ご実家が空き家になるかもしれない、あるいは既に空き家を所有しているという方はいらっしゃいませんか?実は、空き家をそのまま放置しておくと、税金の負担が大きく増えてしまう可能性があるんです。この記事では、空き家にかかる税金の基本的な仕組みから、税金が高くなるケース、そして知っておきたい節税対策まで、わかりやすく解説していきますね。
空き家を持っているだけでかかる税金って?
たとえ誰も住んでいなくても、不動産を所有している限り税金を納める義務があります。空き家の場合、主に「固定資産税」と「都市計画税」という2つの税金がかかります。これらは毎年1月1日時点の所有者に対して、市区町村から納税通知書が送られてきます。
固定資産税と都市計画税の基本
まずは、それぞれの税金がどのように計算されるか見てみましょう。基本的には、不動産の価値(評価額)に一定の税率をかけて計算されます。
| 固定資産税 | 課税標準額 × 1.4%(標準税率) |
| 都市計画税 | 課税標準額 × 最高0.3%(制限税率) |
※税率は自治体によって異なる場合があります。
都市計画税は、市街化区域内に土地や家屋を持っている場合にのみ課税される税金です。
「住宅用地の特例」で税金が安くなる
「税金が結構高いな」と感じたかもしれませんが、実は土地の上に住宅が建っている場合、「住宅用地の特例」という軽減措置が適用されるため、土地にかかる税金が大幅に安くなっているんです。これは空き家であっても、建物が建っている限りは適用されます。
| 土地の広さ | 軽減内容 |
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 固定資産税:評価額の1/6 都市計画税:評価額の1/3 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 固定資産税:評価額の1/3 都市計画税:評価額の2/3 |
空き家を解体すると税金が上がるって本当?
「建物が古いから、いっそ更地にしてしまおう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、建物を解体してしまうと、先ほどご説明した「住宅用地の特例」が適用されなくなります。その結果、土地の固定資産税が最大で6倍、都市計画税が最大で3倍に跳ね上がってしまう可能性があるのです。管理の手間や費用と、税金の負担をよく比較検討することが大切ですね。
要注意!税金が最大6倍になる「特定空き家」とは?
空き家の放置が社会問題となる中、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律により、管理が不十分で危険な状態の空き家は、自治体から「特定空き家」に指定され、税金の軽減措置が受けられなくなることがあります。
「特定空き家」に指定されるとどうなる?
もし所有する空き家が「特定空き家」に指定され、自治体からの改善勧告に従わない場合、「住宅用地の特例」の対象から除外されてしまいます。これにより、土地の固定資産税が更地と同じように最大6倍になってしまうのです。これが、「空き家を放置すると税金が6倍になる」と言われる理由です。
どんな空き家が「特定空き家」になるの?
具体的には、以下のような状態の空き家が「特定空き家」に指定される可能性があります。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態(家が傾いている、屋根や壁が崩れそうなど)
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態(ゴミが放置されている、害虫や害獣が発生しているなど)
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態(窓ガラスが割れている、雑草が生い茂っているなど)
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態(悪臭がする、不法侵入の形跡があるなど)
2023年改正で新設された「管理不全空き家」
2023年12月の法改正で、特定空き家になる手前の段階として「管理不全空き家」という区分が新設されました。これは、「このまま放置すれば特定空き家になるおそれのある空き家」のことです。管理不全空き家に指定され、自治体から改善の勧告を受けると、特定空き家と同様に「住宅用地の特例」が解除されてしまいます。これまで以上に、空き家の適切な管理が求められるようになったということですね。
相続した空き家を売却するときの税金と特例
空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税と住民税がかかります。しかし、相続した空き家を売る場合には、税金の負担を大きく軽減できる特例があるんです。
譲渡所得税の計算方法
まず、税金の対象となる譲渡所得は、以下の式で計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
「取得費」とは、亡くなった方(被相続人)がその不動産を購入したときの代金などのことです。「譲渡費用」は、売却時にかかった仲介手数料などを指します。
【節税】「空き家の譲渡所得3,000万円特別控除」
一定の要件を満たせば、相続した空き家を売却したときの譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。これを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。主な要件は以下の通りです。
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売却代金が1億円以下であること。
- 相続開始の直前まで、亡くなった方が一人で住んでいた家であること。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
- 家屋を耐震リフォームして売るか、家屋を取り壊して土地のみを売ること。
この特例が使えれば、譲渡所得が3,000万円までなら税金がかからなくなりますので、非常に大きな節税効果が期待できますね。
※令和6年1月1日以降の譲渡で、相続人が3人以上いる場合は、特別控除額は2,000万円になります。
空き家を放置しないための対策
税金の負担を増やさないためにも、空き家をどうするか早めに方針を決めることが大切です。主な対策方法をいくつかご紹介します。
売却する
最も確実な方法の一つが売却です。先ほどご紹介した「3,000万円特別控除」が使えるうちに売却を検討するのがおすすめです。古家付きで売るか、解体して更地で売るかは、立地や建物の状態によってどちらが良いか変わってきますので、不動産会社に相談してみましょう。
賃貸に出す
立地が良い場所であれば、賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得るという方法もあります。ただし、貸し出せる状態にするためのリフォーム費用がかかったり、入居者管理の手間が発生したりします。管理会社に委託することもできますので、収支のバランスを考えて検討しましょう。
自分で管理する・活用する
将来的に住む予定がある場合や、手放したくない場合は、ご自身で適切に管理を続ける必要があります。「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されないよう、定期的に訪れて空気の入れ替えや掃除、庭の手入れなどを行いましょう。また、ご自身のセカンドハウスとして利用するのも一つの手です。
低未利用地の売却で使える特例
空き家を解体した後の土地や、特に利用していない土地の売却を考えている場合に、もう一つ知っておくと便利な特例があります。
「低未利用土地等の100万円特別控除」とは
これは、個人が所有する利用されていない、またはあまり利用されていない土地(低未利用土地)を売却した場合に、譲渡所得から最大100万円を控除できる制度です。空き家を取り壊した後の土地の売却などが対象になる可能性があります。
適用要件のポイント
この特例を利用するための主な要件は以下の通りです。
- 売却価格が500万円以下であること。(一定の区域内にある土地の場合は800万円以下)
- 売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること。
- 都市計画区域内にある土地であること。
- 売却後に、買主がその土地を利用する見込みがあること。
3,000万円の特別控除と比べると控除額は小さいですが、条件が合えばぜひ活用したい制度です。
まとめ
今回は、空き家に関する税金について解説しました。ポイントを振り返ってみましょう。
- 空き家には固定資産税や都市計画税がかかるが、「住宅用地の特例」で軽減されている。
- 放置して「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、税金の軽減措置が受けられなくなり、負担が最大6倍になる可能性がある。
- 相続した空き家を売却する際は「3,000万円特別控除」などの特例を活用することで、税負担を大幅に減らせる可能性がある。
空き家を所有し続けることは、税金だけでなく管理の手間やコストもかかります。ご自身の状況に合わせて、売却や活用など、早めに具体的な対策を検討することがとても大切です。どうすれば良いか迷ったら、自治体の相談窓口や専門家に相談してみるのも良いでしょう。
参考文献
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
国税庁 No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
空き家の税金に関するよくある質問まとめ
Q.空き家を放置すると税金が高くなるのはなぜですか?
A.「特定空き家」に指定されると固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が適用されなくなり、土地の税金が最大6倍になる可能性があるためです。
Q.誰も住んでいない空き家にも固定資産税はかかりますか?
A.はい、かかります。空き家であっても所有している限り、建物と土地の両方に固定資産税が課税されます。
Q.相続した空き家を売却する際に使える税金の特例はありますか?
A.はい、要件を満たせば「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が利用でき、売却益から最大3,000万円を控除できます。
Q.空き家を解体したら税金は安くなりますか?
A.建物分の固定資産税はなくなりますが、土地の固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、更地として評価されるため、結果的に税額が高くなるケースが多いです。
Q.空き家の税金対策にはどのような方法がありますか?
A.主に「売却する」「賃貸として貸し出す」「解体して土地活用する」といった方法があります。放置せず、早めに活用方法を検討することが重要です。
Q.空き家にかかる税金にはどのような種類がありますか?
A.主に、所有しているだけでかかる「固定資産税」「都市計画税」、売却して利益が出た時にかかる「所得税」「住民税」、相続した時にかかる「相続税」などがあります。