確定申告や住民税の計算をしていると、「総所得金額」「合計所得金額」「総所得金額等」という似たような言葉が出てきて、戸惑ってしまうことはありませんか。これらの言葉はどれも「所得の合計」を表していますが、税金の計算において使われる場面や、含まれる内容が少しずつ異なっています。この違いを正しく理解していないと、受けられるはずの控除が受けられなくなったり、扶養から外れてしまったりすることもありますよ。この記事では、それぞれの意味や具体的な計算方法、どのような場面で使われるのかを、分かりやすく解説していきますね。
合計所得金額とは?基本と計算方法
合計所得金額とは、1年間で得たさまざまな所得を単純に足し合わせた、ベースとなる金額のことです。過去の年からの赤字を差し引く前の金額であるという点が、大きな特徴になります。
合計所得金額に含まれる所得
給与所得や事業所得、不動産所得、雑所得(公的年金など)といった、ほかの所得と合算して税金を計算する「総合所得」がすべて含まれます。さらに、土地や建物を売ったときの譲渡所得や株式の譲渡所得など、ほかの所得と分けて税金が計算される「分離課税の所得」も含まれるのがポイントです。たとえば、お給料をもらいながら、株の取引で利益が出た場合などは、両方を足した金額が合計所得金額になりますよ。
合計所得金額に含まれないもの
源泉分離課税の対象となっている退職所得は、合計所得金額には含まれません。また、上場株式の配当金や特定口座(源泉徴収あり)での利益について、確定申告をしない(申告不要制度を選ぶ)と決めた場合も、合計所得金額には含まれなくなります。
合計所得金額が使われる主な場面
合計所得金額は、主に税金の負担能力があるかどうかの判定や、家族を扶養に入れられるかどうかの判定に使われます。過去の赤字を差し引く前の金額で判定されるため、注意が必要ですよ。
| 使われる場面 | 具体的な基準例 |
|---|---|
| 扶養控除・配偶者控除の判定 | 合計所得金額が48万円以下 |
| 寡婦・ひとり親控除の判定 | 合計所得金額が500万円以下 |
| 住民税(均等割)の非課税判定 | 自治体の定める基準額以下 |
| 基礎控除の金額の判定 | 合計所得金額2,400万円以下で48万円 |
総所得金額とは?基本と計算方法
総所得金額とは、総合所得の合計から、前年から繰り越した赤字(純損失や雑損失の繰越控除)を差し引いたあとの金額のことです。税金の計算の基礎となる金額ですが、日常生活で直接意識する機会は意外と少ないかもしれません。
総所得金額に含まれる所得
給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得など、総合課税の対象となる所得だけが含まれます。一時所得や総合課税の長期譲渡所得については、金額を半分にした後の数字で計算しますよ。
総所得金額に含まれないもの
土地や建物の譲渡所得、株式の譲渡所得といった分離課税の所得は、総所得金額には一切含まれません。ここが合計所得金額との大きな違いですね。
総所得金額が使われる場面
総所得金額単体で何かの判定に使われることは少なく、おもに次の「総所得金額等」を計算するための土台として使われることが多いです。
総所得金額等とは?合計所得金額との違い
総所得金額等とは、先ほどの合計所得金額から、過去から繰り越してきた赤字(純損失や雑損失の繰越控除)を差し引いたあとの金額を指します。過去の損失をしっかり加味して、現在の本当の負担能力を見極めるための金額と言えますね。
総所得金額等に含まれる所得
給与所得や事業所得などの総合所得に加えて、土地・建物の譲渡所得などの分離課税の所得も含まれます。ただし、分離課税の所得については、特別控除を適用する前の金額で計算することになっています。
総所得金額等に含まれないもの
合計所得金額と同じく、確定申告をしないことを選んだ特定口座(源泉徴収あり)の株式譲渡益や配当金、そして源泉分離課税の退職所得などは含まれません。
総所得金額等が使われる主な場面
総所得金額等は、医療費控除などの控除額を計算するときの基準としてよく使われます。
| 使われる場面 | 具体的な基準例 |
|---|---|
| 医療費控除の足切り額の計算 | 総所得金額等が200万円未満ならその5% |
| 寄附金控除(ふるさと納税など)の限度額計算 | 総所得金額等の30%以内など |
| 住民税(所得割)の非課税判定 | 自治体の定める基準額以下 |
3つの金額の具体的な違いを比較
ここまでご紹介した3つの金額ですが、違いが分かりやすくなるように、重要なポイントを比較してみましょう。特に過去の赤字と分離課税の扱いに注目してくださいね。
損失の繰越控除の扱いの違い
過去に大きな赤字を出してしまい、今年の黒字から差し引く(繰越控除)場合、その赤字を引く前の金額が合計所得金額、引いた後の金額が総所得金額と総所得金額等になります。赤字の繰越をしていない方にとっては、合計所得金額と総所得金額等はまったく同じ金額になりますよ。
| 金額の種類 | 過去の赤字(繰越控除)の扱い |
|---|---|
| 合計所得金額 | 差し引く前 |
| 総所得金額・総所得金額等 | 差し引いた後 |
分離課税の所得の扱いの違い
土地や株を売ったときの利益など、分離課税の所得が含まれるかどうかも重要です。合計所得金額と総所得金額等には分離所得が含まれますが、総所得金額には含まれません。つまり、総所得金額は純粋な総合所得のみの集まりということです。
控除や非課税判定での注意点
税金の申告をするときに、どの金額を基準にするかを間違えてしまうと、損をしてしまうことがあります。特によくある注意点をまとめました。
扶養控除や配偶者控除の判定
ご家族を扶養に入れる場合、基準となるのは合計所得金額です。たとえば、配偶者控除を受けるには、配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与のみなら103万円以下)である必要があります。もし過去の赤字を繰り越して今年の利益と相殺したとしても、合計所得金額は「赤字を引く前の金額」で計算されるため、基準の48万円を超えてしまい、扶養に入れないケースがあるので注意してくださいね。
医療費控除などの控除額の計算
医療費控除を計算するときの基準額には総所得金額等を使います。総所得金額等が200万円未満の場合は「総所得金額等の5%」を超えた分の医療費が控除でき、200万円以上の場合は「10万円」を超えた分が控除できます。こちらは過去の赤字を引いた後の金額で計算できるため、赤字を繰り越している方は医療費控除の基準額が下がり、控除を受けやすくなるメリットがあります。
まとめ
「合計所得金額」「総所得金額」「総所得金額等」の違いについて解説しました。最も大きな違いは、過去の赤字を差し引く前か後か、そして分離課税の所得を含むかどうかです。扶養の判定には赤字を引く前の「合計所得金額」が使われ、医療費控除などの計算には赤字を引いた後の「総所得金額等」が使われると覚えておくと安心ですよ。ご自身の所得の種類や過去の申告状況をしっかり確認して、正しい税金計算にお役立てくださいね。
参考文献
総所得金額と合計所得金額の違いのよくある質問まとめ
Q.合計所得金額と総所得金額の違いは何ですか?
A.合計所得金額はすべての所得を足した金額で、過去の損失を差し引く前のものです。一方、総所得金額は総合所得のみの合計で、過去の損失を差し引いた後の金額となります。
Q.医療費控除の計算にはどの所得金額を使いますか?
A.医療費控除の計算には「総所得金額等」を使います。総所得金額等が200万円未満の場合はその5%、200万円以上の場合は10万円を基準に計算します。
Q.配偶者控除や扶養控除の判定にはどの所得金額を使いますか?
A.配偶者控除や扶養控除の判定には「合計所得金額」を使います。たとえば、扶養される方の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみで103万円以下)であることが条件となります。
Q.過去の赤字(繰越損失)は合計所得金額に反映されますか?
A.反映されません。合計所得金額は、過去の赤字(純損失や雑損失の繰越控除)を差し引く前の金額として計算されます。
Q.土地や建物を売った利益(譲渡所得)は総所得金額に含まれますか?
A.含まれません。土地や建物の譲渡所得は分離課税となるため、総合所得のみで構成される「総所得金額」には入りません。
Q.住民税の非課税判定にはどの所得金額を使いますか?
A.住民税の均等割の非課税判定には「合計所得金額」を、所得割の非課税判定には「総所得金額等」を使用します。