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親が生きているうちにすべき名義変更とは?相続前の税金対策を解説

2026-02-04
目次

「親が元気なうちに、財産の名義変更をしておいた方がいいのかな?」と考えたことはありませんか。いわゆる生前贈与は、相続が起きてから慌てるのを防いだり、将来の税金の負担を軽くしたりできる、とても有効な税金対策なんです。でも、やり方を間違えると逆に損をしてしまうことも。今回は、どんな財産をいつ、どうやって名義変更するべきなのか、税金のポイントも交えながら優しく解説していきますね。

生前に名義変更(生前贈与)する3つのメリット

まず、なぜ親が元気なうちに財産の名義を変えておく(生前贈与する)と良いのでしょうか。亡くなってから相続するのと比べて、主に3つの大きなメリットがあるんですよ。

好きなタイミングで特定の人に財産を渡せる

一番のメリットは、親(贈与者)の意思で「誰に」「何を」「いつ」渡すかを自由に決められることです。相続になると、遺言書がなければ相続人全員で話し合って財産の分け方を決めなければなりません。不動産のように分けにくい財産があると、話がまとまらずにトラブル(争続)になってしまうことも少なくありません。生前贈与なら、親の「この家は長男に継いでほしい」といった想いを、元気なうちに確実に形にできるんです。

相続税の負担を軽くできる可能性がある

生前贈与を計画的に行うことで、将来亡くなったときに支払う相続税を節税できる可能性があります。特に、これから価値が上がりそうな財産は効果的です。例えば、再開発が予定されている土地や、業績好調な会社の株式などは、価値が上がる前に贈与しておくことで、高い評価額で相続税がかかるのを防げます。また、家賃収入のあるアパートなどを贈与すれば、その後の家賃収入はもらった人の財産になるため、親の財産が増え続けて相続税が高くなるのを抑える効果もあります。

認知症による資産凍結を防げる

もし親が認知症などで判断能力が低下してしまうと、銀行口座が凍結されて預金を引き出せなくなったり、不動産を売却したくてもできなくなったりする「資産凍結」のリスクがあります。介護費用や施設への入居費用を捻出しようにも、本人の財産を自由に動かせなくなってしまうのです。判断能力がしっかりしているうちに不動産の名義変更や預金の移転をしておけば、いざという時に困らずに済みます。

生前に名義変更を検討すべき財産とは?

では、具体的にどのような財産を生前に名義変更しておくと良いのでしょうか。特に検討したい3つの財産をご紹介します。

不動産(自宅や収益物件)

不動産は評価額が大きく、相続財産の大部分を占めることが多い財産です。分けにくさから相続トラブルの原因にもなりやすいため、誰に引き継ぐか決まっているのであれば生前贈与が有効です。特に、将来値上がりが見込まれる土地や、家賃収入を生むアパート・マンションは、早めに贈与することで相続税対策としての効果が期待できます。ただし、贈与には税金や手続き費用がかかるので、メリットとデメリットをしっかり比較することが大切です。

現金・預貯金

現金や預貯金は、暦年贈与という方法を活用しやすい財産です。これは、1年間(1月1日~12月31日)に1人あたり110万円までなら贈与税がかからないという基礎控除の仕組みです。この範囲内で毎年コツコツと子どもや孫に贈与を続ければ、非課税で財産を移すことができます。ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与していると、税務署から「定期贈与」とみなされ、まとめて課税される可能性があるので注意が必要です。贈与の都度、贈与契約書を作成しておくと安心ですよ。

株式などの有価証券

株式も不動産と同様に、将来値上がりする前に贈与することで節税効果が期待できます。株価が低いタイミングを見計らって贈与できれば、将来高い株価で相続税を計算されるよりも有利になる可能性があります。また、非上場の自社株をお持ちの経営者の方にとっては、後継者へスムーズに事業承継を行うための重要な手段となります。

生前贈与にかかる税金と費用

生前贈与はメリットばかりではありません。贈与をするときには、相続とは異なる税金や費用がかかることを知っておく必要があります。主に注意したいのは次の3つです。

贈与税

贈与税は、財産をもらった人(受贈者)が支払う税金です。年間110万円の基礎控除額を超えた部分に対して課税されます。税率は相続税よりも高く設定されているため、高額な財産を一度に贈与すると、税負担が非常に重くなることがあります。

贈与税の税率(特例贈与:親や祖父母から18歳以上の子や孫へ)
基礎控除後の課税価格 税率(控除額)
200万円以下 10%
400万円以下 15%(10万円)
600万円以下 20%(30万円)
1,000万円以下 30%(90万円)
1,500万円以下 40%(190万円)
3,000万円以下 45%(265万円)
4,500万円以下 50%(415万円)
4,500万円超 55%(640万円)

不動産取得税

土地や建物などの不動産を贈与によって取得した場合にかかる税金です。相続で取得した場合にはかかりませんが、生前贈与では課税対象となります。税額は、不動産の固定資産税評価額の3%(宅地の場合、2027年3月31日までは評価額が1/2になる特例あり)が基本です。

登録免許税

不動産の名義変更(所有権移転登記)をする際に法務局に納める税金です。この税率も、相続と贈与で大きく異なります。

原因 税 率
贈与 固定資産税評価額の2.0%
相続 固定資産税評価額の0.4%

このように、贈与の場合は相続に比べて5倍の登録免許税がかかることになります。

贈与税の負担を軽くする特例制度

「贈与税って高いんだな…」と思われたかもしれませんが、ご安心ください。贈与税の負担を大きく軽減できる特例制度がいくつか用意されています。上手に活用すれば、税金を抑えながら賢く生前贈与ができますよ。

相続時精算課税制度

原則として60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選択できる制度です。この制度を選ぶと、贈与者ごとに累計2,500万円までの贈与が非課税になります。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。さらに、2024年1月1日以降の贈与からは、この2,500万円の枠とは別に、年間110万円の基礎控除が新設され、この分は贈与税も将来の相続税もかからなくなりました。ただし、一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与では暦年贈与に戻れない、贈与した財産は相続時に相続財産に加算して相続税を計算する必要がある、といった注意点もあります。

夫婦間の居住用不動産の贈与(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅やその購入資金を贈与する場合に使える特例です。最高2,000万円まで贈与税がかからないという、とても大きな控除です。暦年贈与の基礎控除110万円と併用できるので、合計2,110万円まで非課税で贈与が可能です。長年連れ添った配偶者に自宅を確実に残したい場合に有効な方法ですね。

その他の非課税制度

ほかにも、目的が限定された贈与には非課税制度があります。

  • 住宅取得等資金の贈与:子や孫がマイホームを取得するための資金援助(最大1,000万円まで非課税)
  • 教育資金の一括贈与:子や孫の教育資金として金融機関に信託した場合(最大1,500万円まで非課税)
  • 結婚・子育て資金の一括贈与:子や孫の結婚や子育て費用として金融機関に信託した場合(最大1,000万円まで非課税)

これらの制度にはそれぞれ細かい要件があるので、利用する際は専門家に相談することをおすすめします。

生前贈与で失敗しないための3つの注意点

生前贈与は計画的に進めることがとても重要です。最後に、思わぬ失敗をしないための注意点を3つお伝えします。

亡くなる直前の贈与は相続財産になる

相続税対策として贈与をしても、亡くなる直前の贈与は相続税の計算対象に含められてしまうルールがあります。これを生前贈与加算といいます。これまで亡くなる前3年以内の贈与が対象でしたが、2024年1月1日以降の贈与からは、この期間が段階的に7年以内に延長されます。相続対策を考えるなら、できるだけ早めに、計画的に始めることが大切です。

納税資金を準備しておく必要がある

不動産など、現金以外の財産を贈与された場合、贈与税や不動産取得税は現金で納付しなければなりません。いざ納税というときに「現金が足りない!」とならないよう、贈与を受ける側はあらかじめ納税資金を準備しておく必要があります。贈与する側がその資金を援助すると、それもまた贈与とみなされてしまうので注意してくださいね。

他の相続人とのトラブルに注意する(特別受益)

特定の子どもだけに多額の生前贈与をすると、他の相続人から「不公平だ」という不満が出て、相続トラブルの原因になることがあります。法律上、生前贈与は「特別受益」といい、遺産の前渡しとみなされる場合があります。その結果、贈与を受けた人は相続での取り分が減らされてしまう可能性があるのです。また、他の相続人には最低限の取り分を主張できる「遺留分」という権利もあります。生前贈与をする際は、他の相続人にも配慮し、なぜそのようにするのかをしっかり説明しておくことが、円満な相続につながります。

まとめ

親が生きているうちに行う財産の名義変更、つまり生前贈与は、相続トラブルの防止や相続税対策として非常に有効な手段です。しかし、贈与税や各種費用がかかったり、注意すべき点も多かったりするため、計画的に進めることが何よりも大切です。「うちの場合は、生前贈与と相続、どっちがいいんだろう?」と迷われたら、ご自身の財産状況や家族構成に合わせて最適な方法を考える必要があります。場合によっては税理士などの専門家に相談して、ご家族みんなが納得できる形で大切な財産を次の世代へ引き継いでいきましょう。

参考文献

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|

親が生きているうちにすべき名義変更と税金対策のよくある質問

Q.親が元気なうちに財産の名義変更(生前贈与)をしておくメリットは何ですか?

A.相続が発生した際の家族間のトラブルを未然に防ぎ、相続税の負担を計画的に軽減できる可能性があります。また、親の意思で特定の人に財産を確実に渡せる点も大きなメリットです。

Q.生前贈与で特に名義変更を検討すべき財産は何ですか?

A.将来価値が上がると予想される不動産や株式、家賃収入のあるアパートなどです。価値が低いうちに贈与することで、将来の相続税評価額を抑える効果が期待できます。

Q.贈与税をかけずに生前贈与する方法はありますか?

A.年間110万円までの贈与が非課税になる「暦年贈与」の活用が一般的です。その他、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の特例など、目的に応じた非課税制度もあります。

Q.不動産の名義変更(生前贈与)にかかる税金や費用は何ですか?

A.贈与税のほかに、登録免許税や不動産取得税がかかります。相続時に比べて税負担が重くなるケースもあるため、専門家と相談の上、事前のシミュレーションが重要です。

Q.親の預貯金を生前に子どもの口座に移しても大丈夫ですか?

A.単に資金を移しただけでは「名義預金」とみなされ、親の相続財産として扱われる可能性があります。贈与契約書を作成するなど、贈与の事実を明確に残しておくことが大切です。

Q.亡くなる直前の贈与は意味がないと聞きましたが、本当ですか?

A.はい。相続開始前7年以内に行われた贈与は、相続財産に持ち戻して相続税が計算されます(生前贈与加算)。税金対策を考えるなら、できるだけ早く計画的に進めることが重要です。

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