相続税の申告準備を進める中で、「なぜ相続人のマイナンバーが必要なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実は、相続税申告書へのマイナンバー記載は法律で定められた義務なんです。この記事では、マイナンバーが必要な理由から、誰の番号を、どのように提出するのか、そしてマイナンバーカードがあると便利な点まで、わかりやすく解説していきますね。
相続税申告に相続人のマイナンバー記載は義務です
結論から言うと、相続税の申告書には、財産を受け取る相続人全員のマイナンバー(個人番号)を記載する義務があります。これは、国税に関する手続きを定めた「国税通則法」という法律で決められていることなんですよ。
なぜマイナンバーの記載が必要なの?
マイナンバーを記載する一番の目的は、「税務行政の効率化」と「公平・公正な課税の実現」です。税務署はマイナンバーを通じて、個人の所得や財産の情報を正確に把握しやすくなります。特に、2018年からは預貯金口座とマイナンバーの紐付けも進んでおり、税務署は相続財産や生前贈与などをより簡単に確認できるようになりました。これにより、申告漏れや不正を防ぎ、正直に申告した人が損をしない、公平な仕組みを目指しているんです。
亡くなった人(被相続人)のマイナンバーは不要
相続人のマイナンバーは必要ですが、亡くなられた方(被相続人)のマイナンバーを申告書に記載する必要はありません。以前は記載欄がありましたが、故人の番号を確認するのは難しいという理由から、平成28年10月以降に提出される申告書では不要になりました。
記載しなくても受理される?罰則はある?
国税庁は「マイナンバーの記載がない場合でも受理する」としていますが、これは制度が浸透するまでの経過措置のようなものです。記載は法律上の義務なので、記載がないと後日、税務署から確認の連絡が来ることがあります。スムーズな手続きのためにも、必ず正確に記載しましょう。現時点で罰則規定はありませんが、今後、制度の運用が変わる可能性も考えておきたいですね。
マイナンバーの確認方法と申告書への書き方
それでは、ご自身のマイナンバーを確認する方法と、申告書への具体的な書き方を見ていきましょう。いざという時に慌てないように、事前に確認しておくと安心ですよ。
自分のマイナンバーを確認する3つの方法
マイナンバーは、以下のいずれかの書類で確認できます。
マイナンバーカード | カードの裏面に12桁の個人番号が記載されています。 |
通知カード | 紙製のカードで、氏名、住所などと共にマイナンバーが記載されています。(※令和2年5月25日に廃止。記載事項に変更がなければ番号確認書類として利用可能) |
マイナンバー記載の住民票の写し | 市区町村の役所で取得できます。カード類を紛失した場合でも、即日発行できるので最も手軽な方法です。 |
マイナンバーカードを紛失して再発行する場合、1ヶ月ほど時間がかかることもあるので、申告期限が近い場合は住民票の写しを取得するのがおすすめです。
相続税申告書(第1表)への記載箇所
マイナンバーは、相続税申告書の「第1表」に記載します。財産を取得した相続人それぞれの氏名や住所を記入する欄の下に「個人番号又は法人番号」という13桁のマスがありますので、そこに12桁のマイナンバーを右詰めで記入してください。一番左のマスは空欄になります。相続人が複数いる場合は、全員がそれぞれ自分の番号を記載する必要があります。
申告書提出時の本人確認書類
マイナンバーを記載した申告書を税務署に提出する際には、なりすましなどを防ぐために厳格な本人確認が行われます。提出方法によって必要な書類が異なるので、ご自身の状況に合わせて確認してくださいね。
マイナンバーカードを持っている場合
マイナンバーカードを持っている方は、手続きがとてもスムーズです。税務署の窓口で申告書を提出する場合は、マイナンバーカードを提示するだけで「番号確認」と「身元確認」が一度に完了します。郵送で提出する場合は、マイナンバーカードの表面と裏面のコピーを添付します。
マイナンバーカードを持っていない場合
マイナンバーカードをお持ちでない方は、「番号確認書類」と「身元確認書類」の2種類が必要になります。両方の書類(またはそのコピー)を準備しましょう。
番号確認書類(いずれか1点) | ・通知カード(記載事項に変更がないもの) ・マイナンバー記載の住民票の写し |
身元確認書類(いずれか1点) | ・運転免許証 ・パスポート ・公的医療保険の被保険者証 ・身体障害者手帳 など |
税理士などの代理人が提出する場合
税理士に申告を依頼している場合は、本人確認書類の提出方法が異なります。基本的には、①代理権の確認書類(税務代理権限証書)、②代理人の身元確認書類(税理士証票など)、③本人の番号確認書類(相続人のマイナンバーカードの写しなど)が必要になります。詳しい手続きは依頼する税理士さんが案内してくれるので、指示に従ってくださいね。
e-Tax(電子申告)で提出する場合
e-Taxを利用して電子申告を行う場合は、マイナンバーカードを使った電子署名で本人確認が完了するため、本人確認書類の提示やコピーの提出は不要です。手続きが簡略化されるので、とても便利ですよ。
相続手続きにおけるマイナンバーカードのメリット
相続税申告だけでなく、様々な相続手続きにおいてマイナンバーカードを持っていると便利な場面がたくさんあります。この機会に作成を検討してみるのも良いかもしれません。
コンビニで各種証明書が取得できる
相続手続きでは、戸籍謄本や住民票の写しなど、多くの証明書が必要になります。マイナンバーカードがあれば、市区町村の役所が閉まっている時間帯や休日でも、コンビニのマルチコピー機でこれらの証明書を取得できます。平日に役所へ行く時間がない方にとっては、大きなメリットですよね。(※お住まいの自治体によって対応状況が異なりますので事前にご確認ください。)
預貯金口座の調査がスムーズに(将来的な制度)
故人がどの金融機関に口座を持っていたか調べるのは、相続人にとって大変な作業です。現在、国ではマイナンバーと預貯金口座を紐づける制度を進めています。これが本格的に始まると、相続人がマイナンバーを使って故人の口座情報を一括で照会できるようになる見込みです。将来的に、相続人の負担が大きく軽減されることが期待されています。
取り扱いの注意点
マイナンバーは非常に重要な個人情報です。取り扱いには十分注意しましょう。
他の相続人のマイナンバーの取り扱い
相続人が複数いる場合、1枚の申告書に全員のマイナンバーが記載されます。法律(番号法)では、他人のマイナンバーが記載された書類をコピーして保管することは原則として禁止されています。申告書の控えを作成する際は、マイナンバー部分をマスキング(黒塗り)するなど、慎重な対応が必要です。
不審な電話に注意
税務署の職員が電話で直接マイナンバーを聞き出すことは絶対にありません。「税務署の者ですが…」とマイナンバーを聞き出そうとする不審な電話は詐欺の可能性が高いので、絶対に応じないようにしてください。
まとめ
相続税申告におけるマイナンバーの必要性について、ご理解いただけましたでしょうか。最後にポイントをまとめますね。
- 相続税申告書には、財産を取得する相続人全員のマイナンバー記載が法律上の義務です。
- マイナンバーの記載は、税務行政の効率化と公平な課税を実現するために必要です。
- 申告書提出時には、マイナンバーカードの有無に応じて本人確認書類が必要になります。
- マイナンバーカードがあると、コンビニでの証明書取得など相続手続きがスムーズになります。
- マイナンバーは重要な個人情報です。他人の番号の保管や不審な電話には十分注意しましょう。
相続税の申告は期限も決まっており、準備も大変ですが、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。
【参考文献】
相続税申告とマイナンバーのよくある質問まとめ
Q. なぜ相続税申告にマイナンバーが必要なのですか?
A. 法律(国税通則法)で、税務署に提出する申告書にマイナンバーを記載することが義務付けられているためです。税務署が相続人の情報を正確に把握し、行政手続きを効率化することを目的としています。
Q. マイナンバーカードがない場合はどうすればいいですか?
A. マイナンバーカードがなくても、マイナンバーが記載された「通知カード」や「住民票の写し」で番号を確認できます。申告書には番号を記載し、提出者の本人確認書類(運転免許証など)のコピーを添付すれば問題ありません。
Q. 相続人全員のマイナンバーが必要ですか?
A. はい、原則として財産を相続する相続人全員と、遺言で財産を受け取った人(受遺者)全員のマイナンバーの記載が必要です。
Q. マイナンバーを提出しないとどうなりますか?
A. マイナンバーの記載がなくても申告書は受理されますが、法律上の義務なので、後日税務署から提出を求められることがあります。罰則はありませんが、スムーズな手続きのために記載することをおすすめします。
Q. マイナンバーカードのコピーを提出するのですか?
A. 申告書にマイナンバーの番号を記載し、添付書類台紙に「申告書を提出する代表者」の本人確認書類(マイナンバーカードの裏表のコピーなど)を貼り付けて提出します。他の相続人全員分のコピーは不要です。
Q. 海外に住んでいる相続人のマイナンバーはどうすればいいですか?
A. 日本に住民票がなくマイナンバーが付番されていない相続人は、マイナンバーを記載する必要はありません。空欄のまま提出して問題ありません。