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遺言書の作成完全ガイド|効力や種類、費用まで優しく解説

2025-10-03
目次

「自分にもしものことがあったら…」と考えたとき、ご家族が困らないように準備をしておきたいですよね。その一つが遺言書の作成です。遺言書は、残されたご家族への最後のメッセージであり、相続トラブルを防ぐための大切な「道しるべ」になります。この記事では、遺言書を初めて作成する方でも分かりやすいように、その必要性から種類、具体的な書き方、費用まで、一つひとつ丁寧に解説していきますね。

そもそも遺言書ってなぜ必要なの?

遺言書がない場合、法律で定められた相続人(法定相続人)が、法律で定められた割合(法定相続分)で財産を分けるのが基本です。しかし、実際には「誰がどの財産をもらうか」を相続人全員で話し合って決める「遺産分割協議」が必要になり、これが揉め事の原因になることも少なくありません。遺言書があれば、ご自身の意思を明確に示せるため、こうしたトラブルを未然に防ぐことができるのです。

相続トラブルを防ぐ「道しるべ」

遺言書の一番の役割は、相続トラブルの防止です。遺産分割協議では、不動産のように分けにくい財産があったり、相続人同士の感情的な対立があったりすると、話がまとまらず、家庭裁判所での調停や審判にまで発展してしまうケースもあります。遺言書で財産の分け方を具体的に指定しておけば、相続人の方々はそれに従って手続きを進められるため、精神的な負担も時間的なロスも大きく減らすことができます。

法定相続人以外にも財産を渡せる

長年連れ添った内縁の妻(夫)や、特に身の回りのお世話をしてくれた息子の嫁、あるいは社会貢献のためにNPO法人へ寄付をしたいなど、法律上の相続人ではないけれど財産を渡したい、という想いをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。遺言書があれば、法定相続人以外の人や団体に財産を遺贈することが可能になります。これは遺言書でしか実現できない、とても大切な機能です。

相続分の指定や事業承継をスムーズに

「長男には事業を継がせるから会社の株式をすべて渡したい」「介護で世話になった長女に多めに財産を残したい」など、法定相続分とは異なる割合で財産を分けたい場合にも、遺言書は力を発揮します。ご自身の状況や想いに合わせて、柔軟に財産の分配を決めることができます。特に事業承継においては、後継者に株式を集中させることが会社の安定経営につながるため、遺言書の作成は不可欠と言えるでしょう。

遺言書の種類とそれぞれの特徴

遺言書にはいくつかの種類がありますが、一般的に利用されるのは「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つです。それぞれにメリット・デメリットがありますので、ご自身の状況に合ったものを選びましょう。

手軽に作成できる「自筆証書遺言」

その名の通り、全文を自分で手書きして作成する遺言書です。費用がかからず、いつでも手軽に作成できるのが最大のメリットです。ただし、法律で定められた要件(全文・日付・氏名の自署、押印)を満たしていないと無効になってしまうリスクがあります。また、紛失や改ざんの恐れも。2020年からは財産目録のみパソコンでの作成が認められるようになり、少し便利になりました。作成後は、法務局で遺言書を保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」を利用すると、紛失のリスクがなくなり、家庭裁判所での検認も不要になるためおすすめです。

最も確実で安心な「公正証書遺言」

公証役場で、公証人という法律の専門家に作成してもらう遺言書です。作成には公証人のほか、証人2名の立ち会いが必要で、費用もかかります。しかし、専門家が関与するため要件不備で無効になる心配がほとんどなく、原本が公証役場で保管されるため紛失や改ざんの恐れもありません。相続手続きの際も、家庭裁判所での検認が不要で、最も確実でトラブルになりにくい方法と言えます。

内容を秘密にできる「秘密証書遺言」

遺言の内容を誰にも知られずに作成し、その存在だけを公証役場で証明してもらう方式です。内容は秘密にできますが、遺言書自体は自分で作成するため、自筆証書遺言と同様に要件不備で無効になるリスクがあります。手続きも少し複雑なため、実際に利用されるケースは少ないのが現状です。

遺言書の種類 特徴のまとめ
自筆証書遺言 費用が安く手軽。ただし、要件不備で無効になるリスクあり。法務局の保管制度の利用がおすすめです。
公正証書遺言 最も確実で安全な方法。費用はかかりますが、無効になるリスクが低く、相続手続きもスムーズです。
秘密証書遺言 内容は秘密にできますが、手続きが煩雑で、無効になるリスクもあるため利用は稀です。

遺言書の書き方と注意点【種類別】

遺言書が法的に有効になるためには、決められたルールに沿って作成する必要があります。ここでは特に利用の多い自筆証書遺言と公正証書遺言について、作成のポイントを見ていきましょう。

自筆証書遺言の作成要件

自筆証書遺言を有効にするためには、以下の4つのポイントを必ず守ってください。
1. 全文を自筆で書くこと(財産目録を除く)
2. 日付(年月日)を正確に自筆で書くこと
3. 氏名を自筆で書くこと
4. 押印すること(認印でも可能ですが、実印が望ましいです)
このうち一つでも欠けていると、遺言書全体が無効になってしまう可能性があります。財産目録をパソコンで作成した場合は、その全てのページに署名・押印が必要なので注意しましょう。

公正証書遺言の作成フロー

公正証書遺言は、以下の流れで作成します。
1. 必要書類の準備:遺言者の印鑑証明書、戸籍謄本、財産を受け取る人の戸籍謄本、不動産の登記事項証明書など、事前に公証役場に確認して集めます。
2. 証人2名の依頼:信頼できる友人などに依頼するか、公証役場で紹介してもらうことも可能です(別途費用がかかります)。
3. 公証人との打ち合わせ:どのような内容の遺言にしたいかを公証人に伝え、遺言書の案を作成してもらいます。
4. 公証役場での作成:遺言者、証人2名が公証役場に出向き、公証人が遺言の内容を読み上げ、全員が署名・押印して完成です。

遺言書で無効にならないための共通の注意点

どちらの遺言書を作成する場合でも、「遺留分」には配慮が必要です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障されている財産の取り分のことです。これを無視した内容の遺言書も有効ですが、後から相続人が遺留分を請求し、トラブルになる可能性があります。また、手続きをスムーズに進めるために「遺言執行者」を指定しておくことや、ご家族への感謝の気持ちなどを記す「付言事項」を添えることも、円満な相続につながります。

遺言書の作成にかかる費用はどのくらい?

遺言書の作成費用は、どの種類を選ぶかによって大きく変わります。また、専門家にサポートを依頼するかどうかでも費用は変動します。

自筆証書遺言の費用

自分で作成する場合、費用は基本的に無料です。紙とペン、印鑑があれば作成できます。ただし、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する場合には、申請手数料として1通につき3,900円がかかります。この費用で、紛失・改ざんのリスクがなくなり、検認も不要になるのであれば、非常に価値のある投資と言えるでしょう。

公正証書遺言の費用

公正証書遺言の作成費用は、主に公証役場に支払う手数料です。この手数料は、遺言書に記載する財産の価額に応じて法律で定められています。

目的の価額(財産の価額) 手数料
100万円まで 5,000円
100万円を超え200万円まで 7,000円
200万円を超え500万円まで 11,000円
500万円を超え1,000万円まで 17,000円
1,000万円を超え3,000万円まで 23,000円
3,000万円を超え5,000万円まで 29,000円

この基本手数料に加えて、全体の財産額が1億円以下の場合は11,000円が加算される「遺言加算」や、証人を公証役場で手配した場合の日当(1人あたり5,000円〜10,000円程度)などがかかることがあります。詳細な費用は、事前に公証役場で見積もりを出してもらうと安心です。

専門家(弁護士・司法書士など)に依頼する場合の費用

遺言書の作成を弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼する場合、上記の公証人手数料とは別に専門家への報酬が必要になります。報酬は事務所によって異なりますが、一般的な相場としては、自筆証書遺言の作成サポートで5万円~15万円程度、公正証書遺言の作成サポート(証人費用込み)で10万円~30万円程度が目安となります。

遺言書作成後の保管と変更・撤回について

遺言書は作成して終わりではありません。適切に保管し、状況の変化に応じて見直すことも大切です。

どこに保管するのがベスト?

遺言書は、相続が開始したときに相続人に確実に見つけてもらえなければ意味がありません。自筆証書遺言を自宅で保管する場合、仏壇や金庫などが考えられますが、紛失したり、他の相続人によって隠されたりするリスクもゼロではありません。最もおすすめなのは、自筆証書遺言であれば法務局の保管制度を、公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるため、その謄本(写し)を信頼できる方に預けておくのが良いでしょう。

状況が変わったら?遺言書の変更・撤回方法

一度作成した遺言書も、ご自身の意思でいつでも、何度でも変更・撤回することができます。例えば、新しい遺言書を作成すると、前の遺言書と内容が矛盾する部分については、新しい日付の遺言書の内容が優先されます。遺言書を破り捨てたり、「この遺言を撤回する」という文書を作成したりすることでも撤回が可能です。ご家族の状況や財産の内容に変化があった場合は、定期的に遺言書を見直すことをお勧めします。

まとめ

今回は、遺言書の作成について、その重要性から具体的な方法、費用までを解説しました。遺言書は、ご自身の想いを実現し、残された大切なご家族を相続トラブルから守るための非常に有効な手段です。手軽さなら「自筆証書遺言(保管制度利用)」、確実性や安心感を求めるなら「公正証書遺言」がおすすめです。どの方法が良いか迷ったり、内容に不安があったりする場合は、一人で悩まずに弁護士や司法書士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。この記事が、あなたの大切な一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

参考文献

法務省:自筆証書遺言書保管制度

日本公証人連合会:遺言

遺言書作成のよくある質問まとめ

Q. 遺言書はなぜ必要ですか?

A. 遺言書は、ご自身の財産を誰にどのように残すかを決めるための大切な書類です。相続人同士のトラブルを防ぎ、ご自身の意思を確実に実現するために必要となります。

Q. 遺言書にはどのような種類がありますか?

A. 主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれ作成方法や要件、メリット・デメリットが異なります。最も一般的なのは、手軽に作成できる自筆証書遺言と、公証役場で作成する信頼性の高い公正証書遺言です。

Q. 遺言書は自分で作成できますか?

A. はい、作成できます。「自筆証書遺言」であれば、全文、日付、氏名を自書し、押印することで作成可能です。ただし、法律で定められた形式を守らないと無効になる可能性があるため注意が必要です。

Q. 遺言書の作成にはどのくらいの費用がかかりますか?

A. ご自身で作成する「自筆証書遺言」であれば、費用は基本的にかかりません(法務局での保管制度を利用する場合は手数料がかかります)。公証役場で作成する「公正証書遺言」の場合は、財産の価額に応じた手数料が必要です。

Q. 遺言書がない場合、相続はどうなりますか?

A. 遺言書がない場合、法律で定められた相続人(法定相続人)が、法律で定められた割合(法定相続分)で財産を分けることになります。相続人全員での話し合い(遺産分割協議)が必要となり、意見がまとまらないとトラブルに発展するケースがあります。

Q. 遺言書はいつ書くのがベストなタイミングですか?

A. 遺言書を作成するのに決まったタイミングはありませんが、ご自身の意思を明確に示せるうちに作成することが大切です。思い立った時が最適なタイミングと言えるでしょう。健康なうちに準備しておくことをお勧めします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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