ご家族から土地を相続したとき、「この土地、将来道路ができる予定らしい」とか「ここは建物を建てられないエリアなんだ」と聞かされたことはありませんか? もし相続した土地がそのような場所だったら、相続税の評価額が大きく変わるかもしれません。これは「都市計画法」という法律が関係しているからなんです。なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は相続税を計算する上でとても大切なポイントになります。ここでは、都市計画法が土地の相続税評価額にどう影響するのか、どんな場合に評価額が下がるのかを、優しく、わかりやすく解説していきますね。
都市計画法と相続税評価の関係性
まずは、「都市計画法」と「相続税」がどのようにつながっているのか、基本的なところから見ていきましょう。この関係を知っておくことが、適正な相続税評価の第一歩になります。
そもそも都市計画法ってどんな法律?
都市計画法は、ひとことで言うと「人々が快適に暮らせる街をつくるためのルール」を定めた法律です。無秩序に建物が建つのを防ぎ、道路や公園、下水道といった必要な施設を計画的に整備するために作られました。この法律によって、土地は「ここは住宅を建てて良いエリア(市街化区域)」「ここは自然を残すエリア(市街化調整区域)」といったように、使い方に一定のルールが設けられます。自分の土地であっても、このルールに従って利用する必要があるんですね。
なぜ都市計画が土地の相続税評価額に影響するの?
相続税を計算するとき、土地の価値は「自由に使える度合い」が大きく影響します。例えば、都市計画法によって「3階建て以上の建物は建てられません」とか「そもそも建物を建ててはいけません」といった制限がかかっている土地は、何の制限もない土地に比べて利用価値が低いと判断されます。利用価値が低いということは、財産としての評価額も低くなるということです。そのため、都市計画による制限がある土地は、相続税評価額が減額される可能性があるのです。
確認すべき主な都市計画の種類
相続税評価に特に影響が出やすい都市計画には、いくつか種類があります。代表的なものは以下の通りです。これらのいずれかにご自身の土地が該当していないか、一度確認してみることをお勧めします。
- 都市計画道路予定地:将来、道路になる計画がある土地
- 市街化調整区域:建物の建築などが厳しく制限されているエリア
- 生産緑地:農業を続けることを条件に、宅地開発などが制限されている農地
次の章から、これらのケースについて、具体的にどのように評価額が変わるのかを詳しく見ていきましょう。
都市計画道路予定地にある土地の相続税評価
相続した土地が「都市計画道路予定地」に含まれているケースは、評価額が減額される代表的な例です。ここでは、その評価方法について詳しく解説します。
都市計画道路予定地とは?
都市計画道路予定地とは、都市計画法に基づいて「将来、道路として整備することが決まっている土地」のことを指します。計画が決定されると、その土地は道路予定地となり、実際に工事が始まるまでには数年、場合によっては10年以上かかることも珍しくありません。その間、土地の所有者は自分の土地でありながら、一定の利用制限を受けることになります。
建築制限による評価額の減額
都市計画道路予定地では、将来スムーズに道路を整備できるよう、都市計画法第53条によって建物の建築に制限がかけられます。具体的には、建物を建てる際に都道府県知事などの許可が必要となり、許可が下りる建物は原則として以下の要件を満たすものに限られます。
| 階数 | 2階建て以下で、地下室がないこと |
| 構造 | 木造、鉄骨造、コンクリートブロック造など、移転や取り壊しが簡単な構造であること |
このように、自由に建物を建てられないという大きな制限があるため、その土地の価値は低く評価され、結果として相続税評価額が減額されるのです。
相続税評価額の計算方法
都市計画道路予定地の区域内にある土地の価額は、以下の計算式で求められます。
予定地でないとした場合の土地の評価額 × 補正率 = 都市計画道路予定地区域内の土地の価額
この「補正率」が、どれくらい評価額を減額できるかを示す重要な数値になります。補正率は、土地の状況によって変わり、最大で0.50(評価額が半分)になることもあります。
評価額を決める3つの要素(補正率の判定)
補正率を決めるためには、国税庁が公表している「都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価についての補正率表」を使います。この表を見るには、以下の3つの要素を確認する必要があります。
- 地区区分:その土地がどのような地域にあるかを示します。「普通住宅地区」「高度商業地区」などがあり、路線価図で確認できます。
- 容積率:土地の面積に対する建物の延床面積の割合の上限です。容積率が高いほど、本来は高い建物を建てられるため、建築制限による影響が大きくなります。この数値は、市役所などで都市計画図を確認して調べます。
- 地積割合:土地全体の面積のうち、どれくらいの割合が都市計画道路予定地にかかっているかを示します。例えば、200平方メートルの土地のうち50平方メートルが道路予定地なら、地積割合は25%です。
これらの3つの要素を組み合わせて補正率表を見ることで、ご自身の土地に適用される補正率がわかり、具体的な減額幅を計算することができます。
市街化調整区域にある土地の相続税評価
相続した土地が「市街化調整区域」にある場合も、評価方法に特別な配慮が必要です。ここは原則として建物を建てられないエリアなので、評価額が大きく下がることがあります。
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」と定められたエリアのことです。無秩序な市街地の拡大を防ぎ、自然環境などを保全することを目的としています。そのため、原則として住宅や商業施設などの建物を新しく建築することはできません。ただし、農林漁業を営む人のための住宅など、一部の例外的な建築は許可されることがあります。
市街化調整区域内の宅地の評価方法
市街化調整区域にある土地の評価は、その土地がどのような状況にあるかで変わります。一般的には「倍率方式」で評価されることが多いですが、周辺に住宅地が広がっているような場所にある宅地は、近隣の宅地の価額を参考に評価する「宅地比準方式」が用いられます。宅地比準方式で評価する際には、建築制限などのデメリットを考慮して評価額を減額する「しんしゃく割合」が適用されます。
しんしゃく割合(減価率)とは?
しんしゃく割合とは、市街化調整区域という厳しい制限があることを考慮して、評価額を割り引く割合のことです。国税庁は、土地の周辺の状況に応じて、どの程度減額できるかの目安を示しています。
| 周辺の状況 | しんしゃく割合の目安 |
| 純農地・純山林地帯にあり、宅地としての利用がほとんど見込めない | 50%減価 |
| 農家住宅が点在し、ある程度の開発が見込まれる | 30%減価 |
このように、市街化調整区域内の土地は、その立地条件によって最大で50%も評価額が減額される可能性があるのです。ただし、この判定は専門的な知識が必要なため、専門家への相談が欠かせません。
生産緑地地区にある土地の相続税評価
市街化区域内にある農地でも、「生産緑地」に指定されている場合は、相続税評価額が大きく軽減されます。
生産緑地とは?
生産緑地とは、市街化区域内にある農地のうち、良好な生活環境を守るために計画的に保全することが定められた土地のことです。生産緑地に指定されると、30年間は農業を続けなければならず、農地以外の目的で土地を利用したり、建物を建てたりすることが厳しく制限されます。この制限の代わりに、固定資産税が大幅に軽減されたり、相続税の納税猶予制度が利用できたりといった税制上のメリットがあります。
生産緑地の相続税評価
生産緑地は、長期間にわたって利用が制限されるため、相続税評価額もその分減額されます。具体的には、その土地が生産緑地でないとした場合の農地としての価額から、一定の割合を控除して評価します。
| 課税時期から買取申出ができるまでの期間 | 控除割合 |
| 5年以下のもの | 30% |
| 5年を超え10年以下のもの | 35% |
| 10年を超えるもの | 40% |
例えば、課税時期(相続が発生した日)から10年を超えて農業を続けなければならない生産緑地は、評価額が40%も減額されることになります。これは相続税の負担を大きく左右する重要なポイントです。
自分の土地が都市計画の対象か調べる方法
ここまで様々な都市計画による影響を見てきましたが、「じゃあ、自分の土地はどうなっているの?」と気になりますよね。相続した土地がどのような都市計画の対象になっているかは、ご自身で調べることができます。
市役所(区役所)の担当窓口で確認
最も確実な方法は、土地が所在する市役所や区役所の担当窓口で確認することです。一般的には「都市計画課」や「まちづくり推進課」といった部署が担当しています。窓口で土地の地番などを伝えれば、都市計画図を見せてもらえたり、どのような制限があるかを教えてくれたりします。相続税評価で必要になる「容積率」などの情報もここで確認できます。
自治体のウェブサイトで確認
最近では、多くの自治体がウェブサイト上で都市計画に関する情報を公開しています。「(自治体名) 都市計画図」などと検索すると、インターネット上で地図を見ながら確認できるサービスが見つかることが多いです。自宅にいながら手軽に確認できるので、まずはこちらで調べてみるのも良い方法ですね。ただし、最新の情報や詳細については、最終的に役所の窓口で確認することをおすすめします。
まとめ
今回は、都市計画法が土地の相続税評価額に与える影響について解説しました。相続した土地が都市計画道路予定地や市街化調整区域など、何らかの利用制限を受けている場合、その価値は適正に減額して評価する必要があります。この減額評価を正しく行わないと、本来払う必要のない高い相続税を納めてしまうことになりかねません。
しかし、補正率の計算やしんしゃく割合の判断には、専門的な知識が求められる場面も多くあります。ご自身の土地が都市計画に関係していることがわかったら、まずは相続税に詳しい税理士などの専門家に相談し、適切な評価を受けることが大切です。正しい知識を持って、損のない相続手続きを進めていきましょう。
参考文献
都市計画法と土地の相続税評価額に関するよくある質問
Q.都市計画法とは、どのような法律ですか?
A.健全な都市の発展と秩序ある整備を目的とする法律です。土地を「市街化区域」や「市街化調整区域」などに区分し、土地利用のルールを定めています。
Q.都市計画法は、土地の相続税評価額にどう影響するのですか?
A.都市計画法上の区分(市街化区域など)によって土地の利用価値が変わり、評価額に影響します。例えば、建物を建てにくい市街化調整区域は、市街化区域に比べて評価額が低くなる傾向があります。
Q.相続した土地が「市街化区域」にある場合、評価額はどうなりますか?
A.市街化区域は建物の建築がしやすく利用価値が高いため、他の区域に比べて相続税評価額は高くなる傾向があります。
Q.相続した土地が「市街化調整区域」にあると、評価額は下がりますか?
A.はい、下がる傾向があります。市街化調整区域は原則として建物の建築が制限されるため、土地の利用価値が低いとみなされ、相続税評価額も低く評価されることが一般的です。
Q.相続する土地がどの都市計画区域に該当するか、どうすれば調べられますか?
A.土地が所在する市区町村の役所(都市計画課など)や、そのウェブサイトで公開されている都市計画図で確認できます。
Q.都市計画区域による評価額の違いについて、もっと詳しく知りたい場合はどうすればよいですか?
A.土地の評価は都市計画区域だけでなく、接道状況や形状など様々な要因が影響します。正確な評価額については、相続に詳しい税理士などの専門家への相談をおすすめします。