税理士法人プライムパートナーズ

米国国籍の方必見!日本の相続税申告と修正申告を徹底解説

2024-12-13
目次

ご家族が亡くなられ、相続の手続きを進める中で、「自分は米国国籍だけど、日本の相続税はどうなるの?」「申告や修正申告はどうすればいいの?」と不安に感じていらっしゃるかもしれませんね。国際相続は手続きが複雑で、特に日米間の税金のルールは分かりにくい点も多いです。この記事では、米国国籍の方が日本の相続税申告修正申告を行う際の基本的なルールから具体的な手続きまで、分かりやすく丁寧にご説明しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

日本の相続税、誰が払うの?納税義務者の判定

まず最初に、ご自身が日本の相続税を支払う必要があるのかどうか、「納税義務者」に該当するかを確認することが大切です。これは、亡くなった方(被相続人)と財産を受け取る方(相続人)の国籍や住所によって決まります。少し複雑ですが、ご自身の状況と照らし合わせてみましょう。

被相続人(亡くなった方)が日本に住んでいた場合

亡くなった方が日本国内に住所を持っていた場合、ルールは比較的シンプルです。このケースでは、相続人の国籍や居住地にかかわらず、亡くなった方が所有していた全世界の財産(日本国内の財産+米国など海外の財産)が日本の相続税の課税対象となります。つまり、相続人であるあなたが米国国籍で米国在住であっても、日本の税務署へ相続税の申告が必要になる、ということです。

被相続人(亡くなった方)が米国に住んでいた場合

亡くなった方が米国に住んでいた(日本に住所がなかった)場合は、相続人であるあなたの状況によって課税される財産の範囲が変わります。以下の表で確認してみましょう。

相続人(財産を受け取る方)の状況 日本の相続税の課税対象
日本国籍があり、相続開始前10年以内に日本に住所があった 全世界の財産(日本国内+国外)
日本国籍はないが、相続開始時に日本に住所があった 全世界の財産(日本国内+国外)
日本国籍があり、相続開始前10年を超えて海外に住んでいる 日本国内にある財産のみ
日本国籍がなく、日本に住所もない(例:米国籍で米国在住) 日本国内にある財産のみ

このように、亡くなった方が米国在住でも、日本国内に不動産や預金などがあれば、相続税の申告が必要になる可能性があります。

ご自身の納税義務を正しく把握しましょう

納税義務者の判定は、国際相続における第一歩であり、最も重要なポイントです。ご自身のケースがどれに当てはまるかによって、申告すべき財産の範囲が大きく変わってきます。また、納税義務の判定は複雑化してきており、もし判断に迷う場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

日本とアメリカの相続税制度のここが違う!

日本の相続税申告を考える上で、米国の税制度との違いを知っておくことも大切です。両国の制度は根本的な考え方が異なるため、混乱してしまうことも少なくありません。主な違いを3つのポイントで見ていきましょう。

納税義務者と課税対象の違い

一番大きな違いは、誰が税金を納めるかという点です。日本では「相続人」が納税義務者となり、受け取った財産の額に応じて税金を納めます。これを「相続税」と呼びます。一方、米国では亡くなった方(の遺産)が納税義務者となり、遺産全体に対して課税されます。これを「遺産税(Estate Tax)」と呼びます。

項目 日本
制度の名称 相続税
納税義務者 財産を受け取る相続人
項目 アメリカ
制度の名称 遺産税(Estate Tax)
納税義務者 亡くなった方(被相続人)の遺産

基礎控除額の大きな差

税金がかからない非課税の枠である「基礎控除額」にも、非常に大きな差があります。

日本の相続税の基礎控除額は、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。例えば、相続人が3人なら4,800万円です。この金額を超える部分に相続税がかかります。

一方、米国の連邦遺産税の基礎控除額は非常に高額です。2024年時点では、なんと1,361万ドル(日本円で約20億円以上)となっています。そのため、ほとんどの場合、米国での連邦遺産税はかからないケースが多いです。ただし、州によっては別途、州の遺産税が課される場合があるので注意が必要です。

申告・納税の期限

申告と納税の期限も異なります。手続きをスムーズに進めるために、両方の期限を把握しておきましょう。

  • 日本の相続税:相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
  • 米国の連邦遺産税:被相続人の死亡日から9ヶ月以内

日本のほうが1ヶ月長いですが、国外財産の調査や評価には時間がかかることが多いので、早めに準備を始めることが大切です。

二重課税を防ぐ!外国税額控除と日米相続税条約

「日本と米国の両方で税金を払うことになるの?」と心配になる方も多いでしょう。同じ財産に対して二重に課税されるのは避けたいですよね。そのために「外国税額控除」という制度と「日米相続税条約」があります。

外国税額控除の仕組み

外国税額控除とは、国際的な二重課税を調整するための日本の制度です。具体的には、米国の遺産税を支払った場合に、その支払った税額のうち一定の金額を、日本の相続税額から差し引く(控除する)ことができます。これにより、二重課税の負担が軽減される仕組みになっています。この控除を受けるためには、確定申告の際に所定の明細書などを添付して手続きをする必要があります。

日米相続税条約の活用

日本と米国は、二重課税の回避などを目的とした「日米相続税条約」を結んでいます。この条約のおかげで、税金の取り扱いが調整されます。例えば、米国非居住者(日本在住者など)が米国内に財産を持っていて亡くなった場合、通常であれば6万ドルという低い控除額しか適用されません。しかし、この条約を適用する手続き(Form 8833の提出など)を行うことで、米国市民と同様の高額な基礎控除(1,361万ドル)の恩恵を受けられる可能性があります。この手続きを知っているかどうかで、納税額が大きく変わることがあるので、非常に重要なポイントです。

相続税申告の具体的な手続きと流れ

ここからは、実際に日本の相続税申告を行う際の具体的な流れをご説明します。国際相続では特に時間に余裕を持ったスケジュール管理が重要です。

申告期限までにやるべきことリスト

日本の相続税申告は、相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。この期間内に、以下の手続きを計画的に進めていきましょう。

  1. 遺言書の有無の確認:まず、亡くなった方が遺言書を遺しているかを確認します。
  2. 相続人の確定:戸籍謄本などを取り寄せて、誰が法的な相続人になるのかを確定させます。
  3. 相続財産の調査と評価:日本国内だけでなく、米国にある不動産、銀行預金、株式などの財産をすべてリストアップし、日本の相続税法に基づいて評価額を計算します。
  4. 遺産分割協議:相続人全員で、誰がどの財産をどれだけ受け取るかを話し合って決め、「遺産分割協議書」を作成します。
  5. 申告書の作成と提出:税額を計算し、相続税申告書を作成して、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署へ提出します。
  6. 納税:申告期限までに、計算された相続税を金融機関などで納付します。

米国にある財産の評価と必要書類

米国にある財産を日本の相続税申告に含める場合、その評価が難しいポイントになります。不動産であれば現地の不動産鑑定士による評価書、預金であれば相続開始日の残高証明書、上場株式であれば相続開始日の終値など、財産の種類に応じた客観的な資料が必要です。これらの書類は英語で作成されていることがほとんどなので、日本語への翻訳が必要になる場合もあります。書類の取り寄せや翻訳にも時間がかかるため、早めに着手しましょう。

期限に間に合わない?修正申告と更正の請求

国際相続では、米国の手続き(プロベートなど)に時間がかかり、どうしても日本の10ヶ月の申告期限までにすべての財産の評価が確定しないことがあります。そんな場合でも慌てなくて大丈夫です。適切な対処法があります。

暫定申告と修正申告

申告期限までに財産の評価が間に合わない場合、まずはその時点で判明している財産だけで一度申告と納税を済ませます。これを一般的に「暫定申告」と呼びます。その後、米国財産の評価額が正式に確定したら、「修正申告」という手続きを行い、追加の税額を納付します。こうすることで、申告期限に遅れたことによるペナルティ(延滞税や無申告加算税)を避けることができます。

税金を払い過ぎた場合は「更正の請求」

逆に、暫定申告の際に多めに税金を納めていた場合や、後から控除できる費用が見つかった場合など、税金を払い過ぎていたことが判明することもあります。その場合は「更正の請求」という手続きを行うことで、払い過ぎた税金を還付してもらうことができます。この更正の請求ができるのは、原則として法定申告期限から5年以内です。心当たりがある場合は、諦めずに確認してみましょう。

まとめ

米国国籍の方が日本の相続税申告修正申告を行う場合、納税義務者の判定から始まり、日米の制度の違いの理解、二重課税の回避策、そして期限内の手続きと、多くのハードルがあります。特に国外財産の評価や必要書類の準備には時間と専門知識が必要です。ご自身で全てを抱え込まず、国際相続に詳しい税理士などの専門家に相談することが、スムーズで安心な手続きへの一番の近道です。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげる一助となれば幸いです。

参考文献

米国国籍の方の相続税申告に関するよくある質問

Q.米国籍ですが、日本の財産を相続した場合、日本の相続税申告は必要ですか?

A.はい、日本国内にある財産を相続した場合は、国籍に関わらず日本の相続税申告が必要です。被相続人(亡くなった方)や相続人の住所が日本にあるかによって、課税される財産の範囲が変わることがあります。

Q.日本とアメリカで二重に税金がかかることはありますか?

A.日米租税条約により、二重課税を調整するための仕組み(外国税額控除)があります。日本で支払った相続税額を、アメリカの遺産税申告において控除できる場合がありますので、専門家にご相談ください。

Q.日本の相続税の申告期限はいつまでですか?

A.相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期限は国籍に関わらず適用されます。期限を過ぎるとペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。

Q.アメリカ在住ですが、日本の不動産を相続した場合の手続きはどうすればよいですか?

A.日本の不動産は日本の相続税の課税対象です。日本の税務署へ相続税の申告・納税が必要です。また、不動産の名義変更(相続登記)も日本の法務局で行う必要があります。

Q.相続税申告の内容を間違えてしまいました。修正申告はできますか?

A.はい、可能です。税額を少なく申告していた場合は「修正申告」を、逆に多く申告していた場合は「更正の請求」という手続きを行います。気づいた時点で速やかに行うことが重要です。

Q.アメリカの遺産税(Estate Tax)と日本の相続税の違いは何ですか?

A.日本の相続税は、財産を取得した各相続人が納税する「遺産取得課税方式」です。一方、アメリカの遺産税は、亡くなった方の遺産全体に課税される「遺産課税方式」という違いがあります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。