ご家族が亡くなられて相続手続きを始めると、銀行や役所などで「除籍謄本(じょせきとうほん)をご用意ください」と言われることがあります。普段聞き慣れない言葉に、戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。実はこの「除籍謄本」、相続の場面では本来の意味とは少し違うニュアンスで使われることもあり、注意が必要です。この記事では、除籍謄本とは何か、戸籍謄本との違い、なぜ相続で必要なのか、そして具体的な取得方法まで、わかりやすく解説していきますね。
除籍謄本とは?戸籍にまつわる書類を整理しよう
相続手続きをスムーズに進めるためには、まず「除籍謄本」がどのような書類なのかを正しく理解することが大切です。よく似た言葉の「戸籍謄本」などとの違いも合わせて見ていきましょう。
本来の「除籍謄本」が持つ意味
除籍謄本とは、その戸籍に記載されている人が、結婚や死亡、転籍などによって全員いなくなった状態の戸籍の写しのことを指します。戸籍は、夫婦と未婚の子どもを一つの単位として作られますが、子どもが結婚して新しい戸籍を作ったり、ご夫婦が亡くなったりすると、その戸籍から名前が抜けていきます。そして、最終的に誰もいなくなった戸籍は閉鎖され、「除籍簿」という帳簿で管理されます。この除籍簿のすべての内容を写したものが「除籍謄本」なんですね。
相続手続きで言われる「除籍謄本」のもう一つの意味
ここが少しややこしいポイントなのですが、相続手続きの現場では、「亡くなった方(被相続人)の死亡の事実が記載されている戸籍謄本」のことを指して「除籍謄本」と呼ぶことがよくあります。戸籍にまだ配偶者の方が残っていても、亡くなったご本人は戸籍から除かれる(除籍される)ため、その記載がある戸籍謄本を便宜上「除籍謄本」と表現しているのです。ですから、金融機関などで「除籍謄本をお願いします」と言われたら、「亡くなった方の死亡が記載された最新の戸籍謄本のことだな」と理解するとスムーズですよ。
戸籍謄本や改製原戸籍謄本との違いは?
戸籍に関する書類にはいくつか種類があり、それぞれ役割が異なります。相続手続きではこれらをすべて集める必要があるため、違いをしっかり押さえておきましょう。
| 書類の種類 | 内 容 |
| 戸籍謄本(こせきとうほん) | 現在、有効な戸籍の原本の内容をすべて写したもの。戸籍に一人でも人が残っていれば、それは戸籍謄本です。 |
| 除籍謄本(じょせきとうほん) | その戸籍にいた全員が、死亡や結婚などでいなくなった状態の戸籍の写し。 |
| 改製原戸籍謄本(かいせいげんこせきとうほん) | 法律の改正によって戸籍の様式が作り変えられる前の、古い様式の戸籍の写し。例えば、手書きからコンピューター化された際に作り変えられています。 |
相続手続きでは、これらの書類を組み合わせて、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの身分関係をすべて証明する必要があるのです。
なぜ相続手続きに除籍謄本が必要なの?
では、なぜ相続手続きでは、こんなにたくさんの戸籍関連書類が必要になるのでしょうか。その最も大切な理由と、具体的な提出先についてご説明します。
法定相続人を確定させるため
相続手続きで除籍謄本などが必要となる最大の理由は、「誰が正当な相続人(法定相続人)なのか」を公的に証明するためです。遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ無効になってしまいます。亡くなった方に、現在の戸籍には載っていない子ども(例えば、前の配偶者との間の子どもなど)がいないか、あるいはご両親がご健在かなどを確認するために、出生から死亡までの連続したすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本が必要になるのです。これにより、相続人の漏れを防ぎ、後のトラブルを回避することができます。
具体的な提出先と使用場面
集めた除籍謄本などの一式は、さまざまな相続手続きの場面で提出を求められます。一度きりではなく、複数の手続きで必要になることが多いです。
- 金融機関(銀行・証券会社など):預貯金の解約や名義変更、株式の移管手続き
- 法務局:不動産の名義変更(相続登記)
- 税務署:相続税の申告
- 保険会社:生命保険金の請求
- 運輸支局:自動車の名義変更
手続き先ごとに原本の提出を求められることもあるため、あらかじめ何セットか取得しておくか、後述する「法定相続情報一覧図」の活用を検討すると便利です。
除籍謄本の取得方法と費用
除籍謄本はどこで、どのように取得すればよいのでしょうか。具体的な取得方法と、かかる費用について見ていきましょう。
取得できる人は誰?
除籍謄本は個人情報のかたまりなので、誰でも自由に取得できるわけではありません。請求できるのは、原則として以下の人たちに限られています。
- 戸籍に記載されている本人
- その配偶者
- 直系尊属(父母、祖父母など)
- 直系卑属(子、孫など)
上記以外の人が請求する場合は、正当な理由とそれを証明する資料、もしくは本人からの委任状が必要になります。
取得場所と申請方法(窓口・郵送)
除籍謄本は、その戸籍の「本籍地」がある市区町村役場で取得します。亡くなった方の最後の本籍地だけでなく、結婚や転籍で本籍地が変わっている場合は、その都度、前の本籍地があった役場に請求する必要があります。
| 取得方法 | 必要なもの・手順 |
| 窓口での申請 | ・申請書(役所に備え付け) ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・手数料(1通750円) ・相続関係がわかる戸籍謄本(請求者と被相続人の関係が、持参した本人確認書類だけではわからない場合) |
| 郵送での申請 | ・申請書(役所のホームページからダウンロード) ・本人確認書類のコピー ・手数料分の定額小為替(郵便局で購入) ・切手を貼った返信用封筒 ・相続関係がわかる戸籍謄本のコピー |
コンビニでは取得できない点に注意
マイナンバーカードを使えば、コンビニで現在の戸籍謄本を取得できる場合がありますが、除籍謄本や改製原戸籍謄本はコンビニのマルチコピー機では取得できません。必ず市区町村役場の窓口か、郵送で請求する必要があるので注意してくださいね。
除籍謄本を取得するときの注意点
除籍謄本の収集は、相続手続きの中でも特に時間と手間がかかる作業です。スムーズに進めるために、いくつか知っておきたい注意点があります。
死亡届の提出直後は取得できない
ご家族が亡くなられて死亡届を提出しても、その内容が戸籍に反映されるまでには1週間から2週間ほど時間がかかります。亡くなった直後に役所へ行っても、死亡の記載がされた除籍謄本はまだ発行できませんので、少し時間を置いてから申請しましょう。
出生から死亡までの連続性が重要
相続手続きでは、亡くなった方の「出生から死亡まで」の戸籍がすべて揃っていて、日付が途切れることなく繋がっている必要があります。1通でも漏れがあると、金融機関や法務局での手続きが受け付けてもらえません。戸籍を遡っていく際は、一つ前の戸籍がいつ、どこから移ってきたものかを確認しながら、慎重に集めていきましょう。
保管期間は150年(ただし過去は短かった)
現在の法律では、除籍謄本の保管期間は150年と定められています。しかし、平成22年の法改正までは保管期間が80年でした。そのため、あまりに古い戸籍の場合、すでに保管期間が過ぎて廃棄されてしまっている可能性もあります。もし廃棄されて取得できない場合は、役所で「廃棄済証明書」を発行してもらい、それを提出することになります。
古い戸籍は解読が難しいことも
戦前などの古い除籍謄本や改製原戸籍は、手書きで書かれており、旧字体やくずし字が使われていることが多く、現代の私たちには非常に読みにくいことがあります。内容を正確に読み解くのが難しいと感じた場合は、無理をせず司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
除籍謄本に有効期限はあるの?
「取得した除籍謄本は、いつまで使えるの?」という疑問もよく聞かれます。有効期限についても確認しておきましょう。
基本的に、除籍謄本そのものに法律上の有効期限はありません。一度取得すれば、内容が変わることはないからです。ただし、提出先によっては「発行後3ヶ月以内のもの」や「発行後6ヶ月以内のもの」といった独自のルールを設けている場合があります。特に金融機関ではそのような規定があることも。手続きを始める前に、提出先に有効期限の定めがないか確認しておくと二度手間を防げますよ。
また、有効期限の指定がない場合でも、相続手続きで使用する除籍謄本は、必ず被相続人が亡くなった日以降に発行されたものを用意する必要があります。亡くなる前に取得したものでは、死亡の事実が証明できないため、受け付けてもらえません。
まとめ
今回は、相続手続きで必要になる「除籍謄本」について詳しく解説しました。最後にポイントをおさらいしましょう。
- 除籍謄本とは、戸籍に誰もいなくなった状態の写しのこと。
- 相続の現場では「亡くなった方の死亡が記載された戸籍謄本」も除籍謄本と呼ぶことがある。
- 相続手続きでは、法定相続人を確定させるために「出生から死亡までの連続した戸籍一式」が必要。
- 取得は本籍地の役場で行い、手数料は1通750円。コンビニでは取得できない。
- 収集には時間がかかる上、古い戸籍は解読が難しい場合もある。
除籍謄本などの戸籍一式を集める作業は、相続手続きの第一歩であり、すべての基本となる重要なプロセスです。もしご自身で進めるのが難しい、時間が取れないと感じた場合は、司法書士や行政書士といった専門家に依頼することも一つの方法です。手続きの負担を減らし、正確かつスムーズに相続を進めることができますので、気軽に相談してみてくださいね。
参考文献
除籍謄本のよくある質問まとめ
Q.除籍謄本とは何ですか?
A.戸籍に記載されている人が、死亡や結婚、転籍などによって全員いなくなった状態の戸籍全部の写しのことです。相続手続きにおいて、亡くなった方の相続人を確定するために必要となります。
Q.除籍謄本には2つの意味があると聞きましたが本当ですか?
A.はい。一つは戸籍簿から全員が抜けた戸籍そのものを指す「除籍簿の謄本」という意味です。もう一つは、個人が結婚や転籍などで戸籍から抜けること自体を「除籍」と呼ぶことがあります。相続では両方の意味合いで使われるため文脈の理解が重要です。
Q.なぜ相続手続きで除籍謄本が必要なのですか?
A.亡くなった方(被相続人)の法定相続人が誰であるかを法的に確定するために必要です。出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本をすべて集めることで、他に相続人がいないことを証明する目的があります。
Q.除籍謄本と戸籍謄本、改製原戸籍謄本の違いは何ですか?
A.「戸籍謄本」は現在効力のある戸籍の写し、「除籍謄本」は全員が抜けて閉鎖された戸籍の写し、「改製原戸籍謄本」は法改正によって作り替えられる前の古い様式の戸籍の写しです。相続手続きでは、これら三種類すべてが必要になるケースがほとんどです。
Q.除籍謄本はどこで取得できますか?
A.亡くなった方の本籍地があった市区町村の役所で取得できます。本籍地がわからない場合は、住民票の除票を取得して確認します。本籍地が遠方の場合は、郵送で請求することも可能です。
Q.除籍謄本に有効期限はありますか?
A.除籍謄本自体に有効期限はありません。しかし、提出先(法務局や金融機関など)によっては「発行から3ヶ月以内」や「発行から6ヶ月以内」といった独自のルールを設けている場合があるため、手続きの直前に取得することをおすすめします。