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税務調査のリスクと対策を徹底解説!対象になる確率とポイントとは?

2025-09-25
目次

「ある日突然、税務署から連絡が…」なんて考えたことはありませんか?税務調査と聞くと、なんだか怖いイメージや、自分には関係ないと思ってしまう方も多いかもしれません。しかし、法人だけでなく個人事業主の方や、相続税を申告した方なども調査の対象になる可能性があります。大切なのは、税務調査について正しく理解し、日頃からきちんと備えておくことです。この記事では、税務調査がどのようなものか、対象になる確率、調査されやすいケース、そして今からできる具体的な対策まで、わかりやすく丁寧にご紹介します。これを読めば、税務調査への漠然とした不安が解消されるはずですよ。

税務調査とは?基本的な知識をわかりやすく解説

税務調査とは、納税者が提出した確定申告書などの内容が、税法のルールに従って正しく作成されているか、税務署が確認する手続きのことです。申告内容に誤りや漏れがないかをチェックし、日本の税制度の公平性を保つために行われています。決して、納税者を罰するためだけにあるわけではないので、まずは基本的な知識を身につけていきましょう。

税務調査には2種類ある

税務調査には、大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。私たちが「税務調査」と聞いてイメージするもののほとんどは、任意調査のことを指します。

調査の種類 特    徴
任意調査 事前に税務署から電話などで連絡があり、日程を調整した上で行われます。納税者の同意のもとで実施されますが、法律に基づく質問検査権があるため、正当な理由なく拒否することはできません。帳簿や請求書などの書類を確認し、担当者へ質問をする形で進められます。
強制調査 国税局査察部(マルサ)が、裁判所の令状を持って事前通知なしに行う、非常に強制力の強い調査です。脱税額が大きく、特に悪質だと疑われるケースが対象となり、脱税が確定すれば刑事事件として告発されることもあります。

一般的な事業運営をしている限り、強制調査の対象になることはほとんどありません。そのため、私たちは任意調査への備えをしっかりしておくことが大切です。

税務調査はいつ、何年分を調べるの?

税務調査では、一般的に直近3年分の申告内容が調査対象となります。ただし、調査の過程で申告漏れなどの誤りが見つかった場合は5年分、さらに意図的な脱税など悪質な不正行為が疑われる場合には、最大で7年分まで遡って調査されることがあります。つまり、過去の書類だからといって安易に処分せず、法律で定められた期間(法人は原則7年、個人事業主は青色申告なら7年、白色申告なら5年)はきちんと保管しておく必要があります。

税務調査が入る確率はどれくらい?

「うちの会社は大丈夫だろうか」「個人事業主だから来ないよね?」と、調査が入る確率が気になる方も多いと思います。税務調査は無作為に選ばれるわけではなく、申告内容などから「調査の必要性が高い」と判断された場合に選定されます。ここでは、法人・個人事業主・相続税のケースごとに、おおよその確率を見ていきましょう。

法人の税務調査の確率

国税庁の発表によると、令和4事務年度(2022年7月~2023年6月)において、法人税の申告件数が約313万件であるのに対し、実地調査が行われたのは約6万2,000件でした。これを確率にすると約1.98%となります。単純計算すると、およそ50年に1回の頻度ということになりますが、これはあくまで平均値です。後述する「調査されやすい特徴」に当てはまる法人は、調査の確率がぐっと高まると考えられます。

個人事業主の税務調査の確率

個人事業主の場合、確率はさらに低くなる傾向にあります。令和4事務年度のデータを見ると、所得税の申告者のうち、事業所得がある個人への実地調査は約2万8,000件でした。申告者全体から見ると確率は低いですが、これもあくまで平均値です。特に所得が大きくなってきた方や、急に売上が伸びた方などは注意が必要です。

相続税の税務調査の確率

実は、他の税金に比べて相続税の税務調査が行われる確率は非常に高いと言われています。令和4事務年度のデータでは、相続税の申告件数(被相続人数)約15万件に対し、実地調査が行われたのは約8,200件で、その確率は約5.4%です。およそ20件に1件は調査されている計算になります。特に、申告された財産額が大きい場合や、申告内容に不明瞭な点がある場合に調査対象となりやすい傾向があります。

税務調査の対象になりやすい法人・個人事業主の特徴

税務署は、限られた人員で効率的に調査を行うため、KSK(国税総合管理)システムなどを活用して、申告データの中から異常値や不審な点がある納税者をピックアップしています。どのような特徴があると、調査対象に選ばれやすいのでしょうか。

売上や利益の変動が大きい

前年と比べて売上が急激に増えたり減ったりしている、あるいは売上は伸びているのに利益がほとんど出ていない、といったケースは「何か不自然な操作があるのでは?」と疑われやすくなります。もちろん、新規事業の立ち上げなど正当な理由があれば問題ありませんが、その理由を明確に説明できるようにしておくことが重要です。

売上高が1,000万円前後の申告が続いている

年間売上高が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の課税事業者となります。そのため、毎年売上が980万円、990万円といったように、1,000万円をわずかに下回る申告が続いていると、「意図的に売上を調整して、消費税の納税を免れようとしているのではないか」と疑われる原因になります。

同業他社と比べて経費率が異常に高い

税務署は業種ごとの平均的な利益率や経費率のデータを把握しています。そのため、同じくらいの売上規模の同業他社と比べて、交際費や外注費などの経費が突出して高い場合、「架空の経費を計上しているのでは?」「プライベートな支出を混ぜているのでは?」と注目されやすくなります。

現金商売の業種

飲食店、小売業、美容室、建設業の一人親方など、現金での取引が多い業種は、売上の記録が追いづらく、ごまかしやすいと見なされる傾向があります。そのため、他の業種に比べて税務調査の対象に選ばれやすいと言われています。日々の売上管理を徹底することが特に重要です。

長期間、税務調査を受けていない

意外かもしれませんが、開業してから5年~10年ほど一度も調査を受けていない場合も、調査対象に選ばれやすくなることがあります。これは、不正の有無に関わらず、定期的なチェックという意味合いで行われるものです。「そろそろ一度見ておこう」という観点で選ばれることもあるのです。

確定申告をしていない(無申告)

これは最もリスクが高いケースです。確定申告をしていない(無申告)場合、税務署は取引先の情報や、第三者から得られる情報(支払調書など)から売上の存在を把握しています。無申告が発覚した場合、過去に遡って本来納めるべき税金に加え、重いペナルティ(無申告加算税や延滞税)が課せられることになります。

税務調査では具体的に何をチェックされる?

では、実際に税務調査官はどのようなポイントを重点的にチェックするのでしょうか。調査当日に慌てないためにも、事前に知っておきましょう。

売上の計上漏れや計上時期のズレ

最も厳しくチェックされるのが売上です。帳簿上の売上と、銀行口座の入金履歴、請求書の控えなどが一致しているかは必ず確認されます。また、決算月ギリギリの売上を、意図的に翌期の売上として計上していないか(期ズレ)も重要なチェックポイントです。

架空経費や個人的な支出の混入

実際には発生していない外注費や仕入れを計上する「架空経費」は、重大な不正行為と見なされます。また、社長や事業主の家族との食事代、プライベートな旅行費用などを、交際費や福利厚生費として経費にしていないかも細かくチェックされます。すべての経費について、「事業に本当に関係があるか」を説明できることが大切です。

在庫(棚卸資産)の計上

期末時点での在庫(商品や材料など)の金額を意図的に少なく計上すると、その分だけ売上原価が増え、利益を圧縮できてしまいます。そのため、調査官は棚卸表が正しく作成されているか、実際の在庫と数量が合っているかをチェックすることがあります。

給与・役員報酬の妥当性

実際に働いていない家族や親族に給与を支払う「架空人件費」がないか、従業員のタイムカードや源泉徴収簿などから確認されます。また、法人の場合、役員報酬が会社の利益状況に対して不当に高額でないか、株主総会で適切な手続きを経て決められているか、といった点もチェック対象となります。

今からできる!税務調査への具体的な対策

税務調査のリスクをゼロにすることはできませんが、日頃の心がけでそのリスクを大きく減らすことは可能です。ここでは、今日からでも始められる具体的な対策をご紹介します。

正確な帳簿と証拠書類の保管

最も基本的で、最も重要な対策です。会計ソフトなどを活用して、日々の取引を正確に記帳しましょう。そして、その取引の証拠となる請求書、領収書、契約書、預金通帳などの書類(証憑書類)は、絶対に捨てずに整理して保管してください。法律で定められた期間(法人は原則7年、個人事業主は青色申告で7年、白色申告で5年)の保管義務があります。

事業用とプライベートの口座・クレジットカードを分ける

個人事業主の方に特に多いのが、事業のお金と生活費が同じ口座でごちゃ混ぜになってしまうケースです。これでは、どれが経費でどれが私的な支出なのかが分かりにくくなり、税務調査でも疑いの目で見られやすくなります。事業専用の銀行口座とクレジットカードを作るだけで、お金の流れが明確になり、経理処理も格段に楽になります。

税理士に相談する

税金の専門家である税理士と顧問契約を結ぶことは、非常に有効な対策です。日頃から帳簿をチェックしてもらうことで、間違いや申告漏れを未然に防ぐことができます。また、税理士が作成・署名した申告書は、税務署からの信頼度が高まり、調査対象になる確率が下がるとも言われています。万が一調査の連絡が来た場合でも、専門家として立ち会ってもらえるため、精神的な負担も大きく軽減されます。

もし調査の連絡が来たら?

突然、税務署から調査の連絡が来たら誰でも焦ってしまいますが、まずは落ち着いて対応しましょう。

1. すぐに顧問税理士に連絡する: まずは専門家である税理士に状況を伝え、今後の対応を相談します。

2. 日程を調整する: 税務署が提示した日程が都合悪い場合は、調整が可能です。準備期間を確保するためにも、無理な日程は受けず、税理士と相談して決めましょう。

3. 必要書類を準備する: 事前に「準備しておいてください」と言われる書類(通常は過去3年分の申告書、総勘定元帳、請求書・領収書綴りなど)を揃えます。この時、税理士と一緒に内容に不備がないか最終チェックを行うと安心です。

まとめ

税務調査は、特別な人だけが対象になるものではなく、事業を行うすべての人に関係があるものです。しかし、その目的はあくまで「正しい申告と納税」を確認することであり、日頃から誠実に経理処理を行っていれば、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、正確な記帳と証拠書類の保管を徹底し、わからないことは専門家である税理士に相談することです。この記事を参考に、ぜひ今日からできる対策を始めて、安心して事業に集中できる環境を整えてくださいね。

参考文献

令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要|国税庁

令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況|国税庁

令和5事務年度における相続税の調査等の状況|国税庁

税務調査に関するよくある質問まとめ

Q. 税務調査はどのような会社や個人事業主に来やすいですか?

A. 売上が急増した、長年調査を受けていない、現金商売、消費税の還付申告をしているなどの場合に選ばれやすい傾向があります。しかし、どのような事業者にも調査の可能性はあります。

Q. 税務調査の連絡が来たら、まず何をすればよいですか?

A. まずは落ち着いて、調査の日程や場所、対象期間、準備すべき資料などを確認しましょう。そして、顧問税理士がいる場合は速やかに連絡を取り、対応を相談することが重要です。

Q. 税務調査では、何年前までさかのぼって調べられますか?

A. 原則として過去3年分が対象ですが、申告内容に不正が疑われる場合は5年、悪質な脱税と判断されると最大で7年までさかのぼって調査されることがあります。

Q. 税務調査で指摘されやすいポイントは何ですか?

A. 売上の計上漏れ、架空経費の計上、個人的な支出の経費化、在庫の計上漏れなどがよく指摘されます。日頃から証拠書類を整理し、適切な会計処理を心がけることが大切です。

Q. 税務調査を避けるために、日頃からできる対策はありますか?

A. 正確な記帳と証拠書類(領収書や請求書など)の整理・保管が基本です。また、税法に則った適切な申告を行うことが最も重要です。不明な点は専門家に相談しましょう。

Q. 追徴課税はどのくらい課される可能性がありますか?

A. 本来納めるべきだった税額に加え、過少申告加算税や延滞税などが課されます。意図的な隠蔽や仮装があった場合は、さらに重い重加算税が課されることもあります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。