相続や贈与で土地の評価が必要になったとき、「路線価区域」「市街化区域」「倍率地域」「市街化調整区域」といった言葉が出てきて混乱してしまうことはありませんか?これらの言葉は似ているようで、実は全く違うルールに基づいています。この記事では、それぞれの区域の関係性や範囲の広さ、そして土地の評価額にどう影響するのかを、わかりやすく解説していきますね。
土地の評価方法と都市計画の基本を解説
まずは、4つのキーワードを理解するための基本から見ていきましょう。これらの区域は、「土地の値段をどう計算するか(評価方法)」と「その土地で何ができるか(都市計画)」という、2つの異なる視点から定められています。
土地の評価方法は2種類!路線価方式と倍率方式
相続税や贈与税を計算するときの土地の評価方法は、国税庁によって2つの方法が定められています。どちらの方法で評価するかは、土地の場所によって決まっています。
| 路線価方式 | 主に市街地で使われる方法です。道路に面する土地1㎡あたりの価格(路線価)が決められていて、これに土地の面積や形状に応じた補正を加えて評価額を計算します。 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域で使われます。土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める一定の「倍率」を掛けて評価額を計算します。郊外や農村部などで使われることが多いです。 |
つまり、路線価が定められている地域を「路線価区域」、定められていない地域を「倍率地域」と呼びます。
まちづくりのルール!市街化区域と市街化調整区域
こちらは「都市計画法」という法律に基づいた区分で、計画的なまちづくりを行うために定められています。これを「線引き」と呼びます。
| 市街化区域 | すでに市街地であるか、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。家やお店を建てやすく、インフラ整備も進められるエリアです。 |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域です。自然環境や農地などを守る目的があり、原則として住宅や商業施設などを新しく建築することはできません。開発には厳しい制限があります。 |
この2つの区分は、土地の利用方法に大きく関わってきます。
4つのキーワードの関係性のイメージ
ここで一度、4つの関係性を整理しましょう。
「路線価区域/倍率地域」は相続税評価額の計算ルールに関する区分です。
「市街化区域/市街化調整区域」はまちづくりのルール(建築などの可否)に関する区分です。
この2つのグループは、根拠となる法律も目的も違う、まったく別のものさしだということを覚えておいてくださいね。
路線価区域と市街化区域の関係は?どっちが大きい?
では、本題の1つ目です。「路線価区域」と「市街化区域」はどのような関係なのでしょうか。範囲はどちらが広いのでしょうか。
結論:市街化区域のほとんどは路線価区域
市街化区域は、積極的に市街化を進めるエリアなので、ほとんどの場所で道路に値段が付けられています。そのため、市街化区域は、ほぼ路線価方式で評価される「路線価区域」であると考えてよいでしょう。
ただし、これは「イコール」ではありません。市街化区域に指定されたばかりの場所や、公園などの公共施設が多いエリアでは、例外的に路線価が設定されず「倍率地域」になっていることもあります。あくまで「市街化区域の多くは路線価区域」という関係性です。
どっちが大きい?範囲の広さで比較
どちらの範囲が広いかを一概に言うことは難しいです。なぜなら、先ほどお伝えしたように、それぞれの区域を定める目的が違うからです。
市街化区域は都市計画法で定められ、路線価区域は国税庁が相続税評価のために定めます。
ただ、実態としては、市街地を形成しているエリアという点で重なる部分が非常に多いため、範囲の広さはかなり近いと言えます。
倍率地域と市街化調整区域の関係は?どっちが大きい?
次に、「倍率地域」と「市街化調整区域」の関係を見ていきましょう。こちらもよく混同されがちですが、明確な違いがあります。
結論:市街化調整区域は倍率地域であることが多い
市街化調整区域は、市街化を抑制するエリアです。田畑や山林が多く、道路に一つひとつ値段を付けていく路線価方式にはなじみません。そのため、市街化調整区域にある土地の多くは、固定資産税評価額をもとに評価する「倍率地域」となっています。
ただし、こちらも「イコール」ではありません。市街化調整区域内でも、幹線道路沿いや既存の集落など、一部のエリアでは路線価が設定されている場合もあります。
どっちが大きい?範囲の広さで比較
こちらは比較的はっきりしています。結論から言うと、範囲が広いのは「倍率地域」です。
市街化調整区域の多くは倍率地域に含まれますが、倍率地域はそれだけではありません。
例えば、
- 市街化区域の一部(路線価が設定されていない場所)
- 都市計画区域外の土地(そもそも市街化区域・調整区域の区分がない田舎の山林や原野など)
これらもすべて倍率地域に含まれます。
つまり、市街化調整区域は、広大な倍率地域の一部、というイメージを持つと分かりやすいかもしれません。
なぜ区域の理解が重要?評価額への影響
ここまで区域の関係性を見てきましたが、なぜこの違いを理解することが大切なのでしょうか。それは、土地の評価額、つまり相続税額に直接影響するからです。
市街化調整区域にある土地の評価は安くなる?
はい、その可能性が高いです。市街化調整区域は建物の建築などが厳しく制限されているため、土地の利用価値が低く評価されます。
例えば、道路を挟んで片側が市街化区域、もう片側が市街化調整区域という土地があったとします。もし、その道路に路線価が1本しか設定されていなかった場合、その路線価は利用価値の高い市街化区域を基準に設定されています。
そのため、市街化調整区域側の土地を評価する際は、その路線価から50%もの評価減ができる場合があります。これは非常に大きな差になりますね。
雑種地の評価は特に注意が必要
駐車場や資材置き場などに使われている「雑種地」の評価は、特に区域によって大きく変わります。
市街化調整区域内の雑種地の場合、その土地の周囲の状況によって評価方法が変わります。
- 周囲が宅地に近い場合:近くの宅地の評価額を基準に計算し、建築制限などを考慮して30%~50%減額します。
- 周囲が田畑や山林の場合:近くの農地などの評価額を基準に、造成にかかった費用などを足して評価します。
このように、同じ雑種地でも、どの区域にあって周りがどんな状況かによって評価額が大きく変わるため、専門的な判断が必要になります。
自分の土地の区域を調べる方法
ご自身の土地がどの区域に該当するのかは、公的な資料で確認することができます。
路線価区域か倍率地域か調べる方法
これは国税庁のウェブサイトで確認できます。「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」というページで、調べたい住所を検索してみましょう。
地図上に路線価(道路に書かれた数字)が表示されれば「路線価区域」、地図がなく「倍率表」が表示されれば「倍率地域」です。
市街化区域か市街化調整区域か調べる方法
こちらは、土地がある市区町村の役所で確認できます。都市計画課などの担当部署で「都市計画図」を閲覧したり、証明書を取得したりできます。
また、多くの自治体ではウェブサイト上で都市計画図を公開しているので、「〇〇市 都市計画図」などと検索してみるのも良いでしょう。
まとめ
今回は、路線価区域、市街化区域、倍率地域、市街化調整区域という4つのキーワードの関係性について解説しました。最後にポイントをまとめておきましょう。
| 評価の目的 | 路線価区域と倍率地域は、相続税などを計算するための「土地の評価方法」の区分です。 |
| まちづくりの目的 | 市街化区域と市街化調整区域は、都市計画法に基づく「土地の利用ルール」の区分です。 |
| 関係性① | 市街化区域 ≒ 路線価区域 となることが多いです。市街地なので、ほとんどの場所で路線価が定められています。 |
| 関係性② | 市街化調整区域 ⊂ 倍率地域 となります。市街化調整区域の多くは倍率地域ですが、倍率地域にはそれ以外のエリアも含まれるため、倍率地域の方が範囲は広いです。 |
これらの区域の違いは、土地の評価額に大きく影響します。特に市街化調整区域にある土地の評価は複雑なケースが多いため、相続が発生した際などは、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
参考文献
路線価・市街化区域のよくある質問まとめ
Q.路線価区域と市街化区域は同じものですか?
A.いいえ、異なります。路線価区域は相続税等の算定基準となる「土地の値段」を示す区域で、市街化区域は都市計画法に基づく「まちづくり」を進める区域です。目的が違うため、必ずしも範囲は一致しません。
Q.路線価区域と市街化区域では、どちらの範囲が広い(大きい)ですか?
A.一般的には「路線価区域」の方が広い傾向にあります。路線価は市街地的な形態を形成する地域に設定されるため、多くの市街化区域を含んでいます。
Q.倍率地域と市街化調整区域の関係を教えてください。
A.倍率地域は路線価が定められていない地域のことです。一方、市街化調整区域は市街化を抑制する区域で、開発が制限されています。そのため、市街化調整区域の多くは路線価が定められておらず、「倍率地域」に該当します。
Q.倍率地域と市街化調整区域では、どちらの範囲が広い(大きい)ですか?
A.一概には言えませんが、全国的に見ると「倍率地域」の方が広いです。倍率地域には市街化調整区域だけでなく、都市計画区域外の土地(山林や農地など)も多く含まれるためです。
Q.自分の土地がどの区域か調べるにはどうすればいいですか?
A.路線価区域か倍率地域かは国税庁の「財産評価基準書」で確認できます。市街化区域か市街化調整区域かは、その土地がある市区町村の役所(都市計画課など)で確認できます。
Q.なぜ税金と都市計画で区域の分け方が違うのですか?
A.それぞれの法律の目的が異なるためです。路線価や倍率地域は相続税法などに基づき「税金の公平な徴収」を目的とし、市街化区域などは都市計画法に基づき「計画的なまちづくり」を目的としています。