ご家族が遺された大切な土地。その相続税を計算するとき、「土地の評価額」がいくらになるかは非常に重要ですよね。もしその土地が広かったり、これから家が建つ可能性があったりする場合、「開発行為」というキーワードが評価額を大きく左右するかもしれません。「開発行為ってそもそも何?」「うちの土地の評価額はどうなるの?」そんな疑問をお持ちの方のために、開発行為の基本から土地の相続税評価額への影響まで、わかりやすく解説していきます。
開発行為とは?基本的な意味をわかりやすく解説
まず、「開発行為」という言葉自体、少し難しく聞こえるかもしれませんね。これは都市計画法という法律で定められているもので、簡単に言うと「建物を建てたりするために、土地の区画、形、質を変えること」を指します。土地の価値や周辺環境に大きな影響を与えるため、一定のルールが設けられているのです。
どんな行為が「開発行為」にあたるの?
具体的には、以下のような行為が開発行為に該当します。相続する土地が、これからこのような変更を予定している、あるいはその可能性がある場合は、評価方法が変わるかもしれないと考えておきましょう。
| 土地の区画の変更 | 道路などを新設・廃止して、土地の区ないきり(区画)を変更すること。例えば、一つの大きな土地に道路を通して、複数の宅地に分けるようなケースです。 |
| 土地の形の変更 | 切土(きりど)や盛土(もりど)といった造成工事を行い、土地の形状(坂を平らにするなど)を変更すること。 |
| 土地の質の変更 | 農地や山林、雑種地など、宅地以外の土地を宅地に変更すること。土地の利用目的そのものを変えるイメージです。 |
開発許可が必要になるケース
すべての開発行為に許可が必要なわけではありませんが、一定規模以上のものには都道府県知事などの許可が必要です。この許可の有無が、土地の評価にも関わってきます。
許可が必要となる主な面積の目安は以下の通りです。
- 市街化区域:原則として1,000平方メートル以上の開発行為
- 市街化調整区域:原則として規模にかかわらず許可が必要
- 非線引き都市計画区域:原則として3,000平方メートル以上の開発行為
※これらの面積は三大都市圏や地方都市など、地域や自治体の条例によって異なる場合があります。
開発許可が不要なケース
一方で、社会的に必要性が高かったり、規模が小さかったりする場合には、開発許可は不要とされています。
- 農林漁業を営むための建築物(畜舎や温室など)のための開発行為
- 駅舎や図書館、公民館など、公益上必要な建築物のための開発行為
- 上記の面積要件に満たない小規模な開発行為
- すでに建築許可を得ている建築物の改築など、軽易な行為
開発行為が土地の相続税評価額に与える影響
開発行為は土地の利用価値を大きく変えるため、相続税評価額もその変化を反映します。例えば、ただの山林が宅地として開発されれば、その価値は大きく上がりますよね。この「将来性」や「現状」を評価に織り込むのが基本です。
開発許可を受けた土地の評価
相続が起きた時点で、すでに開発許可が下りて造成工事中の土地は、その進捗状況を考慮して評価します。具体的には、造成が完了した場合の土地の価値から、これからかかる工事費用を差し引いて評価額を計算します。
計算式は以下のようになります。
造成完了後の宅地としての評価額 - 相続開始時点で未了の造成工事費用
つまり、完成形に近いほど評価額は高くなります。
開発が見込まれる「宅地見込地」の評価
現在は農地や山林であっても、周辺の市街化の状況からみて、将来的に宅地へ転用される可能性が高い土地は「宅地見込地」として評価されます。これは「市街地農地」や「市街地山林」などが該当します。
この場合の評価方法は、その土地がもし宅地だった場合の価額から、宅地にするために必要となる造成費を差し引いて計算します。
その土地が宅地であるとした場合の価額 - 宅地造成費
このため、単なる農地や山林として評価するよりも、相続税評価額は高くなるのが一般的です。
【特に注意】市街化調整区域における開発行為と相続税評価
相続した土地が「市街化調整区域」にある場合は、特に注意が必要です。市街化調整区域とは、「市街化を抑制すべき区域」として定められており、原則として新しい建物を建てたり、宅地開発をしたりすることが厳しく制限されているエリアです。この強い制限が、土地の評価額に大きく影響します。
市街化調整区域内の土地の基本的な評価方法
開発が原則としてできない土地は、利用価値が低いとみなされるため、相続税評価額も低くなる傾向があります。多くの場合、地目は「雑種地」として評価されます。評価方法は、近隣の宅地の価額を参考にしつつも(宅地比準方式)、厳しい開発制限を考慮して評価額を大幅に減額します。
斟酌(しんしゃく)割合とは?
市街化調整区域内の土地を宅地の価額に準じて評価する場合、その土地の開発制限の度合いに応じて評価額を減額することができます。この減額割合のことを「斟酌(しんしゃく)割合」と呼びます。土地の置かれた状況によって、どれくらい価値を割り引いて考えるか、という目安になります。
状況別の斟酌割合の目安
国税庁は、土地の周辺状況に応じた斟酌割合の目安を示しています。どの状況に当てはまるかで、評価額が大きく変わってきます。
| 周囲の状況 | 斟酌割合の目安 |
| 農地や宅地が混在している一般的な市街化調整区域 | 50%減額 |
| 幹線道路沿いや市街化区域に近く、店舗などの建築が見込まれる地域 | 30%減額 |
| 条例指定区域など、開発許可が得やすく実質的に市街化区域と変わらない地域 | 減額なし(0%) |
※周囲が純粋な農地や山林に囲まれ、宅地化が全く見込めない場合は、そもそも宅地ではなく農地や山林の価額を基準に評価します。
開発行為で土地の評価額が下がるケース
「開発」と聞くと評価額が上がるイメージが強いですが、逆に評価額が下がる要因になることもあります。特に、広大な土地を相続した場合は、これからかかる開発の負担を評価に反映させることができます。
道路や公園になる部分(潰れ地)の考慮
広い土地を開発して戸建て住宅地として分譲する場合、敷地内に道路や公園、ごみ集積所といった公共的なスペースを設けなければなりません。これらの部分は「潰れ地(つぶれち)」と呼ばれ、販売することができないため収益を生みません。そのため、土地全体の評価において、この潰れ地の分は価値がないものとして評価額を下げる要因になります。
造成費の控除
土地を宅地として使える状態にするためには、地面を平らにしたり、地盤を固めたり、がけ崩れを防ぐための擁壁(ようへき)を設置したりといった造成工事が必要です。この「宅地造成費」は、宅地見込地などを評価する際に、評価額から控除することができます。造成が難しい土地ほど造成費は高くなるため、その分、評価額を下げることができます。
「地積規模の大きな宅地の評価」の適用
三大都市圏で500平方メートル以上、それ以外の地域で1,000平方メートル以上の広大な土地には、「地積規模の大きな宅地の評価」という特例が適用できる場合があります。これは、土地が広すぎることによる使いにくさや、開発時に道路負担などが発生することを考慮して評価額を減額する制度です。開発が見込まれるような広い土地では、この特例の適用を検討することが重要です。
開発行為で土地の評価額が上がるケース
一方で、開発行為は土地のポテンシャルを引き出し、利用価値を高める行為でもあります。そのため、基本的には評価額が上がる要因となることの方が多いでしょう。特に、土地の利用目的(地目)そのものが変わる場合は、その影響がはっきりと現れます。
農地や山林から宅地への転用
最も典型的な例が、農地や山林を宅地に転用するケースです。相続税の評価では、たとえ現況が農地や山林であっても、周辺に宅地化の波が及んでいる地域の土地は「市街地農地」や「市街地山林」として、実質的に宅地と同じくらいの高い評価額が付けられます。これは、将来的な開発(宅地化)による価値の上昇が、すでに織り込まれているためです。
都市計画の変更による影響
地域の発展に伴い、行政が都市計画を見直すことがあります。例えば、今まで開発が厳しく制限されていた市街化調整区域だった土地が、市街化区域に編入されるケースです。これにより開発制限が大幅に緩和され、自由に家を建てられるようになれば、土地の資産価値は一気に上昇します。当然、相続税評価額もそれに伴って高くなります。
まとめ
ここまで見てきたように、開発行為は土地の利用価値を根本から変えるため、土地の相続税評価額に非常に大きな影響を与えます。特に、市街化調整区域にある土地は、開発制限という大きなマイナス要因がある一方で、例外的な開発の可能性によって評価が大きく変わるため、慎重な判断が必要です。
また、現況が農地や山林でも、将来宅地になる可能性が高い土地は「宅地見込地」として高く評価されることを覚えておきましょう。逆に、広大な土地では造成費や潰れ地を考慮することで、評価額を適切に下げることができます。
このように、開発行為に関連する土地の評価は、法律や条例、地域の状況など、多くの専門的な知識を必要とします。相続財産に評価が難しそうな土地が含まれている場合は、その土地の現状や法規制を正確に把握することが、適正な相続税申告と節税の第一歩です。ご自身での判断に不安を感じる場合は、土地評価に詳しい税理士などの専門家にご相談されることを強くお勧めします。
参考文献
国税庁 タックスアンサー No.4628 市街化調整区域内の雑種地の評価
国税庁 タックスアンサー No.4609 地積規模の大きな宅地の評価
開発行為と土地の相続税評価額に関するよくある質問まとめ
Q.そもそも「開発行為」とは何ですか?
A.開発行為とは、主に建物を建てる目的で行う「土地の区画形質の変更」を指します。具体的には、土地の造成、道路の新設、区画割りなどが該当し、都市計画法で定められています。
Q.開発行為が行われた土地は、相続税評価額にどう影響しますか?
A.開発行為で宅地造成が行われた土地は、その造成にかかった費用(造成費)を土地の評価額から控除できるため、相続税評価額が低くなる可能性があります。
Q.宅地造成中の土地はどのように評価されるのですか?
A.造成中の土地は、その土地が造成されていない状態(素地)としての価額から、相続開始までに投下された造成費用を控除して評価するのが一般的です。
Q.開発許可とは何ですか?相続税評価に関係ありますか?
A.開発許可とは、一定規模以上の開発行為を行う際に必要な行政の許可です。許可の有無や開発計画の内容は、土地の利用価値に影響を与えるため、相続税評価においても重要な判断材料となります。
Q.造成費として控除できる費用にはどのようなものがありますか?
A.整地費、伐採抜根費、地盤改良費、土盛費、土止費(擁壁工事など)といった、宅地として利用するために直接必要となる費用が控除の対象となります。
Q.相続した土地が開発行為の対象だった場合、何に注意すべきですか?
A.開発計画の進捗状況を確認し、造成費に関する契約書や領収書などの資料を保管しておくことが重要です。評価が複雑になるため、専門家へ相談することをおすすめします。