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贈与は個人と法人の間でも生じる?4つのパターンと税金の違いを解説

2025-12-25
目次

「贈与」と聞くと、親から子へといった個人同士のやり取りをイメージしますよね。でも実は、贈与は個人と法人の間でも行われることがあるんです。そして、誰から誰に贈与するかによって、かかる税金の種類が全く異なります。「贈与税がかかるのは個人間の贈与だけ」と聞いて驚く方も多いかもしれません。この記事では、個人と法人の間の贈与について、4つのパターンに分けて、誰にどんな税金がかかるのかを分かりやすく解説していきます。

個人から法人への贈与でかかる税金

まずは、個人の方が会社などの法人に財産を贈与するケースを見ていきましょう。この場合、財産をあげた個人と、もらった法人の両方に税金がかかる可能性があります。

法人(もらった側)には法人税

個人から財産を無償でもらった法人は、その財産を時価で受け取ったと考え、「受贈益(じゅぞうえき)」として利益計上します。この受贈益は、会社の利益の一部となるため、法人税の課税対象になります。例えば、時価3,000万円の土地を個人から贈与された場合、法人は3,000万円の受贈益を計上する必要があるんです。

個人(あげた側)には所得税(みなし譲渡所得)

意外に思われるかもしれませんが、財産をあげた個人の方にも税金がかかることがあります。これは「みなし譲渡所得課税」という考え方に基づきます。
具体的には、不動産や株式など、価値が変動する財産を法人に贈与した場合、その時の時価で売却したとみなして、購入した時からの値上がり益に対して所得税(譲渡所得)が課税されるのです。
例えば、1,000万円で購入した土地が、法人へ贈与した時点で時価3,000万円に値上がりしていた場合、差額の2,000万円が譲渡所得として課税対象になります。ただし、現金を贈与した場合は値上がり益がないため、この税金はかかりません。

【注意点】同族会社への贈与では株主にも課税される?

もし、個人が自分の経営する会社(同族会社)に財産を贈与した場合、さらに注意が必要です。贈与によって会社の財産が増えると、その会社の株式の価値も上がりますよね。この株価が上がった分については、会社の株主が贈与者から贈与を受けたとみなされ、贈与税が課税されることがあります。つまり、あげた個人、もらった法人、そして法人の株主という三者に税金がかかる可能性があるのです。

法人から個人への贈与でかかる税金

次に、法人が個人へ財産を贈与するケースです。この場合も、財産をあげた法人と、もらった個人の両方に税金がかかります。ただし、個人がかかるのは「贈与税」ではないのがポイントです。

個人(もらった側)には所得税

法人から財産をもらった個人には、贈与税ではなく所得税がかかります。国税庁のウェブサイトでも、「法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく所得税がかかります」と明記されています。
この所得の種類は、法人と個人の関係性によって変わります。

もらった個人と法人の関係 所得の種類
法人の役員や従業員の場合 給与所得(ボーナスをもらったのと同じ扱いです)
上記以外の方(雇用関係がない場合) 一時所得

一時所得の場合、受け取った財産の価額から最高50万円の特別控除を引いた金額の、さらに半分が課税対象となります。給与所得に比べて税負担が軽くなることが多いです。

法人(あげた側)には法人税

財産をあげた法人側にも税金がかかります。法人が個人に財産を贈与した場合、その財産を時価で譲渡(売却)したとみなされます。もし、贈与した資産の時価が帳簿価額を上回っていれば、その差額(売却益)に対して法人税が課税されます。
また、この贈与は税務上、相手との関係によって経費の扱いが変わります。

贈与した相手 会計上の処理
従業員 賞与(福利厚生費として全額損金算入可能)
役員 役員賞与(原則として損金算入不可)
第三者 寄附金(損金算入できる金額に上限あり)

このように、誰に贈与するかによって法人の税負担も変わってくるんですね。

法人から法人への贈与でかかる税金

法人同士で贈与が行われるケースもあります。この場合、あげた側ともらった側、両方の法人に法人税がかかることになります。
財産をもらった法人は、個人からもらった時と同じように「受贈益」として利益を計上し、法人税の課税対象となります。
一方、財産をあげた法人は、「寄附金」として処理します。寄附金は、税務上、損金(経費)として認められる金額に上限があるため、全額が経費になるわけではありません。上限を超えた部分は利益として扱われ、法人税がかかります。また、時価が簿価を上回る資産を贈与した場合は、その差額(売却益)にも法人税が課されます。

【比較】個人から個人への贈与

ここまで法人がかかわるケースを見てきましたが、比較のために一般的な個人間の贈与についても触れておきましょう。これが唯一、贈与税が登場するパターンです。

もらった個人に贈与税がかかる

個人から個人へ財産が贈与された場合、財産をあげた側には税金はかからず、もらった側に贈与税がかかります。贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計額が基礎控除額である110万円を超える場合に、その超えた部分に対して課税されます。
つまり、年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかからず申告も不要です。

贈与のパターン別!かかる税金を一覧表で比較

ここまで解説してきた4つのパターンを、分かりやすく表にまとめてみました。誰にどんな税金がかかるのか、一目で確認できますよ。

贈与のパターン かかる税金
個人法人 【あげた個人】所得税(みなし譲渡)
【もらった法人】法人税(受贈益)
法人個人 【あげた法人】法人税(寄附金・賞与など)
【もらった個人】所得税(給与所得・一時所得)
法人法人 【あげた法人】法人税(寄附金)
【もらった法人】法人税(受贈益)
個人個人 【あげた個人】なし
【もらった個人】贈与税

こうして見ると、贈与税がかかるのは「個人から個人へ」のケースだけだということがよく分かりますね。

まとめ

今回は、個人と法人の間で行われる贈与と、それにかかる税金について解説しました。
贈与は誰から誰に行うかによって、かかる税金が贈与税、所得税、法人税と大きく異なります。特に、法人がかかわる場合は、財産を「あげた側」と「もらった側」の双方に課税されるのが原則です。
安易に「贈与だから贈与税だろう」と考えてしまうと、思わぬ税負担が発生する可能性があります。個人と法人の間で財産の移転を考えている場合は、どのパターンに当てはまるのかをしっかり確認し、必要であれば税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合

国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法

個人と法人の間の贈与に関するよくある質問まとめ

Q.法人から個人へ贈与はできますか?税金はどうなりますか?

A.はい、可能です。この場合、贈与税ではなく所得税の対象となり、贈与を受けた個人は一時所得として確定申告が必要です。ただし、役員や従業員が受け取った場合は給与所得となります。

Q.個人から法人へ贈与はできますか?税金はどうなりますか?

A.はい、可能です。贈与を受けた法人は、その財産の時価相当額を受贈益として法人税の課税対象とします。贈与した個人に税金はかかりません。

Q.法人から個人へ時価より著しく低い価格で財産を譲渡するとどうなりますか?

A.時価と譲渡価格の差額が、実質的な贈与(みなし贈与)とみなされます。個人はその差額分が一時所得または給与所得として所得税の対象になります。

Q.個人から法人へ時価より著しく低い価格で財産を譲渡するとどうなりますか?

A.法人は時価と譲渡価格の差額が受贈益として法人税の対象になります。個人は、譲渡価格をもとに譲渡所得を計算します。

Q.法人から役員や従業員へ贈与した場合の税金はどうなりますか?

A.受け取った役員や従業員には、給与所得として所得税と住民税が課税されます。贈与した法人は、その金額を役員賞与や給与として損金に算入できます。

Q.親族経営の会社に個人が贈与した場合、税金で注意すべき点はありますか?

A.法人は受贈益として法人税を支払いますが、会社の株式価値が上昇するため、他の株主に「みなし贈与税」が課される可能性があり注意が必要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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