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贈与税の配偶者控除を徹底解説!2,110万円まで非課税になる「おしどり贈与」

2025-12-02
目次

「長年連れ添ったパートナーに、感謝の気持ちを込めて自宅をプレゼントしたい」「将来の生活のために、今のうちに財産を渡しておきたい」とお考えではありませんか?そんなご夫婦のために、とても心強い制度があります。それが「贈与税の配偶者控除」です。通称「おしどり贈与」とも呼ばれるこの制度を使えば、一定の要件のもとで、最大2,110万円までの贈与が非課税になります。この記事では、贈与税の配偶者控除の仕組みから、具体的な要件、メリット・デメリット、手続きの方法まで、わかりやすく解説していきますね。

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)とは?

贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、住まいのための不動産やその購入資金を贈与した場合に、贈与税が大きく軽減される特例制度です。長年、夫婦で協力して築き上げてきた財産への貢献を考慮し、配偶者の老後の生活安定を図る目的で設けられました。とても素敵な制度ですよね。まずは、この制度の基本的なポイントを見ていきましょう。

どんな制度?基礎控除と合わせて最大2,110万円まで非課税に

この制度の最大の魅力は、なんといっても非課税になる金額の大きさです。通常、贈与税には誰でも使える110万円の基礎控除がありますが、この特例では、それに加えて最高2,000万円の控除が受けられます。つまり、合計で最大2,110万円までの贈与であれば、贈与税がかからない計算になるんです。

もしこの特例を使わずに2,110万円を贈与した場合、基礎控除110万円を差し引いた2,000万円に対して、なんと750万円もの贈与税がかかってしまいます。それがゼロになるのですから、非常に大きなメリットがあることがお分かりいただけるかと思います。

対象となる財産は「居住用不動産」または「その購入資金」

この特例の対象となる財産は、何でも良いわけではありません。あくまで「夫婦の住まい」に関するものに限定されています。具体的には、次の2種類です。

  • 居住用不動産そのもの:今住んでいる家やマンション、その土地など。
  • 居住用不動産を取得するための金銭:これからマイホームを購入したり、建てたりするためのお金。

注意点として、贈与の対象は日本国内にある不動産に限られます。また、金銭の贈与を受けた場合は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、そのお金で実際に居住用不動産を取得する必要があります。

同じ配偶者からは一生に一度だけ

この配偶者控除は非常に優遇された制度のため、同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか利用することができません。「今回は土地の部分だけ、数年後に建物の部分を」といった分割利用はできないルールになっています。そのため、いつ、どの財産でこの特例を使うのか、慎重に計画を立てることが大切になります。

贈与税の配偶者控除を受けるための適用要件

「おしどり贈与」を利用するためには、いくつかの条件をすべて満たす必要があります。どなたでも使えるわけではないので、ご自身が当てはまるかどうか、ここでしっかり確認しておきましょう。主な要件は以下の通りです。

婚姻期間 贈与が行われた時点で、法律上の婚姻期間が20年以上であること。内縁関係の期間は含まれませんのでご注意ください。
財産の種類 贈与される財産が、日本国内にある居住用不動産、またはその不動産を取得するための金銭であること。
居住要件 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産に贈与を受けた方が実際に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。
利用回数 同じ配偶者からこの控除の適用を受けるのが初めてであること(一生に一度)。

これらの要件を一つでも満たさないと、特例は受けられませんので、特に婚姻期間のカウントや居住のタイミングには注意が必要です。

贈与税の配偶者控除を利用するメリット

この制度を利用することには、贈与税が非課税になる以外にも、将来を見据えた嬉しいメリットがあります。ここでは主な3つのメリットをご紹介します。

メリット1:生前に大きな財産を非課税で渡せる

一番のメリットは、やはり生前のうちにまとまった額の財産を税金の負担なくパートナーに渡せることです。これにより、贈与した方の意思が明確なうちに財産を移転でき、残された配偶者の将来の生活基盤を安定させることができます。「自分が元気なうちに、安心して暮らせる住まいを確実に渡しておきたい」という想いを形にできる制度です。

メリット2:相続財産を減らせる(相続税対策)

生前に居住用不動産などを配偶者に贈与しておくことで、ご自身の財産が減ることになります。これは、将来発生する相続時の財産総額を圧縮することにつながり、結果的に相続税の負担を軽減できる可能性があります。特に、多くの財産をお持ちの方にとっては、有効な相続税対策の一つとなり得ます。

メリット3:相続開始前7年以内の贈与加算の対象外

少し専門的な話になりますが、通常、亡くなる前7年以内に行われた贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算する「生前贈与加算」というルールがあります。しかし、この贈与税の配偶者控除を使って贈与された財産は、この持ち戻しの対象にはなりません。つまり、万が一贈与後すぐに相続が発生してしまった場合でも、この特例で贈与した最大2,000万円の部分は相続財産に加算されずに済むのです。これは、相続対策として非常に大きな強みと言えるでしょう。

贈与税の配偶者控除の注意点とデメリット

メリットの大きい制度ですが、利用する前に知っておきたい注意点やデメリットも存在します。後悔しないためにも、以下の点をしっかり押さえておきましょう。

デメリット1:不動産取得税や登録免許税がかかる

贈与税はかからなくても、不動産の名義を配偶者に変更する際には、別の税金や費用がかかります。具体的には以下の2つです。

  • 登録免許税:法務局で不動産の名義変更(所有権移転登記)をする際にかかる税金です。贈与の場合は、不動産の固定資産税評価額の2%がかかります。
  • 不動産取得税:不動産を取得したときにかかる都道府県の税金です。原則として、固定資産税評価額の3%(土地・住宅の場合)がかかります。

ちなみに、相続で不動産を取得する場合、登録免許税は0.4%、不動産取得税はかかりません。贈与の方が税率が高いため、事前にどのくらいの費用がかかるか試算しておくことが大切です。

デメリット2:贈与税の申告が必要

「税金が0円になるなら何もしなくていい」と考えてしまいがちですが、それは大きな間違いです。この特例を適用して贈与税がゼロになる場合でも、必ず税務署へ贈与税の申告をしなければなりません。申告を忘れてしまうと、特例が適用されず、多額の贈与税を納めることになってしまいます。申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。忘れずに手続きを行いましょう。

デメリット3:配偶者が先に亡くなると効果が薄れる可能性

この制度を使って配偶者に自宅を贈与したものの、もし贈与を受けた配偶者が先に亡くなってしまった場合、その自宅は相続財産となります。お子さんがいなければ、贈与したご自身がその自宅を相続することになり、結果的に財産が元に戻ってしまう可能性があります。将来の相続まで含めて考えると、必ずしもこの制度を使うことが最善とは限らないケースもあるため、家族構成なども考慮して検討することが重要です。

手続きの方法と必要書類

実際に贈与税の配偶者控除を利用する際の手続きは、ご自身で行うことも可能です。大まかな流れと必要な書類を確認しておきましょう。

手続きの流れ

一般的には、以下のような流れで進めます。

  1. 贈与契約の締結:贈与する側とされる側の合意のもと、「贈与契約書」を作成します。後のトラブルを避けるためにも、書面で残しておくことをお勧めします。
  2. 不動産の名義変更(所有権移転登記):法務局で、不動産の名義を贈与者から受贈者(配偶者)へ変更する手続きを行います。司法書士に依頼するのが一般的です。
  3. 贈与税の申告:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、必要な書類を揃えて税務署に贈与税の申告書を提出します。

必要書類一覧

贈与税の申告の際には、申告書に加えていくつかの書類を添付する必要があります。早めに準備を始めると安心です。

書類名 入手先など
贈与税の申告書 国税庁のホームページまたはお近くの税務署で入手できます。
戸籍の謄本または抄本 本籍地の市区町村役場。贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成されたものが必要です。
戸籍の附票の写し 本籍地の市区町村役場。戸籍謄本と同様に、贈与後10日経過以降に作成されたものです。
居住用不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 管轄の法務局で取得します。
固定資産評価証明書など 不動産の贈与の場合に必要です。不動産が所在する市区町村役場で取得します。

まとめ

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)は、長年連れ添った夫婦にとって非常にメリットの大きい、心強い制度です。最大2,110万円までの居住用不動産やその購入資金の贈与が非課税になるだけでなく、将来の相続税対策としても有効です。ただし、利用するには婚姻期間20年以上などの要件を満たす必要があり、贈与税がかからない場合でも必ず申告が必要です。また、登録免許税などの別途費用がかかる点も忘れてはいけません。この制度の利用を検討される際は、メリットとデメリットをよく理解し、ご自身の状況に合わせて最適な選択をしてくださいね。もし手続きが複雑で不安な場合や、相続全体を見据えたアドバイスが欲しい場合は、税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献

贈与税の配偶者控除に関するよくある質問まとめ

Q. 贈与税の配偶者控除とは何ですか?

A. 婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産またはその取得資金の贈与があった場合に、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる制度です。おしどり贈与とも呼ばれます。

Q. 配偶者控除を受けるための主な条件は何ですか?

A. 主な条件は、①婚姻期間が20年以上であること ②贈与財産が居住用不動産またはその取得資金であること ③贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産に居住し、その後も住み続ける見込みであること、などです。

Q. 基礎控除110万円と併用できますか?

A. はい、併用できます。配偶者控除の2,000万円と暦年贈与の基礎控除110万円を合わせ、最大で2,110万円まで非課税で贈与を受けることが可能です。

Q. 控除を利用するために手続きは必要ですか?

A. はい、贈与税が0円になる場合でも、贈与税の申告手続きが必要です。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、必要書類を揃えて税務署へ申告します。

Q. 婚姻期間が20年未満でも利用できますか?

A. いいえ、利用できません。戸籍上の婚姻期間が20年を超えていることが条件となります。事実婚の期間は含まれませんのでご注意ください。

Q. この制度を利用すると相続税対策になりますか?

A. はい、なります。この特例を使って贈与された財産は、相続開始前3年(2024年以降の贈与は7年)以内の贈与であっても相続財産に加算されないため、生前に財産を移転する有効な相続税対策となります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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