確定申告の時期が近づくと、「どんな書類が必要だったかな?」と不安になることはありませんか?特に、経費などを証明するための「証憑(しょうひょう)書類」は、たくさんあって管理も大変ですよね。この記事では、個人事業主の方が確定申告を行う際に必要な証憑書類の種類や、それぞれの保存期間について、初心者の方にも分かりやすく解説します。しっかり準備して、スムーズに申告を終えましょう!
そもそも証憑書類って何?確定申告に欠かせない理由
まずは基本からおさえましょう。証憑書類とは、カンタンに言うと「取引が本当にあったことを証明する書類」のことです。例えば、お店で何かを買ったときにもらうレシートや領収書が代表的なものですね。これらの書類があることで、売上や経費の金額が正しいことを客観的に示すことができます。
なぜ証憑書類が必要なの?
確定申告では、1年間の所得を計算して税額を国に報告します。その際、売上から経費を差し引いて所得を計算しますが、その経費が「本当に事業のために使われたものか」を証明するために証憑書類が必要になります。もし税務署による税務調査が行われた場合、この証憑書類がなければ経費として認められず、追加で税金を納めることになる可能性もあるため、非常に重要なのです。
確定申告書への添付は不要でも保管義務がある
意外に思われるかもしれませんが、領収書などの証憑書類を確定申告書に添付して提出する必要はありません。ただし、法律によって一定期間、きちんと保管しておくことが義務付けられています。税務調査などで提示を求められた際に、すぐに出せるように整理しておくことが大切です。
【種類別】確定申告で集めるべき証憑書類一覧
それでは、具体的にどのような証憑書類を集めておけばよいのでしょうか。ここでは「収入」「経費」「各種控除」の3つのカテゴリーに分けて、必要な書類をリストアップしました。ご自身の事業と照らし合わせながら確認してみてください。
収入(売上)に関する証憑書類
売上があったことを証明するための書類です。取引先とのやり取りで発行・受領した書類は、控えを必ず保管しておきましょう。
| 書類の種類 | 備 考 |
| 請求書の控え | サービスや商品を提供した後、代金を請求する際に発行した書類の控えです。 |
| 領収書の控え | 代金を受け取った際に発行した領収書の控えです。 |
| 預金通帳 | 取引先から売上代金が振り込まれた記録は、重要な証拠となります。 |
| 契約書 | 継続的な取引がある場合、契約内容や金額を示す大切な書類です。 |
経費(仕入・支出)に関する証憑書類
事業を行うために支払った費用を証明する書類です。一番身近で、量も多くなりがちな部分なので、日頃からこまめに整理しておくのがおすすめです。
| 書類の種類 | 備 考 |
| 領収書・レシート | 支払いの事実を証明する最も基本的な書類です。宛名が「上様」ではなく、屋号や氏名をもらうのが理想です。 |
| 請求書 | 商品やサービスを購入した際に受け取る書類です。銀行の振込明細など、支払った証明とセットで保管しましょう。 |
| クレジットカードの利用明細書 | 事業専用のクレジットカードを作っておくと、経費の管理がとても楽になります。 |
| 銀行の振込明細書 | 銀行振込で家賃や仕入代金を支払った場合の証明になります。 |
各種控除を受けるための証明書類
税金の負担を軽くしてくれる「所得控除」や「税額控除」を受けるためには、支払いを証明する書類が必要です。節税に直結する大切な書類なので、紛失しないようにしましょう。
| 控除の種類 | 必要な証明書類の例 |
| 社会保険料控除 | 国民年金保険料控除証明書、国民健康保険料の納付済額通知書など |
| 生命保険料控除 | 保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」 |
| 地震保険料控除 | 保険会社から送られてくる「地震保険料控除証明書」 |
| 医療費控除 | 医療費の領収書をもとに作成した「医療費控除の明細書」、健康保険組合などから送付される「医療費通知」 |
| 寄附金控除 | 寄附先の団体から発行される受領証(ふるさと納税など) |
| 住宅ローン控除(2年目以降) | 税務署から送付される「住宅借入金等特別控除申告書」、金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」 |
なお、e-Taxで確定申告を行う場合、生命保険料控除証明書などの一部の書類は、内容を入力して送信することで提出を省略できます。ただし、その場合でも自宅で5年間は保管しておく必要がありますのでご注意ください。
【申告方法別】証憑書類の保存期間はどのくらい?
証憑書類は、確定申告の方法によって法律で定められた保存期間が異なります。「青色申告」と「白色申告」の2つのケースに分けて見ていきましょう。保存期間の数え方は、確定申告の期限日(通常は翌年3月15日)の翌日からスタートします。
青色申告の場合
節税メリットの大きい青色申告では、帳簿や書類の保存期間が白色申告よりも長く定められています。原則は7年間と覚えておきましょう。
| 書類の種類 | 保存期間 |
| 帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など) | 7年間 |
| 決算関係書類(貸借対照表、損益計算書など) | 7年間 |
| 現金預金取引等関係書類(領収書、預金通帳など) | 7年間 ※ |
| その他の書類(請求書、見積書、契約書など) | 5年間 |
※ただし、領収書などの現金預金取引等関係書類については、前々年分の事業所得および不動産所得が300万円以下の場合は、保存期間が5年に短縮されます。
白色申告の場合
白色申告の場合、書類の種類によって保存期間が異なります。少しややこしいですが、重要な「法定帳簿」は青色申告と同じく7年間の保存が必要です。
| 書類の種類 | 保存期間 |
| 法定帳簿(収入金額や必要経費を記載した帳簿) | 7年間 |
| 任意帳簿(法定帳簿以外のもの) | 5年間 |
| 書類(領収書、請求書など) | 5年間 |
インボイス(適格請求書)は特別ルール
2023年10月から始まったインボイス制度。もしあなたが消費税の課税事業者で、仕入税額控除を受ける場合、受け取ったインボイス(適格請求書)は申告方法にかかわらず7年間の保存が必要です。また、ご自身が発行したインボイスの控えも同様に7年間保存しなければなりません。
証憑書類がない!こんな時はどうすればいい?
「領収書をもらい忘れた!」「失くしてしまった…」そんな時も、あきらめるのはまだ早いです。経費として計上できる可能性は残っています。ケース別の対処法を知っておきましょう。
領収書を紛失・もらい忘れた場合
領収書が手元になくても、支払いがあった事実を証明できる他の書類で代用できることがあります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- クレジットカードの利用明細
- 銀行の振込明細書
- 購入したECサイトからの確認メール
それでも証明できるものがない場合は、「出金伝票」を自分で作成する方法があります。出金伝票には、「支払った日付」「支払先」「支払った金額」「具体的な内容(例:〇〇株式会社にて事務用品代として)」を正確に記録しておきましょう。
そもそも領収書が発行されない場合
電車やバスなどの公共交通機関の運賃や、取引先の結婚式で渡すご祝儀など、そもそも領収書が発行されない支払いもありますよね。このような場合も、出金伝票の作成が有効です。交通費であれば利用した日付や区間、金額を、慶弔費であれば招待状や会葬礼状などを一緒に保管しておくと、より信頼性の高い証拠となります。
注意!電子取引の証憑はデータ保存が必須
最近では、AmazonなどのECサイトで備品を購入したり、請求書をメール(PDF)で受け取ったりする機会が増えましたよね。こうしたインターネットを介した取引を「電子取引」と呼びます。
電子帳簿保存法という法律の改正により、こうした電子取引で受け取ったデータ(領収書や請求書のPDFなど)は、紙に印刷して保存するだけでなく、電子データのまま保存することが義務付けられました。うっかりデータを消してしまわないように、専用のフォルダを作って管理したり、クラウドストレージを活用したりすると安心です。
電子データ保存の2つの要件
電子データをただ保存するだけでなく、以下の2つの要件を満たす必要があります。少し難しく感じるかもしれませんが、会計ソフトなどを使うと簡単に対応できることが多いです。
| 要件 | 具体的な内容 |
| 真実性の確保(改ざん防止) | タイムスタンプを付与する、または訂正や削除の履歴が残るシステムを利用する、改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る、などのいずれかの措置が必要です。 |
| 可視性の確保(検索機能) | 「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つの項目で検索できるようにしておく必要があります。ファイル名にこれらの情報(例:20241026_株式会社〇〇_11000.pdf)をつけておくと管理がしやすいです。 |
まとめ
今回は、確定申告に必要な証憑書類について詳しく解説しました。最後にポイントをおさらいしましょう。
- 証憑書類は取引の事実を証明する大切な書類で、確定申告書への添付は不要だが保管義務がある。
- 収入、経費、控除に関する書類を日頃から整理しておくことがスムーズな申告のコツ。
- 保存期間は、青色申告なら原則7年、白色申告なら5年または7年。インボイスは7年。
- 領収書がなくても、他の書類や出金伝票で代用できる場合がある。
- インターネットで受け取った領収書などは、電子データのまま保存することが義務化されている。
確定申告は準備が大変ですが、一つひとつ丁寧に進めていけば大丈夫です。この記事を参考に、必要な証憑書類をしっかり揃えて、安心して申告期間を迎えてくださいね。
参考文献
確定申告の証憑書類に関するよくある質問
Q.確定申告で領収書の提出は必要ですか?
A.いいえ、確定申告書への提出は不要です。ただし、税務調査などで提示を求められることがあるため、法律で定められた期間(青色申告は原則7年、白色申告は5年)の保存義務があります。
Q.レシートでも経費として認められますか?
A.はい、日付、金額、店名、購入した品目などが明記されていれば、領収書と同様に証憑書類として認められます。感熱紙のレシートは印字が消えやすいため、コピーを取るかスキャンしてデータ保存することをおすすめします。
Q.青色申告と白色申告で、書類の保存期間は違いますか?
A.はい、異なります。青色申告では、帳簿や領収書などのほとんどの書類が原則7年間の保存が必要です。一方、白色申告では書類によって5年または7年と定められています。
Q.領収書をなくしてしまったら、もう経費にできませんか?
A.いいえ、あきらめる必要はありません。クレジットカードの利用明細、銀行の振込記録、または支払いの事実を記録した「出金伝票」を作成することで、経費として認められる場合があります。
Q.ネットショッピングの領収書は印刷して保管すれば良いですか?
A.いいえ、PDFなど電子データで受け取った領収書は、電子帳簿保存法のルールに従い、原則として電子データのまま保存する必要があります。紙に印刷しただけでは保存要件を満たさないため注意が必要です。
Q.証憑書類の保存期間はいつから数え始めますか?
A.その年の確定申告の法定申告期限(通常は翌年の3月15日)の翌日から数え始めます。例えば、2024年分の書類であれば、2025年3月16日から保存期間がスタートします。