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相続税率と贈与税率、どっちが高い?税金の違いを比較して賢い対策を!

2024-12-17
目次

大切な財産を次の世代へ引き継ぐとき、「相続」と「贈与」どちらの方法を選ぶかで、かかる税金が大きく変わることがあります。「相続税率贈与税率、結局どちらが高いの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。単純に税率だけを比較すると贈与税の方が高く見えますが、仕組みを上手に活用することで、結果的に全体の税負担を軽くすることも可能です。この記事では、相続税と贈与税の基本的な仕組みから税率の違い、そして賢い生前対策のポイントまで、わかりやすく解説していきますね。

相続税とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

まずは、人が亡くなった時にかかる「相続税」について、基本的なところから見ていきましょう。どんな時に、どれくらいの税金がかかるのかを知ることが第一歩です。

相続税がかかるのはどんな時?

相続税とは、亡くなった方(被相続人)から遺産を受け継いだ時に、その財産の合計額が一定の金額を超える場合に、財産を受け取った人(相続人)にかかる税金のことです。すべての相続で税金がかかるわけではなく、遺産の総額が「基礎控除」という非課税枠を下回っていれば、相続税の申告も納税も必要ありません。

相続税の税率と計算方法

相続税は、遺産の金額が大きくなるほど税率が高くなる「超過累進課税」という仕組みになっています。ただし、計算は少し複雑です。まず、遺産総額から基礎控除額を引いた金額(課税遺産総額)を、法律で定められた相続分(法定相続分)で分けたと仮定して、それぞれの金額に下の表の税率をかけて税額を計算します。そして、それらを合計したものが「相続税の総額」となり、実際の相続割合に応じて各相続人が負担する税額が決まります。

相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 税率
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超 55%

相続税の大きな非課税枠「基礎控除」

相続税の計算でとても大切なのが「基礎控除」です。この金額までは税金がかかりません。基礎控除額は、次の式で計算します。

【基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)】

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人だった場合、基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円」となります。つまり、遺産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかからないということになります。

贈与税とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

次に、生きている間に財産を渡す「贈与」にかかる贈与税について見ていきましょう。相続税とはまた違ったルールがありますので、違いをしっかり理解することが大切です。

贈与税がかかるのはどんな時?

贈与税は、個人(生きている人)から財産をもらった時に、もらった側(受贈者)にかかる税金です。亡くなったことが原因で発生する相続税とは違い、お互いの「あげます」「もらいます」という合意があれば、いつでも発生します。

贈与税の税率と計算方法(暦年課税)

贈与税の計算で一般的なのが「暦年課税」という方法です。これは、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から、基礎控除額の110万円を引いた残りの金額に対して税金がかかる仕組みです。贈与税の税率には、親や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する場合の「特例税率」と、それ以外の場合の「一般税率」の2種類があり、特例税率の方が少し税負担が軽くなるように設定されています。

贈与税の速算表(特例税率:直系尊属からの贈与)
基礎控除後の課税価格 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超 55%

※兄弟間や夫婦間の贈与、親から未成年の子への贈与などは「一般税率」が適用され、同じ金額でも税率が高くなります。

贈与税の基礎控除(暦年課税)

暦年課税における贈与税の基礎控除額は、年間110万円です。これは、財産をもらった人一人ひとりに対して適用されます。例えば、父親から子ども3人にそれぞれ110万円ずつ贈与した場合、子どもたちは誰も贈与税を払う必要がありません。1年間で合計330万円の財産を非課税で渡せることになります。

もう一つの選択肢「相続時精算課税制度」

贈与税には、暦年課税のほかに「相続時精算課税制度」という選択肢もあります。これは、原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与で利用できる制度です。この制度を選ぶと、合計2,500万円までの贈与が非課税になります。さらに、2024年からは、この2,500万円の枠とは別に、年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円の枠は贈与税もかからず、相続時に加算する必要もありません。ただし、110万円を超えて贈与した分や2,500万円の特別控除を使って贈与した財産は、贈与した方が亡くなった時に相続財産に加算して相続税を計算する必要があります。一度選択すると暦年課税には戻れないなど、注意点もある制度です。

相続税と贈与税の税率を徹底比較!どっちが高い?

ここまでそれぞれの税金の仕組みを見てきましたが、結局どちらの税金が高いのでしょうか。税率の構造と具体的なシミュレーションで比較してみましょう。

税率構造の違い

単純に同じ金額の財産を一度に渡す場合、贈与税の方が相続税よりも税率が高く、税負担が重くなる傾向にあります。相続税は3,000万円+αという大きな基礎控除があるのに対し、贈与税(暦年課税)の基礎控除は年間110万円と少額です。そのため、少額の財産を渡すだけでも贈与税の課税対象になりやすく、税率もすぐに上がってしまいます。

具体例でシミュレーション!1億円の財産を子ども2人に渡す場合

【例】父親の財産1億円を、子ども2人(母親はすでに他界)が受け取るケース

①相続で受け取る場合

  • 基礎控除額:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
  • 課税遺産総額:1億円-4,200万円=5,800万円
  • 子ども1人あたりの法定相続分:5,800万円×1/2=2,900万円
  • 子ども1人あたりの税額:2,900万円×15%-50万円(控除額)=385万円
  • 相続税の総額:385万円×2人=770万円

②生前贈与で一度に5,000万円ずつ受け取る場合

  • 課税価格:5,000万円-110万円=4,890万円
  • 子ども1人あたりの贈与税額:4,890万円×55%-640万円(控除額)=2,049.5万円
  • 贈与税の総額:2,049.5万円×2人=4,099万円

このように、一度に大きな金額を渡す場合は、贈与税の方がはるかに高額になります。しかし、これはあくまで一度に渡した場合の話です。生前贈与の本当のメリットは、計画的に行うことで発揮されます。

生前贈与で相続税対策をするメリット

一度に渡すと高額になる贈与税ですが、時間をかけて計画的に行うことで、将来の相続税を大きく節税できる可能性があります。これが「生前贈与が相続税対策になる」と言われる理由です。

計画的な贈与で将来の相続財産を減らす

先ほどの1億円の例で、父親が元気なうちから20年間、毎年子ども2人に100万円ずつ贈与していたとします。年間の贈与額は110万円の基礎控除内なので、毎年贈与税はかかりません。

  • 贈与した総額:100万円×2人×20年=4,000万円
  • 相続時の財産:1億円-4,000万円=6,000万円

この場合の相続税を計算してみましょう。

  • 課税遺産総額:6,000万円-4,200万円=1,800万円
  • 子ども1人あたりの法定相続分:1,800万円×1/2=900万円
  • 子ども1人あたりの税額:900万円×10%=90万円
  • 相続税の総額:90万円×2人=180万円

何も対策しなかった場合の相続税770万円と比べて、590万円もの節税につながりました。このように、長期間にわたって非課税枠を活用することが、とても効果的なのです。

生前贈与を行う際の注意点

効果的な生前贈与ですが、やり方を間違えるとせっかくの対策が無駄になってしまうこともあります。いくつか大切な注意点をお伝えしますね。

亡くなる直前の贈与は相続財産に加算される(生前贈与加算)

相続税逃れのために亡くなる直前に駆け込みで贈与することを防ぐため、一定期間内の贈与は相続財産に加算して相続税を計算するルールがあります。このルールが2024年1月1日以降の贈与から改正され、加算される期間が相続開始前3年から7年に延長されました。つまり、亡くなる前7年以内に行った贈与は、相続税の対象になってしまうのです。そのため、生前贈与による対策は、より一層、早めに、そして計画的に始めることが重要になります。

「名義預金」とみなされるリスク

よかれと思ってお子さんやお孫さんの名義で預金口座を作り、毎年コツコツ入金していても、それが「名義預金」と判断されてしまうことがあります。名義預金とは、口座の名義は子や孫でも、通帳や印鑑を親(贈与者)が管理していて、子や孫がその預金の存在を知らなかったり、自由に使えなかったりする状態の預金のことです。この場合、税務署からは贈与が成立していないと判断され、亡くなった方の財産として相続税の対象になってしまいます。贈与を成立させるためには、贈与契約書を作成したり、通帳や印鑑はもらった本人が管理したりすることが大切です。

まとめ

相続税率贈与税率は、その仕組みや非課税枠が大きく異なります。単純に税率だけを比較すれば贈与税の方が高いですが、年間110万円の基礎控除を計画的に活用することで、将来の相続税負担を大きく軽減することが可能です。大切なのは、ご自身の財産状況や家族構成に合わせて、早めに計画を立てることです。特に、生前贈与加算の期間が7年に延長されたことで、より長期的な視点での対策が求められるようになりました。制度が複雑で不安な点も多いと思いますので、迷ったときには税理士などの専門家に相談してみるのも良い方法ですよ。

参考文献

相続税率・贈与税率のよくある質問まとめ

Q. 相続税と贈与税、どちらの税率が高いですか?

A. 同じ金額であれば、一般的に贈与税の方が税率は高くなります。ただし、贈与税には年間110万円の基礎控除や様々な特例があるため、計画的に活用することで将来の相続税を抑える効果が期待できます。

Q. 相続税はいくらからかかりますか?

A. 相続税には「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算される基礎控除があります。遺産の総額がこの基礎控除額を超えた場合に、超えた部分に対して相続税が課税されます。

Q. 贈与税は年間いくらまで非課税ですか?

A. 1人の人が1年間(1月1日~12月31日)にもらった財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。これを暦年贈与の基礎控除といいます。

Q. 相続税の税率はどのように決まりますか?

A. 相続税の税率は、法定相続分に応じた各人の取得金額によって決まります。税率は10%から55%までの8段階あり、取得する財産額が大きくなるほど税率も高くなる「超過累進税率」が採用されています。

Q. 生前贈与と相続、どちらが得ですか?

A. どちらが得かは財産額や家族構成など個別の状況によって異なります。生前贈与を計画的に行うことで相続財産を減らし、将来の相続税を節税できる可能性がありますが、やり方によってはかえって税負担が増える場合もあります。

Q. 「相続時精算課税制度」とは何ですか?

A. 原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与で選択できる制度です。最大2,500万円までが非課税となりますが、この制度で贈与した財産は、贈与者が亡くなった際に相続財産に加算して相続税を計算する必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。