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農地の相続税評価、青地と白地の違いとは?確認方法と評価額の計算を解説

2025-09-14
目次

ご家族から農地を相続したけれど、「青地とか白地とか、よくわからない言葉が出てきて戸惑っている」「相続税がどれくらいかかるのか不安…」そんなお悩みはありませんか?農地の相続税評価はとても複雑で、その土地がどんな種類の農地なのかによって評価額が大きく変わってきます。特に「青地」と「白地」の違いを理解することは、適切な相続税申告の第一歩です。この記事では、農地の青地・白地の違いやその確認方法、そして相続税における評価方法の違いを、初心者の方にも分かりやすく解説していきますね。

農地の「青地」「白地」とは?基本的な違いを理解しよう

まずはじめに、農地の「青地(あおじ)」と「白地(しろじ)」についてご説明しますね。これらは正式な法律用語ではなく、農業振興地域制度における農地の区分を分かりやすく色分けした通称なんです。この2つの最も大きな違いは、「農業以外の目的で利用できるかどうかの制限の強さ」にあります。

厳しい制限がある「青地」(農用地区域内農地)

青地は、正式には「農業振興地域内農用地区域内農地(のうようちいきないのうち)」と呼ばれます。国が「今後、長期にわたって農業を推進していくべき重要な地域」として指定している土地のことです。そのため、農業を守るという目的から、原則として農業以外の目的で利用すること(農地転用)ができません。例えば、家を建てたり、駐車場にしたりすることは非常に難しく、資産価値としては低く評価される傾向にあります。

比較的制限が緩やかな「白地」(農用地区域外農地)

一方の白地は、正式には「農業振興地域内農用地区域外農地(のうようちいきがいのうち)」と呼ばれます。こちらは青地ほど厳しい制限はなく、農業振興地域内ではあるものの、農用地区域の外にある農地を指します。青地に比べると規制が緩やかで、定められた手続きを踏んで許可を得られれば、宅地などに転用できる可能性があります。そのため、青地に比べて資産価値は高く評価されることが一般的です。

青地と白地の違いまとめ

青地と白地の違いを分かりやすく表にまとめてみました。

種類 青地(農振農用地)
正式名称 農業振興地域内農用地区域内農地
利用制限 厳しい(原則、農地転用は不可)
特徴 国が長期的な農業利用を推進する重要な農地
資産価値の傾向 低い
種類 白地
正式名称 農業振興地域内農用地区域外農地
利用制限 比較的緩やか(条件を満たせば農地転用が可能)
特徴 青地以外の農業振興地域内の農地
資産価値の傾向 高い

相続した農地が青地か白地かを確認する方法

では、ご自身が相続した農地が青地なのか白地なのか、どうやって調べればいいのでしょうか。確認方法は主に2つあります。どちらの方法でも、土地の地番がわかるように、登記済権利証や固定資産税の納税通知書などをお手元に用意しておくとスムーズですよ。

市区町村の農業委員会や農政担当課で確認

最も確実な方法は、農地が所在する市区町村の役所にある農業委員会や農政課などの担当部署に直接問い合わせることです。窓口で地番を伝えれば、その農地が農業振興地域内の農用地区域(青地)に該当するかどうかを教えてもらえます。自治体によっては電話での照会も可能な場合がありますので、一度問い合わせてみましょう。

オンラインサービス「eMAFF農地ナビ」で調べる

もっと手軽に調べたい場合は、農林水産省が提供している「eMAFF農地ナビ」というインターネットサービスを利用する方法もあります。地図上から農地の場所を探したり、地番を入力したりすることで、その土地の情報を確認できます。ただし、情報の更新に時間がかかる場合もあるため、最終的な確認や正確な情報が必要な場合は、必ず役所の担当部署に問い合わせるようにしてくださいね。

相続税における農地の4つの区分

相続税の計算をする際には、青地・白地という分け方に加え、国税庁が定めている4つの農地区分に基づいて評価額を算出します。この区分は、その農地がどのエリアにあるかによって決まり、評価方法が大きく異なります。ご自身の農地がどれに当てはまるか見ていきましょう。

純農地

純農地は、市街地から離れた場所にあり、周囲も農地として利用されているような、いわゆる典型的な農地のことです。主に市街化調整区域内にある青地(農用地区域内農地)などがこれに該当します。宅地化の影響をほとんど受けないため、評価額は比較的低くなります。

中間農地

中間農地は、純農地と市街地周辺農地の中間的な性格を持つ農地です。市街化調整区域内にある白地などが該当することが多いです。純農地よりは宅地化の可能性が見込まれるため、評価額は純農地より少し高くなります。

市街地周辺農地

市街地周辺農地は、市街化区域の周辺にあり、近い将来、宅地への転用が見込まれる農地です。農地としての利用が続けられていますが、宅地としての潜在的な価値が評価に反映されます。

市街地農地

市街地農地は、市街化区域内にある農地のことです。法律上は農地ですが、その立地から宅地としての価値が非常に高く、評価額も4つの区分の中で最も高くなります。すでに農地転用の許可を受けた農地もこちらに分類されます。

【区分別】農地の相続税評価方法の違いを徹底解説

それでは、いよいよ具体的な評価方法を見ていきましょう。先ほどご説明した4つの区分ごとに、計算方法が全く異なりますので、注意してくださいね。

純農地・中間農地の評価方法(倍率方式)

純農地中間農地は、「倍率方式」という方法で評価します。計算は比較的シンプルです。

評価額 = 固定資産税評価額 × 国税庁が定める倍率

固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。倍率は、国税庁のウェブサイトにある「評価倍率表」で確認できます。一般的に、転用が難しい青地(純農地)は倍率が低く設定されているため、評価額は低く抑えられる傾向にあります。

市街地農地の評価方法(宅地比準方式)

市街地農地は、「宅地比準方式」で評価します。これは、「もしその農地が宅地だったらいくらになるか」という考え方に基づいた計算方法です。

評価額 = (その農地が宅地だとした場合の1㎡当たりの価額 – 1㎡当たりの造成費) × 地積

「宅地だとした場合の価額」は、路線価が定められている地域では路線価を基に計算します。「造成費」とは、その農地を宅地として使えるように整地したりするためにかかる費用のことで、この費用も国税庁が地域ごとに定めています。宅地としての価値から、宅地にするためのコストを差し引いて評価する、というイメージですね。

市街地周辺農地の評価方法

市街地周辺農地の評価は、市街地農地の評価方法を応用します。計算式は以下の通りです。

評価額 = 市街地農地として評価した価額 × 80%

まず、その農地を市街地農地と仮定して宅地比準方式で評価額を計算し、その金額に80%を掛けて算出します。市街地農地ほどの価値はないけれど、将来性も加味されている、というわけですね。

農地の評価方法まとめ

4つの区分の評価方法を一覧にしました。ご自身の農地がどれに当てはまるかを確認し、正しい方法で評価することが大切です。

農地の区分 主な該当農地
純農地 市街化調整区域内の青地など
評価方法 倍率方式(固定資産税評価額 × 倍率)
中間農地 市街化調整区域内の白地など
評価方法 倍率方式(固定資産税評価額 × 倍率)
市街地周辺農地 市街地の周辺にある農地
評価方法 市街地農地としての評価額 × 80%
市街地農地 市街化区域内の農地
評価方法 宅地比準方式

知っておきたい農地の相続税の特例制度

農地の相続には、税負担を軽減するための特例制度が用意されています。要件に当てはまる場合は、ぜひ活用を検討しましょう。

農業を続けるなら「納税猶予の特例」

相続した農地で農業を続ける場合、一定の要件を満たすと「農業投資価格」という低い価額で評価され、それを超える部分に対応する相続税の納税が猶予される制度があります。さらに、その農業相続人が亡くなるなど、特定の条件を満たした場合には、猶予されていた相続税が免除されます。これは農業を継続する後継者を支援するための、非常に大きな特例です。

特定の農地は評価額が下がる「生産緑地」

もし相続した農地が「生産緑地」に指定されている場合、その土地は農業などを続けることが義務付けられているため、相続税評価額が大幅に減額されます。具体的には、生産緑地でないとした場合の評価額から、買取りの申出ができない残りの期間に応じて10%~15%といった一定の割合を控除して評価します。

まとめ

農地の相続は、まずその土地が「青地」なのか「白地」なのかを把握することから始まります。そして、国税庁の定める「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」の4つの区分のどれに該当するかを確認し、それぞれに合った正しい評価方法で評価額を計算することがとても重要です。ご紹介したように、農地の種類によって評価方法は全く異なり、納税額に大きな差が出ます。また、「納税猶予の特例」のような制度を知っているかどうかで、負担が大きく変わることもあります。もし少しでも不安に感じたり、評価が難しいと感じたりした場合は、無理せず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

農地の青地・白地と相続税評価に関するよくある質問

Q.農地の「青地」「白地」とは何ですか?

A.青地とは、市町村が定める農業振興地域内の農用地区域にある農地で、長期的に農業利用が推奨される土地です。一方、白地とは、その農用地区域外にある農地のことを指します。

Q.自分の農地が青地か白地か調べる方法はありますか?

A.農地が所在する市町村役場の農政担当部署で確認できます。「農業振興地域整備計画図」を閲覧することで、ご自身の農地が農用地区域(青地)に含まれているかどうかがわかります。

Q.相続税の評価において、青地と白地ではどう違いますか?

A.青地(農用地区域内農地)は、農業利用が前提のため、原則として「倍率方式」で評価され評価額は低くなる傾向があります。一方、白地(一般農地)は、宅地への転用可能性が考慮され、「宅地比準方式」で評価されることが多く、評価額が高くなる傾向があります。

Q.なぜ青地と白地で相続税の評価額が大きく違うのですか?

A.青地は農業以外の用途への転用が厳しく制限されているため、財産価値が低いとみなされます。対して白地は、青地に比べて転用がしやすいため、宅地としての潜在的な価値が評価額に反映されやすくなるためです。

Q.青地を相続すると相続税が安くなる特例があると聞きました。

A.はい、青地などの一定の農地を相続し、農業を継続する場合には「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」を適用できる可能性があります。この特例により、条件を満たせば相続税の納税が猶予または免除されることがあります。

Q.白地農地はすぐに宅地として売却できますか?

A.いいえ、白地であっても農地を宅地などに転用するには農地法に基づく許可が必要です。特に市街化調整区域内の白地は原則として転用が難しく、市街化区域内の農地であれば、届出により比較的転用しやすいなど、場所によって条件が異なります。

事務所概要
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