税理士法人プライムパートナーズ

知らないと損!「みなし役員」の判定基準と税務上の注意点を徹底解説

2024-11-11
目次

みなし役員」という言葉、聞いたことはありますか?「うちは役員登記している人以外は全員従業員だから関係ない」と思っていると、思わぬところで税務署から指摘を受けてしまうかもしれません。実は、登記上の役員でなくても、税金の計算上は「役員」として扱われる「みなし役員」という考え方があるんです。これが適用されると、給与や賞与の経費計上に大きな影響が出ることがあります。この記事では、どんな人がみなし役員になるのか、その判定基準や注意点を、わかりやすく解説していきますね。

みなし役員とは?基本的な考え方

みなし役員とは、会社法上の役員として登記されていなくても、法人税法上では「役員」として扱われる人のことを指します。つまり、肩書は従業員でも、その働き方や会社への関与度、株式の保有状況などから「実質的に経営者側の人だ」と税務署に判断されるケースです。この判断は、形式的な役職名ではなく、あくまで実態に基づいて行われるのが大きなポイントです。

会社法上の役員と税法上の役員の違い

まず、「役員」には2つの考え方があることを理解しておきましょう。一つは会社法で定められた役員、もう一つが税法上の役員です。この二つは範囲が少し異なります。

区分 説  明
会社法上の役員 取締役、監査役、会計参与など、会社法で定められ、登記簿に記載されている役員のことです。一般的に「役員」というと、こちらをイメージする方が多いかもしれませんね。
税法上の役員 会社法上の役員に加えて、実質的に経営に従事していると判断される「みなし役員」も含まれます。税金の計算では、こちらの広い範囲で役員かどうかを判断します。

なぜ「みなし役員」という制度があるの?

なぜこのような制度があるかというと、会社の利益操作を防ぐためです。役員は自分の給与を自分で決めることができる立場にあります。もし、決算前に「利益がたくさん出そうだから、自分の給与や賞与を増やして経費を使い、法人税を減らそう」ということが自由にできてしまうと、公平な課税が難しくなります。そうした事態を防ぐために、実質的に経営に関わっている人を広く「役員」とみなし、給与や賞与の支払い方に一定のルールを設けているのです。

みなし役員に該当する2つのケース

では、具体的にどのような人がみなし役員と判断されるのでしょうか。法人税法では、大きく分けて2つのケースが定められています。

役員以外で経営に実質的に関与している人

一つ目は、役員として登記されていなくても、その地位や職務からみて、実質的に法人の経営に従事していると認められる人です。例えば、以下のような肩書の方が該当する可能性があります。

  • 会長、相談役、顧問など
  • 代表取締役の配偶者で、会社の重要な意思決定に関わっている方
  • その他、肩書に関わらず経営会議に参加し、重要な発言権を持っている方

ポイントは「経営に従事している」かどうかです。単に事務作業を手伝っているだけでは該当しませんが、仕入れ先の決定、資金調達、従業員の採用など、会社の根幹に関わる決定に携わっている場合は、みなし役員と判断される可能性が高まります。

同族会社の従業員で特定の条件を満たす人

二つ目は、特に中小企業で注意が必要なケースです。同族会社(少数の株主とその親族などで株式の50%超を保有している会社)の従業員で、以下の3つの条件をすべて満たし、かつ経営に従事している人はみなし役員とされます。

  1. 株主グループの要件:会社の株主をグループ分けしたとき、上位3位までの株主グループの持株割合の合計が50%超となり、そのいずれかのグループに属していること。
  2. グループの所有割合の要件:その従業員が属している株主グループの持株割合が10%を超えていること。
  3. 個人の所有割合の要件:その従業員本人と、その配偶者の持株割合を合計して5%を超えていること。

特に注意したいのが3つ目の条件です。例えば、社長である夫が株式を100%保有している会社で、妻が従業員として働いている場合、妻自身は株を1株も持っていなくても「配偶者の持株と合計して5%超」という条件を満たします。この上で、妻が経営にも関わっていると判断されれば、みなし役員に該当することになります。

みなし役員になると何が変わる?給与・賞与・退職金への影響

もしみなし役員と判断された場合、給与や賞与などの扱いは通常の従業員とは大きく変わります。知らずに従業員と同じように支払っていると、後から経費として認められず、追加で税金を支払うことにもなりかねません。

給与は「定期同額給与」が原則

役員の給与(役員報酬)は、原則として「定期同額給与」でなければ経費(損金)として認められません。これは、事業年度の途中で自由に金額を変えられない、毎月同じ金額を支払うというルールです。みなし役員の給与も、このルールが適用されます。
例えば、毎月30万円を支払っている場合、業績が良かったからといって特定の月だけ40万円にすると、増額した10万円分は会社の経費として認められなくなってしまいます。

賞与(ボーナス)は原則損金にならない

従業員に支払う賞与は、全額会社の経費にできます。しかし、役員(みなし役員を含む)への賞与は、原則として経費にはなりません。もし賞与を経費にしたい場合は、「事前確定届出給与」という手続きを税務署に行う必要があります。これは、「いつ、誰に、いくら支払うか」を事前に届け出る制度ですが、届け出た金額や日付と1円でも1日でもずれてしまうと、全額が経費として認められないという非常に厳しいルールになっています。

退職金も不相当に高額な部分は損金にならない

退職金についても、役員と同様の扱いを受けます。従業員の退職金は退職金規程に基づいていれば問題なく経費になりますが、役員の場合は「功績倍率法」などを用いて計算された適正な金額でなければなりません。不相当に高額だと判断された部分は、経費として認められない可能性があります。

社会保険の取り扱いはどうなる?

税金だけでなく、社会保険の取り扱いにも影響があります。ここもしっかりと確認しておきましょう。

健康保険・厚生年金保険への加入

常勤の役員が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となるのと同様に、みなし役員も勤務実態が常勤であれば、加入義務が発生します。たとえ非常勤という扱いでも、勤務日数や時間、報酬額などから総合的に判断されますので、形式だけでなく実態が重要になります。

雇用保険は原則として加入できない

役員は、会社と雇用関係にある「労働者」ではなく、経営を委任された「使用者」側の立場とされます。そのため、原則として雇用保険に加入することはできません。これはみなし役員も同様です。ただし、部長を兼務するなど、従業員としての立場も明確にある「使用人兼務役員」であれば加入できる場合がありますが、みなし役員と判断される人は、この「使用人兼務役員」にはなれないケースが多いので注意が必要です。

親族がみなし役員になる場合の注意点

特に注意が必要なのが、社長の配偶者や子どもなど、親族が会社で働いているケースです。節税のつもりが、かえってリスクを高めてしまうこともあります。

知らないうちに配偶者がみなし役員に?

先述したように、配偶者は株を所有していなくても、株式保有の要件を満たしてしまうことがあります。その上で、経理や総務を手伝いながら、経営上の重要な相談に乗っているような場合、「実質的に経営に従事している」と判断され、みなし役員に該当するリスクが非常に高くなります。この場合、妻に支払っていた給与や、従業員のつもりで支払った賞与が経費として認められなくなる可能性があります。

親族への給与支払いのメリットと税務リスク

親族に給与を支払うことは、所得を分散させることで世帯全体の手取りを増やし、所得税や住民税を節税できるという大きなメリットがあります。しかし、その親族がみなし役員に該当すると、これまで解説してきたような給与や賞与の制限を受けることになります。メリットを活かすためにも、業務内容や経営への関与の度合いを明確にし、みなし役員と判断されないような体制を整えることが大切です。

まとめ

みなし役員は、肩書や登記ではなく「実態」で判断される、という点が一番のポイントです。主な判定基準は「経営への実質的な関与」と「同族会社における特定の株式保有要件」の2つです。みなし役員と判断されると、給与は定期同額給与のルールに縛られ、賞与は原則として経費にできなくなるなど、税務上の大きな制約を受けます。
特に、ご家族で会社を経営されている場合は、奥様やお子様が意図せずみなし役員に該当してしまうケースも少なくありません。「知らなかった」では済まされないのが税金の世界です。この記事を参考に、自社の体制を一度見直してみてくださいね。もし少しでも不安な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.5200 役員の範囲

国税庁 No.5205 役員のうち使用人兼務役員になれない人

みなし役員のよくある質問まとめ

Q. みなし役員とは何ですか?

A. 法人税法上の役員として登記されていなくても、経営に実質的に関与しているなどの理由から、税法上は役員とみなされる人のことです。役員と同様の税務上の扱いを受けます。

Q. どのような人がみなし役員と判断されますか?

A. 経営に従事している会長や相談役のほか、同族会社の従業員で特定の要件(持株割合など)を満たす人が該当します。肩書ではなく、職務の実態に基づいて判断されます。

Q. みなし役員になるとどのようなデメリットがありますか?

A. みなし役員に支払われる給与は役員報酬として扱われるため、賞与や不相当に高額な部分が会社の経費(損金)として認められず、法人税の負担が増える可能性があります。

Q. 家族を従業員として雇うと、みなし役員になりますか?

A. 家族というだけでみなし役員になるわけではありません。しかし、同族会社において一定以上の株式を所有し、経営に実質的に関与している場合は、みなし役員と判断される可能性があります。

Q. 「使用人兼務役員」と「みなし役員」の違いは何ですか?

A. 「使用人兼務役員」は登記された役員が従業員としての身分も持つ場合を指し、従業員分の給与や賞与は経費にできます。一方、「みなし役員」は登記されていない従業員が役員とみなされるため、給与全体が役員報酬として扱われます。

Q. みなし役員かどうかは誰がどのように判断するのですか?

A. 最終的な判断は、税務調査の際に税務署が行います。職務内容や権限、会社の意思決定への関与度といった実質的な面を総合的に見て判断されます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。