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退職所得と60万円の関係とは?税金の基本と賢い受け取り方を解説!

2024-12-18
目次

定年退職などでまとまった退職金を受け取る時、気になるのが「税金」ですよね。「退職所得と60万円」というキーワードを見かけたことがある方もいるかもしれません。この二つにはどんな関係があるのでしょうか?実は、退職金の受け取り方によって税金の計算方法が大きく異なり、「60万円」という金額が重要なポイントになるケースがあるんです。今回は、退職金にかかる税金の基本的な仕組みと、ご自身にとって最適な受け取り方を見つけるためのヒントを、わかりやすくご紹介しますね。

退職金の受け取り方で税金が変わる?2つの方法をチェック

退職金を受け取る方法は、主に2つあります。それは「一時金」として一括で受け取る方法と、「年金」として分割で受け取る方法です。どちらを選ぶかによって、かかる税金の種類や計算方法が全く異なるため、それぞれの特徴をしっかり理解しておくことが大切ですよ。

一時金で受け取る場合の「退職所得」

退職金を一括で受け取る場合、そのお金は「退職所得」という扱いになります。退職所得は、長年の功労に報いるためのお金という性格から、税制上とても優遇されています。具体的には、給与など他の所得とは合算せずに、退職所得だけで税額を計算する「分離課税」という方式がとられます。これにより、税金の負担がかなり軽くなる仕組みになっているんです。

年金で受け取る場合の「雑所得」

一方、退職金を分割して年金形式で受け取る場合、そのお金は「公的年金等に係る雑所得」という扱いになります。こちらは、国民年金や厚生年金などと同じカテゴリーの所得です。退職所得とは違い、給与所得など他の所得と合算して全体の所得税を計算する「総合課税」の対象となります。そのため、他に所得が多い方は税率が高くなる可能性があります。

どちらがお得?受け取り方のポイント

一概にどちらがお得とは言えませんが、多くの場合、税制面で大きく優遇されている「退職所得控除」が使える一時金での受け取りが有利になる傾向があります。ただし、退職金の金額やご自身のライフプラン、他にどれくらい所得があるかによって最適な選択は変わります。一度に大きなお金を持つのが不安な方や、計画的に使いたい方は年金形式も選択肢になりますので、ご自身の状況に合わせて考えることが重要です。

一時金で受け取る場合の「退職所得控除」とは

退職金を一時金で受け取る際に、税負担を大きく軽くしてくれるのが「退職所得控除」です。これは、退職金から一定額を差し引くことができる制度で、勤続年数が長ければ長いほど控除額が大きくなるのが特徴です。まずは、このパワフルな控除の仕組みを見ていきましょう。

退職所得控除の計算方法

退職所得控除額は、勤続年数によって計算式が変わります。勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算しますので、少しお得になりますよ。

勤続年数 計算式
20年以下 40万円 × 勤続年数
(計算結果が80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

例えば、勤続35年の方であれば、800万円 + 70万円 × (35年 – 20年) = 1,850万円もの金額が控除されます。多くの人の場合、退職金の全額がこの控除の範囲内に収まり、結果として税金がかからないケースも少なくありません。

退職所得の計算式

実際に課税対象となる退職所得の金額は、以下の式で計算します。ここでも税負担を軽くする仕組みが用意されています。

(収入金額 – 退職所得控除額)× 1/2 = 課税退職所得金額

ポイントは、退職所得控除を引いた後の金額が、さらに半分になるという点です。この「1/2課税」のおかげで、たとえ控除額を超える退職金を受け取ったとしても、税金の対象となる金額をぐっと抑えることができるのです。

年金で受け取る場合の「公的年金等控除」と60万円の関係

次に、退職金を年金形式で受け取る場合です。この場合は「雑所得」として扱われ、「公的年金等控除」という控除が適用されます。そして、今回のキーワードである「60万円」という数字は、この公的年金等控除を理解する上で非常に重要になってきます。

公的年金等控除の仕組み

公的年金等控除は、受け取る人の年齢(65歳未満か、65歳以上か)や、公的年金等の収入金額、そして年金以外の所得金額によって控除額が変わる、少し複雑な仕組みになっています。年金収入からこの控除額を差し引いた金額が、雑所得として課税の対象になります。

65歳未満の場合の控除額【60万円が登場!】

いよいよ「60万円」の登場です。65歳未満の方が退職金を年金形式で受け取る場合、公的年金等控除には最低保証額が設定されています。その金額が60万円なのです。

具体的には、年間の年金収入が60万円以下であれば、控除額が収入額と同額になり、雑所得は0円となります。つまり、税金はかかりません。これが「退職所得と60万円の関係」の答えです。

公的年金等の収入金額(65歳未満) 公的年金等控除額
60万円以下 収入金額の全額(所得0円)
60万円超 130万円未満 60万円

※公的年金等に係る雑所得以外の所得合計額が1,000万円以下の場合

65歳以上の場合の控除額

ちなみに、65歳以上になると公的年金等控除の最低保証額は110万円に増えます。老齢基礎年金などの受給が始まる年齢に合わせて、より手厚い控除が受けられるようになっています。

公的年金等の収入金額(65歳以上) 公T年金等控除額
110万円以下 収入金額の全額(所得0円)
110万円超 330万円未満 110万円

※公的年金等に係る雑所得以外の所得合計額が1,000万円以下の場合

具体例で比較!一時金と年金、手取りはどう違う?

それでは、具体的なケースで税額がどれくらい違うのかを見てみましょう。ここでは「勤続38年、退職金2,000万円」というモデルケースで考えてみます。

ケース1:一時金で全額受け取る場合

まず、退職所得控除額を計算します。
800万円 + 70万円 × (38年 – 20年) = 2,060万円
退職所得控除額(2,060万円)が退職金の額(2,000万円)を上回っていますね。この場合、課税退職所得金額は0円となり、所得税・住民税はかかりません

ケース2:年金で受け取る場合(10年間・年200万円)

次に、63歳から10年間、毎年200万円ずつ年金で受け取るケースを考えてみましょう(他に所得はないと仮定します)。
65歳未満の期間(63歳、64歳の2年間)は、公的年金等控除額を計算します。
200万円 × 0.75 – 27万5,000円 = 122万5,000円
課税対象となる雑所得は、
200万円 – 122万5,000円 = 77万5,000円
この77万5,000円に対して、所得税と住民税が毎年課税されることになります。

シミュレーションからわかること

このモデルケースでは、一時金で受け取る方が税制上有利であることが一目瞭然ですね。もちろん、これは一例であり、退職金の額や勤続年数、他の所得の有無によって結果は変わります。しかし、退職所得控除という制度がいかに優遇されているかがお分かりいただけたのではないでしょうか。

注意点!退職所得控除が使えない?「5年ルール」「19年ルール」とは

「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に加入している方や、短期間で転職を経験した方は少し注意が必要です。複数の退職金を近い時期に受け取ると、せっかくの退職所得控除を最大限に活用できなくなる可能性があるのです。これには「5年ルール」と「19年ルール」というものが関係してきます。

5年ルール(iDeCoなどを先に受け取る場合)

iDeCoの一時金を先に受け取り、その5年以内に会社から退職金を受け取る場合、iDeCoの加入期間と会社の勤続期間が重複している部分については、退職所得控除の計算から除外されてしまいます。節税効果を最大限に活かすためには、iDeCoと会社の退職金の受け取り時期を5年以上空けるのがポイントです。

19年ルール(会社の退職金を先に受け取る場合)

逆に、会社の退職金を先に受け取り、その後にiDeCoの一時金を受け取る場合は、さらに期間を空ける必要があります。両者の受け取り時期が19年以内だと、同様に重複期間の調整が行われ、控除額が減ってしまう可能性があります。ライフプランを考える上で、このルールも頭の片隅に入れておくと安心です。

まとめ

今回は「退職所得と60万円の関係」というキーワードを軸に、退職金にかかる税金の仕組みを解説しました。最後にポイントを振り返ってみましょう。

  • 退職金の受け取り方には「一時金(退職所得)」と「年金(雑所得)」の2種類がある。
  • 60万円」とは、65歳未満の人が退職金を年金形式で受け取る際の「公的年金等控除」の最低ラインのことで、年間の年金収入が60万円以下なら税金はかからない。
  • 一時金で受け取る場合は、非常に有利な「退職所得控除」が適用され、多くの場合で税負担が軽くなる。
  • 複数の退職金を受け取る際は「5年ルール」や「19年ルール」に注意が必要。

大切な老後資金ですから、税金の仕組みを正しく理解し、ご自身の状況に最も合った方法を選ぶことが重要です。迷ったときには、税務署や税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献

国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係

国税庁 No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき

退職所得と60万円の関係についてのよくある質問まとめ

Q. 退職金が60万円だった場合、税金はかかりますか?

A. 勤続年数が1年以上あり、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職所得控除額(最低80万円)が適用されるため、通常は所得税も住民税もかかりません。

Q. なぜ退職金60万円に税金がかからないのですか?

A. 退職金には勤続年数に応じた「退職所得控除」という非課税枠があるためです。この控除額は勤続1年でも80万円のため、退職金60万円は全額が控除額の範囲内に収まり、課税対象額がゼロになります。

Q. 「退職所得の受給に関する申告書」を出し忘れるとどうなりますか?

A. 退職金60万円に対して、一律20.42%の所得税(122,520円)が源泉徴収されます。ただし、確定申告をすることで、納めすぎた税金の還付を受けることができます。

Q. iDeCoの一時金60万円を受け取る場合も同じですか?

A. はい、iDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受け取る場合も退職所得として扱われます。他に退職金がなければ、同様に退職所得控除が適用されるため、60万円であれば通常は税金がかかりません。

Q. パートやアルバイトの退職金60万円でも税金はかかりませんか?

A. はい、雇用形態にかかわらず、退職金として支払われれば同様に扱われます。勤続年数に応じた退職所得控除が適用されるため、60万円であれば通常は非課税となります。

Q. 退職所得控除額が60万円を下回ることはありますか?

A. ありません。退職所得控除の計算式は「40万円 × 勤続年数」ですが、計算結果が80万円に満たない場合は、80万円が控除額となります。したがって、控除額が60万円を下回ることはありません。

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