「相続税って、未成年でも払うの?」「未成年者が相続人になる場合の注意点は?」
相続税は、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ方(相続人)が納める税金です。 相続人が未成年の場合、税金の負担を軽減するための特別な制度があります。それが「未成年者控除」です。
未成年者控除は、正しく理解して適用すれば、相続税を大幅に減らせる可能性があります。 しかし、制度の内容や手続きを知らないと、せっかくの控除を受けられずに損をしてしまうかもしれません。
今回は、相続税の未成年者控除について、わかりやすく解説します。
相続税の未成年者控除ってなに?
未成年者控除とは、未成年者が相続人の場合に、一定の金額を相続税額から差し引くことができる制度です。 未成年者は、これから教育費や生活費など、さまざまなお金がかかります。 そこで、未成年者の将来の負担を少しでも軽くするために、この制度が設けられました。
未成年者控除の対象者は?
未成年者控除を受けるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所があること(一定の例外あり)。
- 相続や遺贈で財産を取得したときに18歳未満であること。
- 令和4年3月31日以前の相続の場合は「20歳未満」となります。
- 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること。
- 法定相続人とは、法律で定められた相続人のことです。
- 相続放棄をした場合でも、その放棄がなかったものとして扱われます。
どれくらい控除されるの?【計算方法】
未成年者控除の金額は、以下の計算式で求められます。
控除額 =(18歳 - 相続開始時の年齢)× 10万円
- 年齢は、相続が開始した時点での満年齢です。
- 1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年として計算します。
例えば、相続開始時の年齢が15歳9ヶ月の場合、年齢は16歳として計算します。 この場合の控除額は、(18歳 – 16歳)× 10万円 = 20万円 となります。
過去に未成年者控除を受けている場合は?
過去に未成年者控除を受けている場合、今回の相続で控除できる金額には制限があります。 今回の相続で計算した控除額が、前回の相続までに控除しきれなかった金額を上回る場合、控除できるのは、控除しきれなかった金額までとなります。 少し複雑ですので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
未成年者控除、ココがポイント!
未成年者控除には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
扶養義務者の税額からも控除できる!
未成年者控除の額が、未成年者本人の相続税額より大きい場合、控除しきれない部分の金額は、その未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
扶養義務者とは、配偶者、直系血族(父母、祖父母、子、孫など)、兄弟姉妹などです。 複数の扶養義務者がいる場合は、協議によって、誰の相続税額から控除するかを決めます。
相続放棄をしても適用される場合がある!
相続放棄をした場合でも、未成年者控除が適用されるケースがあります。 それは、遺言によって財産を受け取る場合(遺贈)や、生命保険金などを受け取る場合です。 これらの場合は、法定相続人であれば未成年者控除の対象となります。
未成年者が財産を取得しないと適用されない!
未成年者控除は、未成年者が相続や遺贈によって財産を取得することが要件です。 したがって、未成年者が全く財産を取得しない場合は、未成年者控除は適用されません。
申告はどうすればいいの?
未成年者控除を受けるためには、相続税の申告書に必要事項を記入して提出する必要があります。 申告書の「未成年者控除額の計算書」という欄に、未成年者の氏名、年齢、控除額などを記入します。
相続税がゼロになる場合は申告不要?
未成年者控除を適用した結果、相続税額がゼロになる場合は、相続税の申告は不要です。 ただし、他の相続人が相続税の申告をする必要がある場合には、その申告書に未成年者控除に関する事項を記載する必要があります。
特別代理人の選任が必要な場合も!
未成年者が相続人となる場合、遺産分割協議を行うためには、原則として親権者が代理人となります。 しかし、親権者も相続人である場合、親権者と未成年者の間で利益が相反する(対立する)可能性があります。 このような場合には、家庭裁判所に申し立てて、「特別代理人」を選任する必要があります。 特別代理人は、未成年者の利益を保護する役割を担います。
その他の税額控除
相続税には、未成年者控除以外にも、さまざまな税額控除の制度があります。主なものは以下の通りです。
- 配偶者控除: 配偶者が相続する場合に、一定の金額を控除できます。
- 障害者控除: 相続人が障害者の場合に、一定の金額を控除できます。
- 相次相続控除: 短期間に相次いで相続が発生した場合に、一定の金額を控除できます。
- 贈与税額控除: 生前贈与があった場合に、一定の金額を控除できます。
- 外国税額控除: 外国で相続税に相当する税金が課税された場合に、一定の金額を控除できます。
これらの控除をうまく活用することで、相続税の負担を軽減することができます。
専門家への相談も検討しよう!
相続税の計算や申告は、複雑で難しい場合があります。 特に、未成年者控除やその他の税額控除を適用する場合には、専門的な知識が必要となることもあります。 不安な場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。 専門家は、あなたの状況に合わせて、最適なアドバイスをしてくれます。
まとめ
未成年者控除は、未成年者の相続税の負担を軽減するための大切な制度です。 制度の内容を正しく理解し、適切に申告することで、相続税を大きく減らせる可能性があります。 今回の記事を参考に、未成年者控除を上手に活用してください。 そして、もしご自身で判断が難しい場合は、専門家への相談も検討しましょう。
相続税の未成年者控除ってなに?よくある質問まとめ
Q. 未成年者控除って何ですか?
A. 未成年者控除は、相続人が未成年(18歳未満)の場合に、相続税額から一定額を控除できる制度です。未成年者の将来の生活費などを考慮して設けられています。
Q. 未成年者控除の控除額はいくらですか?
A. 控除額は、未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円です。例えば、相続開始時に10歳であれば、(18歳-10歳)×10万円=80万円が控除額になります。
Q. 未成年者控除を受けるための条件はありますか?
A. はい、以下の条件をすべて満たす必要があります。
1. 相続や遺贈で財産を取得すること
2. 相続開始時に日本国内に住所があること(一時的な居住など、一定の場合を除く)
3. 相続開始時に18歳未満であること
4. 法定相続人であること
Q. 胎児も未成年者控除を受けられますか?
A. はい、胎児も相続人となるため、未成年者控除を受けられます。この場合、生まれた日を基準に控除額を計算します。
Q. 未成年者控除は、相続税の申告をしないと受けられませんか?
A. はい、原則として、相続税の申告書に未成年者控除に関する事項を記載し、必要書類を添付して提出する必要があります。
Q. 未成年者控除で控除しきれない金額がある場合はどうなりますか?
A. 未成年者本人の相続税額から控除しきれない金額がある場合は、その未成年者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。