税理士法人プライムパートナーズ

税務調査のリスクが減る?税理士法33条の2の書面添付制度を徹底解説

2025-02-04
目次

確定申告や相続税の申告をするとき、「もし税務調査が来たらどうしよう…」と不安に感じたことはありませんか?そんな不安を和らげてくれる心強い制度が「書面添付制度」です。これは税理士法第33条の2に定められている、税理士だけに認められた特別な制度なんです。この制度を活用すると、申告書の信頼性がぐっと高まり、税務調査の可能性を下げることができるんですよ。今回は、この書面添付制度について、どんな制度なのか、どんなメリットがあるのかを優しく解説していきますね。

書面添付制度(税理士法第33条の2)とは?

書面添付制度とは、税理士が税金の申告書を作成する際に、「この申告書は、私たちが責任をもって内容を確認し、適正に作成しました」ということを証明する書面を添付する制度のことです。この書面は、税務の専門家である税理士が、申告内容についてどのように計算・整理し、納税者の方からどんな相談を受けたのかなどを具体的に記載したもので、税理士による「お墨付き」のような役割を果たします。

税理士による「お墨付き」の証明書

普段、私たちがお店で商品を買うとき、品質保証書がついていると安心しますよね。書面添付制度は、まさにその「税務申告の品質保証書」のようなものです。税理士が専門家としての立場から、「どのような資料を確認したか」「どの項目について特に注意深く検討したか」といった申告書の作成過程を詳細に記録してくれます。これにより、税務署に対して申告内容が非常に信頼できるものであることをアピールできるんです。

添付できる書面は2種類

添付する書面には、税理士の関与の仕方によって2つの種類があります。どちらも申告書の信頼性を高めるという目的は同じです。

申告書の作成に関する計算事項等記載書面(第1項) 税理士自身が、納税者の依頼を受けて申告書を一から作成した場合に添付する書面です。
申告書に関する審査事項等記載書面(第2項) 納税者自身や他の人が作成した申告書の内容を、税理士が専門家として審査し、「適正である」と認めた場合に添付する書面です。

どんな申告書に添付できるの?

この制度は、法人税や所得税、消費税、そして相続税など、申告納税方式の国税や地方税のほとんどの申告書に適用することができます。会社の決算申告だけでなく、個人の確定申告や、特に税務調査の対象となりやすい相続税申告において、非常に心強い味方となってくれます。

書面添付制度のメリット【納税者編】

この制度を利用すると、私たち納税者には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのメリットをご紹介します。

税務調査の可能性が大幅に下がる

最大のメリットは、なんといっても税務調査の対象になる可能性が低くなることです。税理士のお墨付きがある申告書は、税務署から見ても信頼性が高く、適正な申告が行われていると判断されやすくなります。そのため、調査対象として選ばれる確率をぐっと下げることが期待できるのです。

事前の「意見聴取」で調査が省略されることも

もし税務署が申告内容に少し疑問を持ったとしても、すぐに実地調査にはなりません。書面添付がされている場合、税務調査の事前通知の前に、まず税理士に対して「意見聴取」の機会が与えられます(税理士法第35条)。これは、税務署の担当者が税理士に「この部分について、もう少し詳しく教えてください」と質問する場のことです。この意見聴取の段階で税理士が的確に説明し、税務署の疑問が解消されれば、実地調査そのものが省略されるのです。納税者の方が直接対応する必要がなく、精神的な負担も大きく軽減されます。

金融機関からの信頼度がアップする

書面添付された決算書は、税務署だけでなく金融機関からの評価も高まります。融資を申し込む際に、信頼性の高い決算書を提出できるため、審査がスムーズに進んだり、有利な条件での借入れにつながったりする可能性があります。会社の信用力を示す強力なツールにもなるんですね。

書面添付制度のデメリットや注意点

良いことずくめに見える書面添付制度ですが、いくつか知っておきたい注意点もあります。

追加の費用がかかる

添付書面の作成は、通常の申告書作成業務に加えて、より詳細な確認作業や書類作成が必要となるため、税理士への追加報酬が発生します。金額は申告内容の複雑さなどによって異なりますが、数万円から十数万円が一般的です。事前に税理士へ確認しておくと安心です。

対応している税理士が限られる

書面の作成には高度な専門知識と多くの手間がかかります。また、もし記載内容に誤りがあれば、税理士が懲戒処分の対象となるリスクを負うことになります。そのため、すべての税理士事務所がこの制度を積極的に導入しているわけではありません。依頼したい場合は、書面添付制度に対応しているかどうかを事前に確認することが大切です。

100%税務調査がなくなるわけではない

この制度は税務調査の可能性を「下げる」ものであり、「絶対になくす」ものではありません。申告内容に大きな誤りがあったり、意図的な不正が疑われたりするような悪質なケースでは、意見聴取なしで税務調査が行われることもあります。

書面添付制度の利用状況は?

実際にこの制度はどのくらい利用されているのでしょうか。国税庁のデータを見てみると、税目によって普及率に差があることがわかります。

税目 書面添付割合(令和元年度実績)
所得税 1.4%
法人税 9.7%
相続税 21.5%

このように、特に相続税申告では約5件に1件の割合で活用されており、その有効性が広く認識されています。一方で、法人税や所得税はまだ低い水準にとどまっているため、今のうちに活用することで、他の申告者との差別化を図り、申告書の信頼性をより強くアピールできると言えるかもしれません。

書面添付制度の簡単な流れ

実際に制度を利用する場合、どのような流れで進むのかを簡単に見てみましょう。

  1. 納税者から税理士へ依頼
    申告書の作成を依頼する際に、書面添付制度の利用を希望する旨を伝えます。
  2. 税理士による詳細な確認と書面作成
    税理士は、帳簿や領収書などの資料を詳細に確認し、申告内容を精査した上で、添付書面を作成します。
  3. 税務署へ申告書と添付書面を提出
    完成した申告書に、作成した書面を添付して税務署へ提出します。
  4. (疑問点がある場合)税務署から税理士へ意見聴取の連絡
    税務署が申告内容に疑問を持った場合、納税者ではなく、まず税理士に連絡が入ります。
  5. 税理士による意見陳述
    税理士が税務署に出向き、添付書面の内容に基づいて疑問点について説明します。
  6. 結果の通知
    意見聴取で疑問が解消されれば、税務署から「調査に移行しない」旨の通知が届き、手続きは完了です。もし疑問が解消されなければ、実地調査へ移行する旨の連絡があります。

まとめ

書面添付制度(税理士法第33条の2)は、申告書の信頼性を格段に高め、税務調査のリスクやそれに伴う精神的な負担を軽減してくれる、納税者にとって非常にメリットの大きい制度です。追加の費用はかかりますが、それ以上の安心感を得られる可能性があります。特に、複雑な取引がある事業主の方や、相続税申告を控えている方にとっては、積極的に活用を検討する価値があるでしょう。税理士に申告を依頼する際には、「書面添付制度に対応していますか?」と一度尋ねてみてはいかがでしょうか。

参考文献

書面添付制度 – 日本税理士会連合会

書面添付制度 - 国税庁

書面添付制度のよくある質問まとめ

Q.書面添付制度とは何ですか?

A.税理士が申告書の作成に際し、計算や審査した事項などを具体的に記載した書面を添付する制度です。これにより申告書の信頼性が高まり、税務署からの信頼を得やすくなります。

Q.書面添付制度を利用するメリットは何ですか?

A.税務調査の対象になりにくくなることや、調査が行われる場合でも事前に税理士への意見聴取が行われ、そこで疑問点が解消されれば実地調査が省略される可能性がある点が大きなメリットです。

Q.書面添付制度にデメリットはありますか?

A.税理士が通常よりも詳細な確認を行うため、資料の準備に手間がかかったり、追加の報酬が発生したりする場合があります。

Q.書面添付制度を利用すると税務調査は絶対になくなりますか?

A.必ずしも税務調査がなくなるわけではありません。しかし、調査前に税理士への「意見聴取」の機会が設けられるため、調査が省略される可能性は高まります。

Q.意見聴取とは何ですか?

A.税務署が申告内容について疑問点を持った際に、税務調査を行う前に、申告書を作成した税理士から直接話を聞く手続きのことです。この場で疑問が解決すれば、実地調査は行われません。

Q.書面添付制度はどんな会社でも利用できますか?

A.はい、法人・個人事業主を問わず、税理士に申告を依頼していれば利用できます。ただし、適正な申告を行うことが前提となるため、税理士との良好な協力関係が不可欠です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。