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相続税申告の鍵!建築計画概要書とは?不動産評価での使い方を解説

2025-06-09
目次

ご家族が亡くなり、相続税の申告で不動産の評価が必要になったとき、「建築計画概要書」という書類がとても役立つことをご存知でしょうか。特に、相続した土地の正確な情報がわからず、どう評価すればよいか悩んでいる場合に、重要な手がかりを与えてくれることがあります。この記事では、建築計画概要書がどのような書類で、相続税申告の際にどう活用するのか、取得方法や注意点もあわせて分かりやすく解説していきますね。

建築計画概要書ってどんな書類?

建築計画概要書とは、建物を建てる前に「このような建物を、このような土地に建てます」という計画の概要をまとめた書類のことです。建築主が役所に建築確認の申請をするときに提出するもので、その建物が建築基準法などの法律に適合しているかを確認するために使われます。この書類には、土地と建物の基本的な情報がたくさん詰まっているので、相続した不動産の状況を把握するのに非常に便利なんです。

建築計画概要書に書かれていること

建築計画概要書には、主に以下のような情報が記載されています。図面も含まれているため、土地の状況を視覚的に確認できるのが大きな特徴です。

記載されている主な情報 内  容
建築主や設計者の情報 誰が建てて、誰が設計したのかがわかります。
敷地面積・建築面積・延床面積 土地の広さや建物の大きさが記載されています。
建物の構造・階数 木造や鉄筋コンクリート造などの構造、何階建てかなどがわかります。
配置図 敷地に対して建物がどのように配置されているか、道路との位置関係、隣地境界線などが示された図面です。これが土地評価で特に重要になります。
建築確認番号・年月日 いつ建築確認を受けたかがわかる情報です。

どこで取得できるの?

建築計画概要書は、その不動産がある市区町村役場の建築指導課などの建築関連の部署で取得できます。この書類は、周辺住民とのトラブル防止などの観点から、誰でも閲覧したり、写しの交付を受けたりすることが認められています。相続人であるかどうかに関わらず取得できるので、覚えておくと便利ですね。交付には、1件あたり300円から500円程度の手数料がかかることが一般的です。

いつでも取得できるわけではない?

便利な建築計画概要書ですが、いつでも必ず取得できるとは限りません。注意したいのは、書類の保管期間です。建築基準法が制定された1950年(昭和25年)より前に建てられた古い建物の場合、建築確認の手続き自体が行われていないため、建築計画概要書も存在しません。また、自治体によって保管されている期間が異なり、例えば「平成元年以降に建築確認申請があったもの」などと定められている場合があります。事前に役所のウェブサイトで確認するか、電話で問い合わせてみると確実ですよ。

なぜ相続税申告で建築計画概要書が必要になるの?

相続税を計算する上で、土地や建物といった不動産の評価は非常に重要です。特に土地の評価額は、相続財産の総額に大きな影響を与えます。その土地を正しく評価するために、建築計画概要書が重要な資料となる場面があるのです。

土地の評価は「測量図」が基本

土地の相続税評価を行う際、最も信頼性が高く基本となる資料は「地積測量図」です。これがあれば、土地の正確な面積、形状、境界がわかるため、評価額を精密に計算できます。しかし、特に古くから所有している土地などでは、この地積測量図が作成されておらず、法務局に保管されていないケースが少なくありません。また、代わりに用いられる「公図」は、明治時代の測量に基づいているものも多く、現況と大きく異なっているなど、精度が低い場合があるため、評価の根拠としては不十分なことがあります。

測量図がないときの頼れる助っ人!

そこで役立つのが建築計画概要書です。地積測量図がない場合でも、建築計画概要書に添付されている「配置図」を見ることで、土地のおおよその形状、面積、道路との接道状況などを把握することができます。建築士が作成した図面であるため、公図に比べて信頼性が高い情報源となり、相続税の土地評価における強力な助っ人になってくれるのです。

建築計画概要書の具体的な使い方【不動産評価編】

それでは、具体的に相続税の土地評価において、建築計画概要書がどのように使われるのか見ていきましょう。特に以下のようなケースでその真価を発揮します。

セットバック(道路後退)が必要な土地の評価

相続した土地が、建築基準法で定められた幅員4メートル未満の道路(2項道路と呼ばれます)に接している場合、将来建物を建て替える際に、道路の中心線から2メートルのラインまで敷地を後退させる必要があります。これを「セットバック」と言います。
このセットバックしなければならない部分は、私有地でありながら建物を建てられないなど利用に制限がかかるため、相続税評価上、通常の宅地としては評価しません。セットバック部分の面積を正確に計算する必要がありますが、その際に建築計画概要書の配置図が役立ちます。配置図には道路の中心線や後退ラインが記載されていることが多く、セットバック対象面積を割り出すための重要な根拠となります。この部分を評価額から控除することで、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

土地の正確な形状や境界がわからない場合

測量図がなく、土地の形がいびつ(不整形地)だったり、隣地との境界が曖昧だったりする場合も、建築計画概要書の配置図が手がかりになります。配置図には、敷地の寸法や隣地境界線が描かれているため、これをもとに土地のおおよその形状を把握し、不整形地評価などの減額補正を適用できるか検討することができます。正確な評価のためには、非常に価値のある情報源です。

複数の建物がある土地の利用単位の確認

相続税の土地評価は、登記上の「一筆」ごとではなく、実際に利用されている「利用単位」ごとに行うのが原則です。例えば、一つの広い土地に「ご自宅」と「賃貸アパート」が建っている場合、土地を「自宅の敷地」と「アパートの敷地」の2つの利用単位に分けて評価します。
このとき、どこで敷地を分ければよいかの判断が難しいことがあります。建築計画概要書は建物ごとに作成されるため、それぞれの建物の配置図を確認することで、どの範囲がどの建物の敷地として計画されたのかを合理的に判断する材料になります。

建築計画概要書が取得できない!そんな時の対処法

調査したものの、建物が古くて建築計画概要書が保管されていなかった…という場合でも、諦める必要はありません。次のような代替手段で情報を集めることができます。

隣の土地の建築計画概要書を参考にする

評価したい土地の建築計画概要書がなくても、隣接地や道路の向かい側の土地に比較的新しい建物があれば、そちらの建築計画概要書を取得してみましょう。その配置図に記載されている道路の中心線や後退ラインの情報から、評価対象地のセットバックラインなどを推測できる場合があります。精度は落ちますが、有力な手がかりになります。

市役所の固定資産税課で図面を確認する

市区町村の資産税課(固定資産税担当部署)には、固定資産税を課税するために独自に調査して作成した家屋の図面(間取り図など)が保管されていることがあります。法務局に建物図面がない場合でも、こちらで建物の情報を得られる可能性があります。ただし、これらの資料は所有者本人や委任状を持った代理人でなければ閲覧・取得できないことが多いので、事前に必要なものを確認しておきましょう。

現地で測量する

どの書類からも十分な情報が得られない場合の最終手段は、現地での測量です。土地家屋調査士や建築士といった専門家に依頼するのが最も正確ですが、費用がかかります。相続税申告のための概算評価であれば、自分でメジャーなどを使って測量し、方眼紙に見取り図を作成することでもある程度の情報を得ることは可能です。

建築計画概要書を取得する際の注意点

最後に、建築計画概要書を取得して利用する際に、知っておきたい注意点を2つお伝えします。

書かれているのは「計画時点」の情報

建築計画概要書は、あくまで建物を建てる計画段階の書類です。その後の増改築や土地の利用状況の変化が反映されていない可能性があります。そのため、書類の情報だけを鵜呑みにせず、必ず現地を訪れて、現況と図面に相違がないかを確認することが非常に重要です。書類と現地確認、両方を行うことで評価の精度が高まります。

取得には物件の情報が必要

役所の窓口で建築計画概要書の写しを申請する際には、対象の物件を特定するための情報が必要です。スムーズに手続きを進めるために、少なくとも土地の地番は調べておきましょう。もしわかれば、建築確認済証に記載されている建築確認番号や建築確認年月日があると、より迅速に探し出してもらえます。これらの情報は、権利証や固定資産税の納税通知書などで確認できます。

まとめ

今回は、建築計画概要書について、その内容から相続税申告での活用法まで詳しく解説しました。測量図がない不動産を相続した場合でも、建築計画概要書は土地の形状やセットバックの有無などを確認するための信頼できる資料となります。これを活用することで、土地の評価額を正しく算定し、払い過ぎを防ぐことにも繋がります。もし取得できなくても、隣地の書類を参考にしたり、役所の他部署の資料を確認したりと、打つ手はあります。相続税申告で不動産の評価に迷ったら、まずは建築計画概要書の存在を思い出してみてくださいね。

建築計画概要書と相続税申告のよくある質問まとめ

Q.建築計画概要書とは何ですか?

A.建築確認申請の際に提出される書類の一つで、建物の配置、規模、構造といった概要が記載されています。誰でも閲覧したり、写しの交付を請求したりすることができます。

Q.建築計画概要書はどこで取得できますか?

A.建物の所在地を管轄する特定行政庁(市役所や区役所の建築指導課など)や、民間の指定確認検査機関で取得できます。

Q.相続税申告で建築計画概要書が必要になるのはどんな時ですか?

A.相続した建物が未登記である場合や、登記情報だけでは建物の詳細が不明な場合に、財産評価の根拠資料として使用します。

Q.建築計画概要書からどのような情報がわかりますか?

A.建築主、設計者、工事施工者、敷地面積、建築面積、延べ面積、構造、階数、建築確認済証番号などを確認することができます。

Q.相続した建物が未登記でした。建築計画概要書は役立ちますか?

A.はい。未登記建物の存在や規模を証明する公的な資料となり、相続税申告における建物の評価額を算出する際の重要な根拠として役立ちます。

Q.建築計画概要書が存在しない場合はどうすれば良いですか?

A.建築確認済証や検査済証、固定資産税の課税明細書、設計図書などで代用できる場合があります。まずはこれらの書類がないか探してみてください。

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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。