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祭祀財産(お墓・仏壇)の相続税は非課税!生前購入で節税する注意点も解説

2025-04-04
目次

ご家族が亡くなられた後、お墓や仏壇といった祭祀財産をどうするか考えたとき、「これらにも相続税はかかるのかな?」と疑問に思ったことはありませんか?実は、お墓や仏壇などの祭祀財産は、原則として相続税がかからない非課税財産とされています。しかし、購入するタイミングやその内容によっては、税金の取り扱いが大きく変わることもあるんです。この記事では、祭祀財産の相続税申告上の取り扱いについて、そして賢く節税につなげるためのポイントを、わかりやすく丁寧にご説明していきますね。

祭祀財産は相続税がかからないって本当?

はい、本当です。お墓や仏壇、神棚といったご先祖様をお祀りするための財産は「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、相続税法第12条によって相続税が課税されない「非課税財産」と定められています。これは、祭祀財産が一般的な財産とは異なり、ご先祖様を敬うための大切なものであり、国民の感情や社会的な慣習に配慮されているためです。そのため、遺産分割の対象にもならず、特定の人が引き継ぐことになります。

そもそも祭祀財産とは?

祭祀財産とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。民法では、祭祀財産を大きく3つの種類に分けています。それぞれの具体例を見てみましょう。

財産の種類 具体例
墳墓(ふんぼ) 墓地(土地の使用権)、墓石、墓碑など、お墓に関するもの一式
祭具(さいぐ) 仏壇、仏像、位牌、神棚、十字架、お線香立てなどの礼拝や祭祀に使う道具
系譜(けいふ) 家系図や過去帳など、ご先祖様からの血縁関係を記録したもの

祭祀財産を相続するのは誰?

祭祀財産は、通常の相続財産のように法定相続人で分け合うものではなく、「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」と呼ばれる一人の人が引き継ぎます。誰が祭祀承継者になるかは、次の順番で決まります。

1. 被相続人(亡くなった方)の指定
遺言や生前の口頭での指定によって決められていた人が最優先されます。

2. 地域の慣習
被相続人の指定がない場合は、その地域の慣習(例えば長男が継ぐなど)に従って決められます。

3. 家庭裁判所の判断
慣習でも決まらない、または相続人間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所が承継者を指定します。

相続放棄しても祭祀財産は引き継げるの?

はい、引き継ぐことができます。祭祀財産は、預貯金や不動産といったプラスの財産や、借金などのマイナスの財産とは別の特別な財産と位置づけられています。そのため、もし借金が多くて「相続放棄」を選択した場合でも、お墓や仏壇といった祭祀財産だけは引き継ぐことが可能です。

生前の購入が相続税対策になる仕組み

祭祀財産が非課税であることを利用して、生前に購入しておくことで、効果的な相続税対策になります。その仕組みはとてもシンプルです。相続税の課税対象となる現金や預貯金を使って、非課税であるお墓や仏壇を購入すると、その分だけ課税対象となる財産の総額が減るため、結果的に相続税の負担を軽くすることができるのです。

シミュレーションで見る節税効果

具体的にどれくらいの節税効果があるのか、簡単な例で見てみましょう。

【モデルケース】
・相続財産:現金5,000万円
・相続人:子ども2人
・購入するお墓の価格:300万円

<ケース1:亡くなった後に、相続した財産からお墓を購入した場合>
相続税の課税対象となる財産は5,000万円のままです。
基礎控除額:3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円
課税遺産総額:5,000万円 – 4,200万円 = 800万円
この800万円に対して相続税が課税されます。

<ケース2:生前に現金でお墓を購入していた場合>
生前に300万円のお墓を購入したため、相続財産は4,700万円に減ります。
基礎控除額:4,200万円(変わらず)
課税遺産総額:4,700万円 – 4,200万円 = 500万円
課税対象が300万円も減るため、その分の相続税を節税できることになります。

「寿陵(じゅりょう)」という考え方

「生きているうちからお墓を建てるなんて、縁起が悪いのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は生前にお墓を建てることは「寿陵(じゅりょう)」と呼ばれ、古くから長寿や子孫繁栄を招く縁起の良いこととされてきました。ご自身の気に入った場所やデザインのお墓をゆっくり選べるというメリットもありますよ。

生前に祭祀財産を購入するときの注意点

生前購入は節税効果が高いですが、いくつか注意すべき点があります。知らずに進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性もあるので、しっかり確認しておきましょう。

ローンでの購入は債務控除の対象外

お墓は高額なため、ローンでの購入を考える方もいるかもしれません。しかし、もしローンを完済する前に亡くなってしまった場合、そのローンの残額は債務控除の対象にはなりません。通常の借金であれば相続財産から差し引けるのですが、祭祀財産は非課税であるため、それに関連する債務も控除できないというルールになっています。節税を目的とする場合は、現金一括での購入が基本となります。

あまりに高額なものは課税対象になる可能性も

非課税だからといって、どんなに高価なものを購入しても良いわけではありません。例えば、純金製の仏具や、骨董品として高い価値を持つ仏像など、社会通念上著しく高額なものは、礼拝のためではなく「投資目的」や「相続税逃れ」と税務署に判断され、課税対象となってしまう可能性があります。一般的なお墓の相場は100万円から300万円程度と言われていますので、それを大きく超えるような場合は注意が必要です。

非課税にならないケース

祭祀財産であっても、状況によっては非課税と認められない場合があります。主なケースをまとめました。

ケース 理   由
投資や売却目的のもの 骨董的価値のある仏像や、商品として所有している祭具などは、礼拝目的ではないため課税対象となります。
ペット専用のお墓 法律上、ペットは「物」として扱われるため、ペットのためだけのお墓は非課税の対象外です。ただし、人間とペットが一緒に入れるお墓は非課税となります。
貸している墓地用地 お寺などが檀家さんに貸し出している墓地用地は、収益を生む事業用資産とみなされるため、課税対象となります。

お墓以外の非課税となる祭祀財産

相続税が非課税になる祭祀財産は、お墓だけではありません。他にもいくつかの種類がありますので、知っておくと良いでしょう。

仏壇・仏具

お墓と同様に、仏壇やそれに付属する仏具(おりん、お線香立てなど)も非課税です。ご自宅に安置し、日常的に礼拝するためのものであれば問題ありません。ただし、ここでも純金製などあまりに高価なものは、投資目的とみなされるリスクがあるため注意が必要です。

神棚・神具・庭内神し

神道の方であれば、神棚や神具も非課税となります。また、ご自宅の敷地内に祀られているお稲荷さんやお社といった「庭内神し(ていないしんし)」も、日常的に礼拝の対象となっているものであれば、土地や建物を含めて非課税財産として扱われます。

葬式費用との違いを理解しよう

祭祀財産の購入費用と、亡くなった後にかかる葬式費用は、税務上の扱いが少し異なります。この違いを理解しておくと、より正確に相続税の計算ができます。

葬式費用は相続財産から控除できる

お通夜や告別式にかかった費用、火葬料、お布施といった葬式費用は、相続財産から差し引くことができます。これは「債務控除」とは少し異なりますが、結果的に課税対象となる財産を減らす効果があります。祭祀財産は「購入した時点で非課税財産になる」のに対し、葬式費用は「支払った費用を後から相続財産から控除する」という違いがあります。

控除できる費用とできない費用

葬儀に関連する費用でも、相続財産から控除できるものとできないものがあります。特に、お墓の購入費用は葬式費用には含まれないので注意してください。

控除できる費用 控除できない費用
お通夜、告別式の費用 香典返しの費用
火葬、埋葬、納骨にかかる費用 初七日や四十九日などの法事の費用
お寺へのお布施、読経料、戒名料 墓石や墓地の購入費用、借入料
遺体の運搬費用 遺体の解剖などにかかった費用

まとめ

今回は、お墓や仏壇などの祭祀財産と相続税の関係について解説しました。大切なポイントを振り返ってみましょう。

お墓や仏壇などの祭祀財産は、原則として相続税が非課税です。
生前に購入することで、課税財産を減らし、相続税の節税につながります。
・ローンで購入した場合、残債は債務控除の対象になりません。
・純金製など、社会通念を逸脱するほど高額なものは課税される可能性があります。
・相続後に支払ったお墓の購入費用は、葬式費用として控除することはできません。

いずれ必要になるものであれば、ご自身が元気なうちに、ご家族と相談しながら準備を進めておくのがおすすめです。節税になるだけでなく、残されたご家族の負担を減らし、ご自身の希望を叶えることにもつながります。もし具体的な進め方で不安な点があれば、専門家に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献

国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」

祭祀財産(お墓・仏壇)の相続税に関するよくある質問まとめ

Q. 祭祀財産とは具体的に何ですか?

A. 祭祀財産とは、お墓(墓地、墓石)、仏壇、仏具、神棚、位牌、系譜(家系図)など、ご先祖様をお祀りするために必要な財産のことです。これらは故人を偲び、供養するためのものであり、一般的な相続財産とは区別されます。

Q. お墓や仏壇を相続した場合、相続税はかかりますか?

A. いいえ、お墓や仏壇などの祭祀財産は非課税財産とされており、相続税はかかりません。そのため、相続税の申告書に記載する必要もありません。

Q. 祭祀財産は誰が相続(承継)するのですか?

A. 祭祀財産は、通常の遺産分割とは異なり、「祭祀承継者」が一人で引き継ぎます。祭祀承継者は、故人の遺言による指定、地域の慣習、家庭裁判所の調停・審判などによって決まります。

Q. 生前にお墓を購入すると相続税対策になりますか?

A. はい、なります。生前に現金でお墓を購入すると、その現金は非課税の祭祀財産に変わるため、相続財産を減らす効果があり、結果として相続税の節税につながります。ただし、ローンが残っている場合は債務控除の対象にはなりません。

Q. 相続したお墓の名義変更は必要ですか?手続きはどうすればいいですか?

A. はい、祭祀承継者になった方は、お墓の名義変更(承継手続き)が必要です。手続きは墓地の管理事務所や寺院で行います。一般的に、前の使用者の死亡がわかる書類(戸籍謄本など)や、新しい承継者との関係がわかる書類などが必要になります。

Q. 高価な仏壇や仏具(金の仏像など)も非課税になりますか?

A. 日常の礼拝の対象として社会通念上ふさわしいものであれば非課税です。しかし、純金製の仏像など、明らかに骨董品や投資目的とみなされるような過度に高価なものは、課税対象の相続財産と判断される可能性があります。

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