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過去の相続放棄の事実を確認する方法は?家庭裁判所への照会手続きを解説

2025-04-01
目次

「もしかして、他の相続人が相続放棄しているかも…?」そんな不安を抱えていませんか?特に、疎遠な親族がいる場合、ご自身が知らないうちに借金を背負ってしまうリスクも考えられます。相続放棄の事実は、本人から直接聞く以外に知る方法がないと思われがちですが、実は公的な手続きで確認することが可能です。この記事では、他の相続人が過去に相続放棄したかどうかを正式に確認する方法「相続放棄の申述の有無の照会」について、手続きの流れや必要書類を分かりやすく解説していきます。

相続放棄の事実を確認する必要があるのはなぜ?

そもそも、なぜ他の人の相続放棄の事実を確認する必要があるのでしょうか。それは、相続には法律で定められた「順位」があり、先順位の相続人が放棄すると、次の順位の相続人に権利も義務もすべて引き継がれるからです。もし被相続人(亡くなった方)に多額の借金があった場合、知らないうちに自分が返済義務を負うことになるかもしれません。そうした事態を避けるためにも、事実確認は非常に重要になります。

相続権が自分に移ってくる可能性があるから

相続人の順位は、民法で以下のように定められています。

  • 常に相続人:配偶者
  • 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
  • 第2順位:父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

例えば、亡くなった方に配偶者と子がいる場合、相続人はその方々です。しかし、もし配偶者と子が全員相続放棄をした場合、相続権は第2順位の父母に移ります。さらに父母もすでに亡くなっている、あるいは相続放棄をした場合は、第3順位の兄弟姉妹へと相続権が移っていくのです。このように、自分より先の順位の人が全員相続放棄をすると、突然自分が相続人になることがあるのです。

相続放棄には3ヶ月の期限があるから

相続放棄ができる期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と決められています。この期間を「熟慮期間」と呼びます。重要なのは、「被相続人が亡くなった日から」ではなく、「自分が相続人になったことを知った日から」カウントが始まる点です。しかし、他の相続人と疎遠にしていると、いつの間にか自分が相続人になっていて、気づいた時には熟慮期間が迫っているというケースも少なくありません。早めに事実を確認し、ご自身の対応を決める時間を確保することが大切です。

債権者から突然連絡が来るケースも

亡くなった方にお金を貸していた債権者も、法律上の「利害関係人」として相続放棄の事実を照会することができます。そのため、債権者が相続人の状況を調べ、相続権が移った次の順位の相続人に対して、ある日突然「借金を返済してください」と連絡してくることがあります。こうした連絡を受けて初めて、自分が相続人になった事実を知る方もいらっしゃいます。予期せぬ督促に慌てないためにも、能動的に状況を確認しておくことが望ましいでしょう。

過去の相続放棄を確認する方法「相続放棄の申述の有無の照会」とは?

他の相続人が相続放棄したかどうかの事実を確認するための正式な手続きが、「相続放棄の申述(しんじゅつ)の有無についての照会」です。これは、家庭裁判所に対して書面で問い合わせを行い、相続放棄の手続きがされているか否かを回答してもらう制度です。プライバシーに関わる情報のため、電話での問い合わせには一切応じてもらえません。必ず書面での手続きが必要です。

誰が照会できるの?

この照会手続きは、誰でもできるわけではありません。個人のプライバシー保護の観点から、照会できる人は法律上の利害関係がある人に限定されています。

照会できる人 具体例
相続人 被相続人の子や兄弟姉妹など、法律上の相続人。自分が相続放棄をしたかどうかを確認する場合も含まれます。
利害関係人 被相続人にお金を貸していた金融機関や個人(債権者)、不動産の買主など、相続の状況によって法的な権利や義務に影響を受ける人。

どこに照会すればいいの?

照会先は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。例えば、被相続人が亡くなった時の住民票の住所が東京都新宿区であれば、東京家庭裁判所が照会先となります。被相続人の最後の住所地は、「住民票の除票」「戸籍の附票」といった書類で確認することができます。これらの書類は市区町村役場で取得可能です。

照会にかかる費用は?

家庭裁判所に支払う照会手続き自体の手数料は無料です。ただし、手続きに必要となる戸籍謄本や住民票の除票などの取得費用(1通あたり300円~750円程度)や、裁判所とのやり取りで必要になる郵便切手代は自己負担となります。

「相続放棄の申述の有無の照会」手続きの流れと必要書類

では、実際に照会手続きはどのように進めればよいのでしょうか。ここでは、具体的な流れと必要書類について解説します。

STEP1: 必要書類を準備する

まず、照会に必要な書類を揃えます。照会する方の立場(相続人か利害関係人か)によって、必要な書類が少し異なります。裁判所のウェブサイトで書式をダウンロードできる場合が多いので、事前に管轄の家庭裁判所のホームページを確認しましょう。

【共通で必要な書類】

  • 相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会書:裁判所の定める様式に、被相続人の情報や照会したい人の情報を記入します。
  • 被相続人の住民票の除票(本籍地の表示があるもの):取得できない場合は、戸籍の附票や死亡の記載がある戸籍謄本で代用します。
  • 返信用封筒と切手:裁判所からの回答を受け取るために必要です。切手は84円~94円程度が目安ですが、念のため管轄裁判所に確認すると安心です。

【立場別の追加書類】

照会者の立場 追加で必要な書類の例
相続人が照会する場合 ・被相続人との関係がわかる戸籍謄本、除籍謄本など(照会者と被相続人のつながりがわかるもの)
・(裁判所により)相続関係図の提出を求められる場合があります。
利害関係人が照会する場合 ・利害関係を証明する書類のコピー(金銭消費貸借契約書、不動産登記簿謄本など)
・照会者の資格証明書(個人の場合は住民票、法人の場合は登記事項証明書など)

STEP2: 家庭裁判所へ書類を提出する

準備した書類一式を、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ郵送または窓口に持参して提出します。郵送で提出する場合は、書類に不備がないかよく確認しましょう。

STEP3: 裁判所からの回答を受け取る

書類を提出してから、通常1~2週間程度で裁判所から回答が郵送されてきます。回答書には、照会した相続人について「相続放棄の申述が受理されている」または「申述がない」といった内容が記載されています。これにより、相続放棄の事実を公的に確認することができます。

照会の結果、相続放棄されていたらどうする?

照会の結果、先順位の相続人が放棄しており、ご自身に相続権が回ってきたことが判明した場合、すぐに行動を起こす必要があります。

3ヶ月以内に相続方法を決める

裁判所からの回答書を受け取るなどして、ご自身が相続人になったことを知った日から、相続放棄の熟慮期間である3ヶ月がスタートします。この期間内に、以下のいずれかの方法を選択しなければなりません。

  • 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産(借金)もすべて相続する。
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する。
  • 相続放棄:すべての財産を相続しない。

相続財産の調査を忘れずに

どの方法を選択するか決めるためには、まず被相続人の財産を正確に把握することが不可欠です。預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借入金や未払金、保証債務などのマイナスの財産がないか、しっかりと調査しましょう。調査の結果、明らかに借金の方が多い場合は相続放棄を検討することになります。

相続放棄する場合の手続き

もし相続放棄を選択する場合は、ご自身も家庭裁判所で「相続放棄の申述」という手続きを行う必要があります。これは、今回解説した「照会」とは別の手続きです。戸籍謄本などの必要書類を揃え、期限内に申述書を提出しなければなりませんので、計画的に進めましょう。

専門家に相談するメリット

「相続放棄の照会」やその後の「相続放棄の申述」は、ご自身で行うことも可能です。しかし、戸籍の収集が複雑だったり、3ヶ月という期限があったりと、不安を感じる方も多いでしょう。そのような場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。

書類の収集や作成を任せられる

専門家に依頼すれば、時間と手間のかかる戸籍謄本の収集や、裁判所に提出する書類の作成をすべて任せることができます。特に、相続関係が複雑な場合は、正確な書類収集が難しいため、専門家のサポートは非常に心強いです。

期限内に確実に手続きを進められる

3ヶ月という期限は非常に重要です。万が一、期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなり、多額の借金を背負うことになりかねません。専門家は、期限を厳守しながら、ミスなく確実に手続きを進めてくれます。

財産調査や最適な相続方法のアドバイスをもらえる

相続放棄をすべきかどうかの判断に迷う場合でも、専門家であれば財産調査の方法からアドバイスしてくれます。ご自身の状況にとってどの選択が最も良いのか、法的な観点から的確なサポートを受けることができます。

まとめ

過去の相続放棄の事実を確認するには、家庭裁判所への「相続放棄の申述の有無の照会」という公的な手続きを利用します。この手続きによって、ご自身が相続人になっているかどうかを正確に把握することができます。

もし照会の結果、相続人になったことが判明した場合は、その事実を知った日から3ヶ月以内に相続放棄などの対応を決める必要があります。予期せぬ借金を背負うリスクを避けるためにも、まずは現状を正確に把握することが第一歩です。手続きに不安がある方や、期限が迫っている方は、速やかに弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

参考文献

過去の相続放棄の確認方法に関するよくある質問まとめ

Q.過去に相続放棄がされているか確認する方法はありますか?

A.はい、あります。被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」を申請することで確認できます。

Q.相続放棄の有無の照会は誰でもできますか?

A.いいえ、誰でもできるわけではありません。照会できるのは、相続人や利害関係者(被相続人にお金を貸していた債権者など)に限られます。

Q.相続放棄の照会に必要な書類は何ですか?

A.一般的には、照会申請書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、照会者の戸籍謄本などが必要です。利害関係人からの申請の場合は、その関係を証明する資料も必要となります。詳しくは管轄の家庭裁判所にご確認ください。

Q.亡くなってから何年も経っていますが、それでも相続放棄の照会はできますか?

A.はい、できます。家庭裁判所での事件記録の保存期間は定められていますが、相続放棄の申述の有無に関する情報自体は、期間を過ぎても照会に応じてもらえることがほとんどです。

Q.照会で相続放棄がされていた場合、どのような通知が来ますか?

A.家庭裁判所から、照会結果が「証明書」の形で通知されます。相続放棄が受理されていれば、その旨が記載された証明書が交付され、されていなければ「該当なし」といった内容の証明書が交付されます。

Q.相続放棄の照会にかかる費用と期間はどれくらいですか?

A.費用は、手数料としての収入印紙と、返信用の郵便切手代がかかります。具体的な金額は裁判所によって異なる場合があります。期間は、申請してから結果が届くまで、通常1〜2週間程度です。

事務所概要
社名
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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