土地や建物の相続、なんだか難しそうに感じますよね。特に「資産区分」「地目」「種目」といった専門用語が出てくると、ますます混乱してしまうかもしれません。でも、ご安心ください。これらの言葉の違いをしっかり理解すれば、相続税の計算や土地活用がぐっと分かりやすくなります。この記事では、それぞれの意味と関係性を、初心者の方にも分かりやすく解説していきますね。
「地目」って何?土地の用途を表す大切な分類です
まずはじめに、土地に関する「地目(ちもく)」について見ていきましょう。地目とは、カンタンに言うと「その土地がどんな目的で使われているか」を示す分類のことです。これは不動産登記法という法律で定められていて、土地の価値や利用方法を考える上でとても大切な情報なんですよ。
登記簿で確認できる「登記地目」は23種類
土地の地目は、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿)で確認できます。法律で定められた地目は、全部で23種類もあります。全部を覚える必要はありませんが、代表的なものを知っておくと便利ですよ。
| 代表的な地目 | 概 要 |
| 宅地(たくち) | 建物の敷地や、その建物を維持するために必要な土地です。 |
| 田(た) | 水を利用して作物を育てる土地、つまり田んぼのことです。 |
| 畑(はたけ) | 水を利用しないで農作物を育てる土地のことです。 |
| 山林(さんりん) | 木や竹が生育している土地です。 |
| 原野(げんや) | 人の手が加えられていない、雑草や低い木が生えている土地です。 |
| 雑種地(ざっしゅち) | 他の22種類のどれにも当てはまらない土地です。駐車場や資材置き場などが該当します。 |
税金の計算で使われる「現況地目(課税地目)」
登記事項証明書に書かれている地目を「登記地目」と呼びますが、実は税金を計算するときには、もう一つの地目が登場します。それが「現況地目(げんきょうちもく)」または「課税地目(かぜいちもく)」です。これは、固定資産税や相続税を計算する時点での、土地の実際の利用状況を指します。税金の計算では、登記上の情報よりも「今、実際にどう使われているか」が重視されるんですね。
「登記地目」と「現況地目」が違うのはどうして?
「どうして二つの地目があるの?」と不思議に思いますよね。これは、土地の利用状況が変わっても、地目変更の登記手続きがされていないケースがあるためです。例えば、
- 登記地目は「畑」だけど、農業をやめて駐車場として貸している。
- 登記地目は「山林」だけど、木を切り開いて家を建てて住んでいる。
このような場合、登記地目は「畑」や「山林」のままですが、税金を計算する上での現況地目は「雑種地」や「宅地」として判断されます。固定資産税は市町村の職員が3年に一度、現況を確認して課税地目を決定します。相続税も、相続が開始した日(亡くなった日)の現況で評価します。税金の額は現況地目によって大きく変わることがあるので、とても重要なポイントです。
建物の分類「種目」とは?
土地の分類が「地目」であるのに対し、建物の種類を表すのが「種目(しゅもく)」です。これも登記事項証明書(建物のもの)で確認することができます。土地と建物はセットで考えられがちですが、法律上は別々の不動産として扱われ、それぞれ分類名があるんですね。
建物の「種目」ってどんなものがあるの?
建物の種目は、その建物の主な用途によって決められます。不動産登記規則というルールで定められており、たくさんの種類があります。いくつか代表的なものをご紹介しますね。
| 代表的な種目 | 概 要 |
| 居宅(きょたく) | 人が住むための家、一戸建てなどがこれにあたります。 |
| 店舗(てんぽ) | お店として使われる建物です。 |
| 共同住宅(きょうどうじゅうたく) | アパートやマンションなど、複数の世帯が住む建物です。 |
| 事務所(じむしょ) | オフィスとして使われる建物です。 |
| 倉庫(そうこ) | 物を保管するための建物です。 |
例えば、1階が店舗で2階が住居になっている建物は「店舗・居宅」のように、複数の種目が記載されることもあります。
未登記の建物はどうなる?
建物を新築したり増改築したりした際には登記が必要ですが、中には登記されていない「未登記建物」も存在します。未登記のままだと、相続の手続きで誰が所有者なのか証明するのが難しくなったり、銀行から融資を受けられなかったりする可能性があります。相続した建物が未登記だった場合は、まず土地家屋調査士などの専門家に相談して、建物の表題登記を行うことをおすすめします。ちなみに、未登記だからといって固定資産税がかからないわけではなく、市町村は航空写真などで建物の存在を把握し、課税しているケースがほとんどです。
税金に直結!「資産区分(利用区分)」とは?
さて、ここからが相続税を考える上で特に重要になる「資産区分(利用区分)」のお話です。これは地目や種目とは少し違い、主に税金の評価額を計算するために使われる、税法上の分類です。同じ「宅地」という地目の土地でも、どのように利用されているかによって評価額が大きく変わってくるんですよ。
宅地の評価を決める「利用区分」
宅地は、その利用状況によって評価方法が異なります。相続税の計算では、主に以下のように区分されます。
| 利用区分 | 内 容 |
| 自用地(じようち) | 自分で使用している土地(自宅の敷地など)や、無償で貸している土地のことです。評価の基本となり、評価額は100%となります。 |
| 貸宅地(かしたくち) | 地代をもらって他人に貸し、その人が家を建てている土地です。土地の権利が制限されるため、自用地よりも評価額が低くなります。 |
| 貸家建付地(かしやたてつけち) | 自分で建てたアパートや貸家が建っている土地です。入居者の権利があるため、自用地よりも評価額が低くなります。 |
| 借地権(しゃくちけん) | 他人の土地を借りて、自分の建物を建てている権利のことです。これも財産として評価の対象になります。 |
このように、誰がどのように使っているかで土地の評価額が変わるため、相続税申告の際には正確な利用区分の判断が不可欠です。
農地の評価を決める「農地区分」
農地(地目が田や畑の土地)も、宅地と同様にその立地条件によって4つの区分に分けて評価されます。都市部にある農地と、山間部にある農地では価値が大きく異なるためです。
| 農地区分 | 概 要 |
| 純農地 | 農業地域にあり、宅地への転用が見込めない農地です。 |
| 中間農地 | 市街化が進んでいる地域に近く、純農地よりは宅地転用の可能性が少しある農地です。 |
| 市街地周辺農地 | 市街化区域の近くにあり、将来的に宅地化される可能性が高い農地です。 |
| 市街地農地 | 市街化区域内にあり、宅地への転用が許可されている農地です。評価額も宅地に準じて高くなります。 |
どの区分に該当するかで、評価方法や評価額が大きく変わってきます。
資産区分・地目・種目の違いを整理しましょう
ここまでご説明した「地目」「種目」「資産区分」の違いを、一覧表にまとめてみました。これでスッキリ整理できるはずです。
| 項目 | 地目 | 種目 | 資産区分(利用区分) |
| 分類の対象 | 土地 | 建物 | 主に土地(税評価のため) |
| 目的 | 土地の用途による分類 | 建物の用途による分類 | 税額計算のための分類 |
| 主な根拠法 | 不動産登記法 | 不動産登記規則 | 相続税法、地方税法など |
| 誰が決めるか | 法務局の登記官 | 法務局の登記官 | 税務署、市町村(課税のため) |
どうしてこれらの違いを知っておく必要があるの?
「なんだか複雑だけど、なぜ知っておかないといけないの?」と思いますよね。その理由は、皆さんの大切な資産と税金に直接関わってくるからです。
相続税評価額が大きく変わるから
一番の理由は、相続税の額に大きく影響するからです。例えば、同じ面積の土地でも、自用地として評価されるのと、貸家建付地として評価されるのでは、評価額が15%~20%程度も変わることがあります。さらに、自宅や事業用の土地には「小規模宅地等の特例」という制度があり、一定の要件を満たせば土地の評価額を最大80%も減額できます。この特例が使えるかどうかを判断するためにも、地目や利用区分の正確な把握が欠かせません。
土地活用や売却の可能性が変わるから
土地の活用方法を考える上でも、地目は非常に重要です。原則として、地目が「宅地」でなければ家などの建物を建てることはできません。例えば、地目が「田」や「畑」の土地にアパートを建てたい場合は、まず農業委員会から農地転用の許可を得て、造成工事を行い、地目を「宅地」に変更する手続きが必要です。この地目変更手続きは専門的な知識が必要で、土地家屋調査士に依頼すると1筆あたり5万円程度の費用がかかるのが一般的です。土地の種類によって、できること・できないことが決まっているんですね。
まとめ
今回は、「資産区分」「地目」「種目」という、少し難しい言葉の違いについて解説しました。ポイントをまとめると、
・「地目」は土地の用途を示す分類(宅地、畑など)
・「種目」は建物の用途を示す分類(居宅、店舗など)
・「資産区分(利用区分)」は税金の計算に使われる分類(自用地、貸家建付地など)
ということになります。特に相続においては、登記簿上の情報だけでなく、「実際にどのように使われているか」という現況が税額を大きく左右します。ご自身の資産の状況を正しく把握することが、適切な相続税対策の第一歩です。もし少しでも不安な点があれば、税理士などの専門家に相談してみてくださいね。
参考文献
資産区分・地目・種目の違いに関するよくある質問まとめ
Q.資産区分、地目、種目の違いは何ですか?
A.資産区分は固定資産税の課税対象を分ける大きな括り(土地、家屋など)、地目は土地の用途(宅地、畑など)、種目は家屋の種類(居宅、店舗など)を指します。それぞれ異なる法律や目的で定められています。
Q.「資産区分」とは具体的に何ですか?
A.固定資産税を計算する際の、資産の大きな分類のことです。地方税法に基づき、「土地」「家屋」「償却資産」の3つに分けられます。
Q.「地目」とは具体的に何ですか?
A.不動産登記法で定められた土地の主な用途による分類です。「宅地」「田」「畑」「山林」など23種類があり、土地の評価や利用規制の基準となります。
Q.「種目」とは具体的に何ですか?
A.固定資産評価基準で定められた家屋の用途による分類です。「居宅」「店舗」「事務所」「工場」などがあり、家屋の評価額を計算する際に用いられます。
Q.登記簿の地目と実際の土地の利用状況が違う場合、固定資産税はどうなりますか?
A.固定資産税の評価は、登記簿の地目(登記地目)ではなく、毎年1月1日時点の実際の利用状況(現況地目)に基づいて行われます。これを「現況主義」といいます。
Q.資産区分や地目、種目はどこで確認できますか?
A.資産区分と種目は市区町村から送付される「固定資産税の課税明細書」で確認できます。地目は法務局で取得できる「登記事項証明書(登記簿謄本)」で確認できます。