ご相続された土地が道路の角にある場合、「角地(かどち)」として一般的な土地よりも高く評価されることがあります。でも、「準角地(じゅんかどち)」という似た土地もあり、評価方法が少し異なります。この記事では、角地や準角地の相続税評価額がどのように決まるのか、その計算方法を初心者の方にも分かりやすく、ステップごとに解説していきますね。
まずは基本から!角地と準角地の違い
相続税の土地評価を理解するために、まずは「角地」と「準角地」の基本的な違いから見ていきましょう。どちらも2つの道路に面している点は似ていますが、道路の接し方によって区別されるんですよ。
角地とは?
角地とは、2本の道路が交差する「交差点」やT字路に接している土地のことです。十字路やT字路の角にある土地をイメージしていただくと分かりやすいですね。2つの異なる道路を利用できるため利便性が高く、資産価値もその分高く評価されます。
準角地とは?
一方、準角地とは、1本の道路がL字型に折れ曲がっている、その内側にある土地を指します。交差点ではないので、2本の独立した道路に面しているわけではありません。角地ほどの利便性はないものの、2方向に開放されているため、こちらも通常の土地よりは評価が高くなります。
角地と準角地の違いまとめ
見た目と評価上の扱いの違いを、下の表で整理してみましょう。
種類 | 特徴 |
角地 | 十字路やT字路など、2本の道路が交差する角にある土地。 |
準角地 | 1本のL字路の内側にある土地。 |
角地・準角地の相続税評価額の計算ステップ
それでは、実際にどのように評価額を計算するのか、大まかな流れを見ていきましょう。土地の評価は基本的に「路線価方式」という方法で行われます。
路線価方式とは
路線価方式とは、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額である「路線価」を基に、土地の評価額を計算する方法です。路線価は国税庁が毎年公表しており、路線価図で確認できます。
評価額計算の基本式
角地や準角地の評価額は、次の式で計算するのが基本です。少し複雑に見えますが、一つひとつのステップを丁寧に進めれば大丈夫ですよ。
【1㎡あたりの評価額】=(正面路線の路線価 × 奥行価格補正率)+(側方路線の路線価 × 奥行価格補正率 × 側方路線影響加算率)
【土地全体の評価額】= 1㎡あたりの評価額 × 土地の面積(地積)
ステップ1:正面路線を正しく判定する
計算の第一歩は、2つの道路のうちどちらを「正面路線」とし、どちらを「側方路線」とするかを決めることです。この判定を間違えると評価額が大きく変わってしまうため、とても重要なポイントになります。
なぜ正面路線の判定が重要?
上の計算式を見ていただくとわかる通り、メインとなるのは「正面路線」です。「側方路線」はあくまで加算要素。どちらを正面にするかで、評価額のベースが変わってしまうのです。見た目や普段の出入り口がどちらかは関係なく、税法上のルールで決める必要があります。
正面路線の判定方法
正面路線は、単純に路線価が高い方、というわけではありません。それぞれの路線価に「奥行価格補正率」を掛けた後の金額を比較し、金額が高い方を正面路線とします。
【判定例】
- 道路A:路線価 200,000円、奥行価格補正率 1.00 → 200,000円 × 1.00 = 200,000円
- 道路B:路線価 205,000円、奥行価格補正率 0.97 → 205,000円 × 0.97 = 198,850円
この場合、路線価自体は道路Bの方が高いですが、補正後の金額は道路Aの方が高くなります。したがって、正面路線は道路Aとなります。
ステップ2:側方路線影響加算率で評価額をアップさせる
正面路線が決まったら、次に側方(横の道路)からの良い影響を評価額にプラスします。この時に使うのが「側方路線影響加算率」です。
側方路線影響加算とは
側方路線影響加算とは、2つの道路に面していることによる利便性の高さを評価額に加算するための補正です。角地や準角地は、この加算があるため、一本の道路にしか面していない土地よりも評価額が高くなるのです。
地区区分ごとの側方路線影響加算率
加算される割合(側方路線影響加算率)は、土地がどの「地区区分」にあるか、そして「角地」か「準角地」かによって異なります。地区区分は路線価図で確認できます。
地区区分 | 加算率 |
ビル街地区 | 角地:0.07 準角地:0.03 |
高度商業地区・繁華街地区 | 角地:0.10 準角地:0.05 |
普通商業・併用住宅地区 | 角地:0.08 準角地:0.04 |
普通住宅地区 | 角地:0.03 準角地:0.02 |
中小工場地区 | 角地:0.03 準角地:0.02 |
大工場地区 | 角地:0.02 準角地:0.01 |
(出典:国税庁 財産評価基本通達)
一般的な住宅街である「普通住宅地区」では、角地なら3%、準角地なら2%が加算の基準になる、と覚えておくと良いでしょう。
ステップ3:具体例で相続税評価額を計算してみよう
それでは、ここまでのステップを踏まえて、具体的な土地で評価額を計算してみましょう。
計算の前提条件
- 土地の状況:普通住宅地区にある角地
- 面積:400㎡ (20m × 20m)
- 正面路線(と判定された):路線価 300,000円、奥行20m
- 側方路線(と判定された):路線価 280,000円、奥行20m
- 奥行価格補正率(奥行20mの場合):1.00
計算の手順
1. 正面路線の判定
まず、どちらが正面路線かを判定します。(この例では、すでに判定済みとします)
・正面路線候補:300,000円 × 1.00 (補正率) = 300,000円
・側方路線候補:280,000円 × 1.00 (補正率) = 280,000円
→ 補正後の金額が高い「300,000円」の道路が正面路線で正しいことが確認できました。
2. 1㎡あたりの評価額を計算
次に、正面路線と側方路線の両方を考慮した1㎡あたりの評価額を出します。
・正面路線部分:300,000円 × 1.00 = 300,000円
・側方路線からの加算部分:280,000円 × 1.00 × 0.03 (普通住宅地区の角地の加算率) = 8,400円
・1㎡あたりの評価額合計:300,000円 + 8,400円 = 308,400円
3. 土地全体の評価額を計算
最後に、1㎡あたりの評価額に土地の面積を掛けます。
・土地全体の評価額:308,400円 × 400㎡ = 123,360,000円
この土地の相続税評価額は、1億2,336万円と計算できました。
まとめ
今回は、角地と準角地の相続税評価額の計算方法について解説しました。ポイントは以下の通りです。
- 角地は「交差点」、準角地は「L字路」の内側にある土地。
- 評価額は「正面路線」と「側方路線」を正しく判定することから始まる。
- 正面路線の判定は、路線価に奥行価格補正率を掛けた後の金額で比較する。
- 側方からの影響を「側方路線影響加算率」を使って評価額にプラスする。
- 加算率は、土地の地区区分や角地・準角地の別によって異なる。
土地の評価は相続税申告の中でも特に専門的な知識が求められる部分です。計算が複雑だと感じたり、土地の形状が特殊で判断に迷ったりした場合は、無理せず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
【参考文献】
角地の相続税評価額に関するよくある質問まとめ
Q.角地にある宅地は、相続税評価額が高くなるのですか?
A.はい、一般的に高くなります。2つの道路に接していることで利用価値が高いと判断され、「側方路線影響加算」または「二方路線影響加算」という補正が適用されて評価額が加算されるためです。
Q.「外側に接道する角地」とはどんな土地ですか?
A.道路が「く」の字に折れ曲がっている外側の敷地のことです。「準角地」とも呼ばれます。一般的な角地(内側角地)とは逆に、敷地が道路に突き出たような形状をしています。
Q.外側に接道する角地(準角地)の相続税評価額はどのように計算しますか?
A.「二方路線影響加算」という方法で評価します。これは、正面路線価と側方路線価を基に、それぞれの道路に面していることによる価値を評価額に加算する計算方法です。
Q.内側の角地と外側の角地(準角地)では、評価額にどのような違いが出ますか?
A.一般的に、内側の角地の方が加算される割合が高く、相続税評価額も高くなる傾向にあります。これは、内側角地の方が土地の利用効率が良いと判断されるためです。外側角地は二方路線影響加算が適用されますが、その加算率は内側角地の側方路線影響加算率よりも低く設定されています。
Q.外側角地は使いにくい場合もあるのに、なぜ評価額が加算されるのですか?
A.2つの道路に接していることで、日当たりや風通し、アクセスの良さといった利便性が高まると考えられているためです。ただし、土地の形状が悪い(いびつな形など)場合は、「不整形地補正」などの減額補正が適用される可能性もあります。
Q.自分の土地の評価額が正しく計算されているか不安です。誰に相談すればよいですか?
A.土地の相続税評価は非常に専門的です。ご自身の土地が外側角地に該当するかどうか、また評価額が適正かどうかが不安な場合は、相続税に詳しい税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談することをおすすめします。