「入院や手術で医療費が高額になったらどうしよう…」と不安に感じていませんか?そんなときに私たちの家計を助けてくれる、とても心強い制度が「高額療養費制度」です。この制度を知っているかどうかで、万が一のときの経済的な負担が大きく変わります。この記事では、高額療養費制度の仕組みから、具体的な自己負担額、申請方法まで、誰にでも分かるように優しく解説していきますね。
高額療養費制度ってどんな制度?
高額療養費制度とは、病院や薬局の窓口で支払った医療費が、1か月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額が後から払い戻される公的な医療保険制度のことです。急な病気やケガで高額な医療費がかかっても、家計への負担が重くなりすぎないように守ってくれる、セーフティーネットのような役割を持っています。
自己負担限度額は年齢や所得で決まる
1か月に支払う医療費の上限額(自己負担限度額)は、みんなが一律同じ金額というわけではありません。年齢(69歳以下か、70歳以上か)や、ご自身の所得(お給料や収入)によって、いくつかの区分に分けられています。これは、それぞれの負担能力に応じた公平な仕組みになっているからなんです。具体的な金額については、後ほど詳しくご説明しますね。
対象となる医療費とならない医療費
高額療養費制度の対象となるのは、健康保険が適用される医療費です。病院での診察、手術、検査、処方された薬代などがこれにあたります。一方で、以下のような費用は対象外となるので注意が必要です。
| 対象外の費用の例 | 内容 |
| 差額ベッド代 | 個室や少人数の部屋を希望した場合の室料 |
| 入院中の食事代 | 入院時に提供される食事の一部負担金 |
| 先進医療にかかる費用 | 保険適用外の高度な医療技術料 |
| 自由診療 | 美容整形や保険適用外の歯科治療など |
月をまたぐと合算できないので注意!
この制度でとても大切なポイントが、計算期間は「同じ月の1日から末日まで」ということです。たとえば、1月20日から2月10日まで入院した場合、1月分と2月分はそれぞれ別々に計算されます。月をまたいで医療費を合算することはできないので、入院や治療のタイミングによっては自己負担額が変わってくることを覚えておきましょう。
自己負担限度額はいくら?(年齢・所得別)
それでは、実際に自己負担限度額がいくらになるのかを見ていきましょう。ご自身の年齢と所得の区分がどこに当てはまるか、確認してみてくださいね。
69歳以下の方の上限額
69歳以下の方の自己負担限度額は、所得に応じて5つの区分に分かれています。
| 所得区分 | 自己負担限度額(1か月) |
| 区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) 年収目安:約1,160万円~ |
252,600円 + (総医療費 – 842,000円) × 1% |
| 区分イ (標準報酬月額53万円~79万円の方) 年収目安:約770万円~約1,160万円 |
167,400円 + (総医療費 – 558,000円) × 1% |
| 区分ウ (標準報酬月額28万円~50万円の方) 年収目安:約370万円~約770万円 |
80,100円 + (総医療費 – 267,000円) × 1% |
| 区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) 年収目安:~約370万円 |
57,600円 |
| 区分オ (住民税非課税の方) |
35,400円 |
※総医療費とは、保険適用前の医療費の全額(10割)のことです。
70歳以上の方の上限額
70歳以上の方は、外来だけの上限額が設けられているなど、69歳以下の方とは少し仕組みが異なります。
| 所得区分 | 自己負担限度額(1か月) |
| 現役並み所得者Ⅲ (標準報酬月額83万円以上の方) |
252,600円 + (総医療費 – 842,000円) × 1% |
| 現役並み所得者Ⅱ (標準報酬月額53万円~79万円の方) |
167,400円 + (総医療費 – 558,000円) × 1% |
| 現役並み所得者Ⅰ (標準報酬月額28万円~50万円の方) |
80,100円 + (総医療費 – 267,000円) × 1% |
| 一般 (上記・下記以外の方) |
外来のみ:18,000円 入院+外来(世帯):57,600円 |
| 低所得者Ⅱ (住民税非課税世帯) |
外来のみ:8,000円 入院+外来(世帯):24,600円 |
| 低所得者Ⅰ (住民税非課税世帯で所得が一定基準以下の方) |
外来のみ:8,000円 入院+外来(世帯):15,000円 |
医療費の負担をさらに軽くする仕組み
高額療養費制度には、基本の仕組みに加えて、さらに負担を軽くしてくれる特例が用意されています。これらも上手に活用しましょう。
世帯合算
一人ひとりの自己負担額が上限に達しなくても、同じ公的医療保険に加入している家族の自己負担額を同じ月内で合算することができます。合算した金額が自己負担限度額を超えれば、その超えた分が払い戻されます。ただし、69歳以下の方の場合は、1つの医療機関で支払った自己負担額が21,000円以上のものだけが合算の対象になるというルールがありますので、ご注意ください。
多数回該当
もしも治療が長引き、直近12か月以内に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目からは自己負担限度額がさらに引き下げられます。これを「多数回該当」といいます。例えば、年収約370万円~約770万円(区分ウ)の方の場合、通常の上限額は「80,100円+α」ですが、4回目以降は44,400円に下がります。長期間の治療が必要な方にとっては、とても助かる仕組みです。
高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)に支払った医療費と介護保険の自己負担額の両方が高額になった場合、それらを合算して年間の上限額を超えた分が払い戻される「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあります。医療と介護、両方のサービスを利用しているご家庭は、こちらの制度も覚えておくと良いでしょう。
高額療養費制度の申請方法
高額療養費を受け取るには、原則として申請が必要です。申請方法は大きく分けて2つあります。
事後に払い戻しを受ける方法(一般的な方法)
最も一般的なのが、医療機関の窓口でいったん医療費(3割負担など)を支払い、後から払い戻しを申請する方法です。申請先は、ご自身が加入している公的医療保険の窓口です。
| 加入している保険 | 主な申請先 |
| 会社の健康保険(健康保険組合、協会けんぽなど) | 勤務先の担当部署、または各健康保険組合・協会けんぽ支部 |
| 国民健康保険・後期高齢者医療制度 | お住まいの市区町村役場の担当窓口 |
多くの場合、診療月から3~4か月後に保険者から申請書が送られてくるので、必要事項を記入して提出します。申請には時効があり、診療を受けた月の翌月の初日から2年を過ぎると申請できなくなるので、忘れないように手続きしましょう。
窓口での支払いを抑える方法(限度額適用認定証)
「高額な医療費を一時的に立て替えるのも大変…」という場合は、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくのがおすすめです。この認定証を保険証と一緒に医療機関の窓口へ提示すれば、1か月の支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録(マイナ保険証)している場合は、医療機関の窓口で同意すれば、限度額適用認定証がなくても同様の扱いを受けられます。
高額療養費制度と医療費控除の違い
高額療養費制度とよく似た言葉に「医療費控除」がありますが、この2つは全く異なる制度です。
高額療養費制度は「医療費の払い戻し」
これまで説明してきた通り、高額療養費制度は公的医療保険から直接お金が払い戻される制度です。目的は、高額な医療費による家計への直接的な負担を軽減することです。
医療費控除は「税金の還付」
一方、医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が原則10万円を超えた場合に、確定申告をすることによって所得税や住民税が安くなる(還付される)制度です。こちらは税金の制度であり、払い戻されるのは払いすぎた税金です。高額療養費制度で払い戻された金額は、医療費控除を計算する際に、支払った医療費の合計額から差し引く必要がありますので、ご注意ください。
まとめ
高額療養費制度は、誰もが安心して医療を受けられるように支えてくれる、日本の素晴らしい公的医療保険制度の一つです。もしもの病気やケガで高額な医療費が発生しても、この制度があることを知っていれば、落ち着いて治療に専念できます。ご自身の自己負担限度額がいくらになるのか、そしてどんな申請方法があるのかを事前に理解しておくことが、いざという時の安心につながります。この機会に、ぜひご家族とも情報を共有してみてくださいね。
参考文献
高額療養費のよくある質問まとめ
Q.高額療養費制度とは、どのような制度ですか?
A.医療費の自己負担額がひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額が払い戻される制度です。上限額は年齢や所得によって異なります。
Q.自己負担の上限額はいくらですか?
A.年齢や所得水準によって細かく区分されています。例えば、70歳未満で標準報酬月額が28万~50万円の方の場合、約8万円強が目安となります。ご自身の正確な上限額は加入している公的医療保険にご確認ください。
Q.高額療養費の申請はどのようにすればよいですか?
A.ご加入の公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険など)に申請書を提出します。多くの場合、診療月から数か月後に保険者から申請書が送付されてきます。
Q.入院前に何かできることはありますか?
A.事前に「限度額適用認定証」の交付を受けておくと便利です。これを医療機関の窓口で提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
Q.対象外になる費用はありますか?
A.はい、保険適用外の差額ベッド代、入院時の食費、先進医療にかかる費用などは高額療養費制度の対象外となります。
Q.家族の医療費と合算できますか?
A.はい、同じ公的医療保険に加入している家族であれば、同じ月にかかった自己負担額を合算することができます。これを「世帯合算」といい、合算後の金額が上限額を超えれば制度の対象となります。