この記事は、給与から天引きされる税金や確定申告への影響が気になる個人の方と、決算・申告の準備をする法人の経営者・経理担当の方に向けて、防衛特別所得税と防衛特別法人税の仕組みを国税庁の公表資料に沿ってご説明しますね。
結論から申し上げると、防衛特別所得税は令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得から、所得税額の1%がかかります。同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%に引き下げられるため、合計の税率は2.1%のままで、源泉徴収税額の計算方法も変わりません。一方、防衛特別法人税は令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、基準法人税額から年500万円を差し引いた金額に4%をかけて計算します。
「防衛特別所得税はいつから?」「手取りは減るの?」「会社は何を準備すればいい?」といった疑問に、計算例を交えて順にお答えしていきます。
防衛特別所得税・防衛特別法人税の早見表
まずは2つの税金の違いを一覧で確認しておきましょう。個人にかかるのが防衛特別所得税、法人にかかるのが防衛特別法人税です。
| 項目 | 防衛特別所得税(個人など) | 防衛特別法人税(法人) |
|---|---|---|
| いつから | 令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得 | 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度 |
| 計算のもと | 所得税額(源泉徴収では源泉徴収すべき所得税の額) | 基準法人税額から基礎控除額(年500万円)を控除した金額 |
| 税率 | 1% | 4% |
| 同時に行われる改正 | 復興特別所得税を2.1%から1.1%へ引下げ・課税期間を令和29年12月31日まで延長 | ― |
| 納め方 | 所得税・復興特別所得税と併せて源泉徴収・申告 | 法人税・地方法人税と一体の様式で申告(別表一次葉一など) |
防衛特別所得税とは?個人の負担はどうなる?
防衛特別所得税は、令和8年度税制改正で創設された、個人の所得税に上乗せされる税金です。給与所得者・個人事業主・年金受給者など、所得税を納める方が対象になります。
防衛特別所得税はいつから?令和9年1月1日以後に生ずる所得から
防衛特別所得税は、令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税について適用されます。所得税の源泉徴収義務者は、所得税を徴収する際に、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)を併せて徴収し、所得税の法定納期限までに併せて納付します国税庁 防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A。
給与でいえば、「令和9年1月1日以後に生ずる所得」かどうかは原則として支給日で判定します。たとえば令和8年12月分の給与でも、支給日が令和9年1月であれば新しい扱いの対象になります。役員賞与のうち利益を基礎に支給金額を定めるものは、その決議等があった日で判定するなど、例外もあるので注意しましょう。
復興特別所得税との関係:合計2.1%は変わらない
現在、所得税には東日本大震災の復興財源として復興特別所得税(税率2.1%)がかかっています。今回の改正で、復興特別所得税の税率は1.1%に引き下げられ、課税期間は令和29年12月31日まで(改正前は令和19年12月31日まで)10年間延長されました。
| 区分 | 令和8年分まで | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 復興特別所得税 | 2.1% | 1.1% |
| 防衛特別所得税 | ― | 1% |
| 合計税率 | 2.1% | 2.1% |
| 復興特別所得税の課税期間 | 令和19年12月31日まで → 令和29年12月31日まで | |
改正の前後で合計税率(2.1%)は変わらないため、国税庁も源泉徴収税額の計算方法に変更は生じないと説明しています。つまり、令和9年になったからといって、すぐに手取りが減るわけではありません。ただし、復興特別所得税の課税期間が10年延びるため、長い目で見ると上乗せ分を負担する期間が延びることになります。
防衛特別所得税の計算例
確定申告や源泉徴収の際には、令和9年分以後は所得税のほかに防衛特別所得税と復興特別所得税がかかります国税庁 株式・配当・利子と税。所得税額が20万円の方を例に、内訳を見てみましょう。
令和8年分までなら復興特別所得税だけで4,200円(20万円×2.1%)ですから、合計額は同じです。変わるのは「何という名目で納めるか」の内訳だと考えるとわかりやすいでしょう。
源泉徴収・年末調整への影響
源泉徴収では、支払金額等に合計税率(所得税率×102.1%)をかけて、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税をまとめて計算します。所得税率10%なら合計税率は10.21%で、改正前と同じです。
実務で押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 所得税の源泉徴収義務者が、そのまま防衛特別所得税・復興特別所得税の源泉徴収義務者になります
- 納付は、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額を1枚の所得税徴収高計算書(納付書)で行います。手元にある従来の納付書も、補正せずにそのまま使えます
- 毎月の給与は「源泉徴収税額表」で計算します。令和9年分以後の税額表は防衛特別所得税と復興特別所得税を含んだものになるため、必ずその年分の税額表を使うことが大切です
- 年末調整は3つの税の合計額で行い、年調所得税額に102.1%をかけて年調年税額を求めます(100円未満切捨て)。この率は令和8年分と令和9年分で変わりません
- 源泉徴収票や支払調書の「源泉徴収税額」欄には、3つの税の合計額を記載します
- 租税条約で限度税率が適用される場合などは、防衛特別所得税と復興特別所得税は課されません
実務では、給与計算ソフトの税額表が令和9年分に切り替わっているかを、令和9年1月の最初の給与支給前に確認しておくと安心です。
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防衛特別法人税とは?制度の概要と適用時期
ここからは、法人が納める防衛特別法人税をご説明しますね。すべての法人に実際の負担が生じるわけではなく、年500万円の基礎控除が設けられているのが特徴です。
防衛特別法人税の対象となる法人
防衛特別法人税の納税義務者は、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人です国税庁 防衛特別法人税が創設されました。基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引けるため、基準法人税額が年500万円以下の法人は、税額が0になり実際の負担は生じません。利益の大きい法人ほど影響が出る仕組みです。
適用される時期と対象事業年度
防衛特別法人税は、対象となるのは、令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度です。3月決算の法人であれば、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度が最初の対象です。12月決算の法人なら、令和9年1月1日に開始する事業年度からとなります。
なお、通算子法人は、通算親法人の事業年度が令和8年4月1日以後に開始するものかどうかで判定します。
基準法人税額と基礎控除(年500万円)
税額計算のもとになるのは「基準法人税額」です。これは、所得税額控除や外国税額控除など一定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額(附帯税の額を除きます)をいいます。
この基準法人税額から基礎控除額年500万円を差し引いた金額が課税標準(課税標準法人税額)です。事業年度が1年に満たない場合は、500万円を12で割り、その事業年度の月数(1月未満の端数は切上げ)をかけた金額が基礎控除額になります。通算法人の場合は、500万円を各通算法人の基準法人税額などの比で配分します。
防衛特別法人税の計算方法と計算例
対象となる法人がいくら納めるのか、計算式と具体例で確認していきましょう。
税率は課税標準法人税額の4%
防衛特別法人税の額は、課税標準法人税額に4%をかけた金額です。
具体的な計算例
例1:基準法人税額が1,000万円の法人(事業年度12か月)
例2:基準法人税額が3,000万円の法人(事業年度12か月)
例3:設立初年度で事業年度が6か月、基準法人税額が400万円の法人
例3のように、事業年度が短いと基礎控除額も月割りで小さくなります。年間ベースでは500万円以下の法人税額でも、短い事業年度では負担が生じることがある点に気をつけましょう。
留保金課税がある場合と税額控除
特定同族会社の留保金課税で加算された金額がある場合は、加算前の基準法人税額から先に基礎控除額を差し引き、控除しきれなかった残額を留保金課税の加算額から差し引く、という順序で課税標準を計算します。
また、法人税と地方法人税で外国税額控除を受ける場合に控除しきれない金額があるときは、防衛特別法人税でも外国税額控除を受けられます。このほか、分配時調整外国税相当額の控除なども設けられており、二重課税を調整する仕組みが用意されています。
防衛特別法人税の申告と納付の注意点
防衛特別法人税は新しい税目なので、申告書の様式や提出の要否にも注意が必要です。
申告書の様式と提出期限
防衛特別法人税の申告書は、法人税・地方法人税の申告書と一体の様式です。ただし、記載欄は「別表一次葉一」「別表一の二次葉一」として法人税・地方法人税とは別葉になっているため、提出漏れに注意しましょう。提出期限は原則として、各課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。法人税の申告期限が延長されている場合は、防衛特別法人税も延長された期限になります。
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赤字や基準法人税額500万円以下でも申告は必要
赤字で基準法人税額が0になる場合や、基礎控除額500万円を差し引いて課税標準法人税額が0になる場合でも、防衛特別法人税確定申告書の提出は必要です。別表一次葉一の計算欄を記載し、「防衛特別法人税額」と「防衛特別法人税額計」の欄に「0」と記載して提出します。
実務では、利益の小さい中小法人ほど「うちは対象外」と考えて別表一次葉一を付け忘れがちです。税額が0でも提出が必要な点は、決算の段階で確認しておきましょう。なお、公益法人等で収益事業を行っていないものなど、法人税の納税義務がない法人は提出不要です。
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中間申告は令和9年4月1日以後開始の事業年度から
中間申告は、令和9年(2027年)4月1日以後に開始する課税事業年度から始まります。法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税についても中間申告書を提出する必要があります。つまり、3月決算法人の場合、最初の事業年度(令和8年4月開始)は確定申告だけで、翌事業年度から中間申告・中間納付が加わります。資金繰りの計画にあらかじめ織り込んでおくと安心です。
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今後のスケジュールと実務上の準備
最後に、開始時期を時系列で整理し、準備しておきたいことをまとめます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年(2026年)4月1日以後開始の事業年度 | 防衛特別法人税の適用開始(確定申告) |
| 令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得 | 防衛特別所得税1%の課税開始・復興特別所得税を1.1%へ引下げ |
| 令和9年(2027年)4月1日以後開始の事業年度 | 防衛特別法人税の中間申告の開始 |
| 令和29年(2047年)12月31日 | 延長後の復興特別所得税の課税期間の終わり |
法人が準備しておきたいこと
- 基準法人税額が500万円を超えそうかを試算し、防衛特別法人税の納税額を資金計画に織り込む
- 会計・申告ソフトが別表一次葉一など新しい様式に対応しているかを確認する
- 税額が0でも申告書の提出が必要な点を、決算・申告の手順に組み込む
- 令和9年1月の給与から使う源泉徴収税額表が令和9年分に切り替わっているかを確認する
個人の方が知っておきたいこと
給与所得者の方は、合計税率が変わらないため、令和9年以降も源泉徴収される金額の計算は従来どおりです。確定申告をする個人事業主の方は、令和9年分以後の申告で、所得税と併せて防衛特別所得税と復興特別所得税を計算・納付することになります。
まとめ
- 防衛特別所得税は令和9年1月1日以後に生ずる所得から、所得税額の1%がかかる
- 同時に復興特別所得税が1.1%に下がるため、合計2.1%は変わらず、源泉徴収税額の計算方法も同じ
- 復興特別所得税の課税期間は令和29年12月31日まで10年延長された
- 防衛特別法人税は令和8年4月1日以後開始の事業年度から、(基準法人税額−年500万円)×4%で計算する
- 税額が0でも防衛特別法人税の確定申告書(別表一次葉一)の提出が必要で、中間申告は令和9年4月1日以後開始の事業年度から
個人の方は合計税率が変わらないため大きな心配はいりませんが、法人は試算や申告書の様式確認など決算前の準備が欠かせません。自社の負担額や申告の手順に不安がある場合は、まずは税理士にご相談ください。
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参考文献
防衛特別所得税と防衛特別法人税のよくある質問まとめ
Q.防衛特別所得税はいつから始まりますか?
A.令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得に対する所得税から適用されます。給与の場合は原則として支給日で判定します。
Q.防衛特別所得税によって手取りは減りますか?
A.防衛特別所得税1%の新設と同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%に引き下げられるため、合計税率は2.1%のままです。源泉徴収税額の計算方法も変わらないため、すぐに手取りが減るわけではありません。ただし復興特別所得税の課税期間は令和29年12月31日まで10年延長されています。
Q.防衛特別所得税はどのように計算しますか?
A.所得税額(源泉徴収では源泉徴収すべき所得税の額)に1%をかけて計算します。源泉徴収では支払金額等に合計税率(所得税率×102.1%)をかけ、所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税をまとめて計算します。
Q.防衛特別法人税はいつから始まりますか?
A.課税の対象は令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度です。中間申告は令和9年4月1日以後に開始する事業年度からです。
Q.防衛特別法人税はすべての法人が払うのですか?
A.基準法人税額から年500万円の基礎控除額が差し引かれるため、基準法人税額が年500万円以下の法人は税額が0になります。ただし、税額が0でも防衛特別法人税確定申告書の提出は必要です。
Q.赤字で法人税が0円の場合も防衛特別法人税の申告は必要ですか?
A.必要です。基準法人税額や課税標準法人税額が0となる場合でも、別表一次葉一の計算欄を記載し、防衛特別法人税額の欄に0と記載して提出します。


