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筆にまたがった宅地と山林の評価単位は?相続税評価の基本を解説

2025-02-09
目次

ご家族が亡くなり土地を相続したけれど、登記簿を見たら「宅地」と「山林」の2つの筆にまたがっている…。このような状況に、「どうやって評価すればいいの?」「相続税は高くなるの?」と不安に感じていらっしゃるかもしれませんね。相続税における土地の評価は、まず「評価単位」、つまりどの範囲を一つの土地として評価するかを決めることから始まります。この評価単位の判断が、最終的な評価額に大きく影響する、とても大切なステップなんです。今回は、複数の筆や地目にまたがる土地の評価単位の考え方について、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。

土地の評価単位とは?基本の考え方を知ろう

相続税の土地評価における「評価単位」とは、評価の対象となる一区画の土地のことを指します。これをどう区切るかによって、適用される評価方法や補正率が変わり、結果的に相続税額も変わってくる可能性があるため、非常に重要です。評価単位を判断するための基本的な考え方は、主に3つのステップで整理できます。

原則は「地目」ごとに評価する

土地評価の最も基本的なルールは、「地目(ちもく)」ごとに評価するというものです。地目とは、土地の主な用途を示す分類のことで、登記簿に記載されています。しかし、相続税評価で重要なのは登記簿上の地目ではなく、相続が発生した時点での「現況」です。例えば、登記上は「畑」でも、実際には駐車場として使われていれば「雑種地」として評価します。国税庁が定める地目は以下の9種類です。
宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地

土地の利用状況で判断する「利用単位」

同じ地目であっても、利用のされ方が異なれば、それは別の評価単位として扱われます。例えば、一つの広い宅地の中に「ご自身が住んでいる自宅」「他人に貸しているアパート」「月極駐車場」がある場合、地目はすべて「宅地」ですが、利用状況が異なるため、それぞれを別々の評価単位として評価します。

誰が取得したかで判断する「取得者ごと」

一つの土地を複数の相続人で分けて相続した場合も、評価単位は変わります。例えば、1筆の土地を長男と次男が分筆してそれぞれ相続した場合は、長男が取得した部分と次男が取得した部分を、それぞれ別の評価単位として評価します。誰がどの部分を取得したかによって、評価単位が分かれるのが原則です。

2筆にまたがった宅地と山林の評価単位

それでは、今回の本題である「筆にまたがった宅地と山林」の評価単位について見ていきましょう。地目が異なるため、原則に従えば別々に評価することになりますが、ここには大切な例外ルールが存在します。

一体で利用されている場合は「一体評価」が基本

国税庁のルール(財産評価基本通達)では、「一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして評価する」と定められています。つまり、宅地と山林が2筆にまたがっていても、全体が一体として利用されている場合は、地目ごとに分けずに、全体を一つの土地(一体評価)として評価することができるのです。例えば、自宅の建物が宅地部分に建っていて、隣接する山林部分を庭として利用しているようなケースがこれにあたります。

主たる地目の判定方法

一体評価をする場合、次に問題になるのが「どちらの地目をメインとして評価するか」です。これを「主たる地目」と言います。主たる地目は、単に面積が広い方というわけではなく、その土地全体の効用(価値や役割)から判断されます。例えば、自宅の敷地として利用されているのであれば、その主な効用は「居住用」ですので、山林部分の面積が広くても、全体を「宅地」として評価するのが一般的です。

一体評価の具体例:自宅敷地が宅地と山林にまたがるケース

具体的に考えてみましょう。道路に面した土地(登記地目:宅地)に自宅が建っており、その裏手にある土地(登記地目:山林)を庭や家庭菜園として利用しているとします。この場合、宅地と山林はフェンスなどで区切られておらず、自由に行き来できる状態で、全体が「自宅の敷地」という一つの目的で利用されています。このような状況では、2筆の土地を合わせて一つの「宅地」として一体評価します。山林部分も宅地と同じように路線価などを用いて評価計算を行うことになります。

一体評価されないケースとは?

筆にまたがった宅地と山林が、必ずしも一体評価されるわけではありません。利用状況によっては、原則通り別々に評価すべきケースもあります。どのような場合に別評価となるのか見ていきましょう。

利用状況が明らかに異なる場合

例えば、宅地部分には自宅が建っているものの、隣接する山林とは高いフェンスや塀で完全に区切られており、山林は全く手つかずの状態で放置されているような場合です。この場合、宅地と山林はそれぞれ独立して利用されていると判断され、別々の評価単位として扱われる可能性が高くなります。宅地は宅地として、山林は山林として、それぞれ評価額を算出します。

物理的に一体利用が困難な場合

宅地と山林の間に、急傾斜のがけ地や水路、公道などがあり、物理的に一体として利用することが困難な場合も、別々に評価されます。たとえ所有者が同じでも、土地の物理的な状況によって一体性が認められないケースです。このような場合は、それぞれの土地の状況に応じた評価方法を適用することになります。

評価単位で評価額はどう変わる?シミュレーション

評価単位の判断によって、相続税評価額がどれほど変わるのか、簡単なモデルケースで比較してみましょう。ここでは、宅地200㎡と山林300㎡が隣接している土地を例とします。

一体評価の場合(宅地として評価)

宅地と山林が一体利用されていると判断された場合、合計500㎡の土地全体を「宅地」として評価します。
路線価が1㎡あたり20万円の地域であれば、単純計算で以下のようになります。
評価額 = 20万円/㎡ × 500㎡ = 1億円
※実際には奥行価格補正などの各種補正が行われます。

別々評価の場合(宅地と山林をそれぞれ評価)

一体利用が認められず、別々に評価する場合、宅地は路線価方式、山林は倍率方式で評価するのが一般的です。

  • 宅地部分:20万円/㎡ × 200㎡ = 4,000万円
  • 山林部分:固定資産税評価額100万円 × 倍率1.1 = 110万円

この場合、合計の評価額は 4,110万円 となります。

評価額の比較

この2つのケースを比較すると、評価額に大きな差が出ることがわかります。

評価方法 評価額(シミュレーション)
一体評価(全体を宅地として評価) 1億円
別々評価(宅地と山林を個別に評価) 4,110万円

※上記はあくまで単純な計算例です。
このように、筆にまたがった宅地と山林の評価単位をどう判断するかは、相続税額を左右する非常に重要なポイントなのです。

評価単位の判定で注意すべきポイント

評価単位の判断は、専門的な知識と経験が求められる難しい作業です。ご自身で判断する際には、以下の点に特に注意してください。

登記地目ではなく「現況」で判断する

繰り返しになりますが、相続税評価で最も重視されるのは、登記簿上の地目ではなく、相続開始日時点での実際の利用状況(現況)です。登記簿だけを見て判断するのではなく、必ず現地の状況を確認することが不可欠です。ご自身での確認が難しい場合は、専門家に調査を依頼しましょう。

不合理分割に注意

相続税の評価額を下げることだけを目的として、一つの土地を不自然に細かく分割して相続するような行為は、「不合理分割」とみなされることがあります。例えば、道路に接しない土地(無道路地)を意図的に作り出すような分割です。不合理分割と判断された場合、税務署から否認され、分割前の状態を一つの評価単位として評価されることになりますので注意が必要です。

専門家への相談が不可欠

評価単位の判断は、通達の解釈や個別の土地の状況判断など、非常に専門的です。もし判断を誤り、評価額を過小に申告してしまうと、後の税務調査で追徴課税や延滞税といったペナルティが課されるリスクがあります。逆に、一体評価すべき土地を別々に評価して過大に申告してしまうと、本来払う必要のない税金を納めてしまうことにもなりかねません。不安な点があれば、必ず相続税に詳しい税理士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

今回は、筆にまたがった宅地と山林の評価単位について解説しました。最後にポイントを振り返っておきましょう。

  • 土地の相続税評価は、どの範囲を一つの土地とみなすかという「評価単位」の判定から始まります。
  • 宅地と山林など異なる地目にまたがる土地でも、全体が一体として利用されていれば、「一体評価」として扱われるのが基本です。
  • 一体利用されているかどうかは、土地の利用状況や物理的な状況から総合的に判断されます。
  • 評価単位の判断一つで評価額は大きく変わるため、納税額に重大な影響を与えます。
  • 複雑で専門的な判断が多いため、評価単位の判定に迷った際は、必ず相続専門の税理士に相談することをおすすめします。

大切な資産を正しく評価し、適切な相続税申告を行うために、この記事がお役に立てば幸いです。

参考文献

国税庁 質疑応答事例「地目の異なる土地が一体として利用されている場合の評価」

筆にまたがった宅地と山林の評価に関するよくある質問

Q.登記簿上は2筆の土地(宅地と山林)ですが、1つの土地として評価できますか?

A.はい、2筆にまたがっていても、自宅の敷地として一体で利用されている場合などは、1つの土地(評価単位)として評価することが可能です。

Q.宅地と山林、どちらの地目で評価されるのですか?

A.一体で評価する場合、その土地の主な用途となっている「主たる地目」で評価します。例えば、自宅の敷地であれば、全体を「宅地」として評価するのが一般的です。

Q.評価単位を間違えるとどうなりますか?

A.評価額が過大または過小になる可能性があります。過小に申告した場合、税務調査で指摘され、延滞税などのペナルティが課される恐れがあります。

Q.「一体利用」とは具体的にどのような状態ですか?

A.例えば、宅地部分に母屋があり、山林部分が庭や家庭菜園として使われているなど、全体が一つの生活空間として機能している状態を指します。

Q.建物が宅地と山林にまたがって建っている場合はどうなりますか?

A.建物が2つの地目にまたがっている場合、その敷地は一体として利用されていると判断されるのが一般的です。したがって、全体を主たる地目(多くは宅地)として一体評価します。

Q.評価単位の判断は自分でもできますか?

A.基本的な考え方はありますが、個別の状況によって判断が分かれる複雑なケースも多いため、相続専門の税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

事務所概要
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