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遺留分で兄弟と係争中…相続税申告は別々でOK?財産認識が違う時の対処法

2024-12-17
目次

ご兄弟との間で遺留分侵害の問題が発生し、遺産分割の話し合いがまとまらない状況、本当にお辛いことと思います。お互いに感情的になってしまい、冷静な話し合いが難しいこともありますよね。そんな中、「相続税の申告期限が迫っているけど、どうしたらいいの?」と不安に感じていらっしゃるのではないでしょうか。相手がどんな財産を把握しているかもわからない状況で、申告なんてできるのだろうか…と悩んでしまいますよね。この記事では、そんなお悩みを抱える方のために、遺留分で係争中に相続税申告を別々で行う方法と、その際の注意点について、わかりやすく解説していきます。

遺産分割が未了でも相続税申告は必須です

まず、最も大切なことからお伝えします。たとえご兄弟と遺留分で争っていて遺産分割協議がまとまっていなくても、相続税の申告と納税は、原則として期限内に行わなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとしての税金が課されてしまう可能性があるため、注意が必要です。

相続税申告は「共同申告」が基本

本来、相続税の申告は、相続人全員が協力して遺産の内容を確認し、1つの申告書を作成して、全員が署名・捺印のうえで提出するのが基本です。これを「共同申告」といいます。遺産の総額や誰がどの財産を取得するかが確定しているため、最もスムーズで正確な方法です。

トラブル時は「個別申告」も可能

しかし、遺留分侵害請求のように、相続人間で深刻な争いがある場合、協力して申告書を作成するのは現実的に不可能ですよね。ご安心ください。そのような場合には、各相続人がそれぞれ単独で相続税申告書を作成し、税務署に提出すること(個別申告)が認められています。お互いに連絡を取り合わなくても、ご自身の判断で申告手続きを進めることができます。

申告期限は絶対に守りましょう

係争中であっても、相続税の申告・納税期限は変わりません。期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。この期限を守らないと、以下のようなペナルティが課されることがあります。

無申告加算税 期限内に申告しなかったことに対するペナルティ。原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で課されます。
延滞税 納税が遅れた日数に応じて課される利息のような税金です。

余計な税金を支払うことがないよう、まずは期限内に申告を済ませることが何よりも重要です。

別々に申告する際の問題点と注意点

相続人がそれぞれ別々に申告することは可能ですが、特有の問題点も生じます。特に、お互いの申告内容がわからないことから、いくつかのリスクが考えられます。

相手が認識している財産がわからない

個別で申告する場合の最大の問題は、他の相続人がどの財産を認識し、申告書に記載しているか全くわからない点です。例えば、ご自身が知らない預金口座や、故人が相手の兄弟にだけ内緒で行っていた生前贈与などを、相手が申告しているかもしれません。その逆もまた然りです。この情報の非対称性が、後の税務調査のきっかけになることがあります。

相続財産の評価額が食い違う可能性

相続財産の中でも、特に不動産(土地や家屋)は評価が難しく、専門家によって評価額が異なるケースがよくあります。ご兄弟がそれぞれ別の税理士に依頼した場合、同じ不動産でも評価額が異なり、結果として申告する遺産総額に食い違いが生じる可能性があります。

税務署から見て「矛盾した申告」になりやすい

税務署は、すべての相続人から提出された申告書を突き合わせて内容を確認します。その際に、相続人Aの申告書と相続人Bの申告書で、記載されている財産の種類や評価額が異なると、「どちらかの申告が正しくないのではないか?」という疑念を抱きます。このような申告内容の矛盾は、税務調査の対象に選ばれやすくなる一因となります。

財産認識が違う!具体的な申告書の書き方

それでは、実際に相続財産の認識が違う状況で、どのように申告書を作成すればよいのでしょうか。ここからは、具体的な手続きの方法について解説します。

「未分割」として法定相続分で申告する

遺産分割が確定していない場合、「財産は未分割です」という状態で申告を行います。その際、誰がどの財産を取得するか決まっていないため、一旦、民法で定められた「法定相続分」に従って財産を取得したものと仮定して、各相続人が納めるべき相続税額を計算します。これが、係争時における最も一般的で安全な申告方法です。

ご兄弟(子)のみが相続人の場合、法定相続分は子の人数で均等に分けます。例えば、兄弟2人であれば、それぞれの法定相続分は2分の1ずつとなります。

相続人の組み合わせ 法定相続分
配偶者と子 配偶者: 1/2、子: 1/2 (子が複数いる場合は全員で1/2を分ける)
配偶者と親(直系尊属) 配偶者: 2/3、親: 1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者: 3/4、兄弟姉妹: 1/4

自分が把握している財産はすべて記載する

申告書を作成する際は、たとえ相手がその存在を知らないと思われる財産であっても、ご自身が把握している相続財産はすべて正直に記載してください。意図的に財産を隠して申告すると、後で税務調査によって発覚した場合、「仮装・隠蔽」とみなされ、40%という非常に重い「重加算税」が課されるリスクがあります。誠実な申告を心がけましょう。

未分割申告では使えない特例がある

法定相続分で仮の申告をする方法には、大きなデメリットがあります。それは、相続税額を大幅に軽減できる「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった重要な特例が、原則として適用できないことです。これらの特例は、遺産分割が確定し、誰がどの財産を取得するかが決まっていることが適用の条件だからです。そのため、一旦は特例を使わない高い税額で納税する必要が出てきます。

申告が終わった後に必ずやるべきこと

未分割の状態での申告は、あくまで一時的な措置です。遺留分に関する争いが解決し、最終的に取得する財産が確定したら、必ず正式な内容で税務署に手続きを行う必要があります。

遺産分割確定後4ヶ月以内に最終手続きを

調停や裁判などを通じて遺産分割が最終的に確定したら、その内容に基づいて税額を再計算します。そして、当初の申告内容と比べて、納める税額が増えるか減るかに応じて、以下の手続きを行います。

  • 修正申告:当初の申告より納税額が増える場合の手続き。差額分を追加で納税します。
  • 更正の請求:当初の申告より納税額が減る場合の手続き。払い過ぎた税金の還付を求めます。

これらの手続きは、遺産分割が確定した日の翌日から4ヶ月以内に行う必要がありますので、忘れないようにしましょう。

特例を後から適用するための「お守り」

先ほど、未分割申告では「小規模宅地等の特例」などが使えないとお伝えしましたが、諦める必要はありません。当初の相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を添付して提出しておくことで、分割が確定した後に、これらの特例を適用した内容で「更正の請求」を行い、払い過ぎた税金を還付してもらうことが可能になります。これは非常に重要な手続きですので、必ず覚えておきましょう。

税務署にはどう説明すればいい?

別々に申告すると、高い確率で税務署から内容の確認の連絡が来ることが予想されます。その際に慌てないよう、対応方法を知っておきましょう。

係争中であることを正直に伝える

税務署から申告内容の相違について問い合わせがあった場合、隠し立てをするのは得策ではありません。「現在、兄弟間で遺留分侵害について係争中であり、遺産分割が未了のため、各相続人が把握している財産に基づいて個別に法定相続分で申告しています」と、事実をありのままに説明しましょう。そうすることで、税務署側も事情を理解してくれます。

専門家である税理士に相談するのが一番の近道

ご兄弟との争いだけでも精神的な負担が大きい中で、さらに税務署とのやり取りや複雑な申告手続きをご自身で行うのは大変なことです。このような状況では、相続税に詳しい税理士に相談し、代理で対応してもらうのが最も安心です。税理士に依頼すれば、税務署への的確な説明はもちろん、将来の修正申告や更正の請求まで見据えた最適な申告方法を提案してくれます。

まとめ

ご兄弟との遺留分トラブルの最中での相続税申告は、不安なことばかりだと思います。最後に、今回のポイントをもう一度確認しましょう。

  • 遺留分で係争中でも、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告・納税は必要です。
  • 申告は相続人ごとに別々に行うことが可能です。
  • 財産認識が違う場合は、まず「未分割」として「法定相続分」で申告しましょう。
  • 争いが解決したら、分割確定後4ヶ月以内に「修正申告」または「更正の請求」を行います。
  • 「小規模宅地等の特例」などを後から使うために「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出を忘れないようにしましょう。
  • 一人で抱え込まず、相続専門の税理士に相談することが、スムーズな解決への第一歩です。

まずは期限内に申告を済ませてペナルティを回避し、その後の手続きは専門家の力を借りながら、落ち着いて進めていきましょう。

参考文献

遺留分トラブル中の相続税申告【別々申告】のよくある質問まとめ

Q. 兄弟で遺留分で揉めていますが、相続税申告は別々に行えますか?

A. はい、可能です。相続人それぞれが単独で相続税申告書を提出することができます。ただし、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)は全相続人で共通ですので、ご注意ください。

Q. 他の相続人が申告する財産が不明でも、申告は可能ですか?

A. はい、可能です。ご自身で把握している限りの相続財産を基に申告書を作成し、期限内に提出することが最優先です。他の相続人がどのような内容で申告しているかを把握している必要はありません。

Q. 兄弟で提出した申告書の相続財産が違う場合、どうなりますか?

A. 税務署は提出された複数の申告書を照合します。記載された財産に食い違いがある場合は、各相続人に対して内容の確認や税務調査が行われる可能性があります。最終的には税務署が認定した財産額で税額が計算されます。

Q. 遺産の分け方が決まらない場合、どのように申告すればよいですか?

A. 遺産分割が未了の場合、民法の法定相続分で財産を取得したと仮定して申告・納税するのが一般的です。後日、遺留分の請求に関する裁判の結果などで取得財産が確定した際に、修正申告や更正の請求を行います。

Q. 相手が納税しない場合、私に何か影響はありますか?

A. 相続税には「連帯納付義務」があるため、他の相続人に未納があると、ご自身の負担分を納付済みであっても税務署から未納分の支払いを求められることがあります。注意が必要です。

Q. 遺留分の裁判が終わったら、相続税について何か手続きは必要ですか?

A. 裁判の判決や和解で取得財産額が確定したら、その内容に基づいて「修正申告(税額が増える場合)」または「更正の請求(税額が減る場合)」を行います。この手続きは、判決などを知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があります。

事務所概要
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