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相続税申告で必須!登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書の書き方

2025-01-26
目次

ご家族が亡くなられて相続の手続きを進める中で、「登録銘柄及び店頭管理銘柄」という株式をお持ちだったことがわかる場合があります。上場株式とは少し違うこれらの株式は、どうやって評価して、どうやって書類を書けばいいのか、不安に感じていらっしゃるかもしれませんね。この記事では、登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書の書き方について、順を追って優しく解説していきます。この記事を読めば、評価のルールから明細書の作成まで、一通りの流れがわかりますよ。

登録銘柄・店頭管理銘柄ってどんな株式?

相続税の申告書を作成する前に、まずは言葉の意味をしっかり理解しておきましょう。「登録銘柄」と「店頭管理銘柄」は、一般的な上場株式とは少し異なる特徴を持っています。それぞれがどのような株式なのか、違いをみていきましょう。

登録銘柄とは

登録銘柄とは、証券取引所には上場していないものの、日本証券業協会に登録されている株式のことを指します。かつては「グリーンシート銘柄」と呼ばれていたものなどが該当します。証券会社を通じて売買されることがありますが、上場株式に比べると取引量が少ないのが特徴です。

店頭管理銘柄とは

店頭管理銘柄とは、もともと証券取引所に上場していたものの、何らかの理由で上場廃止となった銘柄のことです。上場廃止後、一定期間、日本証券業協会が投資家保護の観点から管理・公表を行っている株式を指します。こちらも取引の機会は非常に限られています。

上場株式との違いは?

一番大きな違いは、取引される「市場」です。上場株式は東京証券取引所などの金融商品取引所で活発に売買されますが、登録銘柄や店頭管理銘柄はそうではありません。そのため、評価額を決めるときに少し特別なルールが必要になるんです。

種 類 主な特徴
上場株式 金融商品取引所で日々活発に取引され、株価が公表されている。
登録銘柄・店頭管理銘柄 取引所には上場しておらず、日本証券業協会が価格情報などを公表している。取引は限定的。

評価明細書はなぜ必要?

相続税や贈与税を計算するとき、亡くなった方(被相続人)が持っていた財産をすべて金銭的な価値に換算する必要があります。株式ももちろんその一つです。「登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書」は、その株式の価値をいくらと評価したのか、その計算の根拠を税務署に示すための大切な書類なんです。この明細書を添付することで、申告内容の透明性が高まり、税務署も評価額が適正に計算されていることを確認しやすくなります。

登録銘柄・店頭管理銘柄の評価方法

では、具体的にどうやって評価額を計算するのでしょうか。難しそうに聞こえますが、国税庁が定めたルールに沿って計算すれば大丈夫です。基本的には、相続人にとって最も有利な(=評価額が低くなる)価格を選ぶことができるんですよ。

原則的な評価方法

原則として、課税時期(相続の場合は亡くなった日)の最終価格を使って評価します。この価格は、日本証券業協会が公表している取引価格を参考にします。もし、同じ日に高い価格(高値)と安い価格(安値)の両方がある場合は、その平均額を使います。

有利な評価額の選択(特例)

相続税の計算では、納税者に有利な方法を選べる特例があります。課税時期の取引価格だけでなく、過去の株価の平均額とも比較して、最も低い価額を評価額として採用できるのです。具体的には、以下の4つの価格を比べて、一番安いものを選びます。

比較する価格 内   容
① 課税時期の取引価格 相続や贈与があった日の取引価格(高値と安値があればその平均額)
② 課税時期の月の月平均額 課税時期が含まれる月の、毎日の最終価格の平均額
③ 課税時期の前月の月平均額 課税時期の前の月の、毎日の最終価格の平均額
④ 課税時期の前々月の月平均額 課税時期の2ヶ月前の、毎日の最終価格の平均額

例えば、相続開始が5月10日だった場合、5月10日の価格、5月の月平均額、4月の月平均額、3月の月平均額を比較して、最も低い価格を1株あたりの評価額とすることができます。これにより、相続税の負担を少しでも軽くできる可能性があるんですね。

「登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書」の書き方ステップ

評価方法がわかったら、いよいよ評価明細書を作成していきましょう。国税庁の様式に沿って、一つひとつ丁寧に記入していくのがポイントです。

評価明細書の入手方法

評価明細書の様式は、税務署でもらうこともできますが、国税庁のウェブサイトからダウンロードするのが便利です。いつでも最新の様式を手に入れることができます。

銘柄情報の記入

まず、明細書の上部に基本的な情報を記入します。
「銘柄名」:株式の正式名称を記入します。
「数量」:相続した株式の数を記入します。
「証券会社名等」:株式を預けている証券会社の名前などを記入します。

評価額の計算過程の記入

次に、評価額を計算するために調べた価格を記入していきます。ここは明細書の中でも特に重要な部分です。
「課税時期の取引価格」:相続があった日の取引価格を調べ、記入します。
「課税時期の属する月以前3か月間の毎日の取引価格の月平均額」:課税時期の月、前月、前々月の3か月分の月平均額をそれぞれ調べ、記入します。
これらの価格情報は、日本証券業協会のウェブサイトや、取引のあった証券会社に問い合わせることで確認できます。

最終的な評価額の記入

最後に、計算の仕上げです。
「1株(口)当たりの価額」:上記で調べた4つの価格(課税時期の価格、3か月分の月平均額)のうち、最も低い金額をこの欄に記入します。
「評価額」:選んだ「1株当たりの価額」に、相続した「数量(株数)」を掛け合わせた金額を計算し、記入します。これが、その株式の最終的な相続税評価額となります。

記入時の注意点とよくある質問

評価明細書を作成する上で、いくつか注意しておきたい点や、疑問に思いやすい点があります。事前に確認しておくと、スムーズに手続きが進みますよ。

課税時期に取引価格がない場合は?

非常に取引が少ない銘柄の場合、課税時期の当日に取引価格がないこともあります。このような場合は、課税時期に最も近い日の価格を使ったり、類似の会社の株価を参考にしたりと、特別な計算が必要になります。この計算は複雑になるため、税理士などの専門家にご相談いただくのが安心です。

公開途上にある株式の評価は?

これから上場や登録をする「公開途上」の株式を相続した場合は、評価方法が異なります。この場合は、証券会社などが設定する「公開価格」がそのまま評価額となります。月平均額などとの比較は行いません。

負担付贈与や個人間売買の場合は?

借金の返済を肩代わりしてもらう代わりに株式をもらう「負担付贈与」や、個人同士で株式を売買した場合は、これまで説明した月平均額との比較はできません。このケースでは、課税時期の取引価格のみで評価することが定められていますのでご注意ください。

まとめ

今回は、登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書の書き方について解説しました。ポイントをまとめると以下のようになります。

  • 登録銘柄・店頭管理銘柄は、上場株式とは異なる非上場の株式です。
  • 評価額は、「課税時期の価格」と「過去3か月の月平均額」を比較し、最も低い価格を選ぶことができます。
  • 評価明細書には、調べた価格と計算の過程を正確に記入することが大切です。
  • 評価方法が複雑でわからない場合や、手続きに不安がある場合は、無理せず税理士に相談しましょう。

相続税の申告は専門的な知識が必要な場面も多いですが、一つひとつの財産についてルールを理解し、丁寧に進めていくことが重要です。この記事が、あなたの相続手続きの一助となれば幸いです。

参考文献

登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書のよくある質問まとめ

Q.「登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書」とは何ですか?

A.相続税や贈与税の申告時に、証券取引所に上場していない「登録銘柄」や「店頭管理銘柄」の価額を計算し、その評価根拠を明らかにするための書類です。税務署に提出する必要があります。

Q.登録銘柄と店頭管理銘柄の違いは何ですか?

A.どちらも非上場株式ですが、登録銘柄は元上場企業で日本証券業協会に登録された銘柄、店頭管理銘柄は証券会社の店頭で取引気配が公表される銘柄を指します。評価の際に参照する情報源が異なります。

Q.この評価明細書はどこで入手できますか?

A.国税庁のウェブサイトからPDF形式でダウンロードできます。「相続税の申告手続」のページにある申告書等の様式一覧に含まれています。

Q.株式の評価額はどのように計算すればよいですか?

A.原則として、課税時期(相続開始日や贈与日)における日本証券業協会が公表する最終価格(売買参考統計値)を基に評価します。課税時期に価格がない場合は、最も近い日の価格を使用するなど、定められたルールに従って計算します。

Q.「1株当たりの純資産価額」の欄はいつ使いますか?

A.日本証券業協会から公表される売買参考統計値がない銘柄など、例外的なケースで「純資産価額方式」を用いて評価する場合に記載します。通常は空欄のままで問題ありません。

Q.評価明細書を作成する上での注意点はありますか?

A.銘柄名や証券コード、課税時期の最終価格を正確に転記することが最も重要です。価格は日本証券業協会のウェブサイトで確認できます。どの時点の価格を適用したかがわかるように、根拠資料もあわせて保管しておきましょう。

事務所概要
社名
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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