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相続税対策としての生命保険の使い方を徹底解説!非課税枠を賢く活用

2025-07-12
目次

「自分にはあまり財産がないから相続税は関係ない」と思っていませんか?実は2015年の税制改正で基礎控除額が引き下げられてから、相続税はより身近なものになりました。そこで注目されているのが、生命保険を活用した相続税対策です。生命保険には、現金や預貯金のまま相続するよりも税負担を軽くできる仕組みがあります。この記事では、なぜ生命保険が相続税対策に有効なのか、その具体的な使い方や注意点を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

なぜ生命保険が相続税対策に有効なの?

生命保険が相続税対策として優れているのには、大きく分けて3つの理由があります。ただ財産を残すだけでなく、残された家族が困らないようにするための「思いやり」が詰まった仕組みなんです。それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

生命保険金には非課税枠がある

生命保険の最大のメリットは、「死亡保険金の非課税枠」があることです。亡くなった方(被相続人)の死亡によって相続人が受け取る生命保険金は、一定額まで相続税がかかりません。その非課税限度額は、以下の計算式で決まります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人いる場合、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税になります。つまり、1,500万円を現金のまま残すのではなく、生命保険金として残すことで、その分を相続税の課税対象から外すことができるのです。これは、相続税全体の計算で使われる「基礎控除」とは別枠で利用できる、とても大きなメリットです。

受取人固有の財産として確実に渡せる

亡くなった方の預貯金や不動産などの財産は、遺言書がなければ相続人全員で「遺産分割協議」という話し合いをして、誰が何を相続するかを決める必要があります。この話し合いがまとまらないと、いわゆる「争族」に発展してしまうことも少なくありません。

しかし、生命保険金は受取人として指定された人の「固有の財産」とされています。そのため、遺産分割協議の対象にはならず、他の相続人の同意がなくても、受取人が単独で手続きをして受け取ることができます。これは、「このお金は妻に」「この分は長男に」というように、ご自身の意思を確実に反映させられる、とても強力な方法です。

すぐに現金化できる納税資金になる

人が亡くなると、その方の銀行口座は凍結されてしまい、遺産分割協議が終わるまで簡単にお金を引き出すことができなくなります。一方で、相続税の申告と納税は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。財産のほとんどが不動産で、手元に現金がない場合、納税資金の準備に困ってしまうケースは少なくありません。

その点、生命保険金は受取人が保険会社に請求すれば、比較的短い期間(一般的には1週間〜10日程度)で現金を受け取ることができます。このお金を相続税の納税資金や、当面の生活費、葬儀費用などに充てることができるため、残された家族の経済的な負担を大きく和らげることができます。

生命保険の非課税枠を詳しく解説

相続税対策の要となる「非課税枠」について、もう少し詳しく見ていきましょう。誰が、いくらまで非課税になるのかを正しく理解することが大切です。

非課税限度額の計算方法

非課税限度額は「500万円 × 法定相続人の数」で計算します。ここでポイントになるのが「法定相続人」の数え方です。

  • 相続放棄した人も数に含める:例えば、長男が相続放棄をしても、法定相続人の数を数える上では長男も1人としてカウントします。ただし、相続放棄をした本人は保険金を受け取っても非課税枠は使えません。非課税枠が使えるのは、実際に財産を相続する相続人に限られます。
  • 養子の数には制限がある:相続税法上、法定相続人の数に含められる養子の数には制限があります。亡くなった方に実の子どもがいる場合は1人まで、実の子どもがいない場合は2人までと定められています。

詳しくは国税庁のウェブサイトもご確認ください。
参考:国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
参考:国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき

具体的なシミュレーション

生命保険の非課税枠を使うと、どれくらい税金が変わるのでしょうか。簡単な例で見てみましょう。

【前提】
・相続財産:預貯金 6,000万円
・法定相続人:妻、子2人(合計3人)
・相続税の基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

この前提で、生命保険がある場合とない場合を比較してみます。

項目 ケース1:全て預貯金の場合
相続税の課税対象額 6,000万円 – 4,800万円 = 1,200万円

項目 ケース2:預貯金1,500万円を生命保険にした場合
相続税の課税対象額 (6,000万円 – 非課税枠1,500万円) – 基礎控除4,800万円 = -300万円 (課税対象額0円)

このように、財産の一部を預貯金から生命保険に変えるだけで、相続税がかからなくなるケースもあります。これが生命保険を使った相続税対策の基本的な考え方です。

相続税対策で生命保険に加入するときの契約形態

生命保険で相続税対策をする上で、非常に重要なのが「契約形態」です。契約者(保険料を払う人)、被保険者(保険の対象になる人)、保険金受取人の関係性によって、かかる税金の種類が「相続税」「所得税」「贈与税」と変わってしまいます。間違った契約をすると、かえって税金が高くなることもあるので注意が必要です。

相続税の対象となる契約形態

生命保険の非課税枠が使え、相続税対策として最も効果的なのは、以下の契約形態です。

契約者(保険料を払う人)= 被保険者(保険の対象者)

例えば、夫が自分で保険料を支払い、自分を被保険者として、妻や子を保険金受取人に指定するケースです。この形であれば、夫が亡くなったときに支払われる保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象となり、非課税枠を最大限に活用できます。

所得税や贈与税の対象となるケース

うっかり間違いやすいのが、以下のパターンです。相続税対策のつもりが、違う税金の対象になってしまうので気をつけましょう。

契約者(保険料負担者) 被保険者
保険金受取人 税金の種類
所得税(一時所得)

このケースでは、妻が自分で払った保険料が、夫の死亡によって保険金として自分に戻ってくる形になります。そのため、税務上は「一時所得」として所得税の対象になります。

契約者(保険料負担者) 被保険者
保険金受取人 税金の種類
贈与税

このケースでは、夫が払ったお金が、妻の死亡をきっかけに子へ渡るため、「夫から子への贈与」とみなされ、贈与税の対象になります。贈与税は相続税よりも税率が高くなることが多いため、注意が必要です。

生命保険を活用した応用的な相続対策

生命保険のメリットは、非課税枠だけではありません。遺産分割をスムーズに進めるための潤滑油としても大きな力を発揮します。

代償分割の資金として活用する

相続財産が自宅の土地・建物しかない場合など、物理的に分けるのが難しいケースがあります。例えば、長男が家を継いでそのまま住み続けるけれど、次男にも公平に財産を分けたい、というような状況です。

このとき使われるのが「代償分割」という方法です。長男が家を相続する代わりに、その価値の半分に相当する現金を次男に支払います。この支払う現金のことを「代償金」と呼びます。生命保険に加入し、保険金の受取人を長男にしておくことで、長男は受け取った保険金をスムーズに代償金として次男に渡すことができます。これにより、自宅を売却することなく、公平な遺産分割が実現しやすくなります。

相続放棄をしても保険金は受け取れる

亡くなった方に借金などのマイナスの財産が多い場合、相続人は「相続放棄」をすることができます。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継がなくて済みます。

ここで知っておきたいのが、生命保険金の扱いです。生命保険金は受取人固有の財産なので、たとえ相続放棄をしても、指定された受取人は保険金を受け取ることができます。「家族に借金は残したくないけれど、少しでもお金は渡したい」という場合に、生命保険が有効な手段となります。ただし、相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、生命保険の非課税枠は適用されない点には注意が必要です。

相続税対策で生命保険を選ぶ際の注意点

メリットの多い生命保険ですが、いくつか注意すべき点もあります。目的をしっかり果たせるよう、ポイントを押さえておきましょう。

加入する保険の種類

相続対策で利用する場合、いつ亡くなっても必ず保険金が支払われる「終身保険」が最も適しています。保険料が比較的安い「定期保険」は、80歳まで、90歳までといったように保険期間が決められています。その期間を過ぎてから亡くなった場合は、保険金は一切支払われないため、相続対策としては不向きなケースが多いです。

受取人の指定と見直し

保険金の受取人に指定した人が、自分(被保険者)よりも先に亡くなってしまう可能性もあります。その場合、保険金は受取人の相続人に支払われることになり、本来渡したかった相手に渡らない可能性があります。家族構成の変化があったときなど、定期的に契約内容を確認し、必要であれば受取人の変更手続きを行いましょう。

リビング・ニーズ特約を利用した場合

「リビング・ニーズ特約」とは、医師から余命6ヶ月以内と診断された場合に、死亡保険金の一部または全部を生前に受け取れる特約です。受け取った生前給付金は非課税で、治療費や残された時間を有意義に過ごすために自由に使うことができます。ただし、この給付金を使い切らずに亡くなった場合、手元に残ったお金は通常の相続財産として扱われ、生命保険の非課税枠の対象にはなりませんので、その点は覚えておきましょう。

まとめ

今回は、相続税対策としての生命保険の使い方について解説しました。ポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 生命保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があり、相続税を抑える効果がある。
  • 保険金は受取人固有の財産のため、遺産分割協議なしで確実に渡したい人にお金を残せる。
  • 預金口座と違って凍結されず、すぐに現金化できるため、納税資金や当面の生活費として活用できる。
  • 相続税対策として加入するなら、契約形態は「契約者=被保険者、受取人=相続人」が鉄則。

現金や預貯金も、生命保険という形に変えるだけで、大切な家族を守るための大きな力になります。相続は誰にでも起こりうることです。ご自身の財産状況や家族への想いを整理し、計画的に準備を進めていきましょう。

【参考文献】

相続税対策と生命保険【よくある質問まとめ】

Q. なぜ生命保険が相続税対策として有効なのですか?

A. 生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があり、相続税の負担を軽減できるからです。また、受取人固有の財産となるため、遺産分割協議を経ずにスムーズに資金を渡せるメリットもあります。

Q. 生命保険の非課税枠の金額は具体的にいくらですか?

A. 「500万円 × 法定相続人の数」で計算されます。例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人であれば、500万円×3人=1,500万円までが非課税となります。

Q. 非課税枠を利用するにはどんな契約形態にすれば良いですか?

A. 亡くなった方(被相続人)が「契約者」かつ「被保険者」で、保険金の「受取人」が「相続人」である必要があります。この条件を満たさないと非課税枠は適用されません。

Q. 相続を放棄した場合でも、生命保険金の非課税枠は使えますか?

A. 使えません。生命保険の非課税枠が適用されるのは「相続人」に限られます。相続を放棄した人は相続人ではなくなるため、非課税枠の対象外となります。

Q. 受け取った死亡保険金は、他の相続人と分ける必要がありますか?

A. 原則として必要ありません。死亡保険金は受取人固有の財産とみなされるため、遺産分割協議の対象外です。特定の相続人に確実に財産を遺したい場合に有効な手段です。

Q. 生命保険を使った相続税対策にデメリットはありますか?

A. はい、あります。毎月の保険料負担が発生することや、早期に解約すると元本割れするリスクがあります。また、受取人を誰にするかなど、目的に合わせた適切なプランニングが必要です。

事務所概要
社名
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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