ご家族が亡くなられた後の遺産分割は、相続人の皆さんで話し合って決めるのが基本です。しかし、どうしても話がまとまらなかったり、感情的になってしまったりすることもありますよね。そんなときに頼りになるのが、家庭裁判所で行う遺産分割調停です。この記事では、遺産分割調停とは何か、そのメリットやデメリット、手続きの流れ、そして気になる費用や必要書類について、わかりやすく丁寧にご説明しますね。
遺産分割調停とは?
遺産分割調停とは、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で遺産の分け方が決まらない場合に、家庭裁判所で解決を目指す手続きのことです。裁判官と、民間の有識者から選ばれた調停委員が中立な立場で間に入り、各相続人から事情や意見を聞きながら、話し合いが円満に進むようサポートしてくれます。あくまで「話し合い」の場なので、裁判のように判決で強制的に決められるわけではなく、相続人全員の合意によって解決を目指すのが特徴なんですよ。
遺産分割調停が必要になるケース
では、具体的にどのような場合に遺産分割調停が必要になるのでしょうか。主に、以下のようなケースで利用されることが多いです。
- 相続人同士で意見が対立し、遺産分割協議がまとまらない
- 特定の相続人が多くの遺産を要求していて、話し合いが平行線のまま
- 一部の相続人が話し合いに応じてくれない、または連絡がとれない
- 遺産の評価額について意見が食い違っている
- 感情的なもつれがあり、当事者だけで冷静に話すことが難しい
このように、当事者だけでは解決の糸口が見えない場合に、第三者を交えて客観的な視点で話し合いを進めるために調停が有効な手段となります。
遺産分割調停のメリット
遺産分割調停には、当事者だけの話し合いにはない、いくつかのメリットがあります。主なメリットを3つご紹介しますね。
第三者が間に入ることで冷静に話し合える
遺産分割では、どうしても感情的になりがちです。しかし、調停では経験豊富な調停委員が間に入ってくれるため、お互いに直接感情をぶつけ合うことなく、冷静に話し合いを進めることができます。調停委員が各相続人の言い分を整理し、問題点を明確にしてくれるので、議論がスムーズに進みやすくなるんです。
法的に公平な解決が期待できる
調停委員は、裁判官と協議しながら手続きを進めます。そのため、法律の専門家である裁判官の視点も踏まえた、法的に妥当で公平な解決案が提示されることが期待できます。特定の相続人の声が大きい、法律に詳しくないから不利な条件を飲まされそう、といった心配が少なくなり、誰もが納得しやすい公平な分割を目指せるのが大きなメリットです。
相続人同士で直接顔を合わせずに済む
関係がこじれてしまっている相続人同士だと、顔を合わせるだけでも精神的な負担になりますよね。遺産分割調停では、通常、申立人と相手方は別の待合室で待機し、交互に調停室に呼ばれて調停委員と話をします。そのため、基本的には他の相続人と顔を合わせることなく手続きを進められます。これにより、余計なストレスなく、自分の意見をしっかりと伝えることに集中できますよ。
遺産分割調停のデメリット
もちろん、遺産分割調停にはメリットだけでなく、デメリットもあります。利用を検討する際は、これらの点も理解しておくことが大切です。
時間と手間がかかる
遺産分割調停は、申し立ててからすぐに解決するわけではありません。まず、申し立てのための書類集めに時間がかかります。そして、調停期日は月に1回程度のペースで開かれるのが一般的です。解決までには、短い場合でも数ヶ月、複雑な案件では半年から1年以上かかることも珍しくありません。スピーディーな解決を望む場合には、デメリットに感じられるかもしれませんね。
平日に裁判所へ出向く必要がある
調停期日は、平日の日中(午前10時~午後5時頃)に指定されます。そのため、お仕事をされている方は、その都度お休みを取るなどして時間を調整する必要があります。裁判所が遠方にある場合は、移動の負担も大きくなるでしょう。これが複数回続くとなると、負担に感じる方もいらっしゃいます。
必ずしも自分の主張が100%通るわけではない
調停は、あくまで相続人全員の合意を目指す「話し合い」の場です。そのため、一方の主張だけが100%通ることはほとんどありません。お互いが納得できる着地点を見つけるために、調停委員から譲歩を求められることもあります。自分の主張を全く曲げたくない、と考えていると、話し合いはなかなか進まないかもしれません。
全員の合意がなければ不成立になる
調停でいくら話し合いを重ねても、相続人のうち一人でも合意しなければ、調停は成立しません。この場合、調停は「不成立」となり、手続きは自動的に「審判」という次の段階に移行します。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、遺産の分割方法を決定することになります。つまり、話し合いで解決できなければ、最終的には裁判所の判断に委ねられることになるのです。
遺産分割調停の流れ
ここでは、実際に遺産分割調停を申し立ててから解決するまでの、大まかな流れをご説明します。
家庭裁判所への申し立て
まず、相続人のうち一人または複数人が「申立人」となり、他の相続人全員を「相手方」として、家庭裁判所に遺産分割調停の申立書を提出します。申し立てる裁判所は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所のいずれか、または当事者全員が合意した家庭裁判所です。
調停期日の決定と呼び出し
申立書が受理されると、裁判所が第1回目の調停期日を決め、申立人と相手方の全員に「呼出状」を送付します。申し立てから最初の期日までは、だいたい1ヶ月から2ヶ月ほどかかります。
調停の実施
調停期日には、裁判官1名と調停委員2名(男女1名ずつが一般的)で構成される調停委員会が、相続人から個別に話を聞きます。前述のとおり、当事者は別々に待機し、交互に調停室に入って自分の意見や希望を伝えます。これを何度か繰り返し、合意点を探っていきます。
調停成立または不成立
話し合いがまとまり、相続人全員が分割内容に合意すると、調停成立となります。合意内容は「調停調書」という公的な書面にまとめられ、この調書は確定判決と同じ強い効力を持ちます。もし、どうしても合意に至らない場合は「不成立」となり、自動的に審判手続きに移行します。
遺産分割調停の必要書類と費用
遺産分割調停を進めるためには、どのような書類や費用が必要になるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
必要書類
申し立てには、主に以下のような書類が必要です。事案によって追加で書類が必要になる場合もありますので、詳しくは申し立てる家庭裁判所にご確認ください。
| 書類の種類 | 主な内容 |
| 申立書 | 遺産分割調停申立書。裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードできます。 |
| 戸籍謄本類 | 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本など。 |
| 住民票など | 相続人全員の住民票または戸籍附票。 |
| 遺産に関する資料 | 不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書、有価証券の明細など、遺産の内容がわかるもの。 |
| その他 | 相続関係図、遺産目録など。 |
費用
遺産分割調停にかかる費用は、ご自身で手続きをする場合と、専門家である弁護士に依頼する場合で大きく異なります。
| 費用の種類 | 金額の目安 |
| ご自身で申し立てる場合の実費 | ・収入印紙:被相続人1人につき1,200円 ・連絡用の郵便切手代:数千円程度(裁判所や相続人の数による) |
| 弁護士に依頼する場合の費用 | 法律事務所によりますが、一般的に以下の費用がかかります。 ・着手金:30万円~ ・報酬金:取得できた経済的利益の4%~16%程度 |
弁護士に依頼すると費用はかかりますが、書類作成から裁判所への出頭、相手方との交渉まで、複雑で手間のかかる手続きの多くを任せることができます。精神的な負担を減らし、より有利な条件で解決したい場合には、弁護士への相談も検討してみると良いでしょう。
まとめ
遺産分割調停は、相続人同士の話し合いが行き詰ってしまったときに、公平で円満な解決を目指すための有効な手段です。第三者が間に入ることで冷静に話し合えるメリットがある一方で、時間や手間がかかるというデメリットも存在します。ご自身の状況に合わせて、調停を利用するかどうかを慎重に判断することが大切です。手続きに不安があったり、自分だけで進めるのが難しいと感じたりしたときには、相続問題に詳しい弁護士などの専門家に相談してみることをお勧めします。一人で悩まず、専門家の力を借りながら、納得のいく解決を目指してくださいね。
遺産分割調停に関するよくある質問まとめ
Q.遺産分割調停とは、どのような手続きですか?
A.家庭裁判所で調停委員を交えて、相続人全員の合意を目指して遺産分割の話し合いを行う法的な手続きです。当事者同士の話し合い(協議)で解決しない場合に利用されます。
Q.遺産分割調停のメリットは何ですか?
A.第三者である調停委員が間に入ることで、感情的な対立が和らぎ、冷静な話し合いがしやすくなる点です。また、法的な観点から公平な解決案が示されることも期待できます。
Q.遺産分割調停のデメリットはありますか?
A.平日の日中に裁判所へ出向く必要があり、解決まで数ヶ月から1年以上かかる場合があることです。また、必ずしも合意できるとは限らず、不成立の場合は審判手続きに移行します。
Q.遺産分割調停にかかる費用はどのくらいですか?
A.申立て自体には、被相続人1人につき1,200円の収入印紙と、連絡用の郵便切手代(数千円程度)が必要です。弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用がかかります。
Q.遺産分割調停の申立てに必要な書類は何ですか?
A.主に、申立書、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票、遺産に関する資料(不動産登記事項証明書や預貯金残高証明書など)が必要です。
Q.遺産分割調停は弁護士なしで自分でもできますか?
A.ご自身で手続きを進めることは可能です。しかし、法律的な主張や複雑な書類作成に不安がある場合や、相手方との交渉を有利に進めたい場合は、弁護士に依頼するメリットが大きいです。