故人様のご遺骨を納める大切な儀式、「納骨」。いざその時になると「誰に頼めばいいの?」「何から準備すればいいの?」と戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。ご遺族の皆様が心穏やかに故人様を送り出せるよう、納骨の依頼先から具体的な流れ、費用、さらには自分で行う場合の方法まで、一つひとつ丁寧に解説していきますね。
納骨の依頼先は主に3つ
納骨を行うとき、まず誰にお願いすれば良いのでしょうか。主な依頼先は、お墓の状況によって変わりますが、主に「寺院」「石材店」「霊園・墓地の管理者」の3つになります。それぞれどのような役割があるのか見ていきましょう。
寺院(僧侶)
菩提寺(先祖代々お世話になっているお寺)がある場合は、まず第一に菩提寺のご住職に相談しましょう。納骨式の日程調整はもちろん、当日の読経といった供養の中心を担っていただきます。新しくお墓を建てた場合には、お墓に魂を入れる「開眼供養(かいげんくよう)」も併せてお願いすることになります。お寺との関係性を大切にし、早めに連絡することがスムーズに進めるポイントですよ。
石材店
石材店は、お墓の物理的な作業を担当してくれます。具体的には、納骨の際に納骨室(カロート)の石のフタを開け閉めする作業や、墓誌(ぼし)に故人様のお名前や戒名、没年月日などを彫刻(文字彫り)する作業を依頼します。特に、関東地方に多いお墓の構造では、50kg以上にもなる重い拝石(はいせき)を動かす必要があり、専門家である石材店にお願いするのが安全で確実です。文字彫りには2〜3週間ほど時間がかかることもあるので、納骨の日程が決まったら早めに依頼しましょう。
霊園・墓地の管理者
お墓がある霊園や墓地の管理事務所への連絡も忘れてはいけません。納骨を行うためには、事前に管理者へ「埋葬許可証」を提出し、手続きを行う必要があります。また、霊園によっては特定の石材店が「指定業者」として決められている場合があります。その場合は、自分で石材店を選ぶのではなく、指定された業者に依頼することになりますので、最初に確認しておくと安心です。公営霊園などでは指定業者がいない場合がほとんどです。
納骨を専門家に依頼する場合の流れと費用
専門家にお願いする場合、どのような準備をして、当日はどう進むのでしょうか。一般的な流れと、気になる費用について詳しく見ていきましょう。
日程調整と関係者への連絡
まずは納骨式の日程を決めます。一般的には四十九日や一周忌などの法要に合わせて行われることが多いですが、特に決まりはありません。ご家族や親族が集まりやすい日を選びましょう。日程の候補が決まったら、僧侶や石材店の都合を確認し、正式に決定します。日程が決まったら、参列していただく方々へ早めに連絡をしましょう。
石材店への依頼内容
納骨の日程が決まったら、石材店へ連絡し、以下の内容を依頼します。
- 納骨作業:納骨当日に納骨室の開閉作業を依頼します。
- 文字彫刻:墓誌や墓石に故人様の戒名や俗名、没年月日、年齢などを彫刻してもらいます。完成までに数週間かかるため、余裕をもって依頼しましょう。
当日までに準備するもの
納骨式当日、慌てないように事前に準備しておきましょう。主な持ち物は以下の通りです。
- 遺骨
- 埋葬許可証:火葬場で火葬許可証に印が押されたもの。これを忘れると納骨できません。
- 墓地使用許可証:お墓の権利を証明する書類です。
- 印鑑:手続きに必要な場合があります。
- お布施など僧侶へのお礼:読経のお礼としてお渡しします。
- お供え物:供花や故人様の好きだったお菓子や果物など。
- 数珠、お線香、ろうそく
納骨式当日の流れ
当日は以下のような流れで進むのが一般的です。
- 準備:施主は少し早めに墓地に到着し、お墓の掃除やお供え物の準備をします。
- 施主挨拶:参列者が揃ったら、施主が簡単な挨拶をします。
- 納骨:石材店の方が納骨室を開け、施主やご遺族の手で骨壺を納めます。
- 読経・焼香:僧侶による読経が行われ、施主から順に焼香をします。
- 会食(お斎):納骨式の後、場所を移して会食(お斎・おとき)を行うこともあります。
費用の内訳と相場
納骨を依頼する場合にかかる費用の目安をまとめました。状況によって変動しますので、あくまで参考としてください。
項目 | 費用相場 |
---|---|
僧侶へのお布施 | 30,000円~50,000円 |
御車代(僧侶の交通費) | 5,000円~10,000円 |
御膳料(僧侶が会食を辞退された場合) | 5,000円~10,000円 |
石材店への納骨作業料 | 15,000円~30,000円 |
墓誌への文字彫刻料 | 30,000円~50,000円 |
お供え物(花など) | 5,000円~10,000円 |
会食費用 | 1人あたり 3,000円~8,000円 |
条件が合えば自分で納骨することも可能
「費用を抑えたい」「家族だけで静かに行いたい」という理由から、ご自身での納骨を検討される方もいらっしゃいます。実は、法律で禁止されているわけではなく、条件さえ合えば自分で納骨することも可能です。ただし、誰でも簡単にできるわけではないので、注意点をしっかり確認しましょう。
自分で納骨できるお墓の構造
自分での納骨が比較的しやすいのは、お墓の構造が簡単なタイプです。例えば、関西地方に多いお墓では、香炉や供物台を動かすだけで納骨室の入り口が現れる構造になっていることがあります。このようなタイプであれば、大人一人でも作業が可能な場合があります。
自分で納骨するメリット
一番のメリットは費用を抑えられることです。石材店に依頼する納骨作業料(15,000円~30,000円程度)がかかりません。また、僧侶を呼ばずに家族だけで行えば、お布施も不要になります。日程も自分たちの都合で決めやすく、親しい家族だけで故人を偲ぶ静かな時間を持つことができるでしょう。
自分で納骨できない・避けるべきケース
一方で、自分での納骨が難しい、あるいは避けるべきケースもあります。
- 重い石を動かす必要があるお墓:関東地方に多い、地面にある拝石(数十kg)を動かすタイプは、怪我や墓石の破損リスクが非常に高いため、絶対に専門業者に依頼してください。
- 霊園・寺院の決まり:霊園や寺院によっては、指定石材店以外の作業を禁止していたり、自分での納骨を許可していなかったりします。必ず事前に確認が必要です。
- 寺院墓地の場合:菩提寺との関係性を良好に保つためにも、お寺の中にあるお墓の場合は、ご住職に相談なく自分たちだけで納骨するのは避けた方が賢明です。
自分で納骨する場合の流れと注意点
もしご自身で納骨ができる条件が整った場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。安全に行うためのポイントと併せて解説します。
事前に必ず確認・許可を取ること
自分で納骨を行うと決めたら、まずはお墓の管理事務所や寺院に連絡し、「自分たちで納骨を行いたい」という旨を伝え、許可を得ましょう。無断で行うとトラブルの原因になります。また、後々の親族間トラブルを避けるためにも、事前に近しい親族には事情を説明し、了解を得ておくことが大切です。
必要な書類と持ち物
専門家に依頼する場合と同様に、「埋葬許可証」と「墓地使用許可証」は必須です。管理事務所での手続きに必要となります。当日の作業用には、以下のものを用意すると良いでしょう。
- 軍手
- タオル(汚れても良いものを数枚)
- ほうき、ちりとり(納骨室の掃除用)
- 懐中電灯(納骨室の内部確認用)
- お供え物(お花、お線香、数珠など)
当日の作業手順
- 管理事務所で手続き:まず管理事務所へ行き、埋葬許可証などを提出して所定の手続きを済ませます。
- お墓の掃除とお参り:お墓に着いたら、まずはお墓をきれいに掃除し、ご先祖様にご挨拶をします。
- 納骨室を開ける:香炉などを慎重に動かし、納骨室のフタを開けます。この際、石を落としたり、指を挟んだりしないよう、十分に注意してください。
- 納骨する:納骨室の中が汚れていたり、水が溜まっていたりしたら綺麗にします。その後、骨壺をそっと納めます。
- フタを閉める:納骨が終わったら、フタを元通りに閉め、動かした香炉なども元の位置に戻します。
- お参り:最後にお花やお線香をお供えし、家族全員で静かに手を合わせましょう。
安全に行うための注意点
墓石は非常に重く、少しぶつけただけでも欠けてしまうことがあります。作業は必ず2人以上で行いましょう。動かした石材を置く場所には、下にタオルを敷くなどして、お墓や周囲の墓石を傷つけないように配慮することが重要です。少しでも不安を感じたら、無理をせず石材店に依頼しましょう。
お墓以外への納骨(供養)という選択肢
最近では、ライフスタイルの変化に伴い、伝統的なお墓以外での供養を選ぶ方も増えています。「お墓の継承者がいない」「子どもに負担をかけたくない」といった思いから、様々な選択肢が考えられます。
供養の方法 | 特徴と費用相場 |
---|---|
納骨堂 | 屋内の施設に遺骨を安置する方法。天候に左右されずお参りしやすいのが特徴です。 費用相場:200,000円~1,000,000円 |
樹木葬 | 墓石の代わりに樹木を墓標とする方法。自然に還りたいという方に選ばれています。 費用相場:50,000円(合祀)~800,000円(個別) |
散骨 | 遺骨を粉末状にして海や山に撒く方法。お墓を持たない供養の形です。 費用相場:50,000円(合同)~300,000円(個別チャーター) |
手元供養 | 遺骨の一部を自宅に保管し、ミニ骨壺やアクセサリーなどに入れて供養する方法です。 費用相場:10,000円~100,000円(供養品による) |
まとめ
納骨は誰に頼めば良いのか、その答えはお墓の状況やご家族の考え方によって様々です。菩提寺があるならご住職に、お墓の作業は石材店にお願いするのが一般的で安心な方法です。しかし、条件が合えば費用を抑えて自分たちで行うこともできますし、お墓を持たないという選択肢もあります。一番大切なのは、故人様を大切に思う気持ちです。どの方法がご自身やご家族にとって最も良い形なのか、この記事を参考にじっくり話し合ってみてくださいね。
納骨に関するよくある質問まとめ
Q.納骨は誰に頼むのが一般的ですか?
A.一般的には、お墓を管理しているお寺や霊園の管理者に相談し、石材店に作業を依頼します。お墓を建てた際の石材店が分かれば、直接連絡するのも良いでしょう。
Q.納骨は自分たちで行っても良いのでしょうか?
A.法律上の資格は不要ですが、墓石は非常に重く、専門的な知識がないと危険が伴うため、石材店などの専門業者に依頼するのが安全です。霊園によっては指定業者以外による作業を禁止している場合もあります。
Q.納骨の依頼先はどうやって探せば良いですか?
A.まずはお墓のあるお寺や霊園の管理事務所に相談するのが最も確実です。提携している石材店を紹介してもらえます。また、インターネットで地域の石材店を探して相見積もりを取ることも可能です。
Q.菩提寺がない場合、誰に納骨を頼めば良いですか?
A.お墓がある霊園の管理事務所に相談してください。納骨作業を行う石材店や、必要であれば法要を行ってくれる僧侶の手配についても相談に乗ってもらえます。
Q.納骨の費用は誰に支払いますか?
A.納骨の作業費用は、依頼した石材店に支払います。法要を執り行う場合は、読経していただいた僧侶へ別途お布施をお渡しするのが一般的です。
Q.納骨の日程は誰と相談して決めるべきですか?
A.まずはご家族や親族間で希望の日程を調整します。その後、お寺や僧侶、作業を依頼する石材店の都合を確認しながら最終的な日程を決定します。