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遺族年金や死亡一時金は相続税の申告が必要?非課税の給付金を解説

2025-06-05
目次

大切な方が亡くなられた後、ご遺族にはさまざまな給付金が支給されます。遺族年金や国民年金からの死亡一時金、健康保険からの埋葬料など、手続きに追われる中で「これらのお金は相続財産として申告が必要なのかな?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。実は、これらの給付金の多くは相続税がかかりません。この記事では、どの給付金が相続税の対象外なのか、それぞれの違いや注意点について、わかりやすく解説していきますね。

相続税がかからない!遺族が受け取る主な給付金

故人が亡くなられた後に遺族が受け取るお金の中には、相続税がかからないものがたくさんあります。これらは、遺されたご家族の生活を支えることなどを目的として支給されるため、相続財産とは別の「ご遺族固有の財産」として扱われるんですよ。まずは、どのような給付金が相続税の対象外なのか、一つずつ見ていきましょう。

遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)

遺族年金は、亡くなった方によって生計を維持されていたご家族の生活を保障するための制度です。そのため、相続財産には含まれず、相続税も所得税もかかりません。これは、法律によって受給するご遺族固有の権利と定められているからです。

遺族基礎年金 国民年金に加入していた方が亡くなった場合に、「子のいる配偶者」または「子」が受け取れます。
遺族厚生年金 厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に、配偶者や子などの遺族が受け取れます。

国民年金からの死亡一時金

国民年金の第1号被保険者として保険料を36か月以上納めた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった場合に、その方と生計を同じくしていた遺族に支給されるのが死亡一時金です。支給額は保険料を納付した月数に応じて120,000円から320,000円です。これも相続財産には含まれず、相続税はかかりません。ただし、遺族基礎年金を受け取れる場合は支給されず、寡婦年金を受け取れる場合はどちらか一方を選択することになります。

健康保険からの埋葬料・埋葬費

会社員などが加入する健康保険(協会けんぽや組合健保)から、葬儀費用の補助として支給されるものです。どちらも相続財産には含まれないため、相続税の申告は不要です。

埋葬料 被保険者が亡くなったとき、その方によって生計を維持されていた方に一律5万円が支給されます。
埋葬費 埋葬料を受け取れる方がいない場合に、実際に埋葬を行った方に、埋葬にかかった費用(上限5万円)が支給されます。

国民健康保険からの葬祭費

自営業の方などが加入する国民健康保険や、後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった場合に、葬儀を行った喪主の方に支給されます。支給額は市区町村によって異なりますが、おおむね3万円~7万円程度です。これも埋葬料と同様に、葬儀費用の補助という性質から相続財産には含まれず、相続税の課税対象外となります。

【一覧表】相続税申告が不要な主な給付金まとめ

ここまでご説明した、相続税がかからない主な給付金を一覧表にまとめました。基本的に、これらの公的な給付金は遺族の生活保障や葬儀費用の負担軽減を目的としているため、相続税の対象にはなりません。

給付金の種類 相続税の課税
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金) 非課税
死亡一時金(国民年金) 非課税
寡婦年金(国民年金) 非課税
埋葬料・埋葬費(健康保険) 非課税
葬祭費(国民健康保険など) 非課税

注意!相続税の対象になるケースもある?

基本的に公的な給付金は非課税ですが、「年金」や「一時金」と名前がついていても、相続税の対象になるものもあるので注意が必要です。間違えて申告から漏れてしまうと、後から追徴課税される可能性もあります。

故人が受け取るはずだった「未支給年金」

年金は2か月に1度、後払いで支給されます。そのため、亡くなった方が受け取るはずだったのに、まだ受け取っていなかった年金(未支給年金)が発生することがあります。この未支給年金は、相続財産とはみなされないため相続税の対象にはなりませんが、受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象になります。相続税はかからなくても、金額によっては確定申告が必要になる場合があるので覚えておきましょう。

企業年金や個人年金保険の一時金

亡くなった方が会社で企業年金に加入していた場合や、個人的に生命保険会社の個人年金保険に加入していた場合、遺族が受け取る死亡一時金や年金受給権は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。これらは、亡くなった方が保険料を負担していた財産が形を変えたものと考えられるためです。ただし、死亡退職金と同じように「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が使えるケースもありますので、契約内容をよく確認することが大切です。

埋葬料・葬祭費と相続税の「葬式費用」控除の関係

埋葬料や葬祭費は相続財産ではありませんが、相続税の申告をする際には少しだけ関係してきます。相続税を計算するとき、相続財産の総額からお通夜や告別式にかかった費用(葬式費用)を差し引くことができます。これを「葬式費用控除」といいます。
この控除額を計算する際に、実際に支払った葬儀費用から、受け取った埋葬料や葬祭費の金額を差し引く必要があるのです。
例えば、葬儀費用が200万円で、葬祭費として5万円を受け取った場合、控除できる葬式費用は195万円(200万円 – 5万円)となります。申告の際には忘れないように注意しましょう。

各給付金の請求手続きと期限を忘れずに

これらの給付金は自動的に支給されるわけではなく、ご遺族が請求手続きを行う必要があります。それぞれ請求先や期限が定められており、それを過ぎると受け取れなくなる可能性があるので注意が必要です。

給付金の種類 主な請求先
遺族年金 年金事務所または年金相談センター(死亡日の翌日から5年以内)
死亡一時金(国民年金) 市区町村役場または年金事務所(死亡日の翌日から2年以内)
埋葬料・埋葬費(健康保険) 勤務先の健康保険組合や協会けんぽ(死亡日の翌日から2年以内)
葬祭費(国民健康保険など) 市区町村役場(葬儀を行った日の翌日から2年以内)

必要な書類なども請求先によって異なるため、事前に電話などで確認しておくと手続きがスムーズに進みますよ。

まとめ

大切な方を亡くされた後の手続きは、精神的にも体力的にも大変なことが多いですよね。
今回ご説明したように、遺族年金や国民年金の死亡一時金、健康保険からの埋葬料・葬祭費などは、原則として相続財産には含まれず、相続税の申告は不要です。これらは遺されたご家族の生活を支えるための大切な制度だからです。
ただし、企業が独自に設けている弔慰金や、個人で加入していた生命保険会社の個人年金などは相続税の対象になる場合があります。ご自身で判断するのが難しい場合や、相続税申告全体でわからないことがある場合は、税理士などの専門家に相談することも検討してみてくださいね。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることで、安心して手続きを進めることができますよ。

参考文献

国税庁 No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権

国税庁 No.1605 遺族の方に支給される公的年金等

国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

遺族年金や死亡一時金と相続税のよくある質問まとめ

Q.遺族年金は相続税の対象になりますか?

A.いいえ、遺族年金は相続税の課税対象にはなりません。遺族の生活保障を目的とした給付金であり、相続財産とはみなされないためです。

Q.国民年金の死亡一時金は相続財産として申告が必要ですか?

A.いいえ、死亡一時金も相続税の課税対象外です。受給権者が固有の権利として受け取るものであり、被相続人の財産ではないため申告は不要です。

Q.健康保険の埋葬料は相続財産に含まれますか?

A.いいえ、埋葬料は相続財産には含まれません。実際に埋葬を行った方に支払われる費用のため、相続税の対象外です。

Q.国民健康保険などから出る葬祭費は相続税がかかりますか?

A.いいえ、葬祭費も埋葬料と同様に相続財産にはあたらないため、相続税はかかりません。葬儀を行った喪主に対して支払われるものです。

Q.遺族年金や死亡一時金は非課税でも、何か手続きは必要ですか?

A.はい、相続税の申告は不要ですが、給付金を受け取るためには年金事務所や健康保険組合などへの申請手続きが必要です。期限内に忘れずに行いましょう。

Q.これらの給付金は、故人の預金口座に振り込まれますか?

A.いいえ、これらの給付金は受給資格のある遺族個人の権利として、その遺族名義の口座に直接振り込まれます。故人の口座は凍結されるため振り込まれません。

事務所概要
社名
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税理士 島本 雅史

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