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誰も相続しない財産はどうなる?相続人不存在の手続きを解説

2026-02-09
目次

ご自身に万が一のことがあったとき、財産を誰が受け継ぐか考えたことはありますか?もし相続する人が誰もいない場合、大切な財産は国のものになってしまうかもしれません。この記事では、そうした「相続人不存在」の状況と、その手続きについて、わかりやすく解説していきますね。

そもそも「相続人不存在」ってどんな状態?

相続人不存在とは、亡くなった方(被相続人)の財産を受け継ぐ人が一人もいない状態のことです。具体的にどんなケースがあるのか、詳しく見ていきましょう。相続人がいるかどうかは、亡くなった方の戸籍を出生から死亡まですべて辿ることで確認します。

法定相続人が一人もいないケース

民法で定められた相続人(法定相続人)が、初めから誰もいない場合です。法定相続人には優先順位があり、まず配偶者と子(子が亡くなっていれば孫)、次に親(親が亡くなっていれば祖父母)、最後に兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっていれば甥姪)と続きます。これらの親族が誰もいない場合に、このケースに当てはまります。

相続人全員が相続放棄をしたケース

法定相続人がいても、全員が家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをした場合も相続人不存在となります。相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切受け継がないという意思表示です。亡くなった方に多額の借金がある場合や、相続トラブルに関わりたくないといった理由で、相続人全員が相続開始を知った日から3か月以内に手続きをすることが考えられますね。

相続欠格や相続廃除で相続人がいなくなったケース

相続人がいても、法律上の理由で相続権を失うことがあります。例えば、亡くなった方や他の相続人を殺害しようとしたり、遺言書を偽造したりした場合の「相続欠格」や、亡くなった方への虐待や重大な侮辱を理由に、生前の意思で家庭裁判所に申し立てて相続権を奪う「相続廃除」によって、結果的に相続人がいなくなるケースです。これらの理由で相続権を失った場合、代襲相続も発生しません。

相続人がいない財産は最終的にどうなるの?

誰も相続しない財産は、いくつかの段階を経て、その行き先が決まります。すぐに国のものになるわけではないんですよ。財産の行き先は主に3つのパターンに分かれます。

遺言書があれば、その内容が優先される

もし亡くなった方が遺言書を遺していれば、その内容が最も優先されます。遺言書によって、法定相続人以外の人や、法人・団体に対しても財産を遺すことができます。これを「遺贈」といいます。例えば、生前お世話になった友人や、応援したいNPO法人などに財産を寄付することも可能です。

特別な縁故があった人(特別縁故者)への財産分与

遺言書がない場合でも、亡くなった方と特別な関係にあった「特別縁故者」が財産を受け取れる可能性があります。特別縁故者とは、家庭裁判所に申し立てて認められた人のことです。例えば、内縁の配偶者や、長年身の回りの世話をしてきた人などが当てはまりますが、誰でも認められるわけではなく、厳格な審査があります。

最終的には国のものに(国庫に帰属)

遺言書がなく、特別縁故者からの申立てもない、または財産分与をしても財産が残った場合、その財産は最終的に国庫に帰属し、国のものとなります。近年、この国庫帰属する財産は増加傾向にあり、年間で数百億円にものぼると言われています。

相続人不存在が確定するまでの手続きの流れ

誰も相続しない場合、財産はすぐに国のものになるわけではなく、家庭裁判所での法的な手続きが必要です。全体で10か月から1年以上かかることもあります。手続きの主な流れを見ていきましょう。

①相続財産清算人の選任申立て

まず、利害関係者(亡くなった方にお金を貸していた債権者や、特別縁故者など)や検察官が、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てます。相続財産清算人とは、亡くなった方の財産を管理・清算する人で、地域の弁護士などが選ばれることが多いです。

申立先 亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所
申立てに必要な費用 収入印紙800円、連絡用の郵便切手、官報公告料5,075円など。財産が少ない場合は、手続き費用として予納金(数十万円~100万円程度)が必要になることもあります。

②債権者や受遺者への公告

相続財産清算人が選任されると、官報で公告が行われます。亡くなった方にお金を貸していた人(債権者)や、遺言で財産をもらうことになっていた人(受遺者)に名乗り出るよう促すためで、この期間は2か月以上と定められています。期間内に申し出た人には、財産から支払いが行われます。

③相続人捜索の公告

それでも相続人が現れない場合、さらに6か月以上の期間を設けて、本当に相続人がいないか捜索するための公告が行われます。この期間が満了しても誰も現れなければ、「相続人不存在」が法的に確定します。

④特別縁故者への財産分与の申立て

相続人不存在が確定した後、3か月以内に特別縁故者になれる可能性のある人が家庭裁判所に財産分与の申立てを行います。家庭裁判所が申立てを認めれば、財産の一部または全部を受け取ることができます。この期間を過ぎると申立てはできなくなります。

特別縁故者として認められる可能性がある人とは?

亡くなった方と特別な関係があった「特別縁故者」には、誰でもなれるわけではありません。家庭裁判所が亡くなった方との関係性や貢献度などを総合的に判断しますが、主に以下の3つのケースが考えられます。

亡くなった方と生計を同じくしていた人

法律上の婚姻関係はないものの、夫婦同然の生活を送っていた内縁の配偶者や、事実上の親子として生活していた人などが該当します。一緒に暮らしていた期間や、経済的な依存度などが考慮されます。

亡くなった方の療養看護に努めた人

親族ではないけれど、長年にわたり献身的に介護や看護を行ってきた人がこれにあたります。ただし、仕事として介護サービスを提供し、相応の報酬を得ていたヘルパーさんなどは、通常は認められにくい傾向にあります。

その他、特別な縁故があった人

上記のケース以外にも、亡くなった方と非常に親密な関係にあった友人や、亡くなった方が経営者として深く関わっていた法人(学校法人、NPO法人など)が認められるケースもあります。単に仲が良かったというだけでは足りず、特別な関係性があったことを具体的に証明する必要があります。

相続人がいない!そうなる前にできる生前対策

大切に築き上げた財産が、意図しない形で国のものになってしまうのは避けたいですよね。ご自身に相続人がいないとわかっているなら、元気なうちに準備しておくことがとても大切です。

最も有効な対策は「遺言書の作成」

最も確実で有効な方法が遺言書の作成です。遺言書があれば、財産を渡したい人や団体を自由に指定できます。「お世話になったあの人に」「応援しているNPO法人に寄付したい」といった想いを形にすることができます。後々のトラブルを避けるためにも、法的に有効で確実性の高い「公正証書遺言」の形式で作成することをおすすめします。

生前贈与や死因贈与契約

生きているうちに財産を渡す「生前贈与」や、「私が死んだらこの財産をあなたにあげます」という契約を相手方と結んでおく「死因贈与契約」といった方法もあります。生前贈与は年間110万円の基礎控除がありますが、高額になると贈与税がかかります。死因贈与契約は相続税の対象となります。それぞれのメリット・デメリットを理解して選択することが重要です。

任意後見契約や家族信託の活用

財産の承継だけでなく、ご自身の老後の生活や財産管理に不安がある場合は、「任意後見契約」や「家族信託」といった制度の活用も検討してみましょう。信頼できる人に財産管理を任せ、判断能力が低下した後も安心して生活できるようにし、亡くなった後の財産の行き先まで決めておくことができます。

まとめ

誰も相続しない場合、財産は「相続財産清算人」という専門家によって清算され、債権者への支払いや特別縁故者への分与が行われた後、最終的には国のものになります。しかし、遺言書を作成しておくことで、お世話になった人や社会のために役立てるなど、ご自身の意思を未来へつなぐことが可能です。もしご自身に相続人がいない場合は、この記事を参考に、大切な財産の行き先について一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。元気なうちからの準備が、あなたの想いを形にするための最も大切な一歩になりますよ。

参考文献

裁判所「相続財産清算人の選任」

国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」

相続人がいないときの手続きに関するよくある質問まとめ

Q.相続人が誰もいない場合、遺産(財産)はどうなりますか?

A.家庭裁判所で選任された「相続財産管理人」が財産を清算します。債権者への支払いなどを終え、特別縁故者への分与がなければ、最終的に国のもの(国庫に帰属)となります。

Q.相続人全員が相続放棄をした場合も同じですか?

A.はい、相続人全員が相続放棄をした場合も、法的には「相続人不存在」という同じ状況になります。利害関係人などは、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができます。

Q.相続財産管理人とは何ですか?手続きは必要ですか?

A.相続財産管理人とは、亡くなった方の財産を管理・清算する人で、家庭裁判所が弁護士などから選任します。選任されるには、利害関係人(債権者など)や検察官からの申立てが必要です。

Q.故人に借金があった場合はどうなりますか?

A.故人の財産の中から、相続財産管理人が返済手続きを行います。もし財産で返済しきれない場合、その借金は原則として消滅し、親族などが支払う義務はありません。

Q.特別縁故者とは何ですか?財産をもらえるのですか?

A.特別縁故者とは、内縁の妻(夫)や、献身的に介護をした人など、故人と特別な関係にあった人のことです。家庭裁判所に申立てを行い、認められれば遺産の一部または全部を受け取れる可能性があります。

Q.誰も相続しない空き家は放置してもいいですか?

A.いいえ、放置してはいけません。管理されない空き家は倒壊の危険や衛生上の問題を引き起こす可能性があります。最終的には相続財産管理人が売却などの処分を行うことになります。

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