ご家族が亡くなられた際、相続税のことが心配になる方もいらっしゃると思います。特に、相続人の中に障害のある方がいらっしゃる場合、税金の負担が大きくなるのではないかと不安に感じるかもしれません。
でも、ご安心ください。相続税には「障害者控除」という制度があり、一定の要件を満たすことで、税負担を軽減することができるんです。
このブログでは、相続税の障害者控除について、わかりやすく解説していきます。どんな方が対象になるのか、控除額はいくらになるのか、具体的な計算方法や手続きについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
相続税の障害者控除ってなに?
相続税の障害者控除とは、相続人の中に障害のある方がいる場合に、その方の相続税額から一定の金額を差し引くことができる制度です。障害のある方の生活を支えるために、税負担を少しでも軽くしようという目的で設けられています。
どんな人が対象になるの?
障害者控除の対象となるのは、次の3つの要件をすべて満たす方です。
- 相続開始時に日本国内に住所があること: 相続が始まった時(被相続人が亡くなった時)に、日本国内に住んでいる必要があります。
- 相続開始時に障害者であること: 相続が始まった時に、障害者手帳の交付を受けているか、それに準ずる状態である必要があります。
- 法定相続人であること: 亡くなった方の配偶者、子、父母、兄弟姉妹など、法律で定められた相続人である必要があります。
「一般障害者」と「特別障害者」の違いは?
障害者控除では、障害の程度によって「一般障害者」と「特別障害者」の2つの区分があります。
- 一般障害者: 身体障害者手帳の3級から6級、精神障害者保健福祉手帳の2級または3級、知的障害者のうち中度または軽度の方などが該当します。
- 特別障害者: 身体障害者手帳の1級または2級、精神障害者保健福祉手帳の1級、知的障害者のうち重度の方などが該当します。
どちらに該当するかによって、控除額が変わってきます。
控除額はいくらになるの?
控除額は、次の計算式で算出します。
- 一般障害者: (85歳 – 相続開始時の年齢) × 10万円
- 特別障害者: (85歳 – 相続開始時の年齢) × 20万円
例えば、相続開始時の年齢が50歳3ヶ月の一般障害者の場合、
(85歳 – 50歳) × 10万円 = 350万円
が控除額となります(年齢は1年未満の端数を切り捨てて計算します)。
障害者控除額が余ったらどうなる?
障害者控除額が、その方の相続税額よりも大きい場合、控除しきれない部分が出てきますよね。その場合は、他の相続人で、かつ、その障害のある方の扶養義務者(配偶者、親、子、兄弟姉妹など)の相続税額から差し引くことができます。
具体的な計算例を見てみよう
例えば、相続人が兄(一般障害者、45歳)と妹(40歳)の2人で、兄の相続税額が300万円、妹の相続税額が400万円だったとします。
兄の障害者控除額は、(85歳 – 45歳) × 10万円 = 400万円 です。
兄の相続税額300万円から400万円を引くと、100万円が控除しきれません。この100万円を妹の相続税額400万円から差し引くことができるので、妹の最終的な相続税額は300万円となります。
障害者控除を受けるための手続きは?
障害者控除を受けるためには、相続税の申告書に必要事項を記入し、障害者手帳のコピーなどの書類を添付して提出する必要があります。
必要な書類は?
主に以下の書類が必要になります。
- 相続税申告書の第6表(障害者控除の計算を記載する部分)
- 障害者手帳のコピー(または医師の診断書など、障害の程度を証明する書類)
- 戸籍謄本(法定相続人であることを確認するため)
申告書の書き方は?
相続税申告書の第6表に、障害者の方の氏名、生年月日、障害の程度、控除額などを記入します。国税庁のホームページに申告書の様式や記入例がありますので、参考にしてください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/r04.htm
過去に障害者控除を受けている場合は?
以前の相続でも障害者控除を受けている場合は、今回の控除額が制限されることがあります。具体的には、「今回の相続での控除額」と「前回の相続での控除額の残額」を比較して、少ない方の金額が控除額となります。
その他の注意点
- 障害者控除は、相続税額から直接差し引くことができるため、税負担の軽減効果が大きい制度です。
- 障害者手帳の申請中に相続が開始した場合でも、医師の診断書などがあれば、障害者控除を受けられる場合があります。
- 障害者控除を適用して相続税額が0円になる場合は、相続税の申告は不要です。
まとめ
相続税の障害者控除は、要件を満たせば、相続税の負担を大きく軽減できる可能性がある制度です。
もし、ご家族に障害のある方がいらっしゃる場合は、この制度の利用を検討してみてください。
ご自身で手続きをするのが難しいと感じたら、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、あなたの状況に合わせて、最適なアドバイスやサポートをしてくれますよ。
相続税の障害者控除のよくある質問まとめ
Q. 相続税の障害者控除とは何ですか?
A. 相続人に障害のある方がいる場合、一定の金額を相続税の課税対象額から差し引くことができる制度です。
Q. 障害者控除の対象となる「障害者」とは、具体的にどのような人ですか?
A. 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳などの交付を受けている方や、その他、常に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある方などです。
Q. 障害者控除の控除額はいくらですか?
A. 一般障害者の場合は85歳に達するまでの年数1年につき10万円、特別障害者の場合は85歳に達するまでの年数1年につき20万円です。
(例:70歳の一般障害者の場合、(85歳-70歳)×10万円=150万円)
Q. 障害者控除を受けるための手続きはどのようにすればよいですか?
A. 相続税の申告書に障害者控除に関する事項を記載し、障害者手帳の写しなどの必要書類を添付して税務署に提出します。
Q. 障害者控除は、相続人全員が受けられますか?
A. いいえ、障害者控除を受けられるのは、障害者である相続人のみです。
Q. 相続開始時に障害者でなかった場合でも、後から障害者になった場合は控除を受けられますか?
A. いいえ、相続開始時に障害者であることが要件となりますので、後から障害者になった場合は控除を受けられません。