会社が発行する種類株式について、株主の方へ配当金をお支払いする機会があるかと思います。その際、「普通株式と同じように源泉徴収は必要なの?」「税率はどうなるの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。実は、最近の税制改正によって、一定の条件を満たすと源泉徴収が不要になるケースも登場しました。この記事では、種類株式の配当金にかかる源泉徴収のルールや具体的な要件について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。
種類株式の配当金と源泉徴収の基本ルール
まずは、種類株式の配当金にかかる基本的な税務のルールを確認していきましょう。普通株式との違いや、原則的な税率について詳しくお伝えします。
種類株式とは?配当の仕組みをおさらい
種類株式とは、一般的な普通株式とは異なり、配当金の金額や議決権の有無など、特別な権利が設定された株式のことです。代表的なものに、普通株式よりも優先して配当金を受け取れる優先株式があります。たとえば、発行から5年間は年率2.600%の固定配当を受け取れるといった具体的な条件が定められていることが多く、資金調達の手段として広く活用されています。このように条件が特殊であっても、税務上の「配当金」としての性質は変わりません。
原則として配当金には源泉徴収が必要
非上場会社が種類株式の配当金を支払う場合、原則として会社側で税金を差し引いてから株主へ支払う源泉徴収の義務があります。支払う相手が個人であっても法人であっても、配当金という利益を分配する以上は、税金を納める手続きが必要です。会社は株主に代わって税務署へ税金を納付する役割を担っています。
源泉徴収の計算方法と納付のタイミング
非上場株式の配当金にかかる源泉徴収の税率は、所得税および復興特別所得税を合わせて20.42%です。地方税(住民税)の源泉徴収はありません。たとえば、10万円の配当金を支払う場合、20,420円を差し引いた79,580円を株主へ支払います。そして、差し引いた税金は、配当金を支払った月の翌月10日までに、管轄の税務署へ納付しなければなりません。
| 項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 源泉徴収の税率(非上場株式) | 20.42%(所得税・復興特別所得税) |
| 納付の期限 | 配当金を支払った月の翌月10日まで |
源泉徴収が不要になる具体的なケースとは?
原則としては源泉徴収が必要ですが、法人間の配当支払いにおいては、手続きの負担を減らすために源泉徴収が不要になる特別なルールが設けられました。
令和4年度税制改正による新たなルール
令和5年(2023年)10月1日以降に支払われる配当金から、法人が法人に対して支払う配当金のうち、特定の条件を満たすものについては源泉徴収が不要となりました。これは、配当金を受け取った法人が最終的に法人税の計算で調整を行うため、二重に税金を計算する手間を省く目的があります。
100%完全支配関係がある場合の要件
源泉徴収が不要になる一つ目のケースは、配当金を支払う会社と受け取る会社との間に100%の完全支配関係がある場合です。具体的には、配当の計算期間の初日から末日まで、継続して発行済株式の100%を直接保有している必要があります。親会社が子会社から種類株式の配当金を受け取るようなケースがこれに当てはまります。
3分の1超の株式を保有している場合の要件
二つ目のケースは、配当金の基準日において、配当を受け取る法人が、発行済株式総数(自己株式を除く)の3分の1(33.3%)超を直接保有している場合です。100%の保有でなくても、この3分の1超という条件を満たしていれば、その種類株式の配当金から源泉徴収をする必要はなくなります。
| 法人間配当の保有割合の条件 | 源泉徴収の要否 |
|---|---|
| 計算期間を通じて100%直接保有 | 不要 |
| 基準日時点で3分の1(33.3%)超を直接保有 | 不要 |
種類株式ごとの源泉徴収の注意点
種類株式にはさまざまな特徴があるため、保有割合の計算や条件の当てはめ方に少し注意が必要です。
優先株式で固定配当を受け取る場合
優先株式によって普通株式よりも高い配当金を受け取る場合でも、源泉徴収の判定ルールは普通株式と同じです。配当金を受け取る法人が、その会社の株式を3分の1超直接保有していれば、金額の大小や固定配当の年率に関わらず源泉徴収は不要となります。逆に、個人の投資家へ支払う場合や、保有割合が3分の1以下の法人へ支払う場合は、きっちり20.42%を源泉徴収します。
議決権のない種類株式の保有割合の考え方
種類株式の中には、議決権が制限されているものや、全く議決権がないものもあります。しかし、源泉徴収が不要になる「3分の1超」の判定基準となる発行済株式総数には、議決権のない株式も含まれます(自己株式は除外されます)。そのため、議決権の有無ではなく、純粋に発行されている株式の全体のうち何株を保有しているかで割合を計算してください。
期中に種類株式を発行・取得した場合
年度の途中で新しく種類株式を発行したり取得したりした場合、初めて受け取る配当金について注意が必要です。「100%保有」の条件は配当計算期間の初日から末日までの継続保有が求められますが、「3分の1超保有」の条件は配当の基準日時点で判定されます。そのため、期中に株式を取得したばかりでも、基準日時点で3分の1超の株式を持っていれば源泉徴収は不要となります。
実務での具体的な手続きと支払調書の提出
配当金を支払う会社側が実務として行わなければならない手続きや、税務署への書類提出について解説します。
配当金を支払う会社側が行うべき手続き
源泉徴収が必要な株主へ配当金を支払った場合、会社は「配当等の所得税徴収高計算書(納付書)」を作成し、銀行の窓口やオンラインで税務署へ納付します。一方、先ほど解説したルールによりすべての株主に対して源泉徴収が不要となった場合は、差し引く税金が0円となるため、原則としてこの納付書の提出自体が不要となります。
支払調書の作成と税務署への提出義務
配当金を支払った会社は、翌年の1月31日までに「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」を作成し、税務署へ提出する義務があります。ただし、1回の支払金額が3万円(配当の計算期間が1年間の場合は10万円)以下の場合は提出が免除されます。源泉徴収が不要であった法人への支払いであっても、この基準額を超える場合は支払調書の提出が必要ですので注意してください。
種類株式特有の税務上の留意ポイント
同じ株主が普通株式と種類株式の両方を保有している場合、保有割合を計算する際は、それらをすべて合算して「発行済株式総数のうち何パーセントか」を計算します。種類株式の配当だからといって分けて計算するわけではありません。保有割合を正しく把握することが、正しい税務処理への第一歩です。
種類株式の配当と受取配当等の益金不算入制度
法人が配当金を受け取った場合、源泉徴収のルールとは別に「受取配当等の益金不算入」という法人税の制度にも目を向ける必要があります。
源泉徴収不要のルールと益金不算入の違い
源泉徴収が不要になるルールは、あくまで「支払うとき」の所得税の手続きのお話です。一方の「益金不算入」は、配当金を受け取った法人が「法人税を計算するとき」に、その配当金を利益(益金)から除外できるというルールです。源泉徴収の判定は直接保有のみで行いますが、益金不算入の100%保有の判定には、グループ会社を通じた間接保有も含まれるなど、細かなルールの違いがあります。
益金不算入が適用される保有割合の基準
受け取った種類株式の配当金をどれくらい益金から除外できるかは、保有割合によって4段階に分かれています。完全子法人株式等(100%保有)や関連法人株式等(3分の1超保有)であれば、受け取った配当金の全額(負債利子を控除後)が益金不算入となります。5%超から3分の1以下の場合は50%、5%以下の場合は20%が益金不算入の対象です。
| 株式の保有割合 | 益金不算入の割合 |
|---|---|
| 100%保有 または 3分の1超保有 | 全額(負債利子等を控除) |
| 5%超 ~ 3分の1以下保有 | 50% |
種類株式を活用する際の税務プランニング
資金調達のために種類株式を発行する際、引き受け手が法人であり、かつ3分の1超の株式を保有する契約であれば、配当時の源泉徴収が不要となり、資金のやり取りが非常にスムーズになります。また、受け取る側にとっても全額が益金不算入となるため、税務上のメリットが大きく、双方が納得しやすい条件を整えることができます。
まとめ
種類株式の配当金における源泉徴収のルールについて解説しました。原則として非上場株式の配当には20.42%の源泉徴収が必要ですが、令和5年10月以降、法人が3分の1超の株式を直接保有している場合は源泉徴収が不要になるという大きなルール変更がありました。種類株式ならではの優先配当や固定配当であっても、この保有割合の条件を満たせば手続きを簡略化できます。正しい要件を理解し、支払調書の提出など必要な手続きを漏れなく行いましょう。
参考文献
種類株式の配当に関するよくある質問まとめ
Q.種類株式の配当金には必ず源泉徴収が必要ですか?
A.非上場株式の配当金は原則として源泉徴収が必要ですが、配当を受け取る法人が発行済株式総数の3分の1超を保有している場合などは源泉徴収が不要になります。
Q.源泉徴収の税率は何パーセントですか?
A.非上場株式の配当金から差し引く源泉徴収の税率は、所得税および復興特別所得税を合わせて20.42パーセントです。
Q.源泉徴収が不要になるのはどのような場合ですか?
A.令和5年10月1日以降、配当の計算期間を通じて100パーセント直接保有している場合や、配当の基準日において3分の1超の株式を直接保有している法人に対する支払いは源泉徴収が不要です。
Q.議決権のない種類株式でも保有割合の計算に含めますか?
A.はい、議決権の有無に関わらず、自己株式を除く発行済株式総数を基準に保有割合を計算するため、議決権のない種類株式も含めて判定します。
Q.配当金の支払調書は税務署に提出する必要がありますか?
A.はい、源泉徴収が不要なケースであっても、1回に支払う配当金額が3万円を超える場合は、原則として翌年1月31日までに支払調書の提出が必要です。
Q.源泉徴収不要の判定はいつの時点で行いますか?
A.3分の1超を保有しているかどうかの判定は、配当金の支払基準日の時点で直接保有している割合によって行われます。