ご両親などから土地を相続したとき、その土地が「第一種住居地域」というエリアにあると知って、どんな場所なのか、そして相続税の評価額にどう影響するのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。第一種住居地域は、私たちの暮らしに身近なエリアですが、相続となると専門的な知識が必要になります。この記事では、第一種住居地域の特徴から、土地の相続税評価額を計算する方法、そして評価額を下げられる可能性のある特例まで、わかりやすく解説していきます。
第一種住居地域ってどんな場所?
まずは、相続した土地がどのような特徴を持つ場所にあるのか、基本から確認していきましょう。「第一種住居地域」という言葉には、その土地の使い道に関する大切なルールが隠されています。
住環境を守るための地域区分
第一種住居地域とは、都市計画法によって定められた「用途地域」のひとつで、良好な住環境を守ることを主な目的としています。静かで落ち着いた暮らしを優先するため、大きな商業施設や工場、騒音や振動が発生しやすい施設の建設が厳しく制限されているのが特徴です。一戸建てやマンションなどが立ち並ぶ、いわゆる「住宅街」をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
建てられる建物・建てられない建物
第一種住居地域では、具体的に建てられる建物と建てられない建物が法律で決められています。これにより、地域の環境が保たれています。相続した土地を将来どのように活用するかを考える上でも、このルールは非常に重要です。
| 建てられる建物の例 | 建てられない建物の例 |
| 住宅、共同住宅(マンションなど)、下宿 | 床面積の合計が3,000㎡を超える店舗や事務所 |
| 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学 | 映画館、劇場、ナイトクラブなど |
| 図書館、博物館 | パチンコ屋、マージャン店など |
| 病院、診療所、保育所 | 作業場の床面積が50㎡を超える工場 |
| 床面積の合計が3,000㎡以下の店舗、飲食店、事務所 | ホテル、旅館 |
容積率や建ぺい率の制限
土地の価値を決める重要な要素に「建ぺい率」と「容積率」があります。第一種住居地域では、これらの上限値が都市計画によって定められており、敷地に対してどれくらいの規模の建物を建てられるかが決まっています。
- 建ぺい率:敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合です。一般的に50%、60%、80%のいずれかに指定されます。
- 容積率:敷地面積に対する建物の延床面積の割合です。100%、150%、200%、300%、400%、500%の中から指定されます。
これらの数値は、土地がある市区町村によって異なります。容積率が高いほど、より大きな建物を建てられるため、土地の利用価値も高くなる傾向があります。
第一種住居地域の土地の相続税評価方法
それでは、実際に第一種住居地域にある土地の相続税評価額はどのように計算するのでしょうか。相続税の土地評価は、国が定めたルールに基づいて行われますが、基本となるのは「路線価方式」です。
基本は「路線価方式」で計算
路線価方式とは、道路(路線)に面する宅地の1㎡あたりの価額(路線価)を基準に、土地の評価額を計算する方法です。路線価は、国税庁が毎年7月頃に公表しており、「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のウェブサイトで誰でも確認できます。
基本的な計算式は以下の通りです。
評価額 = 路線価 × 各種補正率 × 土地の面積(地積)
この「各種補正率」が、土地の個性や条件を評価額に反映させるための重要なポイントになります。
土地の形状や条件による「画地補正」
すべての土地がきれいな正方形や長方形とは限りませんよね。土地の使いやすさはその形状や道路との接し方によって大きく変わるため、その個性を評価額に反映させるための調整が行われます。これを画地補正といい、以下のようなケースで評価額が減額されることがあります。
- 奥行価格補正:奥行が標準的な長さに比べて長すぎたり短すぎたりする場合
- 不整形地補正:土地の形がきれいな四角形でない、いびつな形の場合
- 間口狭小補正:道路に接している間口が狭い場合
- がけ地補正:土地の一部にがけ地が含まれる場合
これらの補正を適用することで、土地の実態に即した適正な評価額を算出することができます。
貸している土地の場合は評価額が下がる?
相続した土地を第三者に貸している場合、所有者であっても自由に使うことができません。そのため、自分で利用している土地(自用地)と比べて評価額が減額されます。
- 貸宅地:土地を貸して、借主がその上に建物を建てている場合。自用地評価額から借地権の価値を差し引いて評価します。
- 貸家建付地:土地の上にアパートや貸家を建てて貸している場合。自用地評価額から、入居者が持つ権利(借家権)の分を考慮して評価額を減額します。
これらの評価減は、相続税の負担を大きく左右するため、土地の利用状況を正確に把握することが大切です。
容積率が相続税評価額に与える影響
第一種住居地域では「容積率」が定められていますが、これが相続税評価額に影響を与えることがあります。特に、一つの土地が異なる容積率のエリアにまたがっている場合は注意が必要です。
路線価にはすでに容積率が反映されている
まず知っておきたいのは、国税庁が定める路線価には、その地域の標準的な容積率がすでに加味されているという点です。容積率が高い土地は、それだけ利用価値が高いと判断されるため、路線価も高く設定される傾向にあります。そのため、通常は容積率の数値を直接使って評価額を計算することはありません。
土地が2つ以上の容積率の地域にまたがる場合の特例
問題となるのは、一つの土地が、容積率の異なる2つ以上の地域にまたがっている特殊なケースです。例えば、土地の半分が容積率200%の第一種住居地域、もう半分が容積率150%の別の地域、といった場合です。
この場合、単純に正面の道路の路線価だけで評価すると、容積率が低い部分まで高く評価されてしまい、不公平が生じます。そこで、実態に合わせて評価額を減額する特別な計算が認められています。
具体的には、各部分の容積率を面積で加重平均して土地全体の平均容積率を算出し、正面路線価が前提としている容積率よりも低い場合に、その差に応じて評価額を減額します。この計算には専門的な知識が必要ですが、知っているかどうかで評価額が大きく変わる可能性があります。
| 地区区分 | 容積率が価額に及ぼす影響度 |
| 高度商業地区・繁華街地区 | 0.8 |
| 普通商業・併用住宅地区 | 0.5 |
| 普通住宅地区 | 0.1 |
第一種住居地域は多くの場合「普通住宅地区」に分類されるため、影響度は0.1として計算します。商業地に比べて影響度は小さいですが、それでも適用できれば節税につながります。
地積規模の大きな宅地の評価減
もし相続した土地の面積が広い場合、「地積規模の大きな宅地の評価」という特例を適用できるかもしれません。これは、いわゆる「広大地評価」に代わって導入された制度で、評価額を大きく引き下げられる可能性があります。
特例の対象となる土地の要件
この特例が適用できるのは、原則として以下の面積要件を満たす土地です。
- 三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏):500㎡以上
- それ以外の地域:1,000㎡以上
ただし、面積が広くても、以下のいずれかに該当する土地は対象外となります。
- 市街化調整区域に所在する土地
- 工業専用地域に指定されている土地
- 指定容積率が400%(東京23区内は300%)以上の地域に所在する土地
- 大規模工場用地
第一種住居地域の容積率は最大500%ですが、容積率が400%未満(東京23区内は300%未満)に指定されているエリアであれば、この特例の対象となる可能性があります。
評価額の計算方法
対象となる土地は、「規模格差補正率」という特別な補正率を用いて評価額を減額します。この補正率は、土地の面積が大きければ大きいほど、減額幅も大きくなるように設計されています。計算は複雑ですが、面積の大きな土地を相続した場合は、必ず適用できるかどうかを確認すべき重要な制度です。
小規模宅地等の特例でさらに評価額を減額
相続税の特例の中でも、最も節税効果が大きいと言われるのが「小規模宅地等の特例」です。相続した土地が、亡くなった方の自宅や事業に使われていた場合に適用できる可能性があります。
自宅の敷地だった場合(特定居住用宅地等)
亡くなった方が住んでいた家の敷地を、配偶者や同居していた親族などが相続した場合、330㎡までの部分について、土地の評価額を80%も減額することができます。例えば、評価額が5,000万円の土地であれば、評価額は1,000万円となり、相続税の負担が劇的に軽くなります。第一種住居地域にあるご自宅を相続するケースでは、多くの場合この特例の適用が検討されます。
適用を受けるための注意点
この強力な特例を受けるためには、いくつかの厳しい要件を満たす必要があります。誰が相続するか、相続後にその土地をどうするかによって適用できるかどうかが変わります。また、相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに申告書を提出することが必須です。適用を検討する場合は、相続に詳しい税理士に相談し、要件を正確に確認することが不可欠です。
まとめ
第一種住居地域は、静かで良好な住環境が保たれたエリアです。相続税評価においては、まず路線価を基準に評価額を算出しますが、土地の状況によっては様々な特例を適用できる可能性があります。
特に、「容積率が異なる地域にまたがる場合の評価減」「地積規模の大きな宅地の評価」「小規模宅地等の特例」は、評価額を大きく下げ、相続税の負担を軽減できる重要なポイントです。
これらの制度は非常に複雑で、専門的な判断が求められます。ご自身で判断するのは難しく、適用できる特例を見逃してしまうリスクもあります。大切な財産を適切に評価し、納得のいく相続手続きを進めるためにも、土地の相続が発生したら、お早めに相続専門の税理士に相談することをおすすめします。
参考文献
第一種住居地域と相続税評価額のよくある質問まとめ
Q.そもそも「第一種住居地域」とは何ですか?
A.第一種住居地域は、住居の環境を守るための用途地域の一つです。住宅のほかに、床面積3,000㎡までの店舗や事務所、ホテルなども建てることができますが、大規模な商業施設や工場の建設は制限されています。
Q.第一種住居地域は土地の相続税評価額にどう影響しますか?
A.一般的に、商業地域などに比べて建築できる建物の種類に制限があるため、土地の利用価値が限定され、評価額が低くなる傾向があります。しかし、住環境が良好で需要が高いエリアでは評価額が高くなることもあります。
Q.第一種住居地域と第一種低層住居専用地域では、どちらが評価額は高いですか?
A.建物の用途や高さの制限がより厳しい「第一種低層住居専用地域」に比べ、「第一種住居地域」の方が幅広い用途に利用できるため、一般的に土地の評価額は高くなる傾向にあります。
Q.同じ第一種住居地域内でも、土地の評価額が違うのはなぜですか?
A.相続税評価額の基準となる路線価は、駅からの距離、接している道路の幅、土地の形状(角地や不整形地など)、周辺環境(商業施設の近さなど)といった個別の要因によって変わるためです。
Q.相続した土地が第一種住居地域か調べる方法はありますか?
A.土地が所在する市区町村の役所(都市計画課など)で確認できます。また、多くの自治体ではウェブサイト上で都市計画図を公開しており、インターネットで手軽に調べることも可能です。
Q.第一種住居地域の土地を相続した場合、評価額を下げる方法はありますか?
A.土地の形状が悪い(不整形地)、間口が狭い、道路に接していない(無道路地)などの要因は評価額を下げる要因になります。また、小規模宅地等の特例を適用できれば、評価額を最大80%減額できる可能性があります。