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相続税申告後、税務署からの連絡は?レスポンスの有無と内容を解説

2025-11-30
目次

相続税の申告と納付、お疲れ様でした。大きな手続きを終えて一安心だと思いますが、「これで本当に終わりなのかな?」「税務署から何か連絡は来るの?」と不安に感じていませんか?実は、相続税の申告後に税務署から連絡が来る場合と来ない場合があります。この記事では、申告後の税務署からのレスポンスについて、パターン別に詳しく、そして分かりやすく解説していきますね。

基本的に税務署からの「受理通知」はない

まず、一番気になる点だと思いますが、相続税の申告書を税務署に提出しても、「無事に受理しましたよ」や「手続き完了です」といった通知が届くことは基本的にありません。これは確定申告など他の税金の申告と同じで、書類を提出した時点で一旦手続きは完了となります。何の音沙汰もないと少し心配になるかもしれませんが、これが通常の流れですのでご安心ください。

申告書の控え(収受印)が受理の証拠になる

では、何をもって申告書が受理されたと確認できるのでしょうか。その証明となるのが、「収受印(しゅうじゅいん)」が押された申告書の控えです。税務署の窓口で直接提出した場合はその場で控えに押印してもらえます。郵送で提出する場合は、申告書の控えと切手を貼った返信用封筒を忘れずに同封しましょう。そうすれば、税務署が収受印を押した控えを送り返してくれます。また、e-Tax(電子申告)を利用した場合は、申告データの「受信通知」が控えの代わりになります。この控えは、後に金融機関での手続きや不動産の名義変更などで必要になることもあるため、絶対に紛失しないよう大切に保管してくださいね。

申告書の控えをなくしてしまったら?

万が一、大切な申告書の控えを紛失してしまった場合でも、焦らないでください。「開示請求」という手続きを行えば、税務署に提出した申告書の内容を確認することができます。ただし、この手続きには手数料がかかり、書類を受け取るまでに1ヶ月ほど時間がかかることもあります。やはり、日頃から書類をきちんと整理し、控えを大切に保管しておくことが一番ですね。

税務署から連絡が来るケースとは?

先ほどお伝えしたように、申告後に何も連絡がないのが基本ですが、もちろん連絡が来る場合もあります。その主な理由は「税務調査」に関するものと、「提出書類の不備」に関するものです。それぞれどのような場合に連絡が来るのか、具体的に見ていきましょう。

最も多いのは「税務調査」の事前通知

相続税の申告後、税務署から連絡が来る最も一般的な理由が「税務調査」の事前通知です。税務署は、提出されたすべての申告書の内容をチェックしています。その過程で、申告された財産額が少ないのではないか、申告漏れの財産があるのではないか、といった疑問点が出てきた場合に、より詳しく内容を確認するために調査が行われます。すべての申告が調査の対象となるわけではなく、国税庁の統計によると、調査が行われるのは申告件数全体の約10%前後です。

書類の不備や記載漏れに関する問い合わせ

もう一つの連絡が来る理由として、提出した申告書や添付書類に単純なミスがあった場合が挙げられます。例えば、計算間違いや記入漏れ、必要な書類が添付されていないといったケースです。このような軽微な不備であれば、税務署から電話で問い合わせがあり、指示に従って修正申告書を提出したり、不足している書類を追加で送付したりすることで解決します。この段階で誠実に対応すれば、大きな問題になることはほとんどありません。

相続税の「税務調査」ってどんなもの?

「税務調査」と聞くと、テレビドラマの影響もあってか、なんだか厳しくて怖いイメージを持ってしまうかもしれませんね。しかし、調査がどのように行われるのかを事前に知っておくことで、いざという時も落ち着いて対応することができます。

税務調査の連絡はいつ頃来る?

税務調査の連絡が来る時期には、ある程度の傾向があります。一般的には、相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月)から1年〜2年が経過した後の、夏から秋にかけて連絡が来ることが多いと言われています。これは、毎年夏に行われる税務署の人事異動が関係しており、新しい担当者が着任してから本格的に調査が始まるためです。もちろん、この時期以外に連絡が来る可能性もゼロではありません。

税務調査の流れ

税務調査は、ある日突然調査官がやって来るわけではありません。まず、税務署から納税者本人(税理士に依頼している場合は税理士)へ電話で「実地調査を行いたい」という事前通知があります。その際に、調査の日時や場所、目的などが伝えられ、日程を調整します。調査当日は、通常1〜2名の調査官が自宅などを訪れ、約1〜2日間かけて、亡くなった方の遺品や預金通帳、日記などの資料を確認したり、ご家族に聞き取り調査を行ったりします。調査の結果、申告内容に誤りが認められた場合は「修正申告」を行い、不足分の税金とペナルティ(加算税や延滞税)を納付することになります。

税務調査で指摘されやすいポイント

税務調査では、特に申告漏れが起こりやすい財産が重点的にチェックされます。具体的には以下のようなポイントです。

チェックされやすいポイント 具体例
名義預金・名義株 亡くなった方が、生前に配偶者やお子さん、お孫さんの名前を借りて作っていた預金口座や証券口座。
生前贈与 相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与からは段階的に7年以内に延長)の贈与財産が、正しく申告されているか。
タンス預金などの現金 亡くなった方が自宅の金庫や引き出しに保管していた現金の申告漏れがないか。
海外資産 海外にある銀行口座や不動産、有価証券などがきちんと申告されているか。

何も連絡がなければ大丈夫?時効はあるの?

税務調査の連絡が来やすいと言われる申告後1〜2年を過ぎると、「もう何も連絡がないから大丈夫かな?」と安心したくなりますよね。税金には「時効」があるのか、その点についても確認しておきましょう。

相続税の時効は原則5年

相続税の申告内容に誤りがあった場合に、税務署が税額を訂正したり、決定したりできる期間(法律上は「除斥期間」といいます)は、原則として申告期限から5年間です。つまり、申告期限から5年が経過するまで税務署から何も連絡がなければ、後から追加で相続税を請求されることは基本的になくなります。

悪質な場合は7年に延長

ただし、注意点があります。意図的に財産を隠したり、書類を偽造したりして相続税を逃れようとした、と判断されるような悪質なケースでは、この時効が7年に延長されます。正しい申告をすることが、結果的にご自身を守ることにつながりますので、財産隠しなどは絶対に行わないようにしましょう。

不安な場合は税理士に相談を

ここまでご説明してきたように、相続税の申告は提出して終わりではありません。申告内容によっては、後日税務署から連絡が来る可能性もあります。もしご自身で作成した申告内容に少しでも不安がある場合や、税務調査の連絡が来てどう対応すればよいか分からない場合は、相続を専門とする税理士に相談することをおすすめします。税理士に依頼していれば、税務調査の事前通知の窓口になってもらえますし、調査当日も専門家として立ち会い、納税者の権利を守るために適切な主張をしてくれます。専門家がいるだけで、精神的な負担は大きく軽減されますよ。

まとめ

相続税の申告・納付後に税務署からレスポンスがあるかどうかは、その申告内容によって異なります。多くの場合、特に連絡はありませんが、税務調査や書類の不備で連絡が来る可能性も十分にあります。申告書の控えは受理の証拠として大切に保管し、万が一税務署から連絡があっても慌てずに対応することが大切です。相続税の時効は原則5年ですが、何よりも誠実で正確な申告を心がけることが一番の安心材料になります。ご自身での対応が難しいと感じたら、無理せず専門家である税理士の力を借りることも検討してみてくださいね。

参考文献

国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

国税庁 相続税のあらまし

相続税申告・納付後の税務署からの連絡に関するよくある質問

Q.相続税の申告書を提出したら、税務署から何か連絡はありますか?

A.いいえ、申告内容に問題がなければ、税務署から受理完了の連絡などは特にありません。提出した申告書の控え(受付印があるもの)が、正式に受理された証明となります。

Q.相続税を納付しましたが、税務署から領収書などは届きますか?

A.税務署から納付完了の通知や領収書が送られてくることはありません。金融機関で納付した際の領収証書や、e-Taxの受信通知などが納付の証明になりますので、大切に保管してください。

Q.税務署から連絡がない場合、税務調査は行われないということですか?

A.いいえ、連絡がないからといって税務調査が絶対に行われないわけではありません。税務調査は申告内容を審査した上で行われるため、申告から1〜2年後に行われるのが一般的です。

Q.税務署から連絡が来るとしたら、どのような内容ですか?

A.申告内容について確認したい点がある場合、「お尋ね」という書面が届いたり、税務調査の事前通知が電話で来たりします。いずれも申告内容に関する問い合わせや確認が目的です。

Q.税務調査の連絡はいつ頃に来ることが多いですか?

A.相続税の申告期限から1〜2年後、特に相続が発生した年の翌年または翌々年の8月〜11月頃に連絡が来ることが多いとされています。

Q.申告後、何年くらい何も連絡がなければ安心できますか?

A.法律上の時効は原則5年ですが、ほとんどの税務調査は申告後2年以内に行われます。3年程度経過して何も連絡がなければ、調査の可能性はかなり低くなると考えてよいでしょう。

事務所概要
社名
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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