応じて、利息のような「延滞税」が加算されます。
  • 加算税が課される: 申告をしなかったこと自体に対するペナルティとして「無申告加算税」などが課されます。
  • 財産を差し押さえられる: 督促状を無視し続けると、最終的には預貯金や不動産などの財産が差し押さえられてしまいます。

このように、納税しないことのリスクはとても大きいのです。

税務署はなぜ納税していないことを知っているの?

「申告しなければバレないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。市区町村役場に死亡届が提出されると、その情報は税務署に連携されます。税務署は、亡くなった方の過去の確定申告の情報や、不動産の登記情報などから、ある程度の財産状況を把握しています。そのため、「相続税の申告が必要そうなのに、申告されていない」という状況をすぐに察知できるのです。

相続税の督促状はいつ頃、どのように届く?

相続税を期限までに納税しなかった場合、税務署からのアクションが始まります。具体的にいつ頃、どのような形で督促状が届くのか、その流れを見ていきましょう。

納付期限から約1〜2か月後に最初の督促状が届く

一般的に、納付期限から50日以内に最初の督促状が発送されることが多いです。法律(国税通則法第37条)では、納付期限までに完納されない場合に督促を行うことが定められており、実務上は期限から1か月から2か月程度で手元に届くと考えておくとよいでしょう。この督促状には、納付すべき税額や納付期限が記載されています。

督促状を無視するとどうなる?

最初の督促状が届いても納税しないままでいると、電話や書面による催告が続きます。それでも納税されない場合、税務署は財産の差し押さえに向けて本格的に動き出します。督促状が発行されてから10日を経過した日までに完納されない場合、法律上は財産を差し押さえなければならないと定められています。実際にはすぐに差し押さえられるわけではありませんが、非常に危険な状態であることに変わりはありません。

督促の流れのまとめ

相続税を滞納した場合の一般的な流れをまとめました。この流れはあくまで一例であり、状況によって異なる場合があります。

ステップ 内  容
1. 納付期限(相続開始後10か月) この日までに申告と納税を完了させる必要があります。
2. 督促状の発送(期限後50日以内) 税務署から最初の督促状が送られてきます。
3. 電話や文書による催告 督促状を無視すると、税務署から納税を促す連絡が入ります。
4. 財産調査 納税の意思がないと判断されると、預金や不動産などの財産調査が行われます。
5. 財産の差し押さえ 最終的に、給与や預貯金、不動産などが差し押さえられます。

納税しない場合のペナルティ「延滞税」と「加算税」

相続税を滞納すると、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして「延滞税」と「加算税」が課されます。これらは時間とともに増えていくため、滞納期間が長くなるほど負担が大きくなります。

利息に相当する「延滞税」

延滞税は、納付期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課される税金で、いわば利息のようなものです。税率は年によって変動しますが、納付期限から2か月を経過するかどうかで税率が変わるのが特徴です。

期間 税率(令和6年1月1日〜令和6年12月31日の場合)
納付期限の翌日から2か月以内 年2.4%
納付期限の翌日から2か月を経過した後 年8.7%

※税率は「延滞税特例基準割合」に基づいて毎年見直されます。
2か月を過ぎると税率が大きく上がるため、少しでも早く納税することが重要です。

申告義務違反に対する「無申告加算税」

無申告加算税は、期限内に相続税の申告をしなかったことに対するペナルティです。税率は、申告するタイミングによって変わります。

  • 税務調査の通知前に自主的に申告した場合:5%
  • 税務調査の通知後、調査が入る前に申告した場合:10%(納付税額50万円超の部分は15%)
  • 税務調査後に申告した場合:15%(納付税額50万円超の部分は20%)

税務署から指摘される前に、自主的に申告することで税率を低く抑えることができます。

悪質なケースには「重加算税」

もし財産を意図的に隠したり、書類を偽造したりするなど、悪質な隠蔽行為があったと判断された場合には、無申告加算税に代わって「重加算税」という非常に重いペナルティが課されます。その税率は、40%にもなります。これは絶対に避けなければなりません。

督促状が来たらどうする?無視は絶対NG!

もし手元に督促状が届いてしまったら、どうすればよいのでしょうか。一番やってはいけないのは「無視」することです。パニックにならず、冷静に対処することが大切です。

まずは税務署に連絡・相談する

督促状が届いたら、すぐに記載されている税務署に連絡しましょう。「納税の意思はあるが、一括での支払いが難しい」といった事情を正直に話すことが重要です。納税に関する相談窓口が設けられており、分割での納付(分納)に応じてもらえる可能性があります。何も連絡しないままだと、納税の意思がないと見なされ、差し押さえの手続きに進んでしまう恐れがあります。

すぐに全額払えない場合の対処法

どうしても一括で納税できない場合は、いくつかの方法が考えられます。

  • 分納の相談: 税務署に相談し、分割での納付を認めてもらう方法です。
  • 延納制度の利用: 一定の要件を満たせば、担保を提供することで、5年から20年の分割払いが認められる「延納」という制度があります。ただし、申請期限は納付期限までなので、滞納後では利用できません。事前に検討が必要です。
  • 物納制度の利用: 延納でも金銭での納付が困難な場合、不動産などの財産そのもので税金を納める「物納」という方法もあります。こちらも要件が厳しく、申請期限も納付期限までです。
  • 金融機関からの借り入れ: 相続税の納税資金を金融機関から借り入れる方法です。

督促状が来る前に!納税が難しい場合の対策

「相続税が高額で、期限までに払えそうにない…」と分かった時点で、早めに対策を打つことが何よりも大切です。督促状が届く前であれば、取れる選択肢も多くなります。

申告期限内に「延納」や「物納」を申請する

先ほども少し触れましたが、相続税には「延納」と「物納」という特別な納付方法があります。これらは、現金での一括納付が難しい人のための救済措置です。ただし、どちらも相続税の申告・納付期限までに申請書を提出する必要があります。滞納してしまってからでは利用できないため、納税が困難だと予測される場合は、申告準備と並行して検討しましょう。

相続財産を売却して納税資金を作る

相続した不動産や株式などを売却して、納税資金に充てるというのも一般的な方法です。特に、相続財産が不動産ばかりで現金が少ないケースでは有効な手段です。ただし、売却には時間がかかることもあるため、10か月の期限を見据えて計画的に進める必要があります。

専門家(税理士)に相談する

相続税の申告や納税資金の準備で悩んだら、できるだけ早い段階で相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。税理士に相談すれば、財産評価を適正に行うことで相続税額を抑えられたり、延納・物納の手続きをスムーズに進められたり、最適な納税方法についてアドバイスをもらえたりします。一人で抱え込まず、専門家の力を借りましょう。

まとめ

今回は、相続税を納税しない場合に督促状がいつ来るのか、そして滞納した場合のリスクと対処法について解説しました。

相続税の納付期限を過ぎると、およそ1か月から2か月後には督促状が届き、延滞税などのペナルティが発生します。督促状を無視し続けると、最終的には大切な財産を差し押さえられてしまう可能性もあります。もし納税が難しいと感じたら、決して放置せず、督促状が届く前に税務署や税理士などの専門家に相談することが何よりも大切です。早めの行動が、問題を大きくしないための鍵となりますよ。

参考文献

国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

国税庁 延滞税の計算方法

国税庁 No.4211 相続税の延納

国税庁 国税徴収法基本通達 第37条関係 督促

相続税の督促状・滞納に関するよくある質問まとめ

Q. 相続税の申告・納税をしない場合、督促状はいつ頃届きますか?

A. 相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)から約1〜2ヶ月後に税務署から「お尋ね」が届き、それでも対応しない場合に督促状が送付されます。督促状は納期限から50日以内に送付されるのが一般的です。

Q. 相続税を払わないと、どうなりますか?

A. 督促状を無視し続けると、財産調査が行われ、最終的には預貯金や不動産などの財産が差し押さえられます。また、延滞税などのペナルティも課されます。

Q. 督促状が届いた場合の延滞税はいくらですか?

A. 延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、2ヶ月を経過した日以降は年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合で計算されます。税率は毎年変動します。

Q. 相続税を一括で支払えない場合はどうすれば良いですか?

A. 一括での納付が困難な場合、「延納」や「物納」という制度を利用できる可能性があります。延納は分割払い、物納は不動産などで納付する方法です。利用には一定の要件を満たし、税務署への申請が必要です。

Q. 相続税の申告期限を過ぎてしまったら、どうすれば良いですか?

A. 期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く申告・納税を行うことが重要です。自主的に申告することで、無申告加算税の税率が軽減される場合があります。速やかに専門家に相談することをおすすめします。

Q. 相続税の納付書はいつ届きますか?自分から手続きが必要ですか?

A. 相続税の納付書は、住民税や固定資産税のように自動的に送られてくるものではありません。相続人自身が相続税申告書を作成・提出し、納付書を入手して納税手続きを行う必要があります。

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