税理士法人プライムパートナーズ

相続財産を寄付したい方へ|手続き・相続税申告の注意点を解説

2025-04-21
目次

故人の想いを社会貢献に繋げたい、相続税の負担を少しでも軽くしたい…そんなお考えから、相続した財産を寄付する方が増えています。しかし、いざ寄付をしようと思っても「どんな手続きが必要?」「税金はどうなるの?」と疑問に思うことも多いのではないでしょうか。この方法は、正しく行えば税制上の優遇も受けられる、とても意義のある選択です。この記事では、相続財産を寄付する際の手続きの流れや相続税申告の方法、知っておきたいメリットや注意点について、分かりやすく解説していきますね。

相続財産の寄付とは?基本的な仕組みを知ろう

「相続財産の寄付」とは、ご家族などが亡くなった後、あなたが相続した財産の一部または全部を、ご自身の意思で社会貢献活動を行う団体などに寄付することを指します。「故人が関心を寄せていた分野の団体に寄付したい」「受け継いだ財産を社会のために役立てたい」といった想いを形にするための素敵な方法です。

寄付できる財産の種類

寄付できる財産は、現金や預貯金だけではありません。不動産や株式といった財産も寄付の対象になります。ただし、すべての団体がどんな財産でも受け入れているわけではないので、事前に確認することが大切ですよ。

財産の種類 注意点
現金・預貯金 最も一般的で、ほとんどの団体で受け入れ可能です。手続きも比較的シンプルです。
不動産(土地・建物) 管理や維持に費用がかかるため、団体によっては受け入れを断られる場合があります。
有価証券(株式など) 証券会社を通じた名義変更などの手続きが必要になることがあります。
美術品・骨董品など 専門的な評価が必要になることもあり、受け入れている団体は限られます。

遺言による寄付(遺贈寄付)との違い

似たような言葉に「遺贈寄付」があります。これは、亡くなった方(被相続人)が遺言書で「私の財産を〇〇に寄付する」と意思表示をしていた場合に行われる寄付のことです。一方で、この記事でご説明している「相続財産の寄付」は、財産を相続した相続人ご自身の判断で行うものを指します。誰の意思による寄付か、という点が大きな違いで、税金の取り扱いも変わってきます。

相続財産を寄付する3つの大きなメリット

相続財産を寄付することは、社会に貢献できるだけでなく、寄付をした方にとっても税金面でのメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

メリット1:寄付した財産は相続税が非課税になる

最大のメリットは、税制上の優遇措置が受けられることです。国や地方公共団体、認定NPO法人といった特定の団体へ相続財産を寄付した場合、その寄付した財産には相続税がかからなくなります。つまり、課税対象となる相続財産から寄付した金額を差し引くことができるため、結果的に相続税の負担を軽くできる可能性があるのです。この特例を正しく活用することが、とても重要になります。

メリット2:寄付者自身の所得税・住民税も控除される可能性がある

相続財産から寄付を行った場合、寄付をした相続人ご自身の確定申告で「寄附金控除」を適用できる場合があります。これは、寄付額に応じてその年の所得税や翌年の住民税が軽減される制度です。相続税だけでなく、ご自身の税負担も軽くなる可能性があるのは嬉しいポイントですね。

メリット3:故人やご自身の想いを社会に役立てられる

金銭的なメリット以上に、「大切な財産が誰かのために役立っている」と感じられることは、大きな精神的な満足感につながります。故人が大切にしていた想いを引き継いだり、ご自身が関心のある社会問題の解決に貢献できたりと、寄付を通じて得られる心の豊かさは何物にも代えがたいものでしょう。

相続財産を寄付するための手続き3ステップ

では、実際に相続財産を寄付するには、どのような手順で進めれば良いのでしょうか。大まかな流れは以下の3つのステップになります。特に期限が重要なので、しっかりと確認しておきましょう。

STEP1:寄付先を選ぶ

まずは、どの団体に寄付するかを決めましょう。団体の活動内容や理念に共感できるかはもちろんですが、相続税の非課税特例の対象となる団体かどうかを確認することが非常に重要です。国や地方公共団体、認定NPO法人などが主な対象となります。団体のウェブサイトなどで確認したり、直接問い合わせてみたりすると安心です。

STEP2:寄付先に連絡して手続きを進める

寄付したい団体が決まったら、電話やウェブサイトのフォームなどから連絡を取ります。「相続財産からの寄付を検討している」と伝え、具体的な手続き方法を確認しましょう。どのような財産が寄付できるか、必要な書類は何か、そして何より相続税申告に必要な領収書や証明書はいつ頃発行してもらえるかを、この段階でしっかり聞いておくことがスムーズに進めるコツです。

STEP3:相続税の申告を行う

寄付が完了したら、相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、税務署へ相続税の申告を行います。この申告の際に、寄付によって非課税の特例を受けるための手続きをします。申告書には、寄付先から受け取った「寄付金の領収書」や「公益法人であることの証明書の写し」などを添付する必要があります。この10ヶ月という期限は絶対なので、忘れないように注意してください。

要注意!相続財産を寄付するときの3つのポイント

メリットの多い相続財産の寄付ですが、いくつか注意点があります。せっかくの想いが無駄にならないよう、以下の3つのポイントは必ず押さえておきましょう。

寄付と申告は「10ヶ月以内」の期限厳守!

何度も繰り返しになりますが、これが最も重要なポイントです。相続税の非課税特例を受けるには、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、寄付を完了させ、さらに相続税の申告まで済ませる必要があります。遺産分割協議や寄付先とのやり取りには時間がかかることもあるため、相続が発生したら早めに準備を始めることが大切です。

税制優遇の対象となる寄付先か確認する

寄付さえすれば、どこでも税金の優遇が受けられるわけではありません。対象となるのは、国が定めた特定の団体に限られます。寄付を検討している団体が対象になるか、事前にしっかり確認しましょう。

対象となる寄付先の例 対象外となる可能性が高い寄付先の例
国、地方公共団体(ふるさと納税も含む) 一般的なNPO法人(「認定」ではないもの)
認定NPO法人、特定の公益社団法人・財団法人 宗教法人(お世話になったお寺など)
日本赤十字社、社会福祉法人など 町内会、同窓会など

不動産などの現物寄付は「みなし譲渡所得税」に注意

現金ではなく、土地や建物、株式といった財産を寄付する場合、注意が必要です。これらの資産を個人から法人へ寄付すると、その時点の時価で譲渡(売却)したものとみなされ、取得したときからの値上がり益に対して「みなし譲渡所得税」という所得税が課税されることがあります。高額な税金が予想される場合は、寄付の方法を専門家と相談することをおすすめします。

相続税申告書の書き方と必要書類

非課税の特例を受けるためには、相続税の申告書へ正しく記載し、必要な書類を添付することが不可欠です。少し専門的になりますが、概要を知っておきましょう。

申告書のどこに書く?

相続税の申告書には、寄付した財産について記載する「第14表 特定の公益法人などに寄附した相続財産又は特定公益信託のために支出した相続財産の明細書」という書類があります。ここに、寄付先の名称や所在地、寄付した年月日、寄付した財産の種類・価額などを正確に記入します。この書類を申告書に添付することで、寄付した財産が相続税の計算から除かれます。

必要な添付書類

申告書への記入だけでなく、寄付したことを客観的に証明する書類を一緒に提出する必要があります。主に以下のような書類が求められますので、寄付先から忘れずに受け取りましょう。

  • 寄付金の受領証(領収書):寄付した金額や年月日が記載されたもの。
  • 寄付先の法人が特例の対象であることを証明する書類の写し:寄付先が公益法人などの場合に必要となります。団体側で用意してくれることがほとんどです。

これらの書類がないと特例を受けられないため、寄付先に連絡する際に「相続税申告に使います」と伝え、確実に発行してもらうようにしてください。

まとめ

相続財産の寄付は、故人やご自身の想いを社会貢献という形で未来へつなぐ、とても価値のある行為です。正しく手続きを行えば、相続税が非課税になるという税制上のメリットも受けられます。大切なのは、「相続開始後10ヶ月以内」という期限を意識し、税制優遇の対象となる寄付先を慎重に選ぶことです。手続きに不安を感じたり、不動産の寄付などで税金が複雑になったりする場合は、一人で悩まずに税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。この記事が、あなたの尊い想いを形にするための一助となれば幸いです。

参考文献

国税庁 No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき

国税庁 No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)

国税庁 相続税の申告書の記載例(令和6年分以降用)P.35

相続財産の寄付に関するよくある質問

Q.相続財産を寄付すると、必ず相続税は安くなりますか?

A.寄付した財産は課税対象から外れるため、相続税がかかる場合は税額が安くなる可能性が高いです。ただし、もともと相続税が基礎控除以下でかからない場合は、相続税額は変わりません。

Q.寄付の期限はいつまでですか?

A.相続税の非課税特例を受けるには、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に寄付を完了し、相続税の申告まで行う必要があります。

Q.どんな団体に寄付すれば、相続税の非課税特例を受けられますか?

A.国、地方公共団体、認定NPO法人、特定の公益社団法人・財団法人、社会福祉法人などが対象です。一般的なNPO法人や宗教法人への寄付は対象外となる場合が多いので注意が必要です。

Q.遺言で「寄付するように」と書かれていた場合も、この特例は使えますか?

A.遺言による寄付(遺贈)の場合、その財産はそもそも相続税の課税対象になりません。この記事で解説しているのは、相続人が自らの意思で相続財産から寄付する場合の特例です。

Q.現金ではなく、土地を寄付したいのですが可能ですか?

A.可能です。ただし、団体によっては不動産の受け入れを行っていない場合があります。また、寄付する際に「みなし譲渡所得税」が課税される可能性があるので、事前に専門家へ相談することをおすすめします。

Q.寄付をしたら、必ず相続税の申告が必要ですか?

A.はい、寄付によって相続税額が0円になったとしても、非課税の特例を受けるためには相続税の申告が必要です。申告をしないと、税務署は寄付の事実を把握できず、特例を適用できません。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /