相続税の申告準備を進めていると、「故人が残した未払金や借金は、税込と税抜、どっちの金額で書けばいいの?」と疑問に思うことがありますよね。この金額を間違えると、支払う相続税額が変わってしまう可能性もあります。この記事では、相続税申告書に記載する債務が税込なのか税抜なのか、具体的なケースごとに分かりやすく解説していきます。正しい知識で、スムーズな相続税申告を目指しましょう。
相続税の債務控除とは?税込・税抜の基本ルール
相続税を計算するとき、故人(被相続人)が残したプラスの財産(預貯金や不動産など)から、マイナスの財産(借金や未払金など)を差し引くことができます。これを債務控除といいます。債務控除を正しく適用することで、相続税の負担を軽減できる大切な制度です。
この債務控除で記載する金額が税込か税抜かは、その債務の内容によって変わってきます。基本的な考え方として、「故人が支払うべきだった金額をそのまま記載する」と覚えておくと分かりやすいですよ。消費税がかかる取引であれば税込額、かからないものであればその金額を記載します。
原則は「税込額」で記載
故人が事業者でなかった場合、普段の生活で発生する未払金の多くは消費税込みの金額で請求されますよね。例えば、亡くなる直前の入院費や、クレジットカードの未払金、水道光熱費などは、すべて消費税が含まれた税込額で請求がきます。そのため、これらの債務は請求書や領収書に記載されている税込額をそのまま申告書に記入するのが正解です。
故人が事業者だった場合の注意点
故人が個人事業主などで、消費税の課税事業者だった場合は少し注意が必要です。事業に関する債務、例えば仕入れ代金の未払い(買掛金)などは、故人が消費税の申告をする際に仕入税額控除の対象となるため、税抜額で計上することがあります。
これは故人の経理処理の方法によって異なります。故人が税込経理方式を採用していた場合は税込額で、税抜経理方式を採用していた場合は税抜額で債務を計上することになります。どちらの方式を採用していたか不明な場合は、過去の確定申告書などを確認するか、税理士に相談することをおすすめします。
消費税がかからない債務(非課税・不課税取引)
借入金の元本や未払いの税金(固定資産税、住民税など)、社会保険料など、そもそも消費税がかからない取引もたくさんあります。これらの債務には「税込・税抜」という概念がありませんので、支払うべき金額そのものを申告書に記載します。
【ケース別】これは税込?税抜?具体的な債務の記載方法
それでは、具体的にどのような債務が控除の対象になり、税込・税抜どちらで記載するのかを一覧で見ていきましょう。相続税申告で迷いやすい項目をピックアップしました。
| 債務の種類 | 記載する金額 |
|---|---|
| 金融機関からの借入金(元本) | 借入残高(消費税はかかりません) |
| 未払いの医療費 | 税込額 |
| 未払いの公共料金(電気・ガス・水道) | 税込額 |
| 未払いの固定資産税・住民税 | 納税額(消費税はかかりません) |
| 未払いの所得税(準確定申告分) | 納税額(消費税はかかりません) |
| クレジットカードの未払金 | 税込額 |
| 事業上の買掛金(故人が課税事業者) | 経理方式による(原則として税抜額) |
| 賃貸物件の預かり敷金 | 預かり金額(消費税はかかりません) |
債務控除の対象になるもの・ならないもの
債務控除は、故人が残したすべての支払いが対象になるわけではありません。正しく申告するために、対象になるものとならないものをしっかり区別しておきましょう。
債務控除の対象になる債務
債務控除の対象となるのは、故人が亡くなった時点で存在が確定している債務です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 借入金:銀行からのローンや個人からの借金など。
- 公租公課:未払いの固定資産税、住民税、所得税(準確定申告分)など。
- 未払金:医療費、公共料金、クレジットカードの利用残高など、亡くなる日までに発生したもの。
- 事業上の債務:買掛金や未払費用など。
- その他:賃貸物件の入居者から預かっている敷金や保証金など。
債務控除の対象にならない債務
一方で、以下のようなものは債務控除の対象になりません。間違えて申告すると、後で税務署から指摘を受ける可能性があるので注意してくださいね。
- 団体信用生命保険付きの住宅ローン:故人の死亡により保険金で完済されるため、相続人が返済義務を負う債務は残りません。
- 保証債務:故人が誰かの連帯保証人になっていた場合、主たる債務者が返済不能な状態でない限り、確実な債務とは認められません。
- 非課税財産に関する未払金:お墓や仏壇の未払代金などです。これらは相続税が非課税の財産のため、関連する債務も控除できません。
- 相続開始後に発生した費用:相続税申告のための税理士報酬や、不動産の相続登記費用などは、相続人が負担すべき費用のため対象外となります。
葬式費用も控除できる!税込・税抜の考え方
故人が直接残した債務ではありませんが、葬式にかかった費用も遺産総額から差し引くことができます。これも大切な節税ポイントですので、忘れずに計上しましょう。
控除できる葬式費用
葬儀そのものにかかった費用が対象です。葬儀会社への支払いやお布施などは、消費税がかかるものと、かからないもの(お布施など)が混在しています。基本的には領収書などで実際に支払った総額を記載すれば問題ありません。
- お通夜、告別式にかかった費用(会場費、葬儀社への支払い、飲食代など)
- 火葬、埋葬、納骨にかかった費用
- お寺などへのお布施、読経料、戒名料
- 遺体の捜索や運搬にかかった費用
控除できない葬式費用
葬儀に関連する費用でも、控除の対象外となるものがありますので気を付けましょう。
- 香典返しの費用(いただいた香典も相続財産には含まれないため)
- 墓石や墓地の購入費用、墓地の借入料
- 初七日や四十九日などの法事にかかる費用
申告書への記載方法と必要書類
債務や葬式費用は、相続税申告書の「第13表 債務及び葬式費用の明細書」に記入します。債務控除を証明するために、根拠となる書類をきちんと準備しておくことがとても重要です。
申告書(第13表)の書き方
第13表には、債務の種類、支払先の名称・住所、金額などを詳しく記載します。金融機関からの借入金であれば借入残高証明書、未払金であれば請求書や領収書に記載された金額(本記事で解説した税込・税抜の考え方に注意)を転記しましょう。
準備すべき証明書類
税務調査などで確認を求められた際に、スムーズに提示できるよう、以下の書類を手元に保管しておきましょう。
- 借入金:金銭消費貸借契約書、返済予定表、残高証明書(相続開始日時点のもの)
- 未払金:請求書、領収書、クレジットカードの利用明細
- 公租公課:納税通知書、納付書の控え
- 葬式費用:葬儀会社からの請求書や領収書(お布施などで領収書がない場合は、支払日、金額、支払先を記録したメモでも認められる場合があります)
まとめ
相続税申告書に記載する債務の金額について、最後にポイントをまとめますね。
- 債務控除の金額は、原則として故人が支払うべきだった金額を記載します。
- 一般的な未払金(医療費、公共料金など)は、請求書に記載された税込額で計上します。
- 借入金や税金など、そもそも消費税がかからないものは、支払うべき金額そのものを記載します。
- 故人が消費税の課税事業者だった場合の事業上の債務は、経理方式(税込か税抜か)の確認が必要です。
- 債務控除を適用するには、契約書や請求書などの証明書類が不可欠です。
「この債務は税込?税抜?」「これは控除の対象になるの?」と迷ったときは、自己判断で進めずに、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。正しく申告して、安心して相続手続きを終えましょう。
参考文献
相続税申告の債務控除(税込・税抜)に関するよくある質問まとめ
Q.相続税申告書に記載する債務は、税込額と税抜額のどちらですか?
A.原則として、消費税を含んだ「税込額」で記載します。被相続人が実際に支払うべきだった金額をそのまま債務として計上するためです。
Q.水道光熱費や電話代などの未払金も税込額で記載しますか?
A.はい、公共料金や通信費などの未払金も、実際に請求されている「税込額」を債務として記載します。
Q.被相続人の未払いの医療費はどのように記載すればよいですか?
A.医療費は消費税が非課税のため、税込・税抜という概念がありません。実際に支払うべき金額(自己負担額)をそのまま債務として記載してください。
Q.クレジットカードの未払い分も税込額で債務控除できますか?
A.はい、クレジットカードの未払金も、利用明細書に記載されている「税込額」で債務控除の対象となります。
Q.被相続人が個人事業主だった場合、事業上の未払金はどうなりますか?
A.事業上の未払金(仕入代金など)も、原則として「税込額」で債務として記載します。ただし、経理方式によっては扱いが異なる場合があるため専門家への確認をおすすめします。
Q.葬式費用も債務控除の対象ですが、これも税込額で記載しますか?
A.はい、葬儀会社への支払いやお布施など、葬式に関する費用も実際に支払った金額(消費税がかかるものは「税込額」)を記載します。