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遺言で弟は相続させない?
子供3兄弟なら弟にも遺留分があります!

2025-07-20
目次

お父様が遺された遺言書に「弟には財産を相続させない」と書かれていて、本当に弟さんには何も渡らないのだろうか、とご心配のことと思います。ご兄弟として、この状況はとても心苦しいですよね。でも、ご安心ください。法律では、遺された家族の生活を守るための大切な仕組みが用意されています。今回のケースのように、相続人がお子さんである場合、遺言の内容にかかわらず、弟さんにも「遺留分」という最低限の財産を受け取る権利が保障されています。この記事では、弟さんの正当な権利である遺留分について、その金額の計算方法から具体的な請求手続きまで、分かりやすく解説していきます。兄弟間の大切な関係を壊さずに、円満に解決するためのヒントになれば幸いです。

遺留分とは?子供に保障された最低限の権利

遺留分(いりゅうぶん)とは、特定の相続人に法律上保障されている、最低限の遺産の取り分のことです。故人(被相続人)は遺言によって誰に財産を渡すか自由に決められますが、あまりに偏った内容だと、遺された家族が生活に困ってしまう可能性があります。そうした事態を防ぎ、相続人間の公平を図るために、遺留分という制度が設けられているのです。

遺留分が認められる相続人

遺留分は、すべての相続人に認められているわけではありません。遺留分が認められるのは、故人との関係が近い相続人に限定されています。具体的には以下の通りです。

  • 配偶者
  • 子供(子供が亡くなっている場合は孫などの代襲相続人)
  • 直系尊属(父母や祖父母など。子供がいない場合に相続人になります)

ご相談のケースでは、相続人は「子供3兄弟」とのことですので、兄、あなた、そして弟さんの3人全員が遺留分の権利を持っています。

「兄弟姉妹に遺留分はない」という情報との違い

インターネットなどで調べると「兄弟姉妹に遺留分はない」という情報を目にすることがあり、混乱されるかもしれません。これは、相続の状況が違うケースの話なので注意が必要です。

この「兄弟姉妹」とは、「亡くなった方(被相続人)の兄弟姉妹」を指します。被相続人に子供や親がおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合に、その兄弟姉妹には遺留分が認められていない、ということです。ご相談のケースとは全く異なりますので、混同しないようにしましょう。

ご相談のケース 相続人は「亡くなった父の子供である3兄弟」。子供には遺留分があります。
情報で見るケース 相続人が「亡くなった方の兄弟姉妹」。この場合、兄弟姉妹に遺留分はありません。

弟さんの遺留分はいくら?具体的な計算方法

では、具体的に弟さんが請求できる遺留分はいくらになるのでしょうか。計算は少し難しく感じるかもしれませんが、ステップごとに見ていけば大丈夫です。一緒に確認していきましょう。

遺留分の割合を確認しよう

遺留分の割合は、法定相続分(法律で定められた相続割合)をもとに計算します。まず、相続人全体で保障される遺留分(総体的遺留分)を出し、それに各自の法定相続分を掛け合わせます。

  • 全体の遺留分割合:相続人が配偶者や子供だけの場合、遺産全体の1/2です。
  • 弟さんの法定相続分:子供3人で均等に分けるので、1/3です。

この2つを掛け合わせると、弟さん個人の遺留分割合が分かります。

計算式: 1/2(全体の遺留分) × 1/3(弟の法定相続分) = 1/6

つまり、弟さんには遺産全体の6分の1を受け取る遺留分の権利があるということになります。

遺留分の計算対象となる財産

遺留分を計算する際の基礎となるのは、お父様が亡くなったときに持っていた財産です。具体的には、預貯金、不動産、株式などのプラスの財産から、借金などのマイナスの財産を差し引いた金額が基本となります。さらに、亡くなる前に行われた特定の生前贈与も、この計算に含める必要があります。特に、相続人に対して行われた結婚資金や事業資金などの「特別受益」にあたる贈与は、相続開始前の10年以内のものが加算対象となります。

【具体例】遺産総額が6,000万円の場合

計算方法をより具体的に理解するために、例を挙げてみましょう。仮に、お父様の遺産の総額(生前贈与なども含めた評価額)が6,000万円だったとします。

  • 遺産総額:6,000万円
  • 弟さんの遺留分割合:1/6

計算式: 6,000万円 × 1/6 = 1,000万円

この場合、弟さんは遺言で財産を相続できないとされていても、1,000万円分の財産を「遺留分」として、財産を多く受け取った兄とあなたに対して請求することができます。

遺留分を請求する「遺留分侵害額請求」の手続き

遺留分は、権利があるからといって自動的にもらえるものではありません。権利を持っている人が「遺留分をください」と意思表示をする必要があります。この手続きを「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」と言います。

まずは当事者間での話し合いから

いきなり裁判所に行くのではなく、まずは弟さんから、財産を相続した兄とあなたに対して、遺留分を請求する意思を伝えて話し合うのが第一歩です。このとき、後々のトラブルを防ぐために、「いつ、誰が、誰に、請求したか」を明確な証拠として残せる「内容証明郵便」を利用するのが一般的です。これにより、後述する時効の進行を止める効果もあります。

話し合いで解決しない場合は家庭裁判所の調停へ

当事者同士の話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額請求調停」を申し立てることができます。調停では、裁判官や民間の有識者で構成される調停委員が間に入り、中立的な立場で双方の意見を聞きながら、円満な解決を目指して話し合いを進めてくれます。

請求には時効がある!期限に注意

遺留分侵害額請求には、非常に重要な時効(期限)があります。この期間を過ぎてしまうと、せっかくの権利を失ってしまいますので、絶対に忘れないでください。

  • 相続の開始と遺留分が侵害されていることを知った時から1年
  • 相続開始の時から10年

特に「知った時から1年」という期間は非常に短いです。遺言の内容を知ったのであれば、早めに行動を起こすことが何よりも大切です。

なぜ父は「弟に相続させない」と遺言したのか?

法律上の権利とは別に、なぜお父様がそのような遺言を遺したのか、その背景にある想いを考えることも、ご兄弟が円満な解決に至るためには大切なことです。遺留分の請求は正当な権利ですが、その主張がご兄弟の間に深い溝を作ってしまうこともありえます。

遺言の「付言事項」を確認してみよう

遺言書には、財産の分け方などの法的な効力を持つ部分のほかに、「付言事項(ふげんじこう)」として、家族へのメッセージや、なぜそのような遺産分割にしたのかという理由が書かれていることがあります。もし付言事項があれば、そこにお父様の真意を知るヒントが隠されているかもしれません。法的な効力はありませんが、家族の感情的なわだかまりを解くきっかけになることがあります。

兄弟でよく話し合うことが円満解決への近道

遺留分の権利を行使する前に、まずはご兄弟3人で、お父様の想いを汲み取りながら冷静に話し合う時間を持つことをお勧めします。法的な手続きは、あくまで最終手段です。今後の長い兄弟関係を大切にするためにも、お互いの気持ちを尊重し、納得できる着地点を探ることが理想的です。もし話し合いがこじれそうな場合は、感情的になる前に弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。

遺留分に関するよくある質問

最後に、遺留分に関してよく寄せられる質問にお答えします。

遺留分は現金で支払わないといけない?

はい、2019年の民法改正により、遺留分侵害額請求は原則として金銭(現金)での支払いとなりました。つまり、弟さんは兄とあなたに対して、算定された遺留分額に相当するお金を支払うよう請求することになります。ただし、もし全員が合意するのであれば、不動産や株式といった現物の財産で支払うこと(代物弁済)も可能です。

遺言書自体を無効にすることはできる?

遺言書が法律で定められた形式を守っていなかったり、作成時にお父様が認知症などで正常な判断能力(遺言能力)を失っていたりした場合は、遺言書自体の無効を主張できる可能性があります。遺言が無効になれば、遺言はなかったことになり、3兄弟で法定相続分(各1/3)に従って遺産を分けることになります。ただし、遺言の無効を証明するのは非常に難しく、家庭裁判所での調停や訴訟が必要になることがほとんどです。遺留分を請求する方が、より現実的な解決策となる場合が多いです。

まとめ

今回は、遺言で相続させないとされた弟さんの遺留分について解説しました。大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

    • 相続人が子供3兄弟の場合、遺言で相続させないとされた弟さんにも遺留分はあります。
    • 弟さんの遺留分割合は、遺産全体の1/6です。
    • 遺留分を請求するには、「相続があったことと遺留分侵害を知った時から1年以内」に意思表示をする必要があり、時効に注意が必要です。

– 権利を主張するだけでなく、お父様の想いも汲み取りながら、まずはご兄弟で穏やかに話し合うことが、円満な解決への第一歩です。

相続は、手続きが複雑なだけでなく、家族の感情も絡み合うデリケートな問題です。もしご兄弟だけでの解決が難しいと感じたら、決して一人で抱え込まず、相続に詳しい弁護士などの専門家に早めに相談してくださいね。

【参考文献】

遺言で相続から除外された兄弟の遺留分に関するよくある質問まとめ

Q. 遺言で「相続させない」と書かれた弟に遺留分はありますか?

A. はい、あります。遺言書で財産を渡さないと指定されても、法定相続人である子供には、法律で最低限保障された「遺留分」を請求する権利があります。

Q. 弟の遺留分は、具体的にどれくらいの割合になりますか?

A. 法定相続分の半分です。子供3人が相続人の場合、各自の法定相続分は遺産の1/3です。したがって、弟さんの遺留分は、遺産全体の1/6(1/3の半分)となります。

Q. 弟が遺留分を請求するには、どうすればいいですか?

A. まず、遺産を多く受け取った相続人(兄とあなた)に対し、内容証明郵便で「遺留分侵害額請求」の意思表示をします。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所での調停や訴訟に進みます。

Q. 遺留分を請求できる期間に期限はありますか?

A. はい、あります。遺留分の請求権は、相続の開始と遺留分を侵害されていることを知った時から1年、または相続開始時から10年で時効によって消滅します。期限には注意が必要です。

Q. 遺言に「弟に相続させない」と書かれた理由が、弟の素行不良だった場合はどうなりますか?

A. 遺言に理由が書かれているだけでは、遺留分はなくなりません。ただし、弟さんがお父様に対して虐待や重大な侮辱などをしていた場合、家庭裁判所に「相続人廃除」が認められていれば、遺留分を含む相続権そのものが失われます。

Q. 遺留分は必ず現金で支払わなければいけませんか?

A. 必ずしも現金である必要はありません。遺留分は金銭で支払うのが原則ですが、当事者同士の話し合いで合意すれば、不動産や株式など現物で支払うことも可能です。

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